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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
9章 永劫に沈まぬ太陽
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四択の天秤

令和時代の目標は、令和の間にこの小説ともう一作を完結させることです

というわけで50年くらい長生きしてください。





 大樹が消え去り、世界の景色が元に戻るが状況は変わらず最悪。


「なにをするつもりだ!」

「別に何もするつもりはねえよ。ちょっとお話をしたいだけだ」


 眼帯の男。


 以前見たときは中学生くらいだったが、もう俺と同年齢にしか見えない。


 その顔神薙によく似ており、自己申告であったが自分達が神薙の弟や息子であるという主張が、真であると暗に示していた。


「話だと! 人の仲間を攫っておいて!」

「獄景がなくなったからってそんなにいきるなよ。俺様だって出来るんだぜ。あれは」


 あれを使われると精神的にネガティブになる。


 負け犬になってしまう。


「まあ、お前ごときに使ってやる必要もねえから安心しろ。それよりこっちの話を聞け」

「くっ………」


 昔とは違う。


 あの時は無知で無力だからこそ、女神メープルに噛みつけた。


 だが、いまは万能だからこそ、全能であるこいつに勝てないことを理解できてしまっている。


 勝つ勝たないの問題ではない、挑む挑まないの問題という意見もあるが、それは時間稼ぎが出来る程度の戦力差がある場合に限る。


 一瞬だ。


 こいつが俺達を殺しにかかれば一瞬で事が終わる。


 実力差は絶対。


「何が目的だ!」

「別に手駒に伝える意味もねえな。とはいえ手駒だからこそ指示位はだしてやらねえとなぁ」


 挑発は聞かない。

 今は早苗の安全が第一。


 少しでも怒らせてみろ。本当にすべてが台無しになる。


「選べ」


 彼自身が引きさした左右の境を指さした。


「どっちを助けたいか選べ」


 それはかつて俺がさせられた選択肢。


 昔と今どちらかを殺させた。


 それを今一度再現しようとしている。


 早苗と真百合、天秤にかけさせようとしている。


「きさまぁああああ!」


 もう知性すらいらない。


 ここで選ぶくらいなら死んだ方がましだ!!


「おっと待った。誰も助けなかった方を殺すなんていってないぜ」

「なに……?」

「今回お前の選択で人の生死が決まるなんてことはないから安心してくれ」

「じゃあ何がしたい! 何を目的としている!!」


 わけがわからん!

 力関係の社会背景はしったが、それでこれをする理由がない。


 今度こそ完全に嫌がらせとしか思えない。


「結論を出せ」

「結論だと」

「手前が一人の人間として、衣川と宝瀬。どちらを助けたいかを行動で示せ」


 それをさせる理由が分からん。

 なんだこいつ。


「…………これ以上のない仲たがいですよ。彼らが狙っているのは」

「月夜さん? 大丈夫か!?」


 目覚めた彼女が生まれたての小鹿のように立ち上がる。


「ご心配ありがとうございます。ですが今は状況を正しく知ることが重要です。しばしご清聴を」


 とりあえず彼女が行動できるなら、最悪にはならない。


「早苗さんのところにいっても真百合さんの方にいっても、嘉神さんが友人に順番をつけた事実、それは変わりません」

「その結果で何を望む!」

「敵ですよ」

「敵だって?」

「だってもう、わたしたち無敵でしょ?」


 敵なし。


「嘉神さんの暴虐、時雨さんの戦力。早苗さんの求心力、真百合さんの知力と権力と財力、そしてわたしのタイミングを計る能力」

「なんか俺の評価だけ低くない?」


 もっとこう知的なものを。


「嘉神さんの決断力」

「OK 続けて」

「この5人で挑めば、神薙以外は圧勝できる。無論帝国を含めてです」


 そうだ。

 俺はまだ帝王に勝てないが、5人でならばきっと勝てる。


「わざわざ戦わなくても、いいんですけどね。でも帝国との戦いが終わった後はどうしますか?」

「終わった後?」

「友好、侵略、同盟、滅亡、どれでもいいです。決着の後、嘉神さんにとっての敵はなんになりますか?」


 それは……いない?


「えっと、過去や未来の?」

「仕様上、わたしたちは歴史を大きく変える時間移動ができないんですよ」


 なんかすごいこと言われた。

 でもなんとなく、200年前のこととかはトップシークレットぽいし、そういうのに触れさせないために神薙が止めてそう。


「じゃあ異世界とか?」

「わたしたちの質量をお忘れですか?」


 そうだった。

 俺達はどの星の住民よりも大きく重い。


 対等な単位ではない。


 主に神薙の所為で。


「じゃあ神との戦いは……もうやったか」

「はい」


 神との戦いは鏖という結果に終わった。


 やっぱり神薙の所為で。


 というか本当にこの小説9割以上は『神薙の所為』で片が付くな。


「帝国戦が終わったらもしかして、柱神か神薙しかいないの?」

「はい。そういうことです」


 なんてことだ。

 勝てる気がしないんだが。


「でも安心してください。柱神サイドなら頑張れば勝てます。というか一度勝っていたでしょ?」


 そう。

 あれは俺が完全白狂したとき、メープルに攻撃を通せた。


 あれをもう一回する、もしくはそれに準じる何かをする。


 それでなんとかなる。


「わたしが何を言いたいか分かりますか?」

「まさかこいつら……」


 最低の予測にたどり着く。


「自分達が戦いたくないから……帝国戦を先延ばしにしようとしている?」

「…………お、おいおい。まさかそんなわけあるかよ、この俺様だぞ。さいきょーのシンジ様に向かってなんていいぐさだ。謝罪と賠償を要求してもいいところだが、生憎俺様はスーパークールでキュートなのでそんなナンセンスなことはしない。惚れてもいいがそのためにまずはそのまちがった予想を撤回してからにしてもらおうか」


 なんか早口で言われた。


 そして当たりなんかい。


「だっさ」

「うるせえ!」


 しかしこいつらが恐れているのは俺の潜在能力。

 今の俺じゃない。


 未来の俺に恐れを抱いていても、今の俺に怯えているわけじゃない。


 ここのところを絶対にはき違えてはいけない。


「…………」

「どうしたシュウ? なんかさっきから黙ってて」

「あ、いや。まあ。なんかいろいろ気になることがあるけど黙っておく」


 なんか歯切れが悪い。

 でも月夜さんが反応しないし、問題なかろう。


 シュウもそう思って、自分の意見を言わないのだ。


「わたしたちを不仲にするために、嘉神さんにどっちの女を優先するかを強引に提示する。それが今回の女神側の目的です」


 なんという最低最悪の作戦だ。


 ちょっとこっちが不和をきたしたときにこの作戦を挑んできているので、タイミングもばっちりだ。


 うぜええ。


「だが残念だったな! 俺達の仲がこんなもので亀裂が入るなんて!」

「いやさっきまでばっちし亀裂入ってたでしょ。今でもわたし真百合さんに対してむかむかしてます」


 なんてことだ。


「いいですか。2人や嘉神さんに命の危険はありませんが、だからといって何も失わないと思わないでくださいね。気を抜いているとそこそこ大事なものを無くしてしまうかもしれないんですよ」


 なんか気になる言い方だが、いいだろう。


「それで、天国と地獄どっちにいきたい」

「……」

「宝瀬を天国に、衣川を地獄に連れて行った。どちらに行きたいか選べ」


 天国か地獄か。


「言っておくが、分身を送るとかやり直しをするとかそんなインチキは認めない。回答は一択。それにて終わり」


 やはりそこは対策してくるか。


「まあ、選べ。考える時間は取りたいだけ取ると言い。弁当は3食用意してある」


 なめやがって。


「まあいいでしょう。ところで質問をしたいんですが。よろしいですか」

「ああ。好きなだけ」

「天国と地獄って、なんでそんなところに連れて行ったんです?」


 確かに言われてみれば誘拐するにしてももっと相応しい場所がある。


「そこしか場所がなかったから」

「ええ……」


 予想以上に世知辛い回答が出てきた。


「近くや知っている場所だったら選んだ後に再び移動してきそうだし、かといって新しい空間をつくるとなるとかったりいし」

「全能じゃねえのか?」

「全能だけど、この世界は基本それ以上の物質で構成されている。めんどくせえことこの上ねえんだ」


 確かに神薙が作った世界ならその丈夫さは折り紙付きだろう。

 むしろ出来ないと言い切らなかったこいつがすごい。


「ちなみに、3人で別行動をとるっていうのを推奨する。誰も助けに行かない方のペナルティは……口では言いたくない」


 絶対に1人で行動する人が出るというわけか。


「あー。それと便宜上天国って表現したが、正確には神層。1111層ある神の世界。その最上層にいるから。攻略は面倒だぜっと」


 なぜそんなめんどくさいことを。


「それに地獄と言っても……いやこれはやめておこう」

「なぜ途中でやめる」

「手前のためだぞ。嘉神一樹。俺様の慈悲だ」


 ……分からん。


「想像以上に横に広いから、トントンだ」


 どっちを攻略するにしても、そのめんどくささは変わらないという。


「あとは自分で考えろ。俺様は帰る」


 そういうとシンジは霧散して消えてしまった。


「「「…………」」」


 沈黙。

 状況は最悪に近い。


 敵の目的をしった。

 だがそれがどうした。


 その目的を本当に達成してしまうとこっちが困る。


 俺達は仲良しこよしの5人組。


 一人でも欠けることなんてあってはならない。


「まず、意見を言い合いましょう。時雨さんから」


 司会は月夜さんが勤めるらしい。


 問題があればその都度意見を言ってくれるので適任だ。


「オレは……うーん。少なくともオレといつきは別行動をとるべきだと思う」

「そうですね。それが正しいと思います」


 戦える人員を分けた方がいい。

 納得のいく論理だ。


「その上で、地獄と天国どっちに行きたいかって話ですが……わたしの意見を伝えて良いです?」

「どうぞ」


 彼女の能力込みの意見ならほぼ確実に正解だ。


「神薙さんに助けを求めません?」


 …………いやぁ


「それありなわけ?」


 考えたけどさ、何となくそれをするのは卑怯な気がしてならない。


「いいでしょ。向こうの方が反則していますし、生徒が誘拐されたのに先生が何も行動をしないなんてありえません」


 うーん。まあそうか。

 どうせ俺じゃ勝てないから。


「それじゃあへーい」

「はいはい」


 あらやだ。流石は最強。

 呼べば勝手に出てくれる。


「たすけて」

「仕方ないにゃあ」


 勝ったな。風呂に入って田んぼの様子見て戦争が終わったら結婚する。


 見ろ。シュウも月夜さんも弛緩した空気を醸し出している。


 神薙を味方につけた時点で勝ち確。


「じゃあ、作戦は一気に変わるな。神薙さんとそれ以外で二手に分かれよう」

「それは無理だぜ」


 しかしそれを神薙が拒否する。


「まず前提として俺は単独行動をしない。必ず女を連れて行く」


 この人いっつも女性を連れて歩いている。


「ひょっとしてこの人たちが生命線だったりするんです?」

「いえいえ、単純に単独行動をすると最低なことをしでかすので、その監視です。いうなら良心の外付け回路です」


 今日連れてきている車いすに腰かけた女性が微妙に酷いことを言い出す。


「むしろ生命線は妾たちの方じゃ」


 そしていつぞやの狐さんも一緒にいる。


 今日ついてきているのは2人か。

 統計上1人の時が8割以上なので、そこそこな数。


「どっちか1人は借りて行ってもいいが。必ず俺に俺の女は1人つけろ」


 まあ、妥当な主張。

 神薙の主張としては真っ当すぎて逆に困る。


「もう一つ、俺は天国に、宝瀬真百合の方にしか助けに行かない」

「なんで?」

「理由はいくつかある。例えば天国には神が未だ多く存在し、一体一体相手したら相当の時間がかかるから、俺が代理で戦ってやるという配慮。宝瀬真百合に思うところがあるからどうせ助けるならそっち側に行きたい、もう一つ。これが一番重要なんだが……」


 最初の理由は納得だ。

 人は神より強いとはいえ、神と戦えば必ず勝てるわけではない。


 嫌がらせに専念されればうっとおしいことこの上ないだろう。


 真百合に関しては分からん。人の気持だから俺が分かるわけがない。


「衣川早苗に関わりたくない」


 完全に好みの問題だった。


「はっきり言うが、俺はあいつと会話というものをしたくない」

「大人げねえ……」


 言われてみれば早苗と最初にあった時(3章参照)は全裸にパンツ仮面という全力で関わらない姿で早苗を撒いていた。


 月夜さんはその理由を精神面が早苗は神薙さんに勝っているからといっていたが、どうやらこの反応を見るに本当らしい。


「というわけで、俺は衣川早苗を助けに行かない」

「………」


 本院が明確にNOと明言したからには、これ以上の言及は不可能。


「となるともうほとんどチーム分けは決まりましたね」

「え? 全部じゃないか?」


 まず神薙さんが天国側。


 この時点で、天国側の戦力が過剰となり、残りの戦闘員は地獄側になる。


 この場合の戦闘員とは俺とシュウと狐の人。


 これでもまだ地獄の方が弱いが、条件として外道五輪の1人は必ずそっちに行く必要があるので、月夜さんを天国側に。


 神薙さんに一人つけるという条件なので、車いすの人も天国側にすることでチーム分けが終わる。


「その考えは50点です」


 しかし月夜さんがそれを否定する。


「なんで?」

「行く場所を考慮に入れてないからです」


 場所に何の関係がある。


「あー。そうなんか」


 シュウもなんだか納得していた。


「嘉神さんのギフトで、攻撃性能が最も高い能力は何ですか?」


 防御性能なら反辿世界もしくは卑那人形からの存罪証明

 死んでもやり直せるギフトか、全滅以外ダメージを通さないギフト。


 なら攻撃はなんだ?


 それは……


獄落常奴アンダーランドの夢幻」


 すべての情報を死因に変え、殺し続ける地獄・・を展開する。


「あ……」


 ここまで説明してもらって月夜さんが何を言いたいか理解する。


 獄落常奴の正しい能力は “自分が思う地獄の支配”


 悪魔信仰の人間が使えば悪魔を支配する能力になるし、無宗教の人が使えば全く役に立たないギフトになる。


 俺は神も仏も信じてはないが、どちらかといえば仏教より。


 閻魔様だのがいるんじゃないかなあとふんわり思っている。


 そんな俺が地獄に行けば、地獄を正しく認識すれば


「夢幻が……使えなくなる」


 大幅な弱体は避けられない。


「神共は仲違いだけが目的ではありません。早苗さんを地獄に、真百合さんを天国に送ることで不都合な2択を強いること。これが狙いなんです」


 仮に不仲になったところでさらなる絆を結ぶきっかけになるからいいやと思っていた。


 だがそんなこと向こうも承知。


 神薙がこっちに来たことで勝ちが決まったと思っていた。


 だがそんなこと向こうも承知。


 俺が選んだ時点で勝敗を決める。その後の展開に何も意味を持たせないことで神薙を実質無効化する。


 それがあちらの狙い。


 こう狙いが見えてくると神様がなんでこんなことをしでかしたのかもよくわかる。


 ちゃんと考えたうえで、行動していた。


「となると2択です。嘉神さんかわたし。どちらかが天国にどちらかが地獄に行きます」

「そうなるな」


 早苗を選ぶか真百合を選ぶかの問題ではなかった。


 獄落常奴を捨て安全をとるか。

 極楽浄土の為に危険を強いるか。


「どちらかを選んでください」


 天国にいくか


「自分とわたし、どちらを地獄に落とすのか」


 地獄に落ちるか。





久しぶりの能力解説のコーナー


解説はこの俺、神薙信一がやらせてもらうぜ。

今回解説する能力は獄景スーサイド

自称俺の息子が使っていたし、頭のおかしい女も未完成ながら使っていた。

だからそれ以上の存在も間違いなく使えると思っていい。

神視点の最強の能力


その能力はなんと・・・・・・


背景が変わる能力、以上。


嘘は言っていない。まあ他に自分にバフをかけたり敵にデバフや精神汚染をしかけたりするというしょうもない能力もあるが。

大きさがどうとか支配領域がどうこうとかでマウントをとるしかない神の愚かな考えから生まれた能力だぜ。


つまんねえよな。背景が変わるくらいにしか印象を持てないくらいにつまんないぜ。


発動するための条件は……能力のルビを読んで察してほしい。

別にやろうと思えば神じゃなくても使えるし、現に俺でもやろうと思えばできる。


ただやんない。一緒の技使って、同類かもって噂されたら恥ずかしいし。



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