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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
11章前編 悪意差す世界/スベテが終えた日
315/353

裁かれた懺悔





「親愛なる主人公へ」

「この文章を見るころには僕はこの世にいないだろう」

「なーんてね。遺言状さ」

「何今更になって出てきてんだよって思うよね」

「僕は君に殺されたのに」

「僕が帝王と君を決壊に閉じ込めて殺し合いをさせた。そして君はそれに勝った」

「出てきたところを殺された」

「それなのになんでって感じだよね」

「そこは許してくれ。これが最後だ」

「さて、未来の君の話をしよう」

「お兄ちゃんの目的を知っているかな」

「お兄ちゃんは自分が人間だと証明したい」

「それも自分の故郷でね」

「手段はお察しの通りさ。気に入った人間を交配させ、強くなる環境を整え、イベントを用意する」

「果てに生まれた人間がお兄ちゃんに触れることで、お兄ちゃんはその強さで人間であることを証明できる」


「でもね。思うんだよ」

「本人の前では言わないけど、冷静に考えてよね」

「あんな強いの人間なわけないだろ、いい加減にしろ」

「僕はお兄ちゃんが人間でないことを証明したい」

「手段は同じ。交配と環境と事変を重ね合わせてもお兄ちゃんには届かないことを見せればいい」

「それを見せれば逆にお兄ちゃんは人間じゃないと証明できる」

「人間じゃないってわかれば、同じ人間じゃない存在相手に理不尽な迫害もやらなくて済む」

「お兄ちゃんはあんな無様な生き様を晒さないで済む」

「そうするために生きてきた」

「これで僕の正体が分かったわけだ。ただのお兄ちゃん大好きのかわいい妹っこというわけだ」

「この小説を一行で表すなら」


「お兄ちゃんに現実を見せる話」


「ここまではわかったかな」

「次はお兄ちゃんと僕の戦い?の歴史をしよう」

「実をいうと当初の予定だと人間証明計画は2000年や20000年を計画していた」

「だから始めは君に期待していなかった」

「ただの血の繋ぎとしか思っていなかった」

「だが、ここでお兄ちゃんも僕も予測できていなかった奇跡が起きた。それは宝瀬真百合の誕生」

「お兄ちゃんにとって彼女の存在は非常に大きい。理由はプライベートのことなので伏せるが、掛け金を大きく上乗せるに十分のことだった」

「それだけじゃない。ほぼ同時にもう一つの奇蹟が起きた。衣川早苗の生誕だ」

「彼女は聖人になる素質を持っていた。星の歴史の中でも数人しか生まれない可能性だった」

「もはやここまでくると、これは奇跡を通り越して、チートや異常だといっていい」

「この二人が誕生したから、君への期待が大きく上回った」

「もし君と彼女達と交配できれば、お兄ちゃんの目的がぐっと近づく」


「一方で急遽予定を早めたことで2つの弊害が起きた」

「一つは敵やイベントの少なさ」

「人間を証明するという仕様上、異世界や異種族に頼るわけにはいかない」

「お兄ちゃんに届く人間はいないにしても、上に行くためのステップすら少なかった」

「帝国にしても本来なら千年帝国くらいにはする予定だったし、お兄ちゃんが支倉家に大きく能力を貸したのもイベントの発生を無理やり早めたからだ」

「何よりギフト持ちが1%しかいないのも問題だった。本来なら全人類が持つ予定だった」

「それに超悦者も少ないし、シンボルも限られた人間しかもっていない」


「君は疑問に思ったことはないかな。なんで『物語』のギフトが著しく少ないのだろうって」

「強い能力はレア、そう考えたかもしれないけどね。確かにそういった側面はあるかもしれないが、実際は当初まったく期待していなかったからだ」

「だから仕方なく、一番彼女たちの関わりそうな子に『物語』の能力を与えた」

「例えば早苗ちゃんと同じ地域に住み、最も誕生日が近くなる月夜幸に多幸福感を与えたりね」


「そしてもう一つ」

「君とその家族がどうしようもなくつまらなかった」


「これがある意味一番の計算外かもしれない」

「君のお父さんもお母さんも、主人公の親強いては理想の人間の親とはかなりかけ離れていた」

「愛がなかったとは言わない。毒親だったわけでもない。ただ頭が足りていなかった」

「子供の育て方を間違えた」

「主人公は何があっても愛されている。そういう風に助長した」

「昔君が行方不明になったことがある」

「きっと大丈夫だろう。警察に連絡するのも後処理が大変。近所にお願いするのも恥ずかしい。どうせなにかやっているのだろう」

「そんなふざけた考えが」



「一度君を殺さしてしまった」



「いやはや、ガチでビビった」

「どんな可能性だよ。少しでも努力すれば助かったはずなのに」

「それでね。その時不幸にもお母さんも一緒に死んじゃって」

「そんな中異世界から帰ってきた激怒中のお兄ちゃんに」

「君のお父さんはなんて言ったと思う」



「息子はどうでもいいので、育美だけでも助けてくれませんか」



「さらにビビったよ」

「一応フォローだけど、君の場合は生き返す能力を探せば他に可能性があった。お母さんの場合自分にかかわるものの無効化能力がある都合上、生き返すにはお兄ちゃんの力が必須だった」

「息子は何をしても生き返します。そう続けていたらまだ何とかなったかもしれない」

「でもまあ、損得勘定として子供は何人も作れるという感情は確かに持っていた」

「君はスプーン一杯分の愛しか与えられなかったわけだね」

「そんなんだから、お兄ちゃんはブチ切れた」

「そして君に対する期待値を下がったわけさ」

「お兄ちゃんに求めている人間にはなりえないと判断した」

「でも求めている父や祖父にはなれるかもしれない」

「そう育てるのが本筋になった」



「まあつまり」

「君の価値は」

「種まきをするだけで」

「これまでの話は」

「優秀な畑が君を拒まないようにするためだけで」

「それが終わった以上」

「存在価値はない」


「ごめんごめん。うそうそ」

「最後に残った存在価値がちゃんとある」

「だってねえ」

「子供をちゃんと育てればいい」

「父親として精一杯の愛情をもって、自分の子を育てるといい」

「既に種まきは終了しているから、た〇ごクラブでも読んで育児の勉強でもすることをお勧めするよ」

「それが君の残った存在理由だ」

「悪意を振りまき、君に殺人を強要した僕だけど」

「道具としてしか見てこなかったけど」

「女神として人生の先輩として、最後にいくつか言っておきたくてね」


「今までごめんなさい」

「許してほしいなんて言わない。許されるなんて思っていない」

「なんど考えても同じことをした。なんど繰り返しても同じことをする」

「それでも、せめて、意味がないと分かっていても」

「謝罪をさせてほしい」


「そして次は余計なおせっかいだ」

「これからは早苗ちゃんと真百合ちゃんをちゃんとその子供たちをちゃんと愛するんだ」

「そうすればお兄ちゃんからも悪いようにはされない。むしろ守ってもらえる」

「まともな愛を感じられず、愛にトラウマを持った君は」

「誰かを愛することは、難しいかもしれない」

「神の中の神として、宣言する」


「君はサイコパスなんかじゃない。人を愛するのが臆病なだけだ」


「他者を愛するコツは他人に興味を持つこと、そして尊敬することだ」

「誰かの趣味や趣向に触れてみる。合わせる必要はない。ただ何となく同じことをしてみる。気に入れば他に共通項はないか考え好きになる。なければ自分が絶対に知りえない何かを持っている人だと考える」

「そう考えることで、少しずつ人を愛せるようになる」


「今までやってこなかった君にいきなりこんなことをさせるのは厳しいかもしれない」

「でも大丈夫」

「君の仲間はいい人たちだ。待ってくれるよ」



「あ、そうそう」

「これは僕が君に殺された前提で話をしているけど、ひょっとしたらお兄ちゃんが飽きて君の価値を蔑ろにするかもしれない」

「僕の予定だとシンジにお兄ちゃんを足止めしてもらって、最果ての絶頂までは攻略してもらって、でも神薙信一の攻略はしくじる。ただ時間稼ぎはしてもらって僕が人類に対して宣戦布告をする。数多の神を引き連れて最後の玉砕を仕掛ける。君と帝王は僕の力で閉じ込め、脱出するにはどちらかが死ぬしかない、そういう状況になる。死闘は君が勝利し帝王は死ぬ。そしてでてきた君となんだかんだ戻ってきたお兄ちゃんとで返り討ちにされ、僕は殺される予定なんだ」

「これは『物語プロット』としてその話は決まっているけれど」

「お兄ちゃんは簡単にそれをひっくり返す」

「僕らにいつ使われるか、予測することはできない」

「ミントをそのままで食べるような不快感を避けることを期待するしかない」


「ただもし、僕が君ではなくお兄ちゃんに始末された時、その時は」


「諦めろ」


「僕も君も敗北者だ」

「僕は不要として」

「君は不順として」

「切り捨てられた」

「父親としての生き方ではなく、子孫に踏み潰される肥としての存在理由しかない」


「まあ。そんなことはないと信じているけどね」


「じゃあ。これで最後だ」

「くれぐれも、親を参考にするんじゃない」

「君の役目は終わったんだから、あとは怠惰に緩やかに老いるといいさ」

「じゃ、元気でね」


「親愛なる君の大敵より」




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