表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7.5章 外道五輪
194/351

嘉神理論とその周辺

艦これを始めました(今レベル52)

 真百合と共に世界三周旅行(謙遜)を終え、アンビちゃんがアンリちゃんになった後。


 優先順位が低いが、それでもやらないといけないことを処理する。


 とりあえず俺の周り最低限の安否は確かめているが、もっと離れた人達、例えば血が繋がっただけの姉と妹の安否をまだ確かめていない。


 素のギフトホルダーが死ぬ可能性は恐らく5%程度

 ただ姉さんの場合、超悦者スタイリストに片足を突っ込んでいるため2%程度


 因みに俺の携帯は、色んな所からメールが来たためオーバーフローして壊れました。


 取りあえず連絡先だけは、バックアップを取っていた為、連絡をこちらから盗る分には問題ない。


 スイートルームに用意されたベッドから起き上がり、新しい携帯をポチポチ打ち込む。


 俺はこのタイミングが初めての余裕だったが、他の2人はどうか。


 再び横になってまどろむこと30分、着信音が鳴り響いた。


 急いでその内容を確認する。


 あて名は妹、折神双葉。


『こちら生きてます。お母さんも元気です』


 良かった良かったと、一先ずはホッとする。


 そして再び真百合と共に世界を飛び立った。


 その後携帯から着信が。


『いっくん生きててほんとよかったよー(*´▽`*)』


 と姉から来ていた。


 取りあえず二人は生きていたか。


「なあ真百合。真百合の周りはどうだったんだ?」

「嘉神君が知っている中で1人。笹見水晶って憶えてる?」


 憶えているかだって?

 当然だ。


「嘘だろ。あの先輩死んだのか!?」

「ええ。残念なことに」


 笹見水晶先輩。

 真百合が二年に降年したことでひと悶着を起こした先輩だ。


 最後まで友の為に戦ったのに、まさかここで死ぬなんて思ってもいなかった。


「でも残りの二人は生きているわ」

「誰だっけ?」


 いたっけ?

 多分読者も忘れているから、言及しなきゃみんな幸せになれると思うんだが。


「そうね。そんなのいなかったわ。ごめんなさい」


 真百合も空気を読んでくれ、取りあえずいなかったことにしてくれた。


「弟や、いもう……宝塚は?」


 流石に弟君の安否はちょっとだけ気になったりする。


 絵に命を賭けた少年。

 才能はあるが、ホンモノにはなれそうにない中学生。


「愚弟は生きていたわ。ただ……あいつがね」

「彼女も死んだのか?」


 宝塚生罪

 オレンジ色をした真百合の劣化2Pカラー


 強いて特徴を上げるとするなら、入れ替えるギフトを所持しているということか。


「いいえ。あの子……逃げ出したのよ」

「逃げ出した?」

「ええ。混乱に乗じて宝瀬の監視網から抜け出したわ」


 真百合を怒らして折檻中だと聞いていたが……よく逃げ出したものだ。


 まあ入れ替えるんだから、人と人の場所を入れ替えたら簡単に脱獄できるんだから、目隠しを外せば案外簡単に何とかなるのか。


「で、居場所は?」

「さあ? 調べようと思ったら調べられるけれど、その気になれるかといわれたら、そうはならないわね」


 妹に厳しいのか。

 それとも宝瀬だから近親の女に厳しいのか。


 さっぱりだ。


「それに二週間過ぎて帰ってこないってことは、既に死んでる可能性だってあるのだから」

「ふうん。真百合がそれでいいならいいんだけど…………」


 俺がその気になれば、探知してあの子の居場所を知ることはできると思う。

 ただ恐らくこれは真百合たちの問題なんだ。


 家族同士の喧嘩に近い。


 真百合に火の粉が降りかかり、火傷するようなら俺も介入するが、彼女では真百合に傷一つつけられない。


 何しろ真百合はメープルから新たに能力を手にした。


 ギフトじゃない別の能力。


 その能力の名は『うらまれるものコントロールジーエス


 分類を便宜上アナザーと名付ける。


 そしてその能力は、『過去の記憶の上書き』


 初めは敵意を持った相手を即死させる能力を寄越せと、交渉したのだが、ケチなメープルが「流石にそれは強すぎるのでNG」と言い始めた。


 そこで敵意を抱く前の記憶を上書きすることに落ち着いた。


 こういう能力を願ったのは訳がある。


 真百合は素晴らしい人間だが、狙われない訳じゃない。

 むしろ、素晴らしい人間だからこそ狙われる。


 嫉妬や逆恨みはもちろん。アカが彼女を神聖化しようと殺そうとしたこともあった。


 その全てを俺が排除していたのだが、やはり面倒というのがある。


 それこそメイド兼執事の楠木めしべさんから、同時進行をするギフトを貰ったとしてもだ。


 そこでメープルとの約束を使って、『害意を持った人の記憶が、その意思を持つ前までの記憶に上書きされる』という『時間』の能力を貰ったのだった。


 自主的に攻撃として記憶を上書きしても良く、なんとまあえぐいなあと思う。


 その所為で謎の記憶喪失になった人が大勢増えた……気がした。


 でもこれでもまだ真百合は安全になったわけじゃないのは確かだ。


 結局どんなにえぐい能力を持とうが『時間』のため、耐性を持たれると終わる。


 まあ、そのために俺が護衛しているわけだが。


 なんかもうちょっと効果的な能力があった気がしたが、真百合がこれがいいって言ったんだから俺に何かを言う資格はない。


 それとこのアナザー。口映し(マウストゥマウス)で模倣可能だった。


 どんな能力であれ、それが異能だという分類がある以上、口映し(マウストゥマウス)は有効だとメープルが聞いてもいないのに勝手に言っていた。


 ただしシンボルは模倣できない。


 神薙さんですら不可侵の領域だ。

 しかもこの能力はあれの贈り物にすぎない。


 俺がどうこうできるレベルを超えている。


 じゃあ俺が再び真百合とキスをする必要があるのかと聞かれたら、ノーと返す。


 説明が面倒だから模倣だのコピーだの言っているが、正しい能力は『キスした相手の能力が使えるようになる』ということ。


 先にキスをしてしまえば、その相手がトラックに轢かれたあと転生チート能力を貰ったとしても、俺も同じ能力を得ることになる。


 だから真百合とキスをしなくても、うらまれるものコントロールジーエスを手にしていた。


 その事を真百合に何度も説明したのに、ちっとも聞いてくれなかった。


 いざ使わないといけないときに、ひょっとして実は模倣できていないかもしれないという余念がでたらどうするのだ、というもっともらしい理論武装をされ、仕方なくキスをしたのだ。


 間違いなく俺のキス回数1位は真百合だ。


 それとついでに舌を搦める癖は止めたほうがいいといったが、善処すると言われたので、多分聞いてくれないだろう。


 悲しいなあ。


 つまり俺も記憶の上書きを使えるようになったわけだが、多分あんまり使わない。


 結局『時間』だ。耐性持ちには無力


 また雑魚狩り能力が増えたと月夜さんに罵られる。


 もっと強い能力だったら俺の護衛が必要なくなったのに…………まあ負担が減るからそれでいいけどさ。


「あと俺が確認しないといけない人は誰がいたっけ?」

「学園の人は?」

「そうだった」


 神陵祭町の住人の安否はさすがに確かめている。

 俺が知っている人は全員生きていたが、高校なので町外から来る人だっている。


 そいつらの安否を俺はまだ確認していなかった。


 とはいっても誰が町民で、誰が電車通学者か知らないんだよなあ。


 俺は太く長く少ない交友関係だからこういったことになると弱いな。


「真百合は知ってる?」

「この時期になると学校側に報告は来ているだろうから、それを謁見すればすぐにわかるでしょ」


 なるほど。


「どうするの?」

「教えてほしい」


 というかこれをどうでもいいなんてはいえない。


「じゃあちょっと待っててね」


 そう言って真百合が席を離れること数分。


「どうだった」

「恐らく嘉神君が知っている人は1人だけ」


 真百合が俺の交友関係を把握しているのは、ちょっと思うことはあるけれど、そこは気にしないという方向でいこう。


「誰?」

「天谷」


 天谷といえば…………あの糞レズか。

 お姉さまお姉様と早苗に付きまとって若干ウザかったんだよな。


「神はいたんだな」

「え?」

「神様同性愛なんて認めてないし」


 7つの大罪にしっかりと明記してある。


 子を作る目的以外の姦淫は悪。


 昨今で同性愛者を認めようという風潮はあるが、俺に聞かせればやりたいからやれる風潮を作れ。なんて言っているようなものだ。


 まだレイパーの方が、肝は座っている。


 例えるなら同性愛者はゴキブリがプリントされたTシャツを身に着け、レイパーはそもそもサンドバッグ。


 死ねばいいのに、って死んだんだったな。


 サンキュー(メープルじゃない方の)神


 天谷後輩に天罰を与えてくれてどうもありがとう。

 そして後輩を指導できなかった無力な自分をお許しください。


「なむ~」

「それきっと宗教違うわよ」


 よしお祈り終わり。


 グッバイカッミ


「学園といえばなのだけれど、嘉神君はこれからどうするの?」

「ん? 始まるのは10月からだろ?」


 9月いっぱいは全世界同時休校だ。


 むしろ10月頭に開校できる博優学園は優秀といえる。


「いくの?」

「そりゃ。高校生だし学校には行くだろ?」


 2年になって半分は休んでいるだろうが、俺はまじめな学生である。


「もうほとんど人生設計は決まっているのに?」

「むー」


 真百合が言いたいことはこうだ。


 はっきり言って俺の人生の選択肢は少ない。


 医者になるとか野球選手になりたいとか、そんなことを言える立場じゃなくなった。


 ナポレオンは革命の後皇帝になり、庭師にはならなかったように、俺の未来は狭まっている。


 特別な責任の大きいことをしないといけなくなる。


 その勉強を共学の私立で学ぶことができるのかということだ。


 それこそ高校球児がプロの素質があるのなら、大学なんか行かずプロに行った方が伸びるように。


 宝瀬真百合と言う最大のコネがある以上、学歴すら必要なくなった俺に学校に行く意味はあるのか?


 客観的に見れば無い。

 だがこれは俺の人生。


 客観なんて糞喰らえ。俺は俺の意思で動く。


「今年までは高校生でいたい」


 3月で中退する。

 最終学歴が高校中退という悲しいことになりそうだが、年収は? で追い返そう。


「分かったわ。じゃあ私の学園生活を3月までね」

「そんな別に合わせなくても」

「今さらよ。その発言はとっても遅いわ」


 真百合が5月に2年10組に入ってきた。


 振り返れば1カ月2カ月程度だが、間違いなく俺の青春はあそこに凝縮されている。


「でも真百合の学歴が」

「私、外国の博士号持ってるから」


 あ、はい。そうでした。

 俺が彼女に心配するなんて、逆に失礼だった。


「そんなに学歴が気になるのなら、名誉博士号でも勝手に作ってみる?」

「そこまではいいって」


 善意で言ってくれているのだろうが、それはまじめに勉強している人の冒涜だ。


 やっちゃいけない。


「……最悪何があっても……その………私の所に――永久就職すればいいのよ」

「お、おう」


 永久就職の意味が分からないが、言葉で推測すれば簡単にわかる。


 超絶ブラック職。


 でちでち火水木金金


「流石にそれはきついかなって」


 やんわりと断る。


 本音を言えば絶対嫌だ。


「…………」


 そしてなぜかフリーズする。


「おーい、真百合―」

「―――――は」


 あ、よかった。

 新手の攻撃かと勘違いしていた。


 突如立ったまま気を失っていたからこっちがびっくりした。


「私の発言の意味、分かってた?」


 うぐ。

 どうやら俺の翻訳は間違いだったようだ。


 恥ずかしいが正直に認めないといけない。


「ごめん。正直全く分かってなかった」


 なんかの慣用句か、それともスラングか。


 憶えていたら検索しよう。


「ふっ……はあ」


 本当に安堵したかのような深いため息をこぼしたあと


「ほんっとよかった……ぁ」


 今度はその瞳に大粒の涙を生み出し、今にも溢れだしそうになる。


 なんか俺が泣かせたようだが…………その理由が全く分からん。


「えっと……これ」


 滅菌処理された清潔なハンカチを作り出し手渡し、なんとか泣き止まそうと必死になる。


 真百合の行動は本当にわからない。


 凄いと思うことの方が多いが、たまに悪い意味にしか思えないくらいに意味の分からない行動をする。


 それが実は理由があっての行動なのか、真百合の悪癖なのか。


 たぶん俺はそれを一生知ることは無い。


 でもそれでいいんだと思う。


 すべてを知っていなくても、心の底から思いあえる仲間、それが俺達だ。




 俺達の周りは大きく変わったが、俺達そのものは変わらない。




 この時は、そう勘違いしていた。





真百合さんが新しく手に入れた能力、(耐性か上からぶち抜く以外で)どうやって倒せばいいか作者には分かりません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ