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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

5章 嘉神一樹の同窓会ならび主人公が知ろうとしなかった物語

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伍ノ参 強くなった男 弱くなった男

レート2000超えました。

やったぜ。
 もしも、もしも神様がいて1つだけ願いをかなえてくれるというのなら悪の殲滅を願う。

 悪い奴は嫌いだ。
 悪い人は憎い。
 悪い物は滅びてほしい。

 俺は子供が世界平和を望むように悪の殲滅を望んでいる。

 それを恥じることとも思っていない。

 むしろその夢を公に出来ないことの方が恥ずべきことだと思う。



 だから俺は言おう。俺の夢は世界の平和であると。



「イツキ。君にとってあの女神は忌むべき存在かもしれないけどボクは感謝しているんだ。完善懲悪フルヴァイスをくれたんだからね」

 悪を支配する稟のシンボルは俺の夢そのものだった。

「イツキは僕が上京するとき言ってたよね。何かあったらすぐに連絡してって。今まで一度も連絡を取らなかったけど本当はずっととりたかったんだ。これを見てくれ」

 稟の背中に日常生活をとっていた上ではあり得ないほどの傷がついていた。

「新天地でもイジメが起きてね、君と同じように戦ったんだけどボクは弱い。悪になんか負けてしまう。何度君の助けを求めたか。でもそれはできないんだ。それだけは出来ないんだ。君は自分の都合を顧みず僕なんかを優先させてしまうから。自身の入試すら君は他人の為なら平然と捨てられる。そんな優しい君に助けを求めるなんてイツキに傷つけって言っているようなものだから」

 初めて知らされる事実だった。

「だったら少しくらい連絡しても」
「そのすこしの機敏でイツキは察してしまうから」

 そっか。稟がずっと連絡を取らなかったのはあいつなりに考えてのことだったのか。

「一年と二か月たっていよいよ音を上げようとした時にシンボルが手に入ったんだ」
「そっか。すまなかったな」

 それでもそんな稟のやさしさに甘えた俺にも責任がある。

「強くなったな。稟」

 素直に友の成長を褒め称える。

 悪い言い方をすれば俺の後ろに隠れていただけの人間だった。

 それがここまで成長したんだ。

「ありがとう。でもイツキ、キミは弱くなったね」

 友の間違いを正すように言い放った言葉は俺の批判だった。

「いや、絶対に今の方が強いから。たくさんギフトを持ってるし」
「違う。むしろそれが弱さの原因だ。口映しマウストゥマウス、一見無敵に見える君のギフトだが一つ明確な弱点がある」
「なんだ? 教えてくれ」

 一応使いこなせているわけではないというのは知っているが。

「決断だよ。ボクが思うにキミの強さは腕っ節の強さでも頭の強さでもはたまた正しさでもない。何が正しいかを瞬時に判断し即行動に移すことが出来ることなんだ。人の上に立つのに最も必要な能力。王にふさわしい最も優れた能力。誰にも評価されることは無く、しかし誰からも欲される決断力。その力があるからこそ、昔のキミは最強だった」

 決断力……

「ただ口映しマウストゥマウスは多くの必要のない無駄な力を手に入れてしまう。2択問題を3択4択と余計な選択肢を増やしてしまうんだ」

 確かにそれは言えている。

 いつも俺は敵と戦う時どうやって倒すかではなく何を使うかを考えてそこから行動している。

 初手が遅い。

「それに結局能力のコピーなんて誰かがやっていることをそのままやっているだけじゃないか。誰にもできることをやっているだけじゃないか。そんなのわざわざキミがやらなくていい」

 ごもっともな意見だ。

 参考にしよう。

「最適な選択肢を選ぶことが出来なかった。弱くなったね。イツキ」
「ああ、そうだな」

 もし俺が稟のシンボルが何なのか知っていれば俺は早苗を殺したのだろう。

 それが俺の正義だ。

 ただもう遅い。

 残り10分と数秒。

 どんだけ頑張っても早苗を殺しに行くのに時間が足りない。

真百合の時は、月夜さんからメールが来て『急いで来い』と言われ、全速力で走ったがそれでも制限時間まで5時間はあった。

 ここから神陵祭町まではそれ以上の距離がありもう時間が無い。

 この夢は儚き夢だ。

 叶わないと分かっている夢を望むため現実を捨てるほど俺はロマンチストじゃない。

 最善手を選べなかったとしても最悪な手だけは指さないつもりだ。




「そんなあなたに呼ばれて飛び出てじゃじゃジャーン」




 いきなり空気をぶち壊して現れたのは女神メープル。

「メープル」
「うん。みんな大好きメープルちゃんだ。いよいよこれで僕ちんが出したミッションはラストなんだけど、君は稟君を殺すんだね」
「…………ああ。仕方ないだろ」
「そう、それはもう衣川早苗を殺せないからというわけだよね」
「何が言いたい」

 意地の悪い質問だ。

 そして意地汚い顔で俺を見ながら

「それってさ、早苗ちゃんを殺すという選択肢から逃げてるのかな? それとも逃げるという選択を選んだのかな?」
「何が言いたいんだお前は」
「まさかとは思うけど、このまま終わるとなんて思ってないよね。時間的に無理だから選ぶことはできませんでしたなんて許されるとでも思っていたのかな?」

 メープルは指パッチンをし

「ん?」

 俺達の目の前に早苗を召還した。

 早苗は下着姿だったがな。

「きゃ!?」

 公衆の面前で己の醜態をさらした早苗は女の子らしいかわいい声を出し、その場でうずくまるが

「お前何なの!? ここでそれはないだろ」
「これ私が悪いのか??」

 激オコな俺。

 この流れでそんなセクシーシーンいらないだろ。

 しかし早苗はいい体をしている。

 絹のようなきめ細かい肌。

 決して貧しくない胸は美乳と称するに値する。

 そして何よりその腋がいい。

 久しぶりに見たくなってきた。

 だが早苗は手ぶらをしているため、腋を見ることが出来ない。

 どうしようか……

 早苗視点だとおそらくシャワーでも浴びようかとしたところでいきなり外に放り込まれただけなのだろう。

 疑うことなく被害者だ。

 とりあえず俺の身ぐるみを早苗に渡し、そのまま着せる。

「はい、万歳」
「う、うむ」

 しぶしぶ服を受け取り手を広げる。

 よし、見えた。

「…………………ねえ」
「どうした? 稟」
「これが、衣川早苗って人?」
「ああ」
「こんなのとボクは負けたのかい?」

 そうだな。

「まあいいや。でもよかったじゃないか。これで、ボクを殺さずに済む」
「…………!」

 そうだった。これで俺は早苗を殺すことができる。

 稟とともに悪の無い世界を作ることが出来る。

「ん?」

 何も知らない早苗は無垢な顔で俺達を見ている。

「さあイツキ。終わらせよう。こんな茶番。そして始めるんだ。革命を」
「ああ。そうだな」

 早苗を殺せば稟は助かり、そして悪の無い世界が作れる。

 早苗を殺せ。

 鬼人化オーガナイズで首を刎ねたらいい。
 雷電の球ライジングボールで感電死させればいい。
 大小織製マキシマムサイズで圧死すればいい。

 手段なんて沢山ある。

 そのうち一個だ。

 早苗を殺せ。

 そうすれば悪い奴はいなくなる。

 殺すんだ俺。

 殺せ。

 コロセ。

「一樹?」

 俺の両の手が早苗の首に触れる。

 細い首は少し力を加えれば壊れてしまうだろう。

 さあやるんだ。

 嘉神一樹。

 いつも通りやるんだ。

 一思いに、人を思って

「うぉおおおおおおおおお」

 力なくうなだれた。

「できない」

 早苗を殺せない。

「なんでだイツキ!? こんなのおかしい。キミはそんな柔な人間じゃないはずだ!!」

 俺もこんな柔な人間とは思っていなかった。

 早苗を叩くことも罵倒することも出来るのに、本当の意味で傷付けることが出来なかった。

「あはっ。あと3分だよ。179、178」

 メープルが制限時間までのカウントダウンを始める。

「もういい。ボクがやる。完善懲悪フルヴァイス

 己のシンボルを使い早苗を攻撃しようとするが

「やめろ稟。早苗は悪く無い」
「……………………」

 頭で考えず、何も考えず口走った。

「ずるいよ。キミが悪く無いって言っちゃ悪いって思えないじゃないか」

 とはいえ、本当にどうすればいい?

 誰か助けてほしい。

 早苗も稟も殺せない俺にどうすればいいんだ。

完善懲悪フルヴァイス

 稟は再び能力を使い

「ん?んぅううく」

 早苗がその場でのたうち回った。

どうやら呼吸ができないようだ。

「早苗!? 何をした!? 稟!!」
「キミがこいつのことを悪く無いっていうのなら悪く無いんだろうね。でもさ、頭悪そうだったから。頭の方を支配させてもらったよ」

 早苗は頭悪く無いと否定できないのが悲しかった。

「本当に弱くなったね。でも安心して。それでもキミは誰よりも強いんだから。ボクが代わりに殺してやるよ。ただそれ以外ならキミも大丈夫なはずだよね」

 早苗が俺の裾を掴む。

 赤い髪の毛に反して顔は青ざめており、あと数分でその命の灯が消えてしまうのが目に見えて分かった。

「キミがわざわざ手を下さなくてもいい。見殺しにすればいい。それでいいだろ。女神様」
「うん。許してやるよ。それで」
「やめろ稟。早苗は……!」
「イツキ!! もういい。もういいんだ。こいつが悪いんだ。キミは悪く無いんだ。目を閉じて耳をふさいでくれ。あと一分で終わるんだ。何もかも」

 あと一分。

 早苗がもがき苦しんでいる。

 あと五十秒。

 ごめんな早苗。俺が不甲斐ないばかりに。

 あと四十秒。

 俺は絶対にお前のことは忘れない。

 あと三十秒。

 許してくれなんて言わない。恨んでくれても構わない。

 あと二十秒。

 でも

 あと十秒。

 嫌だ。

 早苗は死んじゃだめだ。

「やめえろろろろろおおおおおお」

 初めから決められていたプログラムのようだった。

 いや、本当は最初から決めていたのかもしれない。

 念写するギフト絵に描いた画用紙キャンパスライフを使い、稟の服に刀を念写。

 続いて二次元を三次元にするギフト二次色の筆レインボードリーム

 日本刀を具現化する。

 具現化されたそれは稟の心臓を貫いた。

「な、なんで?」

 俺の親友の最期の言葉は俺を恨むわけでも憐れむわけでもない。

 俺の理解できない行動を疑問視していた。

 それだけだった。


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