最終目敵地 3
飼育員からお礼を言われたり逆に叱られたり驚かれたり謝られたり色々あった後、動物園からでた。
「ねえ。あの噂って本当?」
「あの噂って?」
「ほら。100番台が国を相手取れるって」
ああ。
100番台は国を相手どり
2桁は星と相手どり
1桁に至っては神に等しい。
そういう風潮が確かに流れている。
「イメージによりますね」
「イメージって?」
「例えば何かを作り管理するっつう意味なら、多分帝王様でも難しいっす」
「そうか。よかった。まったく驚かせやがって」
「でも、破壊神の様に戦争をして破壊の侭を行うという意味では……ねえ。察してくださいとしかいえねえ」
少なくともおれは出来る。
破壊という性質を持った電撃を出せばいい。
「地球大丈夫なのか?」
「安心してください。この星に人間がいる限り、地球は大丈夫です。宇宙は知りません」
変に減ったほうがあぶねえ。
「そうか。わかった。君、からかってるね」
「え?」
「いくらなんでもエネルギー的に人が宇宙を破壊するってあり得ないからね」
そういうことにしたいのなら、それでいい。
不都合な真実は知らない方がいいって決まってる。
「じゃあちなみにいたるさんのギフトは何ですか?」
「……」
「えっと、言いたくないっつうならいいっすけど」
「いやね。言えない能力じゃないんでよ。悪くないと思ってるし、便利といえば便利なんだ」
「はあ」
「ただねえ。君に教えるとしては、圧倒的力不足なんだ」
おれのギフトだって正直強くはねえんだから気にしないでいいだろ。
「分かった。教えるよ。聞いて驚け!」
「静電気が起きない能力」
「ああー」
言いたいことは分かる。
「冬場とか物凄い便利ですね」
「そーなんだよ。セーターを自由に斬ることが出来るからね。うん、恥ずかしくなんか何にもない!」
いくら日本が魔境と言っても、いたるさんのように殺意のないギフトが多い。
むしろ変に凝った能力よりわかりやすいこの能力の方がおれは好きだ。
そう勝手に感心していると、宝瀬先輩から着信が。
「宝瀬嬢?」
「ええ。失礼します」
このタイミングで電話をかけているということは。
「率直に言うわ。問題解決に直行しなさい」
「直ちに?」
「ええ。上空を見れば分かるわ」
上空?
「あ ぁぁ」
誰かが絶望した。
その視線の先にビルのモニタが移っている。
その画像のタイトルはこうだ。
『緊急生中継、航空機が制御不能になる!!』
ここまでくると、さすがに放置できねえか。
「すみません。オーダーを詳しく知りたいんすが。護衛対象を守れってことですか。それとも被害を最小限に抑えろっつう意味ですか?」
「好きなようにしなさい。たとえ護衛できなくても、依頼人が全て死ねば私達宝瀬に責任はないわ」
……相変わらず一樹以外には厳しい。
人と思っていないほどに。
実際そうなんなのかなぁ。
あの人は究極的に一人だ。
いつきですら力不足になりかねねえほどに。
まあいまはいいか。
命令を遂行しよう。
「いたるさん」
ここで大人しく待っててと言おうとしたが、冷静に考えて単独にする方がまじいな。
「捕まってください」
「え? 何をするの?」
説明する時間はねえな。
「いいから。ぜってえ離すんじゃねえぞ」
おれはいたるさんを抱えながら問題解決に臨む。
「ねえ? なんかすごいびりびりしてるけど」
「はあ」
「僕静電気受けないっていってるけど」
「単純に電力が違うだけです」
『法則』だったらこれも効かねえんだが。
まあそんなうまくいかねえか。
「じゃ、口は閉じていてくださいね」
跳躍。
ただのジャンプしただけの行動。
秒速40kmくらいしかだせなかった。
「到着しました、もう口開いていいですよ」
「 」
意識はあるようだが、脳と意識が繋がっていねえようだ。
外には護衛対象だった人が集まっている。
そしてその頭上に、落下する飛行機が。
「た、助けてくれ! 頼む」
「お金はもう払った! ねえ、助けてくれるのよね?」
よかった。
「ありがとうございます」
みんな生きてた。
正直誰か一人欠けているんじゃねえかって不安だった。
「あなたたちの決心のおかげでおれは見殺しにせずにすみました」
もう終わった。
自惚れでも何でもなく
もう終わりだ。
電磁波で中にいる人の様子を確認。
「…………ちっ、薄気味わりぃ」
見たくねえもんを見ちまったが、とりあえず生存者はいる。
その人たちもおれの護衛対象も全員助ける。
まずは飛行機の衝突を防ぐことから。
これは簡単。
30度の角度で落ちてくる飛行機に飛びかかり
「チェスト!」
背筋で上に投げれば終わり。
これでしばらくは故障した飛行機も物理的に飛んでいることになる。
「雷電の障壁」
結城海から学んだバリア戦術。
電磁波によるバリア、それを護衛対象たちに張る。
これで安全。
「少しの間待っててください」
「え? え??」
おれが飛行機を投げたことに驚いているらしい。
そんなにてえしたことねえんだがよぉ。
それを否定する暇もねえか。
「じゃ、3分でケリをつけてくるんで」
そうして自分の体を電気とし、限りなく光速に近い速さで飛び移る。
飛行機の中は騒然としていた。
そりゃそうだ。自分達が死ぬ間際だったんだから。
「助かったのか?」
「わかんない。どうなってるの?」
本来なら喜ぶべきところなんだろうが、生憎といっていいのか
「ふざけんな機長! ボクは墜落させろといったんだ!」
「無茶言わないでください。操縦桿がきかないんですよ!」
見てわかる通りこれはテロ。
正確に言えば事故と事件が併発していた。
「おい! なんで座席から立っている! 今すぐ座れ! 殺されたいのか!!」
「この髪の毛の色を見てそういえるのか?」
この発言の意味は2つある。
1つはこんな黄色の髪の毛をした乗客がいたのか?
2つは……反応を見れば分かる。
「異端者ぁあ!」
「やっぱりA3か」
最近復活したと聞いていたが、まさかこんなところで会うとは。
反異能者協会
異能力者が嫌いな過激派集団であり、おれの両親の仇でもある。
仇でもあり、絶対に許さないつもりだった。
つもりだった。
「哀れ、だな」
「何を!?」
「どうせお前達は自分の意志でテロ行為を働いているつもりなんだろ?」
何を当たり前なことをいっている、そう言いたげな顔をしているが、実際問題正反対なことがおきている。
「おまえ、ギフトホルダーに利用されているぞ」
「な、ななななんいぃにぃにににに!!!!??」
顔を真っ赤にして否定するが、そんなことは最早興味ない。
何者かの能力によって彼らを殺すため、無能力者の意志すら利用される。
「哀れすぎてなにもいえねえ」
自分の親の仇、なのに復讐しようとする意志が芽生えなかった。
「うるさいうるさいうるさいうるさい! だったら死ね! 今すぐお前が死ね!!」
そういってコートの中を大っぴらにあける。
「これを見ろ! ボクに何かすればこの爆弾が爆発するぞ」
「あ、はい」
電磁波で探っていたので知ってた。
「これはボクの心臓が止まれば爆発する仕組みだ。間違っても攻撃しようなんて思うなよ!!」
それは知らなかった。あぶねえ。
「それにそれに!」
まだあるのか。
「うごくなよ。後ろの子供がどうなっても知らないぞ」
背後から拳銃を持った男がいた。
「分かったら両腕をあげゆっくりと――――」
「あ、わりぃ。用事が出来た」
先輩から連絡が入ったのでさっさと制圧して終わらせる。
「電工石化」
神薙さん以外につかうのは初めての技をここでお披露目する。
「おぉ? なんだこれ」
「重い 体が石のように重い?!」
電気分解により物質を石に変換させる能力。
こんなもの格上には絶対に効かないので、お披露目する機会はねえと思っていたんだが、案外つかえるもんだなぁ。
「爆弾を起動しろぉ」
「ムリだって。それもすでに終えている」
ダイナマイトですらもうただの石。
「もうお前らに武器はない」
頭だけは残しておいているからちゃんと聞こえている。
「大人しく投降しろ、つうて大人しくしか出来ねえんだが」
目標の無力化終了。
「次は、飛行機を安全な場所に誘導か」
コックピットに向かう。
「敵は無力化したんで、着陸してえんすけど」
「すまない。なにやらマシントラブルでうまく動かせないんだ」
「分かりました。とりあえず空港まで運びます」
「……できるの?」
簡単。
電磁誘導で飛行機を浮かせ、運べばいいだけの話。
そう思っていた矢先のことだった。
「おいおいこれはどーいうことだぁ? 敵戦力が完全に無力化されてんじゃねえかよぉ」
いつきよりも性格が悪く、おれよりも口が悪い。
第一声の印象はそんな男だった。
振り返った先に、白い仮面をかぶった灰色の男がいた。
「白仮面」
「そーだ。オレを知ってるっつうことはそれなりに学のあるってことかぁ?」
使えないどころか敵になることの多い国家組織。
だがそんなことはどうでもいい。
目の前にいる男に、釘付けになっている。
今日いろんなものと対峙してきたが、これが最大だと確信した。
ぶっ殺すつもりでギフトを使ったことはある。
だがそれはそうなってもいいくらいに全力を出すという意味で、殺すことを目的としたことは1度で、その時はいつきたちと協力してのことだった。
だからこれが初めてだ。
手段としてではなく、目的として殺意を抱いたのは。
この男は生きていてはいけない。
「なんだその目は。オレを今にでも殺したそうな、目じゃねぇか。あぁ!? 殺したいってことは殺されても文句は言うんじゃねえぞ」
「……悪いが、おれは殺す権利を持っている」
特別法
特異者による殺人の許可
おれは一度も使っていない。
それでも初めて使うべきではないかと思うくらいに、その男を深いと思っていた。
「残念だったなあ。それは公務員には使えねえ権利だ。諦めろ」
「……」
そうか。殺せないのか。
嬉しいような悲しいような。
おれはこいつをどうするべきなんだろう。
「………確認するが、お前は公務員でここにいる人たちの保護を目的としてきたんだよな」
「ケッ そうだが?」
「つまりここは任せても?」
「そーだな」
「……」
雷の分身を置いておく。
防御力は0に等しいがこの場はそれでいい。
「少しでも変な気を起こしてみろ。こいつが牙をむく。それに、生存者の数はもう数えたからな。一人でも欠かしてみろ! おれがそいつの代わりにてめえをぶっ殺す」
いまおれにできる最大限。
この男を好きにさせてはいけない。
「おいおい。何を言い出すんだ。番人様。悪戯に不安を煽るなんてするんじゃねえ」
言っていることは正しい。
だがそれはいつきも同じ。
いつきと同じ、言っていることとやっていることが噛み合っていない。
「……」
何も言わずにこの場から脱出する。
あいつには社交辞令すらしたくなかった。
新キャラ……ではない




