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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
11章前編 悪意差す世界/スベテが終えた日
319/353

全てが終わるかもしれない日

 今日は1/23

悪魔を討伐し、人類苦のすべてが解消される。全てが終わる日。


 人類の強者が帝国に集結している。


 生中継ではないが、カメラも準備してあるらしい。


 雪が積もる帝国の中心で、おれ達人類の最高峰は円を描くように集まった。


 皆思うことは同じだ。


 今日死んでもいいという覚悟。

 この作戦のために殉死する決意。


 効果があるか怪しい気付け薬をあおり、いよいよ最終決戦の空気になる。


「最後に作戦を今一度確認するぞ。とはいってもやることは一つしかないんだが」

「私が悪魔を呼び寄せ、皆が同時に最大火力を叩きこむ」


 衣川も今日はずいぶんと張り切っている。

 いつものような制服やジャージではなく、純白の装束を着込んでおり、今回の本気具合がうかがえるってものだ。


 衣装と言えば先輩もかつて見た純黒のドレスを着こなし、此の世ならざる存在としてこの場に鎮座している。


「そうだ。何を出すかは任せる。だが出し惜しみなしの最大火力だ」


 誰が何をやるかは知らないが、おれがやれることははっきりしている。

 全力で、殺意を叩きこむ。


 一つ一つはともかく、ここにいる10人の攻撃を耐えきるなんて不可能。

 あの悪逆非道女神メープルですら、死ぬだろう。


「ねえ。育美さん」

「どうしたの真百合ちゃん」

「あなたはどういう能力を使うつもり」

「そりゃ、キャラクターの能力を全部無力化するつもりだけど?」

「たぶんそれは難しいわ。私の勘では失敗する」


 魔女と死神が何やら言い争っている。


「あなたの無力化能力はキャラクターか距離かの二者択一。キャラではなく距離で使ってほしい」

「納得いかないなあ。だってキャラの方が避けづらいし、何より囲って攻撃する作戦だから距離で攻撃すると干渉しあうから非効率じゃない?」

「だからこそよ。あなたがそう思っているから、それはきっと失敗する」

「ひどくない?」


 確かにこう言っては何だが、先輩の意見の方がきっと正しいんだろうなって感じはする。

 日ごろの行いってやつだ。


「確かに育美さんは肝心な時に失敗しますからねえ。長い間上司として見てきた僕も賛成です」

「天堂君。ひどいよ」

「じゃあそういうことだから。干渉しないぎりぎりの位置取りに変更しましょう」


 距離で無力化する場合皆影響を受ける。そのため一番影響が少なくて済むよう衣川の正面に死神を設置する。

 その距離はちょうど拳をついたとき、人ひとりの空白がある程度。

 これならば他者の攻撃に干渉はせず、目の前の相手だけを無力化できる。


「僕と祟目君は万が一の時に近い方がいいか」

「腹立たしい。日ノ本のトップとコンビを組むことになるとは。しかし同意するぞ」


 罰を与える能力の天堂さんと、身に纏う能力の祟目さん。

 おれは詳しくないが、この1か月で何やら新しい技を開発したようだ。


「よろしく頼むぞっ」


 一方でおれと組むのは叢雲さん。

 数式を変更させるという能力を持つ彼は、一見攻撃性能がなさそうに見えるが、そんなことなかった。

 ベストマッチといっていい。


「皆、覚悟はいいか」


 四方で、なんてことはしない。

 衣川は人一人分宙に浮く。

上下左右含めおれたちは所定の位置につく。


 おれの立ち位置は、上方。


 頭からおれの最大の一撃を叩きこむ。


込めるのは全ての殺意


 電撃に即死、崩壊、存在否定、抹消、魂消滅、SAN値直葬etc。

 数多の殺傷を詰め込む。

 そしてそれらに対して更に耐性貫通、不可逆、防御不可を加える。


 これが通常のおれの最大値。


「お願いします。状態は以前説明したとおりです」

「任せろっ」


 そして今回は叢雲さんに協力してもらう。


攻撃性能のみを詰め込み、防御や命中は一切考えない。

防御のリソースすら殺意に変換する。

 即死を耐える即死耐性貫通を耐える不可逆即死耐性貫通を耐える防御無効不可逆即死耐性貫通。

崩壊を止める不可逆崩壊を止める防御無効不可逆崩壊を止める不可逆崩壊

魂消滅を防ぐ防御不可魂消滅を防ぐ防御不可魂消滅を防ぐ防御不可魂消滅


殺傷力を数式で表すなら4(攻撃力)×3(攻撃+防御+命中)


 この式を叢雲さんは変更する。


 4×3の×を好きなように変更できる。

 乗算にも減算にも累乗にも階乗にもできる。


 例えば4-3で執行力の精度を下げることもできるし、4^3で256回分の死をもたらすこともできる。


 そして今回は当然後者の累乗計算、4^3……ではなく、もっと上 超冪


 掛け算が足し算の繰り返し、冪算が掛け算の繰り返しなら、超冪は冪算の繰り返し。


 数式としては4↑↑3展開すると4^4^4計算すると2^512≒1.34078 ×10^154強化できる。


 ……


 文系のおれには理解できない。が、これは分かる。

 数学者頭おかしい。


 何喰ったらこんな発想するわけ? 

 使わないじゃん、パソコンで計算するにしても明日の天気とかを計算しろよ。

 意味のない計算するなよ。

 実際こういう定義があるからこうやってはるか高みの強化ができたから良いんだけどさあ。


「なんでこんな数式があるんですか?」

「楽しいだろっ? 新しいことや自分の考えをルールにして共有する、それを解明したり考えたりする。矛盾がないかをレスバする。人と話すことと同じくらい数学を楽しんでいる」


 理解できない。


 頭おかしいが、世の中すべての能力を無限に持っている人もいるし、このくらいは許容範囲だろう。


 こんな数字でも無限に比べたら0に近いらしいし。


「3つ数える。0で開始だ」


 あぶねえ。

 集中集中。


 おれがやるのはぶっ放すだけ。


「3」


 死んでしまった家族の無念。

 託してくれた仲間の想い。

 残してきた残響の恋慕。


「2」


 皆のため


「1」


 殺意を叩きこむ。


「0――――速攻悪鬼正宗デビルメイクライ

「溶けなさい 獄景 私と彼の恋。アイラブユー

混沌‡回路カオスチャンネル-オーバーフロー!!!!」

「全を禁じる 絶対帝王制キングオブキングス

「力を無力化して 空ノ少女ラッキーガール

「極刑に処す 唾とクローバーハーツ

「封じろ 封剣主偽ロックンロール

「死纏うがいい 女皇の唐衣ハイエンドエステス

「0に収束しろっ 花魁魔術師ノイマンカール

「恨みを知れ 九一一一アンチセプテンバー


 人類の上澄みによる総攻撃。

 最低でも超悦者、2名はその先にいる。


 時間差はない。刹那も入るスキがない完全なる同時攻撃。

 当然すべての攻撃が直撃し、遂に悪魔は消滅――――しない。


 殺意が突き刺さらない。


 おれの万の殺意が、頭上に命中したにもかかわらず、そいつは君臨している。


 防がれたわけじゃない。

 かわされたわけじゃない。


 全ての攻撃が急所に直撃している。

 あり得ない方向に直撃している。


 心臓に睾丸に喉に脊髄に各自の攻撃が的確に、

 そいつはピカソのアートのように歪に最適に命中するように変形して命中し


 なおそいつは笑っている。


「神薙さん?」


 おれたちが攻撃したのは神薙信一その人?


「怯むな! 偽物よ!」


 先輩の悲鳴のような発言に正気を戻す。



本当に?



「姿かたちに騙されるな! もう一度だ!」


 衣川も同じ意見のようだ。

 この二人の意見が一致することなんて珍しいなあと、緊急時にも関わらず呑気なことを考えてしまった。


 後から振り返れば、これは生物として考えても無駄だって感じ取ったからだ。

 これから何をしても意味がなく、木の葉が滝壺に叩きつけられるように、絶対で無慈悲なこと。


 だからまっとうな思考をするのはやめていた。


速攻悪鬼政宗デビルメイクライ

「空ノ少女ラッキーガール

私と彼の恋。アイラブユー

混沌回路カオスチャンネル

封剣主偽ロックンロール

「女皇の唐衣ハイエンドエステス

花魁魔術師ノイマンカール

九一一一アンチセプテンバー


 過半数が言われるがまま攻撃をする。

 直撃した……はずなのにすべて透き通って消えてしまう。


「基本俺は人に対して手も意見も出さない。ありのままを受け止め認めている」


 攻撃をやめたのは、2人。

 帝王と裁判長。


 奇しくも良識のある大人が、敵対行動をやめていた。


「とはいえ、これは俺に対する攻撃だ。俺には攻撃されたという認識がなくても、衣川早苗と宝瀬真百合が俺を攻撃したという事実は知っている」


 そいつは0秒で行動している先輩よりも速く、攻撃をかいくぐっている。

 『時間』を操作しているなら、ここにいる皆が気付くはずなのに……


「四天王よ! 攻撃をやめろ!」


 帝王が攻撃中止の号令を出す。


「宝瀬真百合と衣川早苗は○○を俺ということにして、逆に討伐しようと策略した。さて、俺はそれをどう証明をしようか」


 初撃は全身全霊だった。

 二の太刀は戸惑いながらも本気だった。


「……空ノ少女ラッキーガール

私と彼の恋。アイラブユー

混沌回路カオスチャンネル

封剣主偽ロックンロール?」


 三度目の攻撃は、惰性だった。


 やらないといけないという残響で、ただただ攻撃をしただけだった。

 そんな攻撃は神薙さんじゃなくても弾き飛ばされる。


「姿かたちでは変装していると主張される。数多の能力を持っている○○だと能力リミットを使って俺だと主張するのは納得いかない輩がいるかもしれない。シンボルを使うのはつまらない。ならば、俺が俺であることを証明するのは――――」


 ああ、これは。


「理不尽をもって魅せるしかないだろうぜ」


 嵌められた。



花魁魔術師 数式を変更するギフト

現象に対して数式を作成し、その+や×を好きな記号に変更できる

ただし変更できるのは数式(記号)なので数値そのものを変更することはできない 

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― 新着の感想 ―
[一言] シンボル使って細かい描写抜きに一樹くんを絶対悪として認定して盛大に愚弄しつつ処刑しようとしてたのだとばかり思ってました。 神薙さん疑ってごめんね。
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