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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
8章 人という名の
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日帝可侵条約 sideA



「シュウ――――!!!!????」


 急いでフィールドに入ろうとするが神薙に止められる。


 シュウはあの暗君のシンボルをその身に受け、気を失ってしまった。


「見事だ。よくぞここまで戦い抜いた」


 クソ王はこともあろうにシュウを抱きかかえ


「この者に惜しみのない喝采を、溢れんばかりの声援を送ってほしい」


 帝王の言葉に反応するかの如く、大歓声が鳴り響く。


「かっこよかったぞー」

「ファンになっちゃったー」


 そんなのんきな歓声が鳴り響く。


「嘉神さん、ちょっといいですか」

「……」

「癇癪起こして観客全員皆殺しにするなんてことしないでくださいね」


 ・・・・・・


「え? まさか本当に考えてたんですか?」

「皆殺しまでは考えてない。6割くらい」


 残りは八つ裂き程度で勘弁してやるつもりだった。


「やめてくださいよ本当に」

「じゃあさ、聞きたいんだけど、あの王を苦しめるにはどうしたらいい?」


 シュウを苦しめたあいつに、しかるべき罰を与えてやる。


「なんでそう短絡的な考えに行きつくんですか。もうちょっと温厚な考え方をですね」


 そんな考えを見抜き、幸福少女こと月夜さんがストップをかける。


「そう? 今回は私の心情抜きに嘉神君の怒りが正しいと思うわ」

「いや嘘言っちゃいけませんよ。あなた心情抜きに物は語れないでしょ」


 真百合が見方をしてくれるのなら心強い。


「仕方ないわね。幸。行ってきなさい」

「え? なんかものっすごく嫌な予感がするんですけど」


 真百合は何かをやろうとしている?


「最大多数を幸福にする多幸福感ユーフォリアは、戦争時には大国を味方にする。帝国と日本、どちらが国として大きいかを考えれば……あとは言わなくても分かるわよね」


 つまり戦争になれば月夜さんは必ず日本側で能力を使えること。

 そのためには……


「おい、待つのだ真百合。それって……帝国に戦争を仕掛けるつもりか?」


 そいつはいい。

 国を滅ぼした王として歴史に残るのが、暗君の役割だろう。


「いや絶対にやらせませんよ。なんでわたしが戦争になろうとする行動をとらないといけないんですか」

「じゃあ私が責任を持ってやるわ。ただ私がそうした場合、撤回や訂正は絶対にできなくなるけど」


 そういうことか。


 このまま真百合が挑発行為を行った場合、両国の会戦は避けられない。

 それを止めるには力技で真百合の口を塞ぐ必要があるが、単純な力技では俺が止める。


 では彼女の実力で最善が取れないとなると、彼女の実力内での行動をしないといけない。


 俺は以前自分を追い込むことであえて多幸福感ユーフォリアの行動を制限した。


 真百合はもっと大きいことをやろうとしている。


「私が宣戦布告してほしくなければ、あなたが場を和ませてきなさい」


 これ以上ないほど完璧な回答だ。


「はあ、分かりました。あーろくでもないことになりそー」


 憂鬱そうに立ち上がりいつの間にか握っているマイクを片手に、フィールド中央に重鎮する。


『よくこんなもので盛り上がれますね』


 いいぞいいぞ。

 あったまってきた空気が一気に冷える。


『いやあ、驚きました。何でこんなので喜んでいられるんですか』

「何を言っている」

『だって考えてもみてください。今帝国側がやったことって子供の戦いに大人がでしゃばってきたようなものじゃないですか。それでよくいい試合だったなんて思えますよね』

「……貴様もか。月夜幸」

「月夜さんだけじゃない。それが俺達の総意だ」


 フィールド上に登る。

 周囲は帝国民で囲まれている。彼女一人では心細いだろう。


『それに急遽参加したってことも恥ずかしいです。最初はとりあえず戦ってみようとしたら、思っていたよりわたしたち、いいえ、日本と蝦夷帝国の戦力が離れていたから、それを誤魔化すためにああやって参加したんでしょう?』


 さすがは月夜さん。

 大義名分があるときに、相手が嫌がる行動をとらせたら、天下一品。


 こればっかりは俺でも絶対に勝てない。


 当然怒声が飛び交うが、そんなモブ相手では舌戦にすらならない。


『あなたたち、帝国側の一連の流れ教えてあげましょうか

1、時間切れを狙うも敗北

2、純粋に力負けして敗北

3、大人が出しゃばって勝利

いったいどこに誇りのある試合がありました?』


 嘘に力はない。

 真実にこそ、力があり、重みがある。


 その重みに一般人が耐えられるはずもなく、あれだけ軽かった唇が、縫い付けられたかのように黙ってしまった。


『あ、それと次はわたしが参加します。そして棄権します』


 これで俺達は2勝2敗


 月夜さんはマイクを真百合に投げ渡す。


『あなたたちはまだ私達に言いたいことはあるでしょう。でも私や外道五輪や宝瀬や日本として言えることは一つよ。絶対に謝罪しない』


 小さく「棄権よ」と呟き2勝3敗


 ただこれにて帝王が3連勝したため、次の試合は確定敗北となる。


「早苗。行ってきなさい」

「この流れで戦うのは……正直気が乗らん」


 途中から早苗は明らかに難色を示していた。


「いいじゃない。適当に戦ってお茶を濁してくれば」

「う、うむ……」


 早苗が帝王に不戦勝で勝ち3勝3敗。


「残っているのは……無名のアイドルとヘッドフォンをかけている男の方ね」

「出てくるのは間違いなくアイドルの方ですね」

「え? なんで?」

「いや考えてみてくださいよ。いままで男同士の戦いをしてきたんですから、今度は女の子同士のキャットファイトが見てみたいと思うのが心情でしょう」


 見栄えは大切。真百合から教わっている。

 実際


「いや似非アイドルは出ないし出られないぜ」


 この場にいるが、絶対に話しかけてくるとは思わなかった。


 俺達の担任、そしてすべての生物の頂点。

 神薙信一(先生)


 俺達が何をやろうが、こいつ一つの気まぐれで吹き飛ぶほどの実力がある。


 恐らくこの世全てが束になって挑んでも、こいつには勝てない。


 そいつが今次の対戦相手がアイドルではないといった。


「次はお前が出ろ。確か……名前は何だったか」

「と、常葉です。ですが実況を続けたいので新庄君。お願いします」

「まあ、いいけど」


 言われた通りだった。


 つうかあのアイドル俺が聞いてないこともあるけど、ほとんど実況していないな。


「それで嘉神一樹。これからどうするのか」

「どうするって……あんたまさか俺の心を読んだ―――――いや何でもない」


 この男はすべての能力を無限に持っているんだ。

 心を読まれたところでどうということはない。


「協力は、してほしいのか」


 俺の第二の計画を言っている。


 最初はシュウが3つ勝ち、九曜白夜と戦わずに圧勝することが当初の計画だった。

 だがそれは帝国の卑怯な作戦によって頓挫してしまったため、今度は方針を変えないといけない。


 俺は帝国を絶対に許さない。


 だからこそ


 完膚なきまでに九曜白夜を倒さないといけない。


 絶対に負けることは許されないし、許さない。


 そのために


「少しだけ、お願いします」

「よろしい」


 そうなると準備が必要だ。


「早速ですけど」

「言われなくても時雨驟雨は起こしてやる」


 おつきの椿さんがシンボルを使い、一瞬で元通りに回復してくれる。


「シュウ、頼みがある」


 早苗が戦っている間、俺は仕込みをする。




 仕込みを終えたのと同時に試合が終わった。


 対戦相手の能力は日犯銀行メガバンク

 効果は貯める能力


 パワーをため、スタミナをため、スピードをため、運をため、好きな時に放出する。


 ただ早苗も善戦し、5分間の時間切れのドローで決着。


 お互いに4勝4敗


 次の一戦で決着がつく。


 だが俺には緊張も興奮もしてない。


 あるのは冷たい感情。


 復讐。


 帝国、俺に歯向かいシュウに刃を当てたことを後悔させてやる。







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