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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
8章 人という名の
244/353

やべーやつ×3 sideA

超重要

Twitterで女キャラのイメージをアップしました。

是非ご覧になってください




 その続きの言葉を女神から聞くことはなかった。


【な、なんだこれは……何が起きている】


 蛇の神がこの場に転移してきた。


 だがその姿は俺が最初に見た時とは大きく違っている。


「い、一樹? 蛇のモンスターがしゃべっておるぞ!?」


 モンスターの真実を知った今、目を凝らせば簡単に正体を暴くことが出来るようになった。


「オロチ! 待つのじゃ!!」


 遅れて神薙さんのお付きの女であるメギツネがやってくる。

 その姿もだいぶ変わっており、服はボロボロになり、いつもは見ない九尾の尻尾も展開していた。


 見たところ本気で戦っていたように見える。


 だがこの人?は純粋な戦闘力ではラバーズ随一と聞いた。

 苦戦するなんて思えないんだが。


【おいそこの神! 何が起きている。情報共有を!!】

【や、やめろぉぉお われに話しかけるでなあぁああい!!!! 気づかれたらどぉおぉぉするぅぅぅ】


 発狂からは戻ることが出来たらしい。


 だが正気とは言えない。


 この世界から逃げようとしていたようだが、すでに前後上下左右分からなくなっているようでその場でのた打ち回ることしかしていない。


【貴様! 空亡の因子はどうした! あれを使えばこんな奴らに後れを取ることはないだろ!!?】


 空亡の因子

 聞いたことがないが、何となくわかるものがある。


 やばい。


 それが使われたら本当に。


 だからこそ俺は最大限の警戒を――――――


【なんだそれはあああ。われはそんなもの知らないぞぉぉぉっぉぉぉ】


 したが無駄でした。


 なんだかなあ。


 今回俺やることなすこと全て空回っている。


【知らないだと? 神に配ったではないか! 均等ではなかったにしても、災厄を!】

「知らなくて当たり前でしょう。馬鹿ですねあなた」


 程度が低い神ならば認識しない女神様が、この白蛇の神を認識した。

 

 それだけでこの存在が、高みに君臨していることを如実に語っている。


「偽物ですよ。それ」


 淡々とふらふらな足で立ち上がりながら、誤りを正していく。


【なぜ……そんなことを言える!!】

「なぜって、簡単なこと。あなた達程度で、空亡惡匣様の因子を取りこめるわけがないからです。少し振り返ればできるでしょう。旧世界の住民ならあれが度し難い存在だって思い出せるはずです」

【そ、それは……】


 白蛇の神はものすごい基本的なことで論破された、そんな顔をした。


【だとしたらこの力はなんだ! これほどの力を孕んだ因子など神薙か空亡以外存在しない!】

「なーんだ。分かっているじゃないですか」


 この神たちが何を話ししているのか、正直俺は分かっていない。

 でもその答えは知っている。


 あいつしか……


 こんな性格の悪いことをするのは


「それはあのお方が空亡様を模して作った偽物です」


 神薙信一しかいない。


【ふざけるな! ではなんだ?! この侵略行為はあいつが計画したとでもいつつもりか!!!】

「いい加減しつこいですね。そうだって言っているじゃないですか」


 モンスターたちの侵略は神薙が計画しただと?


【馬鹿を言うな! 自分が外患誘致をしたというつもりか!?】


 確かに早苗がモンスターを倒した。


 だが一歩間違えれば俺みたいに負けかける状況になってもおかしくないはずだ。


 『運命』やらなんやらで未来を知っていたとしても、リスクが高すぎる。


 ここには能力者だけじゃない。無能力者だっていたんだ。


 いくらギフトが強くても、ギフトを持っていない人間だって大勢いる。


「あの……正気ですか。ここまで話をしてまだ、理解していませんか?」


 足りない子供を見る。

 憐みを、愚弄をわずかに含む笑顔で


「なぜあなた達は自分があのお方の操り人形ではないと、思えるんですか?」


 確かに言った。


 だが今“たち”といった。


 確実に、俺を含めた。


「トコハよ。分かっていると思うが」

「…………まあいいでしょう」


 なんだ……?

 こいつらは、俺の何を知っている?


【仮に……ぃ】


 白蛇の血管が浮きあがり、いまにも爆発しそうな様子だ。


【仮にそうだとしても関係ない。……その愚かさで罪を償うがいい!!】


 突如として、己が持てる最速の速さで移動する。


 狙いは一番弱いが、一番対処しないといけない人間。


 早苗。


 攻撃される前に攻撃するということ。


 単純だが明解。


反辿世リバースワー―――」

「待った」


 女神が俺を軽く押さえつける。


 なぜ邪魔をする、そういおうとしたが止めた。


 丁寧な物言いだった女神はもういなくなったからだ。


 この女神は俺に興味を持っていなかった。


「良いものが見れるんですから、今は動かないで」


 その良いものが俺達にとってはろくでもない物であることは、間違いなかった。


「神に対する殺傷能力は説明しました。ですが人間たちにとって本当に欲しいものは攻撃力ではなく防御力、そうだとは思いませんか」


 極限にまで遅くなる時間の中で確かで女神はそういった。


【しねえええ にんげんぅぅぅぅうううううう!!!】


 白蛇の噛みつきが早苗を襲った。


「早苗!?」


 大声で早苗を呼ぶが返事はない。


【ふっ ふはははははは まずは一人!! あと四十億にぃぃいぃぃんんん――――んほ?】


 早苗の意識は途切れていた。


 だがそれだけだ。


 早苗に向けた毒牙は決して早苗に届くことはない。


 透明な人型の霊体が、早苗を覆っていた。


 そしてその霊体が、早苗の防護膜となり、毒牙を防ぎきっていた。


【こ、これは……】

「あれ……どうみても」


 真百合と白蛇が同時に気づく。


 無論俺もあれがなんなのか一瞬見ただけで理解した。


「あぁ ぁあ ついにこの目で見ることが出来ましたっぁあああ」


 狂喜乱舞


 ぴょんぴょんと跳ねながら女神はその場で舞を踊っていた。


【か、神薙ぃぃぃぃぃ!!】


 その霊体は神薙信一であると、この場の誰もが確信を持っていた。


「馬鹿者め……」


 女狐が麦わら帽子を深くかぶりなおす。


 この人は分かっていた。


 神が人に勝てないこと、何より


「神薙信一が出しゃばった時点で、終わり」


 真百合が俺の思っていたことと同じことを呟く。


 それは本人じゃなくてもいい。


 神薙の力の一片、それだけで俺達のすべてより上。


「人間にはギフトや超悦者スタイリストだけじゃない。他にも幾つも能力がある。その一つがこれじゃ」


 光悦し涎をだらだら垂れ流す女神に変わり、薊さんが現状を説明する。


「ゴースト」


 それは薊さんが言ったかもしれないし、真百合が言ったかもしれないし、俺が言ったかもしれない。


 それくらいあれの姿は単純で、明瞭で


「能力は主様の身体能力を身に着けること」


 絶対だった。


 これがいかに絶対なのか、分からない俺達じゃない。


「この星の人間が、他の宇宙の外敵によって致命傷を受けるとき発動する」


 普通の人間にも発動する能力。

 考えてみれば当たり前で、ギフトや超悦者スタイリストなんて限られた人間しか使えない能力でバランスが取れるわけがない。


 メインでバランスをとっているのはこっちなんだろう。


「防御力は主様の皮膚程度」


 あ、これ俺が今から何しても絶対に攻撃通らないな。

 勿論ただの神の一撃何て通るわけがない。


「攻撃力は、知らぬ。本人は手加減状態の刹那と言っておった」


 霊体がゆっくり動き出す。


【    】


 白蛇は何もしなくなった、もしくは何もできなくなった。


 圧倒的な力の差に命乞いも抵抗も遺言も何もかもが無駄だと、己の全存在が判断したんだろう。


 生命活動すら停止した。


 しかしそれで終わるほど神薙信一の霊は甘くない。



 人間に攻撃したんだ、死んで終わりと思うなよ



 霊に口はないが、確かにそう言っている。


 動かなくなった白蛇の神に、指一本を伸ばしたかと思うと、次の瞬間、鼻くそ程度の大きさに変化した。


 何があったのか、超悦者スタイリストの俺達では理解できない。


「しゅ、しゅごぃぃいのの」


 ただ1柱、もはや逆の意味でこの世のものとは思えない姿になっている女神だけが何があったのかを認識した。


「お主、何をしたのか見えたのか?」

「ほんの少しですが、見ることが出来ましたぁあ!」


 これが小説で心から良かったと思う。


 女神のあまりにも嬉しさにゲロとか小便とかいろいろ吐き散らしまくる映像を画像化しなくて済むのだから。


「化物かお主」


 だが俺達は笑わない。


 あれをほんの一握り理解した、それだけでこの場にいる誰よりも格上。


 そこに汚いだの恥ずかしいだの、そういった感性はずっと後の話。


「本来小突きは1方向の力しかありません。したがって普通に攻撃すれば有り余るパワーにより遥か彼方に吹き飛ばされて終わるだけでしょう。しかしそれでは、エネルギーの無駄。そこでベクトルそのものを振動によって愛撫し即堕ちさせることでエネルギーが放出されず体内に留め続け、最終的にブラックホールが生成される時より高圧力がかかり、今こうして豆粒大になったというわけです」


 何を言っているか分からないし、一生理解できると思わない。


「それだけじゃありません。本来ただの物理で神魂すら破壊するなんて不可能なことなんです! ですが――――」


 これほっといたら長くなる奴。

 しかたない。別の誰かと話をする体で逃げ出そう。


 相手は誰にしようか。


 あ、そうだ。


「薊さん。結局神様殺してもよかったんですか?」


 俺が本気で戦えなかった理由に、神を殺すなんて罰当たりを本当にしてもよかったかをずっと考えていたからだ。


 今にして思えば、普通に禁じ手使えば絶対に勝っていた。


「……まあ、いいじゃろ」


 ならばいい。


「あとは……こいつか」


 俺を苦しめた神を見下ろす。


「こいつこの後どうなります?」

「どうもならんよ。人を傷つけようとした時点で、こやつはもう終わっておる」

【ひぃいいい】


 やんごとなき身分の情けない悲鳴が鳴り響く。


【た、助けてくれぇえええ!!!】

「……」


 助けるって言われてもな……


 神薙さんから殺されることが決定しているのに、どう助けるというのだ。


 まさか神とあろうものが、不可能をお願いするとは思えない。


 そもそもこいつらは命懸けでテロ行為をすると誓った連中だ。今更命だけ助けるというのは侮辱というもの。


 つまり俺が出来る救済。


「そうか。殺されて解脱したいんだな!」


 俺も鬼じゃない。

 あの人の怖さはよくわかっている。


 一度は殺しあったと錯覚した中だ。


 それくらいの願いはかなえてやる。


「早苗、真百合。ちょっと行ってくる」


 さすがにこの場で禁じ手を使うわけにはいかない。


一度、黒常(地獄の倉庫)に返り咲く。


「あ、お兄ちゃんおかえり~」


 まよちゃんは普通に生きてた。


「あー。折角いなくなったと思ったのに羽虫さんまた来てる」

「大丈夫。今度はちゃんと退治するから」


 それでは始めるか。


「【予告】貴方の処刑を開始する

【忠告】貴方が罪なき身ならば逃走を推奨する

【戒告】貴方はこの宣言が終わるまでである

【報告】貴方へ最悪な永遠を送る

【通告】貴方に遺言があるならば聞く

【警告】貴方は未練を残してはいけない

【申告】あなたが天涯孤独であることを望む

【宣告】あなたは希望を捨てなければならない

【訃告】あなたはもうおしまいだ




 獄落常奴アンダーランド――夢幻」




 世界が――飲み込まれていく――


 その世界は【検閲により削除】

 獄落常奴アンダーランドによって作られた最後の地獄


【なんだこ】【れは――】


 神は周囲を見渡してしまった。


 だから殺された。


 もうこの神は終わりだ。


「お兄ちゃん、この世界なあに?」

「地獄だよ。本当の」


 夢幻 この地獄の特性は永遠に処刑を続けること


 地獄というのは死んだ生命を殺す場所ともいえる。そのため不死者であろうが関係ない。

 その最奥である夢幻は7つの殺意を持っている。


 つまり、殺されても死なない奴を殺す攻撃を受けても死なない奴を殺す攻撃を受けても死なない奴を殺す攻撃を受けても死なない奴を殺す攻撃を受けても死なない奴を殺す攻撃を受けても死なない奴を殺す攻撃を受けても死なない奴を殺す攻撃


 そしてその殺意をもって、永遠に殺し続ける。これが夢幻。


【ぐぉ】【ごご】【ごごが】【ごおご】【ご】【お】


 だがこの能力の本当に恐ろしいところはそこじゃない。


 ただ殺し続けるだけなら、いつでもどこでも存在できるなどといった遍在的能力により回避される。


 しかし思い出してほしい。俺はこれを使っていれば勝っていたと明言した。


 別にこれは負け惜しみでも何でもない。


 実際にこれを使えば遍在なんて弱点にしかならない。


 夢幻が最悪たる所以、それは処刑方法。


 処刑といっても燃やすとか吊るすとかではない。


 この世界全てが処刑要因だ。


 分かりにくいか?


 この世界の光が処刑道具だ。

 この世界の音が処刑道具だ。


 この世界の情報が処刑道具だ。


 この世界で、見る聞く嗅ぐ舐める触れる感じる、全てが処刑となる。


 見たら死に、聞いたら死に、知ったら死ぬ。


 第六感であろうと、情報で死ぬ。


 殺し続ける。


 語弊が無いようもう一度言う。


 この世界全てが処刑要因だ。


 この地獄の中が、ではない。この地獄が、だ。


 つまり何が良いたいか。




 この能力に関わったら死ぬ。




 俺は一度、俺の能力について神が知っているかを聞いた。


 本当に全知であったら、その時点で勝っていた。


 夢幻を知っているんだから、そこから処刑が始まる。


 最初に遍在にたいして有効打があるということはこういうことだ。

 遍在ということは情報を共有していること


 処刑は伝染する。


 仮に何らかの方法で情報を忘れたとしても、そしたらもう一回同じことをすればいい。

 一度当たったんだ。忘れているのでまた当たる。


「お兄ちゃん。この世界ちょっと息苦しいの」


 ここまで来たら別の方法で質問があるだろう。


 何で俺ら死なないの? である。


 答えは簡単、獄落常奴アンダーランドの持ち主だからだ。


 使っているのは俺だし、そもそも元の持ち主はまよちゃんだ。


 耐性はあってしかるべき(とはいっても俺は3日、まよちゃんは1日が限界でそれ以上は身体に支障がきたす)


 そしてだから俺はまよちゃんを人形にした。


 本当にヤバい時、俺はまよちゃんをこの世界に送り、自身の双子呪い人形を絶対のものにする予定だったのだ。

 無理に探ろうとすると無限に触れるため相手が勝手に死ぬ。


 完璧な論理である。


 回避方法はそれこそ月夜さんのように、知らないけど行動する能力が必須である。


 あとはまあ、力技で耐性やクラスで耐えることが出来るが、この能力は処刑し続けることなため、効果は永続。能力で耐えればその後解除は出来ないし、耐性で耐えてしまうと二度と恩恵を受けられなくなる。


 ここまで言えば俺が何で積極的に使いたがらなかったのも分かるだろう。


 まったく、勝てるのに勝てない状況は中々もどかしいものがあった。


 とりあえず、俺に問題はなかったということで。


 ぶい。




この主人公、なんか配慮があるようなこといってますが、前章ボスと神薙さんにこの能力をぶつけようとしてました

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