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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
10章 最強の終極
289/353

最強同盟

遂に最終傀の能力を当ててくださる方がでました。

逆に言えばこれまでの展開を読んで、当てることも可能だということです。

これかなって思ったものはぜひ作者宛にメッセージをください(感想はもちろん歓迎ですが、最終傀の考察だけは場合によっては削除しますのでご了承ください)




 それは、外道五輪が外道四天と言い換えられたすぐの話。


「緊急招集とはなにごとですか!?」


 四天王の最年少、九曜白夜が慌てた様子で会議室に入る。


 楕円の机にはすでに4人座っていた。


「座れ白夜。すぐに会議を始めたい」


 上座には有史最強の男、王領君子が厳格な覚悟とともに腰を下ろしていた。


 白夜は急いで完全防音の一室のつもりで、扉を閉める。


「緊急の案件により、冗談を言う余裕がないことをはじめに理解してほしい」


 いつも以上に険しく、不機嫌そうな帝王。


 その理由は次の瞬間に分かった。


「つい先ほど連絡があった。嘉神一樹が王と同率の一位になった」

「「「「!!!!?」」」」


 四天王全員が驚愕といった顔をする。


 20年間一度も揺らぐことはない帝王最強神話。


 それが今、楼上とかしてしまっていた。


「ふざけんなよあいつ」


 辛酸を吐くほどに飲まされた九曜白夜が王の前であったが悪態をついた。


「あんな奴が最強になっただと! ざっけんじゃねえ! 自分は認めないぞ!!」


 1か月炎天下に放置した使用済みのコンドームにも劣る輩に、太陽よりも熱い帝王の気高き存在が同列なわけがない。


 白夜はそう言おうとしたが、王の前の手前ぐっと口を閉じた。


「白夜。この際だから言っておく。強さに精神は関係ない」


 帝王は最強だとされているが、実際は違う。


「王よりもスペック上は強い女がいる。そいつは人間のカスだ」


 悪魔の母。

 純白の死神。


 20年前は腐れDQN夫婦として悪名高い存在だった。


「そして本当の意味での最強はどうしようもない」


 終極の黒幕


 つい先日帝国側に神薙の存在が知れ渡ったため、そう呼ばれるようになった。


「多くの人間がクマと殴り合うことはできない。そのため畜生にも人間の精神が劣るというのか? 否、強い奴が強く、弱い奴が弱い。これがこの世の摂理」


 気高き精神がどうこう言う暇があるなら、筋トレをしろ。


 その方がより強くなる。


「そんなのってないだろ! 強いだけでは意味がないと教えてくださったのは帝王様ではないですか!」


 だから帝国の強い人は、まっすぐに生きていられる。


「言った。確かに王はお前たちにそう伝えた。だがそれはいけ好かない奴は、他者に命を狙われ短命に終わるからだ。どんなに強くとも短命に終わればそいつは雑魚だ」


 生き残ることも強さ。


 王のギフトが防御特化なのも、王が最強たる所以


「何人たりとも寄せ付けない強さがあれば、性格などはどうでもいい」

「じゃあ、なんですか! いけ好かねえ奴が最強でもいいってことですか!」


 たとえ真実が違うとしても最強は帝王と信じていた。


 その信頼は


「それが気に食わないから、王は強くなった」


 いまだ守られる。


 強さに性格は関係ない。


 ならば優しき性格であっても、最強になっていい。


「王はかれこれ100年生きてきた。最強でなかった時間のほうが多い。王よりも強い奴らは皆人間としてどこか外れていた。そんな奴に負けないために、強くなった」


 王より強い人はいる。

 王より優しい人はいる。


 だが、その両立をできている人間内で最強


 その王が


「気に食わぬ。あれは駄目だ。あんなのに最強の座を明け渡す気など毛頭ない」


 嘉神一樹について、はっきりと悪態をついた。


「何時か超えるであろうという予想はあったが、だいぶ早い。もうこれ以上は待てない。決断の時だ」


 今回集まった議題は一つ。


「嘉神一樹をどのタイミングで暗殺するべきか」


 否定意見は誰一人あげない。


 親善試合を見て、満場一致で同意した。


 あれは駄目だ。


 殺さないといけない。


 あんなのの存在を認めてしまえば、すぐに国が駄目になる。


「できる限りすぐに殺すべきです」


 白夜は嘉神一樹相手には殺意しか残っていない。


 だからこそ秒でも存在を認めたくなかった。


「愚かしい。そもそもあいつの能力を知らない状態での暗殺はリスクが高すぎる」


 否定したのはNo.2


 次期帝王の呼び声が高い、祟目崇


 今日も今日とて顔面が黒く覆われており、どんな表情なのかを読み取ることが出来ない。


「その通りだ! 硬いなら硬さの対策を! 不死ならば不死の対策を! 実行には計画が、計画には情報が必要だ! まだオレたちには情報が足りていない!」


 ジャージを肩に羽織るだけのスタイル。

 見るからに熱血の体育会系の男。


 名を叢雲天狗


「小生も同じ考えだ。情報のない速攻は拙攻である」


 大日本帝国軍にいそうな恰好をするのは、氷室鳶丸


 多数決ならばこの時点で議論は終わるが、帝国は三累権の制度という、偉さの度合いに対して3倍の権利を保有する制度を採用している。


 1:3の場合、1:7もしくは4:3になる可能性がある。


 必然的に帝王の発言が全てを決めることになった。


「巧遅は拙速に如かずという言葉がある。王は今すぐにでもあいつを抹殺しておきたい」

「白々しい。意見があるならいったらどうだ」

「そうだな。王は提案する。嘉神一樹の能力を知りたい。そのためにはやはり、あの男の協力が必要だ」


 嘉神一樹とは一転、帝国からの評価がすこぶる高い男がいた。


「時雨驟雨か! 確かにあの男なら悪魔の能力を知っている可能性が高い!!」

「それに場合によってはこちら側に加勢をしてもらうこともあり得る」


 一度は断られた勧誘だが、二度目も断られるとは考えていない。


 それは、時雨驟雨が語った目的があげられる。


「あの男は嘉神一樹に勝つことを目標としてきた。憧れもあっただろう。だがそれを今も持ち続けるとは思えない。遠くから見ている王らですらそうなのだ。あんなのは幻滅してしかるべき男だ。ならば挑戦ではなく、討伐にシフトをするはず」


 人の番人として、人を守る狩人として


「自分の目的よりも優先することがあることを分かっているはずだ」


 やるべきことをやる男。


「おれたちからすれば! どちらでもいいのだがな!!」

「確かに、あいつが悪魔を討伐するのもよし、こちら側に寝返るのもよし。どちらにしても帝国サイドに損はない」

「腹立たしい。我らが王道をとらず戦略という弱者の手段をとるなど」

「そういうな。あいつは強い。それを受け入れない人こそ、弱い」


 最も怒り狂っているはずの帝王が、祟目を窘める。


「さて、今一度ここで嘉神一樹の能力で分かっているところを推測しよう」

「ああ。でも何となくわかるんだろ?」

「そうだ。十中八九、口づけをした相手の能力を使える能力だ」


 もう帝王は嘉神一樹のギフトに確信を持っている。


 だから本来はここで終わりのはずだが、


「コピー系か! どうだ崇! おまえから何か言いたいことは!!」

「夥しい。こちらから言えることは多くある」


 この中でコピー系の能力に最も詳しい祟目崇がここからは代表して話す。


「コピー系の多くは制限によって縛られている」


 コピーできる個数、1度に使える使える能力、その方法、模倣できる能力の制限


「だが順位を見るに、制限らしい制限はない」


 祟目崇よりも強い。

 それはつまり、かかっている制限が少ない。


「おそらく無能と違って個数の制限はない。シンボルは無理にしても、それ以外の模倣の条件はないに等しいだろう」

「それだけですか?」

「愚かしい。それだけだとこのオレを超えることはできない」


 ただ単にコピーをするだけならばこの男に勝てるわけがない。


「200%の力で自分のものにする。そうでなければ勝てない」

「そう言い切れる自信は?」

「簡単だ。ここにいる全員が、悪魔からの対象になっていないからだ」


 キスをされなければコピーはされない。

 当たり前の理論。


 当たり前すぎて、当人も勘違いしている。


「だから、ここにいる人以外の能力を模倣したところで、所詮は石ころ。岩になったところで玉には届かん」


 これが帝国サイドにとっての勝ち筋。


 悪魔は帝国の力を持っていない。


 それを持っていないのなら、十分にやりようがある。


「怖いのは我らの能力が模倣された場合」

「それに関してはマスクをするなどの対策をとるしかないだろう」


 シーズン的にマスクをしても不自然にはならない。


 有象無象ならばともかく、ワンテンポ空くならば、カウンターを入れてやれる、彼らにはその自信があった。


「気を付けるべき能力は……宝瀬と支倉の能力か」


 彼らには金がある。

 ランク調整ができる。その場合想定以上に強力な能力が渡っている場合が高い。


 私兵を持っているのも大きい。


 例えば楠おしべという普段は前党首宝瀬剣についていると男は、四天王と対等に戦える。


「防御力は王以上と考えた方がいいかもしれない。恐らく最低な方法で」


 現在嘉神一樹の防御力は


 人形にダメージを移し、その人形は双子の能力により壊れない。

 常にダメージをそらし続ける。


 そして万が一それを突破しても、死に戻りが可能。


 何より、危ない攻撃は事前に察する能力も持っている。


 防御力なら、人類で(例の如く例のあの人を除く)一番強い。


「だが恐らくとして、攻撃力はせいぜい世界改変程度だ」

「理由は?」

「単純に『法則』の能力者の数の少なさ。そして帝国からの出軍の少なさ」


 当たり前だが能力のクラスが上がれば上がるほどその数は減る。


 そしてそのような能力者は、一度は帝国に世話にならざるを得ない。


「いくら日本が人材の宝庫だといっても、攻撃できる『法則』は稀だ」

「ただ、稀って言ってもいないわけじゃないですし……」

「そうだ。これはかなり楽観的推測。持っていてもおかしくはないという気持ちで動け」


 やはり嘉神一樹を倒すには情報は必須。

 そのためにも何とかして時雨驟雨にコンタクトを取らないといけない。


 議論の結論がついたところで


「じゃあさ、僕からもいいかな」


 いつのまにかそいつがそこにいた。


絶対帝王制キングオブキングス

女帝の唐衣裳エンドレスクイーン――速攻馬邦サイクロン

花魁魔術師ノイマンカール

九一一一アンチセプテンバー

永久糖度コーラサワー


 帝王が頭を、四天王が三肢と背中を抑え込みそいつを拘束する。


「強い速い。流石は帝王と四天王。こういう不意の事態にも対応できるね」


 こんな状況だがメープルは飄々としている。


「何をしに来た」

「ひ み つ 。 あ、冗談冗談、頭潰さないで、ほんと痛いから」


 ばりばりと音を立て顔面が潰されていく。


 しかしそれでもメープルは動じない。


「余計な冗談はやめろ。帝王として貴様を殺してもいいのだぞ」

「そうだね。だからさっさと要件を言おうかな」


 いつの間にか拘束から抜け出し、顔面も元の童顔に戻っていた。


「手を、組まないか」

「話にならん。誰が神薙なんぞに」

「まさか。僕たちがお兄ちゃんに勝てるわけないだろ」


 神薙信一を倒すためにあそこまでしたメープルだったが、自分でそれを否定した。


「僕が言っているのは嘉神一樹を殺すために協力しないかってこと」

「解せん。貴様ならまだ殺せるだろ」


 人は神より強くても、柱神だけは例外。


「無理無理。僕神様だもん。お兄ちゃんが作ったプロテクトを突破できません」


 人間を守るための非情(誤字にあらず)装置


 人間がベースのシンジやハヤテならともかく、すでに人の身から離れたメープルではプロテクトを突破できない。


「でもさ、手を貸すことはできる」

「肝心の部分をこちらに任せてか? 王の前でありながら随分といい御身分ではないか」

「まあまあ。王様なら実利で考えてよ。ここで嘉神一樹を殺す可能性を上げるのは必要なことだ。だろ?」


 四天王は考える。


 ランキングは既に帝王と嘉神一樹は同等と言っている。


 恐らく数か月すれば確実に帝王は抜かされる。


 巧遅は拙速に如かず、たとえ愚策であっても今手を組まるのなら……


「なぜこのタイミングだ。貴様ならもっと早い時期に提案をすることが出来たはずだ」

「無理だって。僕がどれだけ苦労してお兄ちゃんを封じ込めたと思っているの?」

「…………! 詳しく聞かせろ!!」


 これまで冷静に判断していた帝王も思わず聞き返す。

 それほどに神薙信一を抑え込むという行為は、常識から外れていた。


******************


「……というわけ。僕がどれだけ本気か分かった?」

「なるほど。確かにそれならば一応可能ではあるのか」

「てなわけで、このタイミングでしか組めないわけ。これが過ぎれば僕は四肢をもがれるだけではすまないだろう。今しかない」


 柱神の寿命は残り1か月。


「ならばこちらが何もしなければ貴様は盤から消えるのか」

「それは本気で困るからやめてほしいな」


 ただ時間が惜しいのは帝国側も同じ。


「どう協力する」

「アドバイスを」

「使えん。どうせなら嘉神一樹並び嘉神家や衣川を戦闘不能にしてこい」


 現時点何もなければ可能、しかし


「ごめんね。嘉神家ならともかく、早苗ちゃんには手出しできない」

「……? 何?」

「タイミングを見て嘉神夫妻を一時的に無力化することはやってやろう。でも早苗ちゃんに対して何かをすることはもう無理」

「なぜ」

「例の如くお兄ちゃんが、早苗ちゃんと真百合ちゃんにだけ、より強固なプロテクトをかけてるから。まあ、8割方は僕のせいなんだけど」


 帝王すら知らない情報。

 帝王は神薙が選り好みする人間だとは知っていたが、そこまで露骨に優遇するとは思わなかった。


 少なくとも、50年前はそうだった。


「あれにとって今回は何が違う?」

「手札が良すぎた」

「そのくせ、柱を気にしないのはなぜだ?」


 帝王は柱理論を知っている。


 中心がなければ物事は成り立たない。


 かつては嘉神一芽がその役を担い、現在は嘉神一樹がその役割になっている。


 ならば人を守る神薙は、嘉神一樹を守ることこそが重要ではないのか?


 先の質問の要約はこういうことである。


「それはね」


 結局柱神はその質問に答えなかった。


 ただ、この時帝王はなぜ自分が正しき心を持ったのか。


 なぜ人間は正しくないといけないのか。


 それを思い出した。


 悪意だけで動くのなら


悪魔あいつはもう用済みだから殺してもいいって。お兄ちゃんが言ってた」


 より強い悪意に食われるから。






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