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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7.5章 外道五輪
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外道五輪

これにて7.5章終わり


時系列では、この1時間後に 『善意の矛先』です。




「これを」


 彼女が俺に渡したのは束ねられたA4のコピー用紙だった。


「なんだ?」

「最新の超者ランキングよ」


 以前俺は公表されるは月一だが、更新自体は毎時に行われているといった。


「――――復旧したんすか?」


 シュウが聞き返すように、沈黙の666以降は更新すら行われていなかった。


 そのランキングを決める人達が、死んだり入院したりで、それどころじゃなかった為だ。


「ええ。ただ仕様がかなり変わっているの」


 真百合の説明を聞くに、今までは複数人のランキングから平均を取ったりしてそれを発表していたらしいが、その中の何人かが退職し、別の人を補充したため、元通りの状態に戻すのは不可能だった。


 だったら残った人達で最適なランク付けをつけようと話になり……


『その能力者がどれだけ周囲に影響を与えるか』


 を主観としたランク付けになった。


 今まではその能力で戦況をどう自分達の優位に進めるかが主な焦点だった。


 例えば真百合の反辿世界リバースワールドが強力なのは周知だが、それそのものの能力ではほとんど意味がないため、ランクとしての評価は低い。


 何より評価対象が、能力そのもの。

 真百合そのものは評価されないため、彼女はランク外になっている。

 逆に真夜ちゃんのように馬鹿でも強力なギフトはかなり評価される。


 というわけで今までランク外だった真百合は、新ランクではかなり上位に位置しているらしい。


 その説明を受けたところで俺は上から読みながら、そして捲っていく。


 顔写真付きの個人情報を勝手に見るという罪悪感があるが、それすらもどうでもよくなるような情報が、ここには記されているんだろう。


 覚悟を決め、読み進める。


・1位 王陵君子


 これはいいだろ。問答無用に強いというのは世間の一般常識であり、それは間違いじゃないのを俺は知っている。

 多少の仕様が変わった所で、その評価は揺るがない。


・2位 嘉神一樹


 前回は3位だったので、1つだけしかランクアップしていない。


 遂に2位になったか。


 それ以外に感想は無い。


 2位も3位もあんまり変わらん。


・3位 祟目崇


 顔写真を見るとどうやらホスト風の男が、この3位の人だ。

 とはいっても個人的に話をしたことないからどんな人なのかは分からないが。


 いつか戦うことはあるんだろうか?


・4位 叢雲天狗


 確か先月3位が氷室という人だったので、その人がランクを下げこの人が挙げたことになる。

 なんかむさいオッサンの人だ。


 脳筋っぽい。


・5位 宝瀬真百合


 実を言うと彼女が10位以内にいることを察していた。

 アナザーはそこまで強くないが、真百合そのものが圧倒的に強い。


 極端な話、能力:真百合でも通じるだろう。


 能力者としての影響力に、財力5割も含んでいることを考えれば、この程度はむしろ低いとすら思える。


・6位 九曜白夜


 これは俺と同年代っぽい傘を持っていた人。


 戦闘狂の帝国民で、唯一温厚だった人。


 ある意味一番仲良くなれそうな帝国民。


 ただ苗字がなあ。


 九曜って最近聞いた名だからなあ。


・7位 時雨驟雨


「おっ……おっぉぉぉおお」


 言葉にならない歓声を自分であげるシュウ。


 しかしそれを茶化すなんて思いは無い。


 シュウは能力至上主義、考え方は帝国側。


 野球少年が、メジャーでドラフト指名を受けたものだ。


「おめでとう」


 祝いの言葉に混じりは無い。


「ああ。サンキューだ。マジで嬉しい」


 とはいっても以前は10位台だった。

 予測できず、真百合が慌てることはないはず。


 ならばその続きに何かがあるのか。


・8位 氷室鴻丸


 大幅に下がったな。

 老兵の人。


 感想は特になし。


・9位 月夜幸


「ぶぼっ」


 思いっきり噴き出した。


「戦争には利用できない。でも、彼女を戦況に投入すれば間違いなく混沌と化す」


 そう真百合に言われて改めて考えてみればその通りだ。


 むしろ今までに載っていなかった方がおかしい。


「確かに驚いたけど、そこまで取り乱すことなのか?」


 驚きはしたが、取り乱しはしない。


「10位を見て。そこに全てが書かれてあるわ」


 真百合に促されて、10位の欄に書いてある名前を読む。



 そこに書かれていたのは――――




・10位 衣川早苗




 書かれていたのは俺がよく知っている女の子。


 俺の一番の仲間であり、そろそろ仲直りをしようとした子。


 赤い髪をポニテでまとめた、家系以外は普通の女。


「は?」

「はあ?」


 後ろから見ていたシュウも同じようなリアクションを取る。


 意味が分からん。


 同姓同名の他人かと思っていたが、顔写真は早苗のそれと同一。


 早苗本人だ。


 俺が保証する。


「意味が分からん」


 最初に思ったことを、もう一度口にする。


「間違いじゃないかって私も確認したのだけれど、これで間違いないらしいの」


 間違いだらけだろ。

 早苗のギフトはゴミカスで、シンボルはそこそこ強いが、それでもそこそこ程度。


 100位台に入れるポテンシャルは持っているだろうが、10番台はあり得ない。


 そもそも能力者として早苗は弱い部類だろ(超悦者スタイリスト視点)


「何か知っている?」

「いや、全く」


 というか真百合すら分からないことを俺が知っているはずがないんだが。


「確認するがこれは誤報とかじゃないんだよな?」

「ええ。私も何度も確認したし確かめさせた。それでも彼女の評価は揺るがなかった」


 じゃあなんだ?


 何者かによる攻撃か?


 コンピュータウイルスのように内部からの攻撃がされているのか?


 何のために?


 駄目だ。


 ここで考えてもらちが明かない。


 実際に目で見て情報を集めないと。


「ちょっと一回神陵祭に行って、香苗さんに会ってくる」


 取りあえずもう少しだけ早苗に会うのは引き延ばしたい。

 だが早苗の事は知らないといけない。


 ならば2番目に彼女を知っているであろう母親に会いにいくのは矛盾の無い行動だ。


 次元に穴を開けて移動。


 しかしどうやら人が大勢いるようだったので、衝突しないようにいつもとは違う場所に穴を開ける。


 マナーが悪いが、即刻敷地内の、それも屋根の上に移動させてもらう。


「……は?」


 そして俺は目の当たりにした。


 十数の神陵祭町の住人が、衣川邸に向かって両膝をつきながら拝んでいた。


 それこそ朝雛ざくろが俺にしていたように。


 神に祈る信者のように、敬虔に祈っていた。


「なんだよこれ」


 気持ち悪い。


 しかも俺が知らない人じゃない。


 何人かは普通に話したことがある、至って正常の人達だった。


 だが明らかにこれは異常だ。


 異常事態だ。


 もう四の五のなんて言っていられない。


 不法侵入して衣川邸の様子を探る。


 そこには香苗さん一人だけしかいなかった。


 しかし彼女は明らかに動揺しているのが目に見えてわかる。


「香苗さん?」


 恐る恐る呼びかけて、反応を見る。


「あ、嘉神君か。不法侵入を戒めたいが、今はそう言うことどうでもいい」


 そうだ。どうでもよかった。


 取りあえず香苗さんとは何とかまともに話ができそうだ。


「その様子なら君もまた変わっていないらしいね」


 彼女もまた俺と同じ思いでいたらしい。


「いつから……ですか?」


 しばらく神陵祭にはいなかったから、この変化がいつから始まったのか分からない。


「――さっぱりだ。うたたねから覚めたように気が付いたらこうなっていた」


 気づいていたらこうなっていた。


「今度は逆にこっちから質問するが、どこまで把握している?」

「いや、この町に戻ってきたのは久しぶりですし」


 1度だけ戻ったが、すぐに帰ったので、この事態に直面したのが今が初めて。


「だったらこの町をもう少し詳しく探ってみるといい。頭が痛くなるよ」


 香苗さんに言われた通りに、この町全体に目を広げる。


『衣川って子いいね』

『最高だね』

『あの子にボクも助けられたんだ』

『ウチもウチも~』


 早苗早苗早苗早苗。


 誰もかれも早苗の話しかしていない。


 しかもどいつもこいつも早苗を褒めること以外していない。


「なんだよこれ」


 何者かによる攻撃か。


 はたまた――――


「それはこっちが聞きたいんだけどね」


 ただぼそぼそと、香苗さんは口にする。


「多分答えてくれないんだろうけれど、それでもあたしはあんたに聞こう」


 それは、誰よりも俺の方が聞きたい質問。


 それを答えてくれたのは、少し先の緑黄の君。



「うちの娘は、何なんだ?」




 こうして俺達の名は世界中に広まる。


 嘉神一樹は、神を騙る悪魔と。

 宝瀬真百合は、人智を超えた魔女と。

 時雨驟雨は、現世を守る番人と。

 月夜幸は、善悪をごっちゃ混ぜにした天魔と。



 そして


 衣川早苗は、荒んだ世界を救おうとする「聖女」と呼ばれた。





 ある人は言った。


自らの本能のみで行動する生き方、まさに畜生であると。


人は更にそれを黒白の悪魔と呼んだ。



 ある人は言った。


常に戦を求める生き方、まさに修羅であると。


人は更にそれを刈安の番人と呼んだ。



 ある人が言った。


彼女が存在する生き方、まさに天そのものであると。


人は更にそれを赤血の聖女と呼んだ。



ある人は言った。


貪欲なるそれは、まさに餓鬼であると。


人は更にそれを群青の魔女と呼んだ。



 ある人が言った。


地獄を察して現れる彼女は、まるで地獄の使者であると。


人は更にそれを緑黄の天魔と呼んだ。



そうして不本意ながら俺達のグループ名が、決定させられた。




どれも彼も、人道とはかけ離れた5つの輪廻。


畜生、修羅、天、餓鬼、地獄


人から外れた外道の輪廻。




『外道五輪』





長かった7章、なにより前半が終わり、いよいよ後編に移ります。


当然ですが、8章は今年中に終わりません。

次回のネタバレですが、神薙さんが何で強いのかの説明、そしてインフレします。


まあ7章より長くないし、来年には終わるでしょう(慢心)


ですが8章に入る前にキャラ紹介と、長くなってきたので用語のまとめの話を入れて、8章に進みます。

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