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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
4章 八重崎咲と文化祭
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傷だらけのエピローグ

 更新遅れてすみませんでした。

 さて笹見先輩の意識はあるかどうか確かめるために一度攻撃を止めてみる。


「…………くっ」


 一応意識はあるようだ。


 それにしてもこの笹見先輩なかなか根性がある。


 こんなに殴っているのに一度も犯された聖少女アイアンメイデンを解除していない。


 こういうタイプのギフトは経験上意識を失うと効果がなくなるものだが未だに激痛が俺の体を虫食んでいる。


 朦朧とする意識の中でも俺という敵を捕らえているのは称賛に値する。


 その頑張る姿勢とっても好きで敬意を表してもいいくらいだが…………俺自身の好みでどうこうする気はない。


 問題は先輩たちが再戦しないかどうかである。


「先輩方どうします?このまま殴り続けていいですか?」

「どうすればいいのですの?」

「どうすればいいかですかって?そういうのを自分で考えて行動しないと社会でやっていけませんよ。ただまあ俺は優しいので教えてあげます。そもそも俺がこんな回りくどいことしている理由は再戦をしたくないからです。ここまで言えばわかりますか?」


再戦をしないっていう口約束をしてくれればそれでいい。


 別に俺は人を傷つける趣味なんてないんだ。


「お願いします。アタクシ二度と嘉神さんに挑んだりしませんからスイショウを解放してください」

「誓える?」

「はい」

「あんたのギフトに誓って?」

「……はい」


 よかった。これで俺の目的はすべて達成したということだ。


 もうこれで俺が笹見先輩を殴り続ける必要はなくなったわけであり、あとは笹見先輩の頭を十秒間こすり付ければ万事解決だ。


「なーんてね」

「え!?」


 そんなうまくいくわけないだろ。


 大賀茂先輩、あんたの企み俺が気付かないと思っていたのか?




「大賀茂先輩、じゃあ俺も一つ口約束します。『もしもあんたがその口約束に自身のギフトを使っていたら、俺は今すぐこの場で俺の左眼を抉り取る』」




「え!?!?」

「どうしたんです?ちゃんと口で言いましたよ。大賀茂先輩の大好きな口約束です。あんたのギフト躾けられた支配者トレーナーズコントロールの出番じゃないですか」


 そうは言ったものの多分できないだろう。


「使ってないんでしょ?ギフトを」

「ど、どうして……?」

「俺が気付かないと思っていたんですか?躾けられた支配者トレーナーズコントロールは口約束を守らせるギフトですが、全ての口約束を無条件で守らせるとなると日常生活に支障が起きます。そうならないために大賀茂先輩は一回聞いてそれを守らせるかどうかを判断しているはずです。そういう能力だと口約束に二つのパターンが生じます。強制力のある口約束とそしてただの口約束です」


 反応を見る限り図星のようだ。


 実際考えてみれば当たり前の話だからな。


「さて、ここで問題なのはその強制力有る無しを大賀茂先輩以外分からないという点です。そこであんたの弱点が生きるというわけですよ」

「ア、アタクシの弱点?」

「はい。口約束を守らせるギフト躾けられた支配者トレーナーズコントロールの弱点は屁理屈に弱いということではありません。あなたにも使えるという点で、もはや弱点ではなく長所です。では真の弱点は何か、それはですね…………」

「それは何ですの?」




「敵に使われ、情報を与えるということです」




「ど、どういうことですの?」

「分かりませんか?そうですね、だったらこういうのはどうでしょう?『今あなたの下着が白ならば、俺は今すぐ左手の小指を折る』」

「…………」


 今回はギフトが発動し俺は思いっきり自分で自分の指を折った。


 315度曲がっているな。


「もう俺の言いたいことは分かりましたね?」

「…………アタクシに都合のいい口約束をする代わりに、一つの仮定を加える。そうすることで守らせるかどうかによってその仮定が正しいかどうか証明できるということですね?」


 正確には違う。


 ギフトを使わなければ、その命題が偽であるという証明はできない。


 ただギフトを使ってくれるならば、俺が出した命題は真であるということが証明できる。


今回の場合、間違いなく大賀茂先輩の下着は白だ。


「さっきしたのはつまらない条件でしたけど、『もしもあんたがその口約束に自身のギフトを使っていたら、俺は今すぐこの場で俺の左眼を抉り取る』と使わないといけない状態で使わないとなると使えないと判断できるんですよ」


 敵に使われる能力なんて弱点もいいところである。


 大賀茂先輩は一時黙ってから


「あなたそこまで計画していたんですの?」

「計画?」

「スイショウを痛めつけ、アタクシたちを参戦させず、アタクシがただの口約束をするだけとそこまで読んでいたんですの?」


 何を言ってるんだこの先輩は。


 俺にそこまで計画性があるわけないだろ。


「そんな漫画の参謀みたいなこと出来ませんよ。俺が計画していたのは笹見先輩の倒し方と先輩達を参戦させないことだけです。大賀茂先輩がただの口約束で済ませるかどうかなんて読めるわけがないじゃないですか」

「だったらなんであんなことを?」

「あんなこととは?」

「自分の目を抉るなんてアタクシが嘘をついていると分かっていてしたんじゃないですの?」


 なんだそのことね。


 会って一日も経っていないのに嘘をついているかなんてわかる人間は極めて稀だろう。


 ただな……………………


「別にどっちでもいいじゃないですか」

「は?」

「俺としてはむしろそっちの方がよかったんです。眼球を抉るだけで大賀茂先輩が俺に挑まないって分かるんですよ。それに越したことないじゃないですか」

「そんな…………」

「ただやっぱりしなくてよかったと思ってる。だってあんた笹見先輩より自分の保身を選んだ。そんなクズ相手に髪の毛一本も無駄にしたくないからな」


 もし大賀茂先輩が保身を考えず自分のギフトを使って約束していればその良い人間の為に俺は喜んで眼球を差し出していただろう。


しかし友達がどうこうという名目で挑んだくせに最終的にこいつは自分の保身を選んだ。


 そんな人間俺は許せない。


「ひぃ」


 まるで凶悪犯を見たOLみたく腰が抜けてその場にへたり込む大賀茂先輩。


「笹見先輩との戦いでギフトは使わないって言ったんですけど、あんたに対しては一言もギフトを使わないって言ってないからな」

「や、やめて……アタクシ何でも言うこと聞きますから。ギフト使いましたから……だから…………」

「そんな約束、信用出来ないな」


 脅すだけで終わらせる気だったのだが


感無量ナンセンス


 四楓院先輩がギフトを使ってきた。


 ただし対象は自身にではなく大賀茂翡翠にだった。


「へえ」


 そのギフト他人にも使えたのか。


 感無量ナンセンスの能力だが指定した感覚において認識されない能力だ。


 視覚を指定すれば、他者は対象から発する光を見ることは出来なくなる。

 聴覚を指定すれば、他者は対象が出した音を聞くことは出来なくなる。

 嗅覚を指定すれば、他者は対象の匂いを嗅ぐことが出来なくなる。


 そして痛覚を指定すれば対象からの攻撃が痛くなくなる。


 なんとまあアンチ笹見先輩の能力だ。


 何だかんだでこの能力が一番厄介だと思う。


 もっとも俺はとある事情で手に入れた感知能力があるのでどこに大賀茂翡翠がいるのかわかるのだがな。


「あなた達いい加減にして。何で嘉神君の邪魔ばかりするの?」


 かつての友の行動を黙って見ていた真百合だったが、堪忍袋の緒が切れたようだった。


「じゃ、邪魔って!真百合さん!あなたも大概にしてください。見ていて分からないあなたじゃないでしょ!?この人あなたが一番嫌いだったタイプじゃないですか?!」

「それは何も分かっていなかった若き日の黒歴史というものよ」

「なんであんな狂人のこと○○になったんですの!?」


 ○○は耳鳴りがしたから聞き取れなかった。


 何しろ俺の体は今激痛が走っているのだから耳鳴りで聞き取れなくなったのは仕方ないよな?


「助けてもらったからとしか言いようがないわね」

「そんな風になって助けてもらったって言えるんですか!?あなたは助かったって思いこんでいるだけです!!」


 すでに堪忍袋の緒が切れていた真百合だったが、今度は堪忍袋が破けたように怒った。


 一瞬、光のこもっていない眼で四楓院先輩を見て、その後顔面に拳を叩き付ける。




「一体何様のつもりなの!?何で何も行動しなかったあなたが、助けてくれた嘉神君を否定できるの!?知った風な口をきかないで!!部外者は死ぬまで社会にでずに風化しなさい!!!!」



 一撃ではなく何度も何度もマウントポジションをとって四楓院先輩の顔を殴る。


 空手有段者の俺が見るかぎり下手な一撃だ。


 だが下手だからこそ、まずい。


 空手を含め武道は敵を倒すための手段だが、敵を倒す方法を知っているからこそ敵を倒さない方法も知っている。


 俺はさっきまで笹見先輩をいたぶっていたが、それはあくまでも後遺症にならないようには注意を払っていた。


 気を失うほど痛いかもしれないが、未来を失うような攻撃はしていない。


 だが真百合の攻撃は下手をすればそう一撃になりかねない。


 ここは止めるべきところだ。


「止めるのだ!」


 近くにいた早苗が真百合を止める。


 ただ真百合は振り払って攻撃を続ける。


 俺は笹見先輩を投げ捨て真百合を羽交い絞めにした。


 俺が羽交い絞めにするのと同時に真百合は静かになった。


 それはまるでそういうシステムによって作られた機械の様に。


 四楓院先輩を見る限り大丈夫とは言えなかった。


 口から血が流れ、顔に痣が出来ている。


 俺は自分の手の甲を噛み、血を流す。


 鬼人化オーガナイズした状態での血は他者にも治癒効果がある。


 気休めにはなるだろう。


 痛みはすでに無くなっていた。


 笹見先輩はすでに気を失っていた。


 うつ伏せになっているので頭を床に着けている。


 既に十秒たっているのでこっちの勝利条件は満たしたわけだ。


 それを認識するのと同時に昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。




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