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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
8章 人という名の
233/353

悪魔的勇者討伐法 1 sideA

絶対にまねしてはいけません

 走馬燈?


 多分そんなの。


『シュウ、頼みがある』

『どうした? つーかやっぱ負けたか』

『仇は絶対に取る。だからさ、そのためにシュウの力が必要なんだ』

『おっけ。何が聞きてえ』

『シュウのシンボルについて詳しく教えてほしい』

『おれのシンボルについてか。いつきには全て教えているつもりなんだが』

『そうだな。ただ条件というか、有効性についての話なんだ。損はさせない』

『いいけど、なにがしてえんだ』

『まず1つ。シュウが出来ることを確認したい。シュウは条件付き性質の付与は可能なのか?』

『条件付き?』

『例えば触れたら爆破する性質とか』

『あー多分できる。やって見せるか』

『頼む』


 俺は持っていたドーナツを渡す。


 そのドーナツにシュウが性質を付与し、その後触ると見事爆発した。


『この条件って触るじゃなくて、例えば握るとかでも出来るか?』

『できらあ』


 え? 同じ値段でドーナツを?

 という言葉をぐっとこらえる。


『次、対象をとることは出来るか?』

『対象?』

『例えばA型にしか効果がないとか』

『…………その条件は厳しい気がする』


 少し落胆したが、そのという例外処理が気になる。


『その条件ってことは、可能な条件は何あるわけ?』

『一人か二人の例外処理ならなんとか』


 むしろそれを頼みたかったので、幸運だった。


『じゃあさ、さっき言った2つを組み合わせて何か性質を付け加えることは可能?』

『例をあげてくれねえとイメージつかねえ』

『例えばさ、このせんべいかドーナツにさ……』


「回想しているところ悪いんですが、そろそろ起こしますから」


 ふいに神薙椿さんの声が聞こえた。


 久しぶりにメタ発言を聞いたな。




「くっ~ よく寝た」


 空は灰色だった。


 色盲だからね。


「一樹、どんまいだ。失敗は誰にでもある」


 まず早苗が俺を励ましてくれる。


「ん? 何が?」


 早苗の言っていることに、一瞬理解が追い付かない。


「いや……」


 だがそれは一瞬。

 早苗の勘違いに気づく。


「ひょっとして俺が負けたと思っている?」

「む? 負けたのではないのか?」

「俺は負けてないよ」

「……」


 真百合は何も言わない。


「嘉神さん。あなた何をしましたか?」

「月夜さんですら気づかないか。じゃあ誰も気づいていなかったりするのかな」


 ふと周囲を見渡す。


 大歓声だった。


 まるで九曜白夜がジャイアントキリングを果たしたかのような耳をつんざくような歓声。


 九曜白夜を中心に人の円が出来ており、それぞれ彼をビシバシ叩いている。


 だが当の本人は喜んでいない。


 よかった。


 別に間抜けでも何でもいいんだけど、少しの理解はあるようだ。


 立ち上がり九曜のところにゆっくりと歩く。


 盛り上がりが一変周囲は俺が何をしでかすかを警戒し始めた。


「もう交流戦は終わった。手を出すのなら王が加勢しよう」

「……?」


 言っている意味が一瞬理解できなかった。


「もしかして俺が負けた腹いせに何か逆切れをするかもしれないと考えてます? しませんよ」

「そうか。ならいい」


 そういいつつも警戒を解いていないあたり、信用してもらえていない。


「だったらなんだ」

「俺が言いたいのは一つだ」


 右手を上げる。


 九曜白夜は俺が握手を求めていると勘違いしたようでしぶしぶ手を握ろうとする。

 ただ俺はそんなことは望んでいない。


 素通りして言いたかった一言を伝える。


「審判。ジャッジお願いします」

「申請を受け入れよう。そしてそれが正当な主張であると受理しよう」


 誰一人この場で理解している人はいない。


「これは俺が説明する方がいいか」

「いえいえ。お手数をおかけするわけにはいかないので俺が説明します」


 立場上神薙さんが説明するべきなのだが、目的を果たすために俺がマイクをもって説明する。


「えーただいまの試合対戦相手の九曜白夜が不正を行いました」


 空気が雑然とし始める。


「不正だと? 自分はそんなことしちゃいないぞ!」

「とぼけちゃって。ルール確認したら?」


 コピペしておこう。


 Ctrl+C

Ctrl+V



/////////////////////////////////////////////


 今一度ルールの再確認をしよう。


 元となるのは剣道とかでよくある、5対5の勝ち抜き戦。ただし順番は初戦以外の順番は自由に決められる。


 勝利条件は存在しないが、敗北条件がいくつか存在する。


 1つ目、必要時以外10秒間継続して、足以外を地につけた場合。


 いわゆる10カウントノックダウンがこれ。

 ただし寝技をかけている時はこのルールは適用されず、別のルールが適用される。


 2つ目、30秒間蓄積して、フィールドの外に出た場合。


 このルールが適用された背景は結構ややこしい。

 相撲のようなルールにすると相手を外に出すような能力が、最強になってしまう。

 しかし逆に場外のルールを適用しないと先に示した能力者が不利になってしまう。


 それに外に出すぎると審判が判断できない。

 このルールは審判のためのルールともいえる。


 あ、あと3m以上の高さで空を飛ぶのはこのルールに引っかかるためお勧めしない。



 3つ目、3連勝した次の試合。


 以前に論じたルール。不戦勝でも適応されるため、場合によっては2連勝しても次の試合で敗北扱いとなる。


 4つ目、審判が続行不可能と判断した場合


 先に言った寝技やTKOがこっち。


 5つ目、反則行為があった場合。


 これは程度による。

 基本的に何でもありであるが、許されていないことがいくつかある。


 第三者の参入と未登録武器の使用。


 前者は当たり前なので後者を補足しよう。


 格闘技ではなく、戦闘力を競うため武器を使ってもよいとされる。

 剣でも盾でもなんなら銃でもいい。


 そのためには、事前に審判と対戦相手に宣言が必要となる。


 隠し持っていた武器を使えば一発でレッドカード。

 無論これも例外があり、相手の武器を奪って使うのはセーフ、そして審判に見せながら武器を作るものセーフ。


 この件は真百合としっかり確認したため、俺の勘違いはないと判断していただこう。


 あとはローカルルールが存在する。

 大きいのは殺してしまった場合の勝敗だろう。


 本家は死んだ方が負けだが、今回は当然殺した方の負け。


 フィールドの大きさは土俵を9倍にしたくらい。


 あ、大事なこと思い出した。


 6つ目、審判を意図的に攻撃した場合。


 当たり前だよな。



/////////////////////////////////////////////



 よし、コピペ終了。


 無駄に長くコピペしたが重要なのは5つ目


 ……よくよく考えると神薙さんを意図的に攻撃していた気がしないでもない。

 まあ神薙だし、こっちの攻撃があっちにとっての攻撃になっていないからノーカンノーカン


「貴様が言いたいことは分かる。殺した方が負けのローカルルールがあるということだろう?」

「…………」

「甘いぞ。そもそも本来のルールは死んだ方が負け。今回は殺した方が負けとあるが、それは未来に遺恨を残さないためのローカルルール。簡単に生き返る術がある時点でこのルールで反則になることはない」


 えーそれはどうなの。

 ルールというか人として問題がありそうな気がする。


「そもそもだ。貴様白夜の攻撃を受けていないだろ」


 ばれてーら。


「どうやって自害したかは知らんが、殺した方が負けなら自分を殺した貴様の負けだ。そうでなくても10カウントは取られている。貴様の敗北はこの王が決定づけよう」


 なるほど。

 どうやら帝王は俺より強くても、俺より頭は働かないらしい。


「いやいやおかしいだろ」

「なにもおかしいところはない」

「そういう行動としてのおかしさじゃなくて、動機の話」

「何?」


 お金持ちがクーポン券を使わないように。

 真百合が最近カードすら持たなくなったように。


「そんな事せずに勝てばいいじゃん」


 視点変更していたため読者は俺個人が九一一一アンチセプテンバーについてのどういう意見を持っていたのかは伝わらないかもしれない。


 結論は

 “不意打ちならワンチャンスとられるが、対面すれば必勝”


 勝てる相手に勝つために反則狙いをするなんて無駄だ。


 どうやらこれ以上話しても理解されないことだし、さっさと答えを見せるか。


「神薙審判、回収してもらっていいですか」

「ほいほい」


 神薙さんは九曜白夜の胸ポケットに閉まってあるハンカチを奪い取った。


「返せ! それは自分の大切な」

「大切な物証だもんな。そりゃ取られるわけにはいかないよな」


 これからの発言は皆に聞こえるようするため、大きめの声で話す。


「そのハンカチを調べれば分かるはず」

「見たところ普通のハンカチだが」


 見たところはそうだ。


「神薙さん帝国の観客席にそのハンカチを放り投げてください」


 そしたらすべてが分かる。


「俺がそんなことするわけないだろ」


 それもそうか。

 真偽は定かではないが、神薙さんは人を愛している。


 だからこそそのハンカチを集団に投げ込むわけにはいかない。


 でもどうしよう。

 こういうのは見せることが一番手っ取り早い説明なんだがな。


「仕方ない。そこのアイドル。このハンカチを受け取れ」

「え? いやその、ほんと勘弁してください」


 なぜだろう。

 このアイドル神薙さんに低姿勢すぎる。


 ていうか、嫌だといえることは俺が何をしたのか理解している?


 理解しているなら帝国側のサポートに回るのもありだったんじゃないのか?


 まあいまさらこいつが何者かを考えたところで帝国編は終わることだしどうでもいいか。


「大丈夫です。私がちゃんと直しますから」

「本当ですか? 信じますよ! ふりじゃないですからね?」


 なんであのアイドル、自分から芸人みたいな言動をとるんだろう。


「ほらよ。じっくりと味わえ」


 神薙さんがトコハと呼ばれるアイドルに向かってハンカチを放り投げる。


「いたいいたいいだいい゛い゛い゛」


 肌が焼けただれ、あちこちから血が噴き出す。


「それ、放射性物質。大体放射能は10000Svくらい」


 それを聞くと騒いでいた観客たちは一斉に距離を取り逃げ出す。


「安心していいよ。こっちには神薙さんがいる。被害は出ない」


 人災ですら完璧に抑える男だ。


「もう言わなくてもわかるよね。さすがにさ、真剣勝負の場に放射性物質を持ち込むのはいかんでしょ」


 そしてそれが俺の倒れた原因。

 九曜白夜の攻撃を受けたからではなく、被爆して倒れた。


「九曜白夜は放射性物質を持ち込み、俺を被爆者にした。でもそれは反則行為なので訴えた。アンダースタン?」

「ふざけるな! そんなの信じられるか」


 九曜白夜はハンカチを奪い取り


「見ろ! 自分は触れているが何も起きないじゃないか!」


 そりゃそうだ。


「あたりまえだろ。俺を攻撃するために持ち込んだんだ。自分が被害を受けてどうする。防ぐための手段は用意してあるのが普通だろ」

「だったら僕が」


 結城君が触れる。


 そして


「かっ……」


 やはり被爆した。


「ほら見ろ。あ、椿さんヒールおなしゃす」

「はいはい。戦女神の冠ルナティックティアラ


 一瞬で回復。


「あ、ついでにアイドルの方も」


 さっきからうめき声がうるさい。


「私はこのアイドルにちゃんと直すといいました。でもそれは今すぐとは言っていません。その気になれば明日、一週間、千年後だって可能なんです」


 千年後はさすがに寿命で死んでると思う。


「でもまあうるさいのは事実ですので、完治といかないまでも、静かになるまでは治療しておきましょう」


 なんかこのアイドル、俺の父さんと同じような扱いを受けている。


 ほんと何者だよ。


 めっちゃ気になる。


 まあ今は九曜白夜の相手をし直そう。


「ご覧のとおり俺の主張が正しかったことが証明されたわけだが」


 かっこたる物証の前に


「し、知らない。自分はそんなこと知らない!」


 狼狽える被告人。


 気分は検事だ。


「そうよ! あたしもそんな危ないもの渡していない!」


 何を言い出すんだと思えば、いまさらそんなこと。

 察しが悪い。


「あのさあ」


 この一言は九曜白夜並びその周辺にしか聞こえないように言った。






「俺が持ち込ませたんだから、知らないのは当たり前だ。いい加減察しろ」






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