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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
11章前編 悪意差す世界/スベテが終えた日
332/353

鮮血の聖女と群青の魔女 12

やる気あると更新速いよ




「さて。どうしましょうか」

「どうしようか」


 私達は空亡惡匣に一種の希望を抱いていた。

 しかし、その希望は誤りだとたたきつけられる。


 神薙信一は空亡惡匣に確実に勝てる。


 混沌は訪れない。


「シンボルとσφについて話をしましたが、他に何か」

「まだあると言えばあるのだが、真百合はどうだ」

「柱神メープル。彼女3つシンボルが使えるって話があったけどアレは何? どうすれば同じことできるの?」


 確かにそういう話はあった。


「言わなくてもわかりません? シンボルが結びつけるのは能力ではなく個人。個人の魂や存在を残した状態で、身体を共有すればできますよ。ただ、不安定すぎて能力の強度が落ちますし、何より自我にも影響を受けます。結局デメリットの方が大きいから誰もやらないんです」


 私達にはできない手段だった。


「じゃあ、シンボルを変える方法は?」

「それこそないです。理論上はあり得るらしいですけど、そんなことできたの一人もいないですし。持ち主の人間性や人格考え方なんか全てを変え、まったくの別人になればできると思いますよ。ただそんな簡単に変わる個性を、個性と呼べるかは別物です」


 確かにそうかもしれない。


「じゃあ、超悦者のその先について。あれって『その人』ならできる。っていう理屈で何でもできるってことだけど、もしかしてシンボルがないと無理だったりする?」

「YES。いやNOでしょうか? ごめんなさい。正直分からないです」


 頼りない回答だった。


「まず、シンボルと超悦者の先に結びつきがあるか、ですがYESです。完全な個人になることがシンボル。個人の強度を高めたのが超悦者のその先。シンボルがなければ本当に“個人“かどうかは言い切れないわけです。つまり前提です。それがないと難易度が爆上がりします」


 何となく言わんとしていることは分かる。


「逆説的にそれがなくても強い個があるのならできます。ですがそんな人これまで観測したことありませんし仮にいるとするなら、ご主人様はシンボルを渡してます。それこそあなたのように」


 超越者ですらようやく使いこなせるようになった私に、その先の才能があるとは思えない。

お世辞だろうが椿さんがそう言ってくれたということは受け取っておく。


「……つまりおいしいカレーを作るのに肉や野菜はいらないかもしれないが、使わないとおいしいカレーにはなりにくいということか」

「考え方あってますけど、その喩えいります?」

「いらないわね。仮にあったとしても下手」


 なんでダメ出しを喰らうのだ。


「おかず無くても自〇できるけど、あった方がやりやすいという喩えの方がいいでしょ」

「そっちの方がまだましですね」


 こいつら実は似た者同士だろ。


「最後つまらない喩えがあったのは悪いわね。そして情報提供ありがとう。感謝するわ」


 真百合からお礼を言う。


「どうも」


 椿さんもそれをうけとった。

 ちゃんと話をして、実りのある話が出来たと思う。

 何よりこの二人の仲が少しだけ改善したのは収穫だったのではないだろうか。


「その、結局神薙信一にとって触れられるとはどういうことなのだ」

「あなた何を見ていたの? 答え出ていたじゃないの」

「いや? 聞いていただけで出て何か無いぞ」


 また私が見えないものが見えたのか。


「そう。はぁ。そうね。見えるものが違うとそうなるのよね」


 後で説明するわ。そう真百合は言った。


「正直な所、私個人の意見としてあなたには期待しています」


 帰り際、椿さんは私に向かって告げる。


「あなた達がこれから何を計画するのかは私にはわかりません。またご主人様も知らないようにしてくれます。だから好きにしなさい」

「……」


 それは慢心ではない。余裕でもない。


 多分、祈りだ。

 私達の計画はきっとうまくいかない。

でもそれを知らない限りは、もしかしたら予想外のことをしてくれるかもという希望を持てる。

 予想を裏切られても、それはそれで楽しめる。


 真百合は何となく神薙の考えが分かると言っていた。

 ただ私も何となくであるが共感できる気がする。


 つまらないのだろうな。

 神も蟻も同等の力にしか感じ取れない。

 土俵に立つと勝負が終わる。


 だからふざけている。

 空気に酔わなきゃやってられない。


「椿さん。去り際になるが聞かせてくれ。あなたは神薙のことをどう思っている」

「愛してる。例え人類の中で一番弱くても、愛し続けられる自信があります」


 確固たる意志を持って、自分の名前を言うがごとく、はっきりと自信を持った。


「そうか。それはいい。その……人間かどうかは――」

「人間ですよ」


 これもまた自信を持っていたが、さっきよりかは――――いや、同じようにだな。

 そもそも前者の質問は本人のことに関してだが、後者は他人についてだ。


 前提が無理だった。


「すまない。意味のない質問だった」

「ですね。では」


 のびている薊さんの髪の毛を握りしめて椿さんは消えていった。


「ふぅ」

「お疲れ」


 一時はどうなるかと思ったが、目標は達成できただろう。

 最低限知らないといけないことを知ることができた。


 少しだけ休憩をはさみ、再度ホワイトボードの前に座る。


「とりあえずまとめるわね」


 真百合はホワイトボードに、先ほどの話を纏めた。


・空亡惡匣は“すべて”の存在

・空亡惡匣は始まりから終わりまで内包する

・空亡惡匣の定義はいかなる状況にも適応される

・空亡惡匣はσφという種族である

・空亡惡匣は神薙信一よりも明確に弱い

・神薙信一は空亡惡匣を倒さなかった

・シンボルは空亡惡匣の対策

・シンボルの本質は究極の個になること→“すべて”からの脱却

・能力はおまけ

・シンボルとして同一存在の複数個体は存在しない(片方が消える)

・テストしないでシンボルを作った

・シンボルを複数持つことは可能だが、デメリットの方が大きい


 だいぶ情報を聞き出せた。


「しかし……この情報だけで突破口はあるのだろうか」

「さあ。あるかもしれないしないかもしれない。それを探すために分析をしたでしょう」


 そういえばそうだった。

 隣にある箇条書きも再度確認する。


****************************

神薙信一の強み

・最終傀

・最果ての絶頂

・究極の超越者(超越者のその先)

・人類全体が○○を敵対視

・全力を見せていないので何をしでかすか分からない

・神薙ラバーズ


神薙信一の弱み

・神薙信一は本気を出さない(10倍~100倍程度)

・最終傀は使わない(使うのは最終手段)

・ふざける ネタに走る

・シンボル化された能力は干渉できないし、その能力も使えない

・人間は殺さない

・基本受けに回る 先手は譲ってくれる


私達の強み

・純度100の人間

・早苗のメンタル(唯一勝てる)

・真百合のシンボル(ワンパンチ入れた実績あり)

・妊娠中なので手加減される

・社会的立場

・真百合にはめっぽう甘い


私達の弱み

・早苗が雑魚 

シンボルが『法則』 

2つ下を見下す能力者特権を使えない 

超越者のその先が使えない

・真百合のメンタル

・妊娠中に戦闘するとか「子供を大切にしない大人」案件じゃないのか

・仲間がいない


****************************


「がんばった。それで、ここからどうする?」

「この私達が作った分析知った情報で、神薙信一の強みと私達の弱みを出来るだけ相殺する」

「例えばどうするのだ?」

「例えば「神薙ラバーズ」は、私達の敵じゃないから消せるわね」


 確かに最後は応援してると遠回しに言ってくれたわけだから、脅威にはならなくなったと考えてもいい。


「他には最果ての絶頂、分かっていたけどシンボルに対しての弱さが露見した」


 最果ての絶頂にはシンボルを用いて攻略する。

 当たり前といえば当たり前になるが、こうして分析し原理が分かった上で行うのは行動するうえで自信がつく。

 正しいと確認している道は走ることが出来る。


「シンボルで対策できるといっても、真百合と私のシンボルでどうする? 結局私のシンボルが弱いことに変わりはないのだが」

「…………」

「真百合?」

「あ、いや。ごめんなさい。考え事していたわ」


 どうやら本気で集中していたらしい。

 なぜなら私に謝るなんて初めてのことだからだ。


「これ……もしかして…… 多分可能性あるとしたらこれだし」


 黙って待つ。


「正直やりたくない。やる側もやられる側も……そもそも本当にできるのも怪しい あの神薙よ。潰してないなんてあり得る? でも仕様を考えたら出来そうな気がする。じゃあバグじゃなくて仕様扱い?」

「真百合。もし考え事があるのなら、話だけは聞くことできるぞ」

「そうね。ちょっとだけ話を黙って聞いて」


 真百合は本気だった。

 光明をみつけたようにまっすぐ向きあう。


「シンボルに弱点があるかもしれない」


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― 新着の感想 ―
[一言] 多分これも全部神薙さんの悪意なんだろうな知らんけど
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