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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章後編 プロジェクト ノア
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沈黙の666 死

私は主人公最強モノ好きなんですけど、精神がそれ相応のものじゃないと気に食わないです



 取りあえずノリでやってきたけど、ぶっちゃけあんまり状況把握してないんだよな。


 我ながら中々かっこよかったと思う登場シーンだったが、その後のことを考えてなかった。


 少し整理してみよう。今分かっていることは

・ギフトが使えない

超悦者スタイリストを解除すると即死する

・それが世界中で起きている

・シュウが俺を生き返してくれた


 シュウのシンボル、混沌回路カオスチャンネルの能力は性質の付与。

 サバイバルナイフに“復活”の性質を込めてこの位置から投擲して突き刺してくれた。


 復活という性質、だから今こうして生き返ることが出来た。その時おまけを用意してくれて。


「おっと」


 最初から入手していた支倉罪人は神秘を否定する刀を所持しているという情報から、大切な鍵を突撃するときに上方へ放り投げていた。


 これでシュウのシンボルの力が籠ったナイフを、否定されずに糞老害に近づくことが出来たってわけだ。


「おい、いつき!」

「ん? 助けたお礼ならいらない。俺達は持ちつ持たれつの関係だ。ゲノム戦と生き返してもらったお返しだと――――」

「そうじゃねえ! 分かってないわけないだろ!」


 んー。なんか求めていてた反応と違う。

 個人的にはここで熱い友情シーンを挟みたかったんだけど。

 なんで怒っているかを考えないといけない


 ……ひょっとしてあれのことか。


「シュウ、もしかして、あの装置をさっさと壊さなかったことを怒ってるのか?」

「そうだ。いつき、なんっなんで? なんで先に装置を壊さなかった!?」


 シュウとしては自分が老いぼれを引きつけている間に、俺があの装置を壊してくれる展開を望んでいたのか。

 自分の命を投げ打ってまで万人を助けようとするなんて優しいなあ。涙が出そう。


 でもさ、それはやっちゃいけない。


「ねえよ。それはない。俺がそんなことするわけないし認めるわけがない」


 常識的に考えて、あり得ない。


「いいか。恐らく今この瞬間大勢のギフトホルダーが苦しみ多くのギフトホルダーが死んでいくだろう。で、それがどうかしたか?」

「お、おい」

「たとえギフトホルダーだけじゃなく、無能力者を含めても俺の答えは変わらない。知れないようなら教えてやるが、俺はこの世界よりも仲間の命の方が大切なんだ」


 たしかこれ月夜さんにもいったことある。

 だから殺すんだと言われていたが、はっきり言ってあの子の話はあんまり理解できない部分が多々あって困る。


「じゃあ、衣川は。衣川は――――」

「俺もよく分かんないんだけどさ、何となく理解わかるんだ」

「――は?」

「早苗は死なないって。こんなんじゃ早苗は殺せないって。傷つきすらしないって」

「なにを?」

「あいつは、強い・・んだ」


 最弱で最強。

 ある意味で早苗はそう言う存在。


「でさ、真百合だけど今回は条件外。苦しむことなんて一切ない。月夜さんだけど、このことを予期できないなんて思えない。痛み止めの薬でも服用していたと思う」


 結局の所――――


「早苗は死なない。真百合は傷つかない。月夜さんは負けない。そしたらさ、十分だ。もう俺の世界は守られている」


     ――――俺の世界はもう守られていた。


「だからさ、あとはシュウを守るだけなんだ。その他大勢なんて優先順位は1つ下。つまりそこまで俺が熱心に助ける必要なんかあんまりないんだよな」

「おまえやっぱ頭おかしいよ」

「最近そのネットスラングはやっているのか?」


 ふさわしくないところで連呼する。言葉の重みが軽くなっていた。


「とはいえ、俺が熱心に助ける必要はないが……熱心に殺す必要がある輩が一匹いるよな」


 何万何十万の人を殺そうとするなんて、極悪といっていいだろう。

 悪は絶対に許さない。

 それが俺の生き様。


「俺相手に勝てないから、初見殺しで罠を張って殺した。それは間違えじゃない。ただ勘違いするなよ。蛆虫。お前のような奴が必死に努力したところで、どれだけ頭をひねって策を練ったところで、勝てる相手なんてそこに寝ている父親ゴミしかいない」


 つうかなんで気絶してるんだ。

 ひょっとしてこいつ俺が思っている遥か下を行く無能なんじゃないのか。


 とはいえこいつを復活させないとちょっと困ることがある。


 シュウからもらった復活のナイフで、実の父親を突き刺した。


「おい起きろ」


 とくに意味のなくキン○マを蹴る。


「い、一樹?」


 俺の頭の中で、キンタ○ければ意識が復活するというのが定型になった。

 特に話したいこともないのでさっさと本題に入る。


「ギフトの封印は試したか?」


 この状況ならひょっとして有効かもしれない。

 これが上手くいくかどうかで、この後の動力が多く変わる。


「あ、ああ。時雨くんががんばって――――」


 勝った。とは言わない。

 もう既に勝っているんだから。


 だからこう言うんだ。だいぶ楽になった。


「そう、なら俺にもやれ」

「え? だが」

「うるせえな。あんたは俺の言う通りのことをしてればいいんだ」


 実の父親になんてことを。まあ育ててもらっていないのでセーフでしょう。

 育ててもらっていない父親なんて、ただの種馬と変わらん。


 むしろ経歴に傷をつけている分、種馬の糞程度の価値かそれ以下。


「やった、いつきのギフトを封印した。だが――――」

「封印ができているのはギフトが『物語』の口移しから『論外』の千早草に変化しているから。そんなことを言ってなんになる」

「あ、そうか」


 使えないなあ。ホント。


「あとさ、恰好つけたかったから恰好つけたんだけど、ぶっちゃけ一人で戦うの厳しいから手伝ってくれない?」

「えっと、それはおれにいってるのか?」

「そうだ。この状況で頼む相手なんてシュウ以外にどこにいる」


 父さんには頼まん。

 ゲノム戦は父さんのギフトが必要だったから共闘しただけで、もうこいつは俺達二人で何とかなる。

 いろんな手段を持っている俺がいうのはなんだが、邪魔なものは無い方がいい。


「正直両腕使えれば差し違える自信はあるが、いまは諸事情により片腕しか使えないんだ」

「その理由って――――」

「秘密」


 怪我をしているとか麻痺ってるとか、そんな悪いことじゃないから。

 切り札として使うタイミングを窺っているだけだから。


「でさ、さっきから黙っているのは状況の整理がつかないからか。それとも空っぽな脳ミソでありもしない策を練っているのか」


 自分がその策に一度引っかかったことは棚に上げる。

 勢いは大事。


「だったら代わりに教えてやる。この状況を打破することはできない。諦めろ」

「諦める? 儂が? 諦めるだと——――? これしきの困難、幾度も潜り抜けてきたわぁ!」

「そりゃ単に人生経験が乏しかっただけだろ」


 たとえ全力を出せなくたって、俺が本気になった時点でお前の敗北は決まっている。


「分からんか。もしも超悦者スタイリストの防御ではない状態で儂に近づいたらどうなるか」


 少しは状況の整理ができたか。

 もちろんそのことを考えなかった俺ではない。


「また苦しんで死ぬんだろう? それがどうかしたかよ。ただ苦しいだけだ。そもそも死が苦しくないなんて、いつどこの話だ」


 死ぬのなんて何度も経験済み。

 まよちゃんの事件で百回は死んでる。

 つうか俺2章に1章の割合で死んでるな。


 今さら怖がる必要はどこにもない。


 ん?

 なんで『物語』のギフトが使えなくなっているのに、メタ発言できるんだ?

 ガバガバなのはいつものことだから、気にしなくてもいいか。


「儂が勝つ。こんなところで負けるわけには――――!」

「そうやって威勢を張るのはいいんだけどさ、一つ忘れてない? というか気づかないふりをしているのか?」

「――――」

「これ、なんだと思う?」


 凧を掲げるかのように手首をひねらせ、とあるものを見せびらかす。


「!!」

「あ、わかった? じゃあ答え合わせをしようか。支倉・リンクイナ・アンビの髪の毛」


 目覚めた時に丁度近くに彼女がいた。


「小僧! アンビを……アンビをどうした!?」

「やだなー。そんな残酷なことを俺に言わせようとするのか。この外道が」

「どの口が……それをいうか……っ!」


 大変だったよ。あの子は祖父に俺の事を知らせようと最後まで必死に足掻いてた。

 まあ、友情パワーで復活した俺に勝てる道理は一切ない。道理を捻じ曲げない限りあの子の敗北は絶対だった。


「ああ、いいなその顔。そう言えば俺はあんたを苦悶に満ちた表情にさせた後殺すって決めたいたのを思い出したよ」


 初志貫徹といこうじゃないか。

 もうこいつの夢も希望もすべて奪ってやる。


 何も残してなんかやらない。


「覚悟なんて与えない。ただみじめに、負けて死ね」






次回と(ひょっとしたら次々回も)は過去編を挟みます。


敵キャラにフラグを立てていくスタイル


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