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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章後編 プロジェクト ノア
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七つの大罰

嘉神一樹→正義 宝瀬真百合→愛欲 月夜幸→幸福


やっぱラスボスには悪が無いとね。


なお絶対に倒せない仕様な模様。


「そう驚くことじゃないだろ。ギフトはあの星のバランス調整だが、そのバランスは支倉罪人によって崩壊した。ならば存在しても許される空間なんてここ以外存在しない。むしろ遅かったとでもいうべきだ」


 突如現れた着物を着た男と、付き人である巫女服を着た女に驚きを見せた2柱をたしなめる。

 当然その男の名は神薙信一。


「何やら人様を勝手に噂していたようだが」


 しらじらしいとすら思う。全能ならば全知ゆえ知っているはずなのに。


「父上…………あなたは!」


 この男は何も気づかないふりをして道化を演じている。


「何も思わないのか! 命が朽ち果てる姿を知らないとは言わせない! あなたは何も思わないのか!」


 それは当然の怒り。

 神ではなくとも同じ怒りを共有できるであろう。


「何も思わないかだって? 俺が見逃してやっているゴミ共についてか」


 しかしこの男は神ではない。悪意なのだ。


「思うことあるぜ。気持悪い。殲滅したい。ああ、思い出したら無性に腹がたってきた。決めた。殺す。蟲独ロンリーウルフ――熾天 同じ種族同士を殺し合わせる能りょ――――いいや、極限リミット。はッ、見ろよ。みっともなく殺し合いをしているぜ」


 無限に続くうちの一つ。極限。

 恐らくそうであろうと察していた、宝瀬真百合の推測は、今回もまた正答した。


 誰も喜びもしないが。


 当の本人、たった今一つの種族を滅ぼした男は、さぞつまらなそうに笑っている。


 一瞬で多元宇宙に存在した生命が滅び、唖然とする2柱。それを見てニコニコと笑いかける巫女と仮面のように一切表情を変化させない女神。


「素晴らしい能力です。さすがはご主人様」

「そうか。撫子を喜ばせることができたってことは、あのゴミもなかなか価値があったと認めざるをえないぜ」


 歪んでいる。歪みきっている。


「く、くるってやがる」


 どちらかの神が反射的につぶやいた。


「確かにな。それは認めるぜ。何しろ人以外の存在がいるってことが不快極まりない。この世界は狂っている。だから少しでも良くしようという俺の心意気を察するべきだぜ」


 話が通じない。


「だいたい世界を一つ滅ぼす程度で済ませてやっているのに、なんだその態度は。感謝される筋合いはあるが、怒りの矛先を向けられる道理はないぜ」


 言葉は分かる。だが常識もしくは文化が理解できない。


 彼ら自身も十分に外れているが、その2柱から見ても目の前の男は異質。


「正直に告白しよう」


 悪意は独り言を誰かに聞かせるかのように、己の真実(醜悪)を口にした。


「俺は人間が好きだ。愛しているといっていい。

会社の奴隷である日○人が好きで、

全方面に嘘をつく韓○人が好きで、

畜生で飯がまずい英○人が好きで、

銃とファックした米○人が好きで、

すぐ他人を見下す中○人が好きなんだ。

だが思うんだ。すべての人種が好きってただの節操なしだ。嫌いなものがあるから好きなものが生きる。このままじゃいけない。人間には愛を持って接さないといけない。だが何かを嫌いにならないといけない。そう思ったから――――――――人間以外を嫌うことにした」


 彼らは察する。

 これは悪そのもの。

 存在することが間違えている。


 しかしその憤りを感じていられるのは、メープルのお陰であると彼らは気づかない。


 己が存在できている理由は、メープルが人間性を残しているためだと。

 全ての生き物はこの悪意の許しがなくては、存在することが出来ないのだと。


「質問に答えろ! 人間が好きなことと異世界を滅ぼすことがどう繋がるんだ!?」


 真っ当な問いだが、答える者は真っ当はずれな存在。


 故に彼らに納得のできる答えは寄越さない。


「人間様というのはな、自分が嫌いな奴が不幸な目にあったらとっても気持ちがいいんだぜ。それこそ自分に返ってくるメリットがなくったって、多少の不快感を買ってまでもして、再び求めたくなるくらいには心地のいい気分になる。最高に気分がいい。ならば人外はそのために、人間様を楽しませるために存在するのだと知るべきだ。礼儀を知れ」


 その傲慢に、ハヤテは口を開けない。


「復讐だ。だが復讐しないといけないが、その顔が分からない。人間が豚の顔を見て区別がつくか? ゴキブリの姿を見比べてこいつが我が家のゴキブリだって分かるか? 分からないだろ? だからそうなったら当然、全て殺す。殺して殺して殺して、取りあえず認識できなくなるまで滅ぼす。そうされることだけのことを奴らはしてきたんだから。歴史を知れ」


 その憤怒に、シンジは開いた口が塞がらない。


「俺は人間を愛している。愛だ。愛がある。愛する者のためには何をしてもいい。愛する人と共に生きたいって考えて何が悪い。むしろ邪魔をするほうが悪い。だってそこに愛があるんだから。愛なら仕方ないんだぜ。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ。馬の代わりに俺が蹴るんだ。俺の恋路を邪魔する奴なんてみな等しく死罪になるべきだ。痛みを知れ」


 その嫉妬に、メープルは目を合わせない。


「面倒だ。わざわざ何で俺がそんなことしないといけない。もうそういうふうにシステムが出来てしまった。新たに変更する方がよほどエネルギーを使用する。それこそ、現存する全ての宇宙を犠牲にしても足りないくらいだ。ま、俺の力を使えば一瞬でケリがつくが、まさかそこまでしてもらおうなんて思うのか。自分が無力な所為で被害を被っているのに、その対策を出来る人間様に全て担って貰おうって言うのか? 恥を知れ」


 その怠惰に、ハヤテとシンジは唇を噛みしめる。


「なぜ遠慮しなくてはならない。人は人で無限に選択肢を与えられるべきなんだ。たとえ人の世界で奮うことのできなかった人でもほかの世界でならきっと頑張れる。俺はそう信じてそのためにいろいろなことをしてきた。全ての人間には平等にチャンスが必要なんだ。そのためならどんなことでもしないといけない。異世界がガバガバになろうが知ったことじゃない。愛を知れ」


 その強欲に、シンジとメープルは握りこぶしを震わせる。


「弱肉強食。そもそも先に言ってきたのはあいつらの方だ。俺は覚えているぞ。吸血鬼や神が愚かにもこういった。人間は餌、人間は下等種、人間は滅ぼすべき存在。だから逆に殲滅して人間側の正当性を証明したのに、いざ次は手のひらを返してこちら側の否を問う。はあ? 見苦しいにもほどがある。無能にもほどがあるよな? 器を知れ」


 その暴食に、メープルとハヤテは吐き気を堪える。


「シンフォフィリア、アルゴフィリア。俺は自然災害や他者を痛めつける行為に性的興奮を覚える。ただもちろん、そんな事を人間にやらせるわけにはいかない。いわば代償行為。人間の世界で自然災害を引き起こすわけにはいかないから、代わりの別の世界で引き起こしているだけ。凌辱ゲーを買ってやっているようなものだ。お前達は男子高校生に精子数千万匹が死ぬからオナニーをやめろというのか? 道理を知れ」


 その色欲に、神は皆憤りを感じるのだ。


「まったく本当に出来が悪い。なんで俺の近親はこうも出来が悪い。もっと砕いて説明してやろう」


 自分の意見が伝わっていないのを知ってもっと分かりやすく説明する悪意。

 だが当然、伝わるわけがない。


「アンチヘイトを望むなろう読者。復讐物が好きななろう読者。恋愛小説を読みたいなろう読者。他者からチート能力を貰いたいなろう読者。スローライフを楽しみたいなろう読者。ざまぁ系が好きななろう読者。すこしえっちい小説が読みたいなろう読者。それとすべて同じなんだよ」


 もうこの男には救いが無い。

 救う手はとっくの昔に握りつぶした。


 誰一人これの手を掴むことは叶わない。


「だから俺への批判は読者の批判と同じだぜ。読者あってのWeb小説で、読者そのものを否定する。ふざけんじゃない。たとえ世間や作者が許そうが俺は絶対に許さない。何があっても俺が持てるすべての技能を尽くしてまでも、否定を否定する。お前たちは正しいのだと声をあらげて叫ぶ。俺達は悪くない。間違っているのは社会のほうだ」


  吐き気すら愛おしく思える極悪。


「そこら辺のラスボスなら1つですませる正論を、俺は7つ用意したぜ。これはもやは真実だ。そう思うだろ?」

「はい。その通りです。ご主人様」


 ハーレムズにおいて、最大の支持者である狂信巫女が同意する。


「つまりこれは罰なんだ。誰も人外ゴミを裁かないから、俺が代わりに七つの大罰を下した。己の罪を知るがいい」


 なにも思えない。考えたくもない。

 人はどうしようもない困難に直面したとき、思考が停止する。


 それがいま2柱に起きている。


 どうしようもなさすぎて、存在そのものを否定してしまいたい。


 そんな2柱を見かねて、たった一言メープルは言葉をひねり出す。


「な。ひっでえだろ?」


 満場一致とはならないが、多数は同意するのだった。




 いうなれば神薙サイドと神様サイドと人間サイドはじゃんけんのような関係である。


 神は人に強く、人は神薙に強く、神薙は神に強い。


 だが誰が最強グーかは自明。


 最強には勝てないから、せめて被害を減らすため、パーをチョキが狩ろうとしている。

 無論そんなことをすればグーがチョキを狩る。


 誰もグーをとれないが。




 一時沈黙が場を支配していたが、静寂をやぶったのは頭の悪い眼帯の男シンジである。


「兄が強いのは分かった。だが今ここならチャンスだろ! 俺様達3人でぼこりゃいいんだ。最果ての絶頂オール・フォア・ザ・ラスト・ワンは、シンボルを対策できないっていうんだったら、俺様のシンボル、大断篶エンドロールで何とかなる!」

「そうだ。シンジの言う通りだ!!」


 2柱は戦闘態勢をとる。

 可能性を操作するシンボルと、○○○○○能力のシンボル。


 何より○○○○の能力のメープル3柱で挑めば、最果ての絶頂に対しては少しだけだが、チャンスはある。


 だが神薙信一に対しては全く持って無力だ。

 このまま戦闘になれば、一瞬にして2柱は死んでいた。


 しかしそうはならない。


 彼らを救うのは、やはり慈愛の女神メープル。

 頭を殴り飛ばし、シンジの気を失わせたのだ。


「僕に不意打ちで倒されるようじゃ、勝てるわけないだろ」

「何を」


 なぜ邪魔をするのか。

 理由は一つだ。


 彼らを守る、しいては悪意に晒される理由を作らせないため。


最果ての絶頂オール・フォア・ザ・ラスト・ワン――――あれ、ただの弱点だから」


 その言葉の意味は今のハヤテには理解できない。


「そうだぜ。いやはや驚いた驚いた。まさか俺の弱点を教えるなんて、出来の悪い妹はひょっとしたら俺を殺すじゃないかと思って、殺しかけたじゃないか」

「じゃ、弱点だと?」

「そうだよ。弱点だ。108個あるうちの一つ。すべての能力を無限に持っているそれが弱点だって言ってるんだ」


 現実は優しくない。一歩間違えれば死んでいた。


 それでも子供に常識を教える母親のように厳しくも優しく説く。


 人間しか愛さない神薙信一とは違い、全ての命に慈愛をもっている。


「だってねえ、そんな能力は」


 悪意と救済の共通認識。


 覆しようの無い真実。


「シンボル・最終傀エピローグの前には、ゴミ同然なんだから」





神薙信一→人間


つまりどういうことだってばよ?


淫獣「宇宙のエントロピーの為に、僕と契約して--」

神薙「あああああああああああふざけんな死ね。エネルギーが足りない? お前らが家畜になりゃ解決するだろうが。 人の為に死ね、すぐ死ね。いま死ね。ただちに死ね。あああああああああ」

淫獣「    」



そして倒せないことに重点を置いた場合、強いだけじゃ物足りないと思うんです。

あり得ませんが神薙さんが倒された場合、神を含めた全種族が人類を殲滅しにいきます。


倒せず、主人公に倒すシンボルすら与えず、倒してしまうとデメリットが大きい(神様サイドにとっての)ラスボス、神薙信一


最後にこの小説の真のテーマですが、ジョ○ョと同じ人間賛歌です。


ただしなんとルビをうつかは想像にお任せします。


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