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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
1章 衣川早苗と化け物退治
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プロローグみたいなやつ 1

現在カクヨムにて改稿版を投稿しております。文章はあちらの方が読みやすいです。



ttp://kakuyomu.jp/works/4852201425154984970



2016 4/5 三章まで改稿



 『これは夢だ』と認識してみる夢のことを明晰夢めいせきむというらしい。


名前だけは聞いたことのある状態だったが、現在進行形として俺はその夢を見ている。


 公園で女の子と遊んでいる夢。


砂場で俺と女の子が向かい合って遊んでいた。


「ねえいーくん。大人になったら私と結婚してくれる?」

「大人になったらね」


 ままごとの最中、少女はそんなことを言った。


 夢にしては周りの小道具もしっかりしている。


「その言い方。信じてないでしょ」

「だって絶対○○ちゃん忘れてるって」


 大人びた会話をしているが、お互いに中身を理解していない子供の会話。


「だったら……えい!」


 そして彼女は俺にキスをした。


「やくそくだから。ぜったいにいーくんと○○は結婚するんだから!!」


 思い出した。これは夢でも明晰夢でもない。

実際に合ったことの復習。

彼女の名前は…………






「起きろ嘉神」


 世界が公園から体育館に塗り替えられた。


「せめて始業式で寝るな」


 どうやら俺は、校長先生の長い自己満足のような話を聞いている途中に眠ってしまったらしい。


『続いて生徒会長挨拶』


 既に、話は終わり、宝瀬生徒会長様の話が始まる。


 一度起きてしまったので、まじめに聞いてみる。


『みなさん。おはようございます。今年度博優学園は創立二百年というメモリアルな年です―――』


 我が母校、博優学園は二十一世紀から続く名門校だ。


 もちろんそれから二百年経っているので現在二十三世紀だ。何ら不思議なことはない。


 ただこの世界には、青い狸のようなロボットも青年トラン○スもいない。


 当たり前のことだがここは地球だ。人口は約三十五億人。この数字は二百年前の二分の一くらいだろう。


 よく俺は二百年前を強調するが、それは歴とした理由がある。


 二百年前、宇宙人が攻めてきた。


 冗談ではない。嘘偽りなく真実だ。


 宇宙からの生物を人と分類しないとするのなら地球外生命体が攻め込んできた。


 普通に二百年前の科学力では攻めてくる宇宙人に対抗出来ないのは火を見るより明らかだった。


 だが俺らはこうして普通に生活している。


別に俺達の中に地球人ではない命が混じっているとかそんなのはない。みんな純度100%の地球生まれ地球人のはずだ。



 そんな状態で対抗手段なんてあるのかと言われそうだが、たった一つだけ人間が宇宙人の科学力に対抗できる何かを持っていた。


 それは何か。超能力である。


 個人的には超能力という面白可笑しい存在を認めたくないのだが、実際にあるのだ。


 彼ら約百人は攻めてくる宇宙人を撃破した。


完勝とはいかなかったものの撃墜することに成功した。


 それで物語が終われば万々歳だった。だがそうは問屋が卸さなかった。


 それから一年後、超能力者による支配が始まったのだ。


 彼らは多くの人間を殺した。それこそ宇宙人と大差ないくらいに。


 もちろん普通の人間も対抗したのだが、宇宙人との戦いで疲れ切っているときだったため敗戦色が濃厚だった。


 結局、この戦争(第三次世界大戦、またの名を超能力者戦争)はたった二人の超能力者が一般人の味方をして非能力者に勝利を導いたらしい。


 その二人がどうなったのかは知らないが、きっともう死んでいる。だって約二百年前の話だから。


 だがそれにより、残った超能力者が問題視された。


 考えてみれば百人で戦争を優勢まで持ち込むことが出来るのだ。問題にならない方がおかしい。


 そもそもあの第三次世界大戦は一般人が超能力者を虐げたことから始まった戦争である。また繰り返すわけにはいかないのだ。その点あの戦争は超能力サイドの勝ちといえようが。


 だから当時の世界政府は共存という手段を執った。


 反対意見も多かったが、宇宙人、超能力者との戦争で多くの被害が出り文化レベルが衰退するまで陥った地球人には、再度戦争という選択肢を選ぶことはできなかった。


 滅びた文化や科学技術を途中からやり直した結果が今のこの二十三世紀である。

おかげさまでこの二十三世紀は二十一世紀と文明レベルが近くなっている。

もし200年前にタイムスリップしてもほとんど不自由なく生活することができるだろう。


 現在世界の約1%がギフト(二十一世紀までを超能力二十三世紀をギフトとする)所有者である。


 この数字は少ないと思うかも知れないが、そんなことはない。

個人的には多すぎる。


 なぜなら35億割る百は3500万だ。


 百人で戦争を行うことが出来るのにその35万倍ときた。


 多すぎるという言葉の意味を理解してもらえただろう。


 だからこの学園生徒1224人のうち、28人はギフト所持者である。1%ではないのは、この学園にはそれなりの異能者のための設備が整ってあるから集まってくるのだ。


 もちろん俺はギフトホルダーというへんてこ集団ではないが、ただ、あそこにいる生徒会長宝瀬先輩はギフターである。


 そんな風に外れた人間が普通に生活しているのだ。


 そんなことを考えているうちに始業式が終わった。




 俺は夢のことをもう忘れていた。




 昔からの伝統なのか、我が学園は始業式を終えてからクラス替えがある。


「一樹。十組だけは違うといいよな」

「ああ」


大体組なんてどうでもいい。問題なのはそこにいる人間だ、という人はよく聞いて欲しい。


 十組。通称『人外クラス』


 十組はギフトホルダーを集めたクラスだ。


 十組のクラスは特別製で、なんでも防弾ガラスだとかマシンガンをぶっ放しても貫通しない壁だとかそれはもう色々な設備が備わっている。


 だが値段が張るらしく一つ作るのに八桁らしい。だから異能者を一つに集めるのだ。


 それくらいのことをしないと異能者を防ぐことは出来ないのだ。まあそれでも一学期に一回壊れているのはどうかと思うのだが。




「クラス名簿回すからそれぞれ自分のクラスを確認して速やかに回すように」


俺の出席番号は6番なので一番後ろの席だ。この席気に入っていたんだけどな。


「残念だったな。嘉神」


五番の席(名前は忘れた)が俺のクラスをネタバレしてきた。


『 嘉神一樹かがみいつき 二年十組 出席番号 9番』


「……………」

「まさか一樹。十組なのか?」

「そのまさかだな。うん」


 現実を呑み込めない。


「残念だったなぁ。ま、一年間の辛抱だ。人生長いんだしむしろいい経験となったと考えたら……っておれもかよ!!」

「ざまあ」


仲野雄太も俺と同じ十組だった。自分のことで頭いっぱいになっていて確認するの忘れていた。


「逆に考えよう。3年の時に十組にならずよかったって」

「それもそうかもな」


非能力者が10組に2年も居続けたことはないと聞く。

その説を信じるなら、俺は受験シーズンの3年次に十組のいざこざに巻き込まれずに済むってことだ。


「じゃ、これでホームルームを終わる。それぞれ新しいクラスに行くように」


元担任の指示でそれぞれがばらばらに動き出す。



 十組のクラスはもう人が集まっていた。どうやら俺らで最後のようだ。


 博優学園二十八人の異能者のうち、十人が二年生だ。つまり教室の中にいる十人は須らく何らかの能力を持っているということになる。


 逆に入るに入ることの出来ない俺ら三十人は普通の人間なんだが。


「お前ら早く入れ」


恐らく担任になるのだろう女性の先生が扉を開けてこちらに話しかけた。


 渋々入る俺ら。


 周りをざっとみる。うわ……金髪にピアスを付けた明らかに不良そうなやつから、普通の眼鏡少年までいる。




 異能者の見分け方として髪の色が違うというものがある。


 異能者は遺伝子が少し変なことになっているらしく、ピンクや緑の髪といったショッキングな事が起きやすくなるらしい。


 もちろんこれは間違えた見方で、あくまで起こりやすいというだけで、黒髪のギフターだってわんさかいるし、病気で髪の色が変わった普通の人間や、何ならギフターに憧れて面白可笑しく髪の毛を染める連中だっている。

逆に黒や茶に染める人だって大勢だ。


 だから中にいるクラスメイトの数人がファンキーな髪色でも不思議なんてないのだ。


 先程金髪といったがあれはどちらかと言えば黄色に近いし、酷い奴は赤と青と緑の三色の奴だっている。




「さっさと座れ。ホームルームを始められんだろうが」


たぶんこの先生も異能者だ。そうでなければ、こいつらを止めることは出来ないだろう。



「(なにこれ……)」


 一組から九組までは男女分かれて座る。ただ十組は男女関係なしに名字だけで座席を割り振られるのだ。


 その結果が、四方向全異能者という、蛇に睨まれた蛙もビックリな状況である。


 今日この日程、『嘉神』というけったいな名字を呪ったことはない。



「自己紹介はまだだったな。知ってる者もいると思うが私は高峰恭子たかみねきょうこだ。これから一年このクラスの担任をする。担任というのは形だけで、本来は異能者の監視なんだが。だから私はどの授業中でもだいたいここにいる」


そして、各々が自己紹介をした。至って普通である。強いて変な奴を上げるとすれば黄髪で色んな所にピアスをしている男の自己紹介が


『おれがこのクラスで最強の時雨驟雨しぐれしゅううだ』


くらいだった。


「分かっていると思うがここは特設クラスだ。お前ら問題起こしたら分かってるか」


特に問題を起こしそうな、俺の二つ後ろの時雨を見ながら先生は言った。


「それと他の奴らもだ。私が守ってやるが、それでも変に騒ぎたれるなよ。私だって人間だから正しい方の味方だ。それを忘れるんじゃない」


そうしてホームルームは終わる。


 高峰先生が職員室に戻って数分後



「おいてめえ!どういうことだ!」


 後ろの席から怒鳴り声がした。


 怒鳴り声を上げたのは時雨というやつで喧嘩を売られたのは仲野だった。


「………」


仲野は露骨に目をそらす。


「お前らも何じろじろ見てんだよ!ああ!」

「さすがにやめろ時雨。これ以上は問題になるぞ」


 友人らしき人の静止をするが

「―――」


 仲野が何かを言った。


 俺は何て言ったか聞こえなかったが、それを聞いた時雨がかっとなって仲野を殴った。


 こうなってしまうと周囲が無関心を貫こうとする。


 多くのクラスメイトは面倒事から逃げるように教室から出ていった。


 理由は何か知らないがこいつは俺の友人に暴力を振るった。


 俺は黙って近づいてみぞおちを殴る。


 時雨の口から空気が抜ける音がした。


 いくらこいつが強かろうと変な能力を持っていようと、人間である限り人体の急所は変わらない。


 俺は昔武術を色々とやっていたので、素手戦闘ならこの学校の五本指に入る自信がある。


「所詮外れようと人は人ということか」


 時雨は、お腹を押さえて、くの字に座り込む。


「おい確か、嘉神!」


 仲間の一人が俺に何かを言う前に


「理由は知らんがこいつは俺の友人を殴ったんだ。俺が殴る理由は十分だ」


 それだけ言って、俺は帰宅した。



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