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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

7章 後編 プロジェクト ノア

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沈黙の666 二

思いっきり株が下がるキャラがいますが、元々最低値だからセーフ

ダン○ンロンパ3は未来編の方が今の所好きです。
作者としては霧○さんが最後まで生きていればそれだけで満足


 ギフトの封印。
 その発想はおれに無かったが、何が言いたいかくらいは分かる。

 今この瞬間においてギフトは足枷にしかならない。
 だったら封印して、毒を回らないようにした方がいい。自明だ。道理すぎる。

 むしろわざわざ聞く必要なんてないくらいに、良い案なんだ。
 すぐに思いつかなかったのも、封印といえばマイナスのイメージしかない。

 しかし今回に限ってはマイナスをゼロにする。
 デメリットが見当たらない。

 二つ返事で答えたい。

 発案者がこの人でなければ。

「何で自分からしないんですか」

 自分でやれよ。強いてはやった上で聞けよ。

「ほら。オレが失敗したら確実に死ぬけど、時雨くんならば苦しむだけですむだろ?」

 なあいつき。
 おれの周りに敵の方が多いのは何でだ?

 おれから見れば、いつきや神薙さんはまだ愛嬌がある。

 主張は一見合理的だ。
 けどそれを自分で主張するのは違くねえか?

 それに失敗しておれが戦闘不能になった場合、あんたじゃ絶対に勝ち目ないだろ。

 おれが攻撃に移れないのは失敗したら敗北だからだ。
 だがあの人は失敗したら自分が死ぬからという理由で動けないでいる。

 主張はその場しのぎの合理でしかない。
 無自覚でそれを言っているのがやべえや。

 ひょっとしてこれ、2対1と思っていたのはおれだけだったりするのか?

「何か思い当たるデメリットはありますか」
「封印してオレが死んだ場合は、封印が解除できなくなる」

 だったら尚更自分でするべきだろと本気で思っているが、そんな空気を乱すことをおれは今ここでは言えない。

封剣守偽ロックンロールは封印するシンボルだが、封印という事は解除方法も存在する。何かを破壊するとか、何かを唱えるとかだ。だがそれらはすべてオレが生きているという場合に限る。もしも死んだら解除できない。それゆえが『法則』」

 この人に万が一のことがあった場合ギフトを失う。

 おれのギフトに対する執着は人並み以上だと、自覚している。
 死んだ母さんの形見ともいっていいんだ。使えなくなるなんて考えたくもない。

 おれに信頼できない男に自分の命の次に大切なものを預けろと言うのか?

 ・・・・・・しゃあないか。
 今はどうこういう言える場面じゃない。

 信頼も信用も出来ないけど、これしかやる手段が無い。

「分かりました。封印してください」
「そうか。ありがとう」

 狙ってかどうかは知らねえが、ここで拒否したら凄い嫌な奴になってしまう状況なんだよなあ。

「こっちはやったよ。さあ実際にきみがやってみてくれ」
「意訳、やってみて人柱になってくれ」
「ん? なんだって?」

 どうやらいつきの難聴は父親譲りらしい。
 知ったら怒りそう。

 いざやるといっても、本当にこの人のことは信用できないから、実は失敗しているんじゃないか、もしくは考えが間違えているのではないか、などなど不安がつきない。

「早くしないとたくさんのギフトホルダーが――」
「ちょっと黙っててくれます?」

 わざとやっているのか?
 この人いつきより人をイラつかせる才能あるんじゃねえの。

 決めた。つうか確信した。この人と共闘するのはおれの身が怪しい。

 もしこれで失敗したらすべてはおれの所為になるが、この人と2人で共闘した方が後悔することになりそうだからその選択をとる。

 うまくギフトが封印されていたら、この人とは二度と共闘しない。

 人生最大の賭けが、まさかこんな形になるとは思っていなかった。

 覚悟を決める。

 足に力を込め一歩だけ跳躍。

 痛みはなかった。

「おお。出来ているじゃないか」
「ちなみに解除方法はなんですか」
「自分で意思を込めた状態で『解除』といえばいい」

 意思を込めた状態か。ならば問題ないな。

「じゃあ行ってきます。おれに策があるんでここで待っていてください」

 差しさわりの無い範囲で、やんわりと断りをいれる。

「どんな策だい?」

 そんなのないんだよなあ。正直に足を引っ張られそうだから、一人で戦いたいなんて言えたらいいのに。直接そんな勇気はおれにねえ。
 ここはいつきを真似して

「万が一支倉に知られると厄介ですから」
「そうか。だったらおれは何をすればいい?」

 どうでもいいけどさ、高校生の指示待ちを待つ大人ってどうなんだ?
 ほんとどうでもいいけど。

 師匠もいつきもこの人のことを嫌っていた理由、具体的に何故なのか分かんないけど、何かやらかしているんだろうなってのは分かる。

 いつき達とは別ベクトルの関わっちゃいけない奴だ。

「じゃあ、なんかあったら呼びますんで、それまで待機を」
「分かったよ」

 分かっているならもう何もしないでほしい。

 宙返りからの天井に着地。上下が反転しながらのジャンプ、そのまま一気に重力に従う。

 一瞬、光どころか宇宙の膨張速度よりも速く、150階に向かう。

 実質的な0秒。一瞬のことゆえ支倉も対応できなかった。

 からの攻撃。無事天井を崩したが、支倉だって何もしない訳じゃない。

「やめろぁ! 儂の結晶を壊すではなああい!!」

 真横に跳ね逃げる。

 持久戦から短期決戦に戦況は変わった。

 こうなってもまだ五分五分にはならない。

 神秘の否定なら封印も否定されるかもしれない。
 その場合、攻撃や移動の状態で懐に入り込むのは危険だ。

 戦いはいわば缶蹴りから鬼退治ができるケイドロにシフトした。
 できることは増えたが、今度は近づかれたら負けになったんだ。

 縦横無尽、壁床天井崩れた瓦礫、ピンボールのように跳ね返りながら距離をとる。

 恐らくこれからこのナイフに性質を込めることになるのだが、それはあとでいいと判断する。というのも性質の付与は神秘を否定する天我に絶望的に相性が悪い。
 何かがないと使えないシンボルだが、何かがあるってことは形がある。形があれば距離があり、距離があれば範囲内になる。

 状況は少しだけ好転したと思うが、結局おれの意思はあの人のせいで無駄になってしまった。まあ、これはさすがに言いがかりか。

 だからおれが今とれる手段はこれだ。

 天井のコンクリートを握りしめ、投げる。

「……このぉ」

 逃げることもできただろうが、はじき返す。

 そりゃそうだ。攻撃ゆえ速度はそこまで出ないが、防がないと装置が壊れてしまう。
 投げたのはコンクリ、そこまでダメージはない。

 しかも遠距離の連打は負けフラグってこともわかってる。超悦者スタイリスト同士であればダメージは通らないとすらいえる。

 だが今は守りきらないといけないものがある。
 そこを狙う。

 もう一度、壁のコンクリを握りつぶし、投げる。

「そう何度も同じ技が通じると思うなよ」

 ……支倉も同じ手を使ってきた。
 投げたコンクリートの塊を同じコンクリートの塊でぶつけ相殺する。

 こうなればもう支倉はうかつに移動できない。
 こっちに攻めてくる選択肢は完全に失われる。

 距離は詰めきれない。

 しかもこっちは160階で相手は151階にいる。投げるコンクリ玉の数はこっちが上。

 時間はないが、時間をかければもう勝てる。
 もちろん時間をかける気はないが、その事実があることが大きいはず。

「うぉぉおおおお」

 コンクリ投げの連打。
 半分は相殺され、半分は支倉の手で防がれる。

 だがこのペースならいけ――――おっと。

 ビュンと風をきる音がした。

 そりゃそうだ。俺も攻撃中は防御できないから気をつけてやらねえと。

 超悦者スタイリストの一撃は場合によっちゃ致命傷になる。
 それこそ、油断していたときとかだ。

 ただそれにしては少し狙いが曖昧だった。

「どこ投げてんだ!」
「――――どこだと思う?」

 この聞き方はいつきが何か企んでいる時と同じだ。
 なんだ? 何を企んでいる?

「どうやら小僧は一人で戦うようだ。無能を見捨てたのは良い選択だと思う」
「それがどうかしたか?」
「だが考え違いだ。無能というのは、いてもいなくても邪魔になる」

 目の前に何かが落ちてきた。
 それが何かははっきりと見えなかったが、すぐにわかる。

 嘉神一芽さんだ。

 コンクリ玉がヒットしたのか?
 初めから狙っていたのか?

 そんな感想よりもやっぱ先に思うのは――――
 案の定無能だった、ということ。
 この人に命を預けず本当によかった。

 流れ弾と見せかけ、最初から狙っていたか。
 ただその流れで倒されるのはねえだろ。

 まだ弱かったころのおれでさえもうちょっとしぶといぞ。

「恐らくはその動きができるのは無能のシンボル。確か封印系統の能力だと記憶している。ギフトを封印したのであろう」

 一度は驚くことはあれど、落ち着いて考えてみれば正解にたどり着く。
 やっぱおれよりはるかに優秀な人だ。だからこそこんなあほなことをしたのが許せない。

「ところで、その無能はこのままでいいのか?」

 落ちていく嘉神さんを放置していいのか。

「……」
「このままじゃ死ぬぞ」

 気を失っている。超悦者スタイリストはぎりぎりで解けていないが、天我で斬られでもしたら間違いなく死ぬ。

 だが助ける? もしおれが今あの人を助けるためにここから飛び降りたら、助けることはできても天我の餌食になるだけだ。
 ありえない。見えているブービートラップに引っかかるわけ……ない…………

「見捨てるか? それでいい。見捨てられるものなら見捨ててみろ。小僧はいま確実に人を見殺す」

「----」

「長年生きた男のアドバイスだ。人を殺した罪はせいぜい十年で償えるが、見殺すと一生ついてくるぞ」

 っぅっぅううう。

「このくそやろうがああああああああああ」
「ああそうだ。儂はくそ野郎だ。だがギフトホルダーはそれ以下の廃棄物だと知れ」

 重力に従って落ちる嘉神さんを助けるためには、超悦者スタイリストで移動しないといけない。
 飛び降りるだけじゃ間に合わない。

 支倉はただおれに近づけばいい。

 距離は完全に詰められた。
 天我の有効範囲内。

 封印は再び解かれた。

「ぐぅがあああああああああ」

 叫

 苦しい――苦しくるし狂しい。

 急いで防御に移行する。しかしその苦痛を忘れることができない。

 叫ぶ元気が残っているだけ、おれはまし。

 これの数十倍の苦痛をいつきは受けた。そりゃ死ぬよ。

「防御に戻したか、だが。もう遅い」

 短刀の攻撃だけは避けないといけない。
 左側から襲い掛かる凶線を右手で持っていたナイフで受け止めようとする。

 しかしそれはフェイク。

 その老体のどこに力があるのかわからない、強靭な前蹴り。
 おれたちは壁を突き破り、地面に突き落とされる。

 いつきが支倉ゲノムと戦って突き落とされたのと、同じ場所で同じシチュエーション。

 ただ残念なことにあの時のいつきは、わざとそうしたところがあるが、おれはただ単に吹き飛ばされてこうなっただけ。
 誰も助けになんか来てくれないし、何一つ策だってない。

 何よりもう戻れない。
 どうやって地上から150階に行けばいい?

 頑張ってもたどり着くだけで10分20分は必要。
 それもこれは妨害が入らなければの話。絶対に邪魔してくる。

 そんなにかかったら、もうおしまいだ。

 ――――やってしまった!!!!
 …………見捨てるべきだった。

 この男を見殺すべきだった。
 体が勝手に動いていたなんて甘えたことは言いたくないが、本当に咄嗟だった。

 考えるのが苦手だからって考えなかった結果がこれかよ。

 もうちょい思慮があれば、こんな馬鹿な選択をとらなかったのに。

「ちくしょおおおおおおおお」

 やっぱおれには無理だった。英雄にも勇者にもなれはしない。
 いつきだったら――――と視線をいつきが倒れている200階に目を向ける。

 恐らく支倉が最初に空けた穴がぽっかり開いていてそこから小さくいつきとアンビが見える。

 当然、いつきは死んだ人は死んだままであり、神のように生き返るわけがない。

 支倉はこちらを見ているだけで追ってこない。
 万が一投擲なんかされ、装置が破壊されたら一瞬でひっくり返ってしまう。

 いうならばそれにさえ気を付ければいい。

 150階まで飛ばすには必然的に攻撃動作になる。
 無駄に投擲しても苦痛を得るだけ。

 切り札の混沌回路カオスチャンネルは切れずして終わってしまった。
 もう一枚何かあればよかったのに。

 もう一枚あれば----

 ・・・・・・



嘉神一芽は悪ではないが、真面目系クズだったりロリコンだったり無能だったりと忙しいキャラです。

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