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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
2章 宝瀬真百合とコロシアイ
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仕掛け

「はー?」


 きっとこのブスバスガイドは意味が分からないだろうな。目の前に嘉神一樹が二人いて自分は当たりが真っ白の部屋に引き込まれているのだから。


「え……どういうことなの!?説明しなさい!」

「キャラ守れ。焦って化粧とキャラ落ちてるぞ」


 どっちも見るに堪えない。


「そうだな。お前は愚か者だから言っても分からないと思うけど、教えるのが俺のモットーだからな。教えてやるよ。で、どっから教えて欲しい」


 俺は意地悪く笑顔を作る。因みに全員で周りを囲んでこいつには逃げ場がない。


「あたしは、何でここにいるの?」

「おいおい。教師相手に敬語使わないなんて、それじゃあ教育が必要だよな。だれか、何らかのお灸を添えてやれ」


 俺を含めた男子全員で集団リンチである。それはこいつが加害者でなければ誰もが目を逸らしたくなる行為だろう。


「さてと、教師からの命令だ。キャラ守れ。そして俺には敬語を使え」

「……はーい」


 乾いた返事だ。


「さあて、話を続けようか。そうだね、よくよく考えてみるとお前のそのキャラと敬語併発すること出来ないから重要な所を後回しにして教えてやるよ」


 何て俺は優しい教師なんだろうか。


 優しすぎてPTAに訴えられかねないレベルだな。


「まずなぜ俺が二人いるかだ。その理由は簡単。天谷のギフトを使ったからだ」

「天谷真子のギフトは生物を複製できないはず……」

「その通り、個人的には天谷のレベルアップを期待していたんだが、そう上手くいかず仕方がないから形だけ俺にしてもらった」


 俺(本物)は俺(偽物)をたたく。


 俺(偽物)に一切動きが無い。


「じゃあ、声は?」

「ああ。あれか。お前も知っているだろうが先輩の一人が音を使うギフトだったからうまく音を調節してもらった。一応あっただろ?そういう描写」


 それについては覚えていないかもしれないが。


 これが、今俺が二人いる理由。


「次に俺のギフトから説明してやるよ。そう言えば俺もお前に聞く必要があったな。お前たち、俺のギフト知ってるか?」

「………幻術を見せるギフト」


 俺は驚く。


 何一つあっていなかったことに。


 本当にかすりもしていない。


「その情報どこから出たのか、ものすごい気になるが、この際どうでもいいか。折角だから教えてやるけど、キスした能力者の能力を使えると覚えておけ」


 前に伝えた女五人以外の全員の視線がこっちに向かった。


「まあそこら辺はどうでも良いとして」

「よくねえだろ。嘉神。お前それとんでも無い能力だろうが」


 時雨が割ってきた。


「その意見は分からないこともないが実際大したこと無い。使えるようになった所で十五年以上自分のギフトと一緒にいたお前たちに僅か一ヶ月も立っていない俺のギフトが勝てるわけがない」


 そろそろ話を戻そう。


「だから俺がさっきまで見つからなかったのは誰かのギフトをコピーしたからだ。個人情報により誰かは伏せておくが」

「四楓院ぐへえ」


 出しゃばる口を靴で塞いだ。


 一回ぐりぐりする。


 つばで汚れて気持ち悪い。


「そろそろ知りたいこと話してあげるか。どうしてあんたがここにいるのかをな」


 黙っている。もしかして死んだのかと思ったが生きているのでそのまま説明を続ける。


「補足説明で俺のギフトは別に相手が女であろうが男であろうが老人であろうが赤ん坊であろうが死体であろうが有効だ。これでどうして俺があんたの場所を知ったのかは分かったな」


 現在死んでいる、空見伊織のギフトだ。


 俺の偽物ががんばっている間に俺本体が隠れながらあの死体のありかまでいって、キスをしたというわけだ。


 だから俺がこいつと話しているときは宝瀬先輩の様子を確認できなかった。


 ただ誤算というかなんというか、どいつが空見なのか分からなかったので、死体五体全員とキス・・・・・・・したわけだが。


「でも、空見程度のギフトだとあたしたちの場所は感知できないはず……」


 そうなのか。


 でも出来てしまったわけだしな……


 まいっか。ここは格好つけようかな。


「おいおい。常に相手の想定の上を行くのが俺だ。特にお前ら程度の想定なんて大したこともなく超えてみせる」


 よし。これで恰好付いただろう。


「それと、あの俺がお前とした会話らしきものだが、あれは最初から台本があった」

「え?」

「気づかなかったか?いくら声音を変えたところで俺のキャラが初めて会って数分の先輩に演じられるわけないだろ」

「でもちゃんと会話……」

「だーかーら、俺がお前の会話を予測して台本作っただけだって。それをわざわざ先輩に演じてもらっただけ。言っとくが何で分かったのかという質問は受け付けないからな。お前ごときの思考回路、読むまでもないからな」


 いい具合に格の差を見せつけて


「後は前に覚えた、次元移動を使っただけだな。最もこれ完全じゃないから今もあんたの足一本もげてるだろ」


 今回限りは完全に習得していなくてよかったと思う。


「ありえないありえないありえない。そんなギフトあっていいわけがない。認めない認めない」

「あろうが有り得なかろうが認めまいが現実は常に一つだ」


 ほんとこいつは格下だ。


「あ!それともう一つ言い忘れてたことがあった。今の俺は感知能力を使えるつまり、これをみているクソ政治家、名前はそうだね、岡山衆議院議員後は……印刷会社の社長さんに、銀行の専務。終いには、警視正さんもいるじゃありませんか。凄い凄い。これから俺が殺す人間がこんなに大物で良いのかな?」


 俺は元バスガイドだった物に声をかける。


「もちろん誰がどこにいるかもハッキリと分かっている。なんかやろうとした瞬間お前ら全員箱入りだ」


 戦闘準備は出来ている。


 並べて晒して殺してやる。


「とはいえ、俺も暴走しすぎた感があるわけでもない。民主主義に則って多数決で決めよう。そうだな、このかつて人だった物を許してあげることは出来るかどうかを採決しよっか」


 蹲っているこの塊を見る。


「十一人いるから全体の三分の二つまり、八人以上で可決な。こいつ許してあげたい人挙手」


 誰も手を挙げなかった。


「酷いなみんな。折角だから俺は手を挙げさせて貰うな」


 まだ誰もあげない。


「早苗はどう?許してあげる気にはなれない?」

「一樹。お前は本気でこの女を許してもいいと思っているのか?」


 絶対に許していないな。


「時雨はどう?」

「即処刑だ」


 怖いな。


「天谷は?」

「こいつがみーちゃんを殺したんですよね」

「正確には違うけど、戦犯はこいつだよ」

「だったら先輩。出来るだけ見窄らしく殺してください」


 みんな酷いなホント。


「四楓院先輩は……おいといて、宝瀬先輩はどうですか?折角の機会ですし許してあげるのはいかがですか?」

「嘉神君はそれでいいと思っているの」

「ええ」

「だったら、それでいいわ」


 え?


 聞いた俺が言うのも何だが、宝瀬先輩が許すなんて考えられなかった。


 ここにいるメンバーの中で最も苦しそうにしていたのに。


「最も、どのみちこいつ社会から抹殺されるから生きてはいないんだろうし、だったら生かしておいて絶望を与えるのもありだったんだけど、まあほぼみんながそう言うなら仕方ないな」


 そう言うと


「だったら生かしておこうぜ。そっちの方が仕返しになるだろ」


 三年の先輩が俺の案に乗ってきた。


「健太がそう言うならボクもそうしよう」


 こうして何と俺も含めて四人の人間が生かしておこうと考えたのだ。


「残念だけど、死刑は見送りだ。よかったねバスガイド。お礼を言ったらどうだ?」

「あ、ありがとう」


 俺は蹴って


「お前さ、こういう時どういう格好をしてお礼を言えばいいか分かっていないのか」


 土下座しろと命令する。


「え……そのありがとうございます」

「もっと大きな声で。そして姿勢を正す」


 右足首取れているのに俺は土下座を強いた。


「ありがとうございました」


 うん。不格好ながらちゃんと土下座しているな。


 俺は満足した。


 パン!と乾いた発砲音が響く。


 ドサリとバスガイドだった物が倒れる。


 撃ったのは誰でもない。俺である。


 俺で分からなければ嘉神一樹である。


「きっと聞こえていないと思うけど、教えてあげるよ。俺、多数決って言ったよな。七対四のどこで否定される要素がある」

「お前さっき民主主義どうこう言ってたぞ」

「勿論嘘に決まっているだろ。まさかバスガイド、俺を信じた訳じゃないよな?もし信じていたのなら、お前やっぱどうしようもない阿呆だ」


 血がドクドクと流れている。きっともう助からないし助ける方法もない。それくらいの致命傷だ。


「とはいえ、天谷。これでよかっただろう。出来るだけ見窄らしく殺せって言っていただろ。見ろよ。土下座して死んでるよ」


 横に倒れてもまだ土下座している。


 俺はその塊を蹴りながら


「そしてブスもよかったじゃないか。最期のセリフが『ありがとうございました』だなんて、来々世ではきっと良いことあるよ」


 最初から俺はお前に何も残す気はなかった。後悔も、遺言もな。


「そうだね。あえて教師から生徒に最期にレクチャーすることがあるならば、俺が悪かったよ。許してくれ」


 相手が悪かった。それがこいつの死因だ。






「ふああ」


 終わったら眠くなってきた。


「このタイミングで欠伸をするか」

「仕方ないだろ。感知ギフトに神経を使ったんだ。正直精神力が付き欠けてる」


 精神的に休まないとキツイ。


「おーい。今から俺三十分休憩取るからその間に救助寄越さないと、どうなってるか分かってるな」


 一応保険として、観客のつもりだっただろう二名をスタジアムにご招待した。


 両手両足の骨を折って人質にしたあと小部屋で仮眠を取った。



もうちょっとだけ続くのじゃ

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― 新着の感想 ―
[一言] 意味分かんなくて草 どんな国なんだここ マジで国の重鎮がなんの伏線もなく財閥への嫌がらせにデスゲームなんか突然始めたの? 中国並みの治安だな…
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