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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
9章 永劫に沈まぬ太陽
251/353

天国への死刑台 下




 部屋にわらわら人が入ってくる。


 狙いは俺。


 俺の確保。


 抵抗は容易かったが、こんな場所で暴れるほどマナー知らずではないので大人しくしておく。


 そして強引に連れ出され、押さえつけられ、こめかみに銃口を向けられる。


「一度だけ聞く。協力者はいるか」


 いないんだけど、質問に答えるよりも疑問に思ったことを聞きたくなった。


「クリスチャンって王女が中絶することにどう思ってるわけ?」


 撃たれた。

 それも三発も。


「気が済んだ?」


 また発砲。


 これじゃらちが明かない。


 起き上がり、手錠を拝借。

 複製して護衛15人に手錠をかけておいた。


「な、なにが目的だ」

「話をすること、そして話を聞くこと」


 俺が来た目的を話した。


「そ、そんなことが……」

「にわかには信じてもらえないだろうけど、俺がこうしてくることがその証拠」


 話をした内容は、同じ13秒が繰り返しているので、頑張って探して、頑張って移動して、頑張って殺した。

 ループも俺が頑張れば起きなくなるということも話した。


「ちなみに俺の話どれくらい信じてる。責任者さん、正直に答えて」

「信じる気持ちが2割ほど。残りの8割が日本に住む気狂いが妄言を垂れ流しているだろうという気持ちが8割じゃ」


 この人初対面に対して失礼過ぎない?

 礼儀を知らないの?


「それで何があったのか話す気になった?」

「それは……出来ぬ」

「そう。じゃあいいや」


 ノルマは達成したし、もうどうでもいいや。


「帰る」

「ま、待て。このまま帰るのは百歩譲っていいとして、せめて手錠を外してくれ」


 それもそうだ。


 一個ずつ手錠を破壊する。


 その間暇なので答えてくれそうな話題を振る。


「仮にも王族の護衛でしょ? 弱すぎない?」

「……日本人や帝国人じゃないんだ。一人で何かを変える能力などそうは産まれん」


 そのせいで第二言語を日本語にしようとする国は多い。

 新興国は第一を日本語にすることだってある。


「ちなみに他に王族はいないの?」

「…………兄と姉が一人ずつ」


 調べればわかると考え、教えてくれたのだろう。


「二人とも留学してるのか?」

「いや、確かにルシウス王子は英国に留学しているが、シルヴィ王女はこの宮殿内にいらっしゃる」

「いないけどな」

「…………?」

「…………?」


 なにいってるんだこいつ。


「いないな」

「いらっしゃるに決まっている」

「どこに?」

「恐らくは自室に」

「いないな」

「なぜ分かる」

「ギフトで探った」


 王女らしき人はいない。

 間違いない。


「どうやら警備がざるなのは俺の所為じゃないらしい。気になるなら見に行けば?」


 完全フリーな人に向かって言う。


 その人は疑心を抱きながらもいるであろう部屋に向かった。


 数分後


 慌てて走って帰ってきて


「し、シルヴィ王女が部屋にいません!」

「そ、そうか。恐らくはいつものように無鉄砲に外出をしたのであろう」


 …………

 さすがにおかしい。


 いくら外国が人材不足といっても、ここまで無能なことはしない。


 明らかに攻撃を受けている。


 俺にではない。俺以外の全てが何者かによって攻撃を受けている。


「頬っぺた借りるよ」


 近くにいた護衛を平手打ち。


「まだ意見は変わらない?」

「何を言っているのだ?」


 変わらないか。


 俺はこいつらが洗脳を受けていると思っていた。


 そのためビンタで目覚めさせようとしたのだが、失敗。


 どうやら『論外』ではないらしい。


 となると『時間』から『物語』のどれか。


 とはいえ『法則』以上はないと考えていい。

 俺の人形は何一つダメージを追っていない。


 つまり俺は耐性で防いでいることになる。


 そうなると発想力や想像力を働かせ、一つの可能性を考えつく。


「ねえ。思いついた4桁の数字を5秒後に同時に行ってほしい。全員が一致したら俺はこの件から手を引く」


 5、4、3、2、1


「「「「「「「「「「「「「「「7777」」」」」」」」」」」」」」

「0123」


 俺以外の全員が同じ数字で一致した。


 間違いない。


「幸運か」


 黒幕は幸運の持ち主。


 自身の幸運によって見つからない。


「そうなると話は簡単だな」


 棒切れを何十本用意して、俺の分身に持たせる。


 それを同時に落として、倒れた方向以外の方角を探す。


 南南西と南西の間。


 そっち側に神経を集中させ……見つけた。


「そこの爺さん、着いてこい」


 多分一番偉いだろう人をむりやり穴に突っ込む。


 移動した場所はここから数百メートル離れた路地裏


 そこにいた。


 視線の先に一人の麗しい女性と、豚風船のような汚い男がいた。


 緊急時っぽかったので、豚風船を蹴り上げる。


「ぶ、びひぃぃぃい」


 玉を直接触れたのなら二度とこの服は着ないが、お互いのズボン越しなのでセーフ。


「爺さん、この人が王女で間違いない?」

「は、はい。間違いなくシルヴィ王女です」


 どうやら間に合ったようだ。


 別間に合わなくてもやり直せるからそこまで安堵はしていないけど、よかったよかった。


 とはいえこの寒空の下、引き裂かれた服で過ごすのは寒かろう。

 コートを作り出し、女性に羽織らせる。


「うら若いレディがこんなところにいてはいけない。ご自宅までエスコートしてもよろしいかな?」

「あ、あり……がと」


 初対面の女性だし礼儀正しくしておく。


 一応言っておくが、国力を考えた場合俺の方が立場が上だ。

 敬語使わなくても、国際的に問題ない。


「や、やめろぉぉ! ぼぉくのしるヴぃたんにさわるな!」


 後ろから豚のような悲鳴があがる。


 見れば見るほど豚と風船が交配したような顔だ。


 ここが日本だったらこの場で殺すんだけど、海外なので殺せない。


 いや殺してもいいんだが、後片付けが面倒。


「爺さん爺さん」

「貴様がぁ 貴様ぁ 貴様ぁあああああ」

「どぅーどぅー。落ち着いて。すていすてい」

「これが落ち着いていられるか!! レティシア王女だけでなく、シルヴィ王女まで毒牙にかけようとしたのだぞこの豚はぁあああ!」


 どうやら犯人の父親はこの人らしい。

 何でかは知らないけど、この人たちだって誰が父親かは調べていたはず。


 そうだと判断したのなら、きっとそうなんだろう。


「貴様はここで殺す!! 死ぃねえええええ」


 発砲。


 そして爆発。


 傷ついたのは爺の方。


「もう、幸運持ちにそんな不確定武器を使っちゃダメだろ」


 仕方ない。

 鬼人化からの複製からの出血。


 鬼人化の血は回復能力がある。


 顔面が焼き爛れた程度の傷なら数滴かければ、


「くっ、かたじけない……」


ハイ元どおり。


「な、なんだぉぉ前!」

「お前ごときに名乗る名などない」


 実際問題どうなんだろう。

 不法入国だし、名乗ったらそれはそれで問題になる。


「爺さん爺さん、さすがにもう俺の言うこと全部信じてもらえますよね」

「そう……ですね。全て鵜呑みというわけにはいきませんが、正しいという前提で話を聞きます」


 やはり信頼関係大事。


「どうしてほしい?」

「……」


 暗にこう言っている。

 お前達ではこいつを殺すことも捕らえることもできないぞ。


「捕らえてもらえれば」

「おっけー。その代わりこっちの提案にはある程度融通してもらうよ」

「何なりと。この老いぼれに出来ることなら」


 こんなやつわざわざギフトを使うまでもない。


 ぶん殴って気絶させて終わりだ。


「くる、来るんでないど! 近づいたら殺すど!!」

「……」


 右で殴るか左で殴るか、考え中。


「言ったからなあ。知れねえど!」


 豚のくせに石ころを投げる知能があるらしい。

 とはいえそれは明後日の方向に飛んでいき、かつんかつんと乱反射。


 ガス管が開き、ガスが充満。

 そして屋上からまだ火がついているタバコが落ちてきた。


 爆発。それもかなり大きめの。


「ばーかばーか。ぼぉくを殺そうとするなんて10年はや……?」


 それがなんだって話になる。


 運で俺が殺せるわけない。


 豚風船の目の前までたどり着く。


「た、たすけてくれどぉぉぉ! 死にたくないど!!」


 そうだ。いいこと思いついた。


「ゲームをしよう。勝ったら助けてやる」

「ほ、ホントかど? 男に二言はないど?」


 男同士の約束は相手が同じ男かそれとも守るべき女かによってはじめて成り立つものだ。

 豚相手に破っても何も問題ないのだが……いいや。


「ロシアンルーレットをやろう」

「ロシアンルーレット!? いいど! ぼぉくそれ大好き!!」


 そりゃ幸運持ちにロシアンルーレットはイージーだろう。


「ルールは簡単。この6発入るリボルバーに、6発弾を入れ交互に自分に撃ち、先に死んだ方が負けだ」

「聞き間違いかど? 6分の6と聞こえたんだど?」

「そういったんだ。先攻後攻は選ばしてやる」

「後攻……いや先攻だど!」


 拳銃を渡す。


「死ねぇえ!」


 自分ではなく俺に向かって発砲。


 見てから回避余裕だった。


「どうした? 自分に撃つんだぞ」


 弾を詰め治す。


「次やったら殺す」

「ひぃいいい!」


 豚は自分のこめかみに銃口を向け引き金を引いた。


「ひ、ひいたんだど!」


 ジャムが起きて豚は生還した。


「次は俺だな」


 俺に幸運の能力はない。

 当然こめかみ目掛け銃弾が向かってくる。


「は?」

「次」


 この程度何の意味もない。


「ず、ずるいど! 銃で撃たれて死なないなんて、ひ、卑怯だど!」

「お前もすればいいじゃないか」


 割と簡単にできるぞ。


「ふぇ、フェアじゃないど!」

「フェアねえ。そうだな。フェアって大切だよなあ」

「はあ?」


 銃口を豚に向ける。


「1回俺に向かって発砲したんだから、俺も一回するのがフェアだよなあ?」

「そ、それは……」


 当たり前だが、幸運では俺の攻撃を回避することは出来ない。


 放たれた銃弾は左肩に命中した。


「いぃ 痛いどぉぉおぉっぉぉっぉぉぉ」

「次はお前だ。早やれ」

「おかしいど? なんでぼぉくの幸運が聞かないんど!? そんなの聞いてないど?」


 知らない方が悪い。


「どうする? 手当しないと助かんないよ。まあ、俺は助けないけど」

「ひぃいい!」

「どうしても撃てないなら俺が代わりに引き金を引いてやる。さっきと同じように」

「や、やめろぉぉ。ぼぉくがやるど!」


 大丈夫な右肩で引き金を引く。


 バンっと銃声が鳴り響く。


「おいおい。ルールは自分に向かって撃つことだ。明後日の方向では無効だぞ」


 本当は再びジャムを起こして不発だ。


 ただ俺が同時進行で別のところから発砲してやった。


 そんなこと気づかない豚は


「の、能力が使えないんだど?」


 自分が使えていることに気づかない。

 自分が幸運であることに気づかない。


「ほら。リトライ」


 1発。2発。3発


 震えて自分以外の方向で発砲。


 幸運で不発だが、それに気づかない。


「仕方ない。ばっちぃがこうしてやる」


 口の中に銃口をつっこむ。


「弾けよ。ほら」

「い、いやだど……死にたくないど……」

「やらないなら俺がやる」

「あ ぁ ぁ ぁ」


 震えながら引き金を引いた瞬間


「BAMBBBBBBB」


 耳元で大声で脅かしてやった。


「ふん。雑魚め」


 豚だが雑魚といった理由、

 それは泡を吹いて倒れたそれは、死ぬ寸前の魚だったからだ。


「さて、爺さんと王女様。目的地は王宮でよろしいですか」

「え、ええ」


 半径3mの安定した穴をあけ


「どうぞこのまま前に、よろしければお手を貸しましょうか」


 跪き手が伸びるのを待つ。


「そうですね。折角ですのでよろしくお願いしますわ」


 そんな感じて手をつないだまま王宮へ。


「し、シルヴィ様! ご無事でなりよりです!」


 穴をくぐった先には護衛がいた。


「ええ。この方がわたくしを救ってくださいましたのよ」

「そのようですね」


 どうやら幸運の効果はキレたらしい。


「何とお礼とお詫びをすればよいのやら」

「いいって。言っただろ。こっちの事情で助けただけだ。礼なら何もなかったことを礼にしてほしい」


 今回は緊急避難が適応されるだろうが、俺がやったことは結構問題がある。

 ただ双方認知しなければ何も問題ない。


「これで、レティの恨みも晴れますわ」

「……そのことなんだけどさ、やりたいことがあるんだけど」

「何なりと」

「王女様のアフターケアも俺がやっていいか?」


 さすがにこれは即承諾とはいかないか。


「処女膜であろうが治すことができる」


 あ、こいつきめえと思った諸君。

 早苗が運動しても膜が残っているから、多分鬼人化の所為という発言を元にアンリちゃんで実験した結果のことだから、俺に責任はない。


 血を流し小瓶を渡す。

 これを臀部にぬりぬりすれば治る。


「では、これにて失礼」

「ちょっと待ってくださいます?」


 しかしそれは王女によって止められる。


「あ、あの……お名前を……」


 どうしよう。

 名乗ってもいいし、調べれば簡単に出てくるんだが、不法入国者だし名乗るのは良くない。


 かといって偽名を名乗るのは不敬だ。


 仕方ない、誤魔化すか。


「王女様、私は暴漢に襲われるあなたを助け、襲われた妹を癒すものです。ですがそのようなことこれから王になろうとするものが経験していいものではありません。これは恥ずべき出来事です」


 王女様が暴漢に襲われかけた、その事実すら本来あってはいけないものだ。


 王女は純潔でなければならない。


 そうあれかしと国民が望んでいるんだから。


「ですので、またいつか、きっとふさわしい機会が天から巡り合うことでしょう。その時まで私が名乗らないことをお許しいただきたい」


 こういっておけばこれ以上俺の散策はしないだろう。


「それでは縁があれば」


 こうして俺は再びベッドの中に戻っていった。




天国への死刑台ステアウェイトゥヘブン

死ぬと13秒巻き戻る

『時間』


愚薬グッドラッグ

犯罪を犯すほど運気が上がる

『運命』



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