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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章後編 プロジェクト ノア
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悪意の矛先

ここから3話から4話神様サイドの話です。

それとカクヨ○って糞サイトですが、きにいっている所が二つあります。

メモ用紙として使えば非常に便利ですので、掲載せずにネタを整理したりしてます。


それともう一つは、キャッチコピーを使える点です。

 神層最上位

 並の神どころか上位の神ですら、存在することができない完全な白の空間。


 通常そこに存在できるのは1柱のみだが、今この瞬間において3柱もの神が集っていた。


「どこから話そうかと思ったけど、やっぱあいつの話をちゃんとしないといけないから、これから神薙信一の話をしよう」


 現最高神メープルと対面するのは、人間でいうのなら6歳児になろうかという幼い容姿をしている。

 しかし、すでにその実力は本物。

 現状彼らを退けられるのは、どの世界を見渡しても片手で数えるほどしかいない。


「今から221年前、1匹の鬼が生まれた」


 彼らは黙って柱神の言葉を聞く。

 これからの話がとてつもなく重要であると、知っているから。


「その鬼は角があるわけではなく人並みの形をしていたが、肝心の人とは遥か掛け離れ、周囲の人間は母親すら含めて畏怖した」


「あまりにも他とは外れた異常バグ。それを知った神は狂喜した」

「何しろ神にとってどれほど掛け離れようが所詮は人。家畜と同じ」

「いったい誰が豚の突然変異に気にかけるのか。あいつらにとっては最高の餌が誕生したんだから」

「だから神は何としてでもあいつの魂を食べようと画策した」


「しかしあいつは神の策略すら掻い潜る」

「母からも外敵からも殺されかけたが、回避したり時には逆に殺したりもした」

「そんな時にまだ人間だった僕に拾われ、僕らは兄妹となった」


「ついでだけど僕は神の策略に巻き込まれて死んだ」

「で、死んだら転生するか食われるのが普通だったんだけど、なぜか僕はそれをすっ飛ばして神になっていた」


「理由は考えるまでもなかった。あいつの妹になったからだ」


「義兄のおかげだと。そしてあいつこそ真の神になるべきだと」

「だから僕は当時あの世界を統べていた神を倒し、代わりにその世界を統治した」

「ただあの兄に神を継がせることを目的として」

「それが世界の平和に繋がると思っていたから」


「だけど、ある日。ふざけたことが起きた」

「最古最強最悪の悪母神が何を考えたか宇宙人として地球を破壊しに来た」

「なにしろ悪母神は他の神々すべてに嫌われ怖れられた。最強最悪の原初神」

「そいつを倒すという建前で神々は生命を食らっていたのだから」


「あれ自身がそうする理由としては暇つぶしなんだったと思うけど、今にして思えば癌細胞治療だったんだろうね」


「まあそんなわけで、義兄に勝ち目はなかった」

「あいつはまだ人間で、神の僕にすら勝てない」

「僕じゃない神も、あいつの特異性に気づいていたから、食べないなら寄越せなんて横槍が入ったこともあったっけ」

「誰も彼も神も僕も生き残るのは不可能だと察した」


「だから僕はせめて自分の命を捨ててでもあいつだけでも助けようとした」

「だけどあいつは断った、というか逃げた」

「僕の統治する世界から自力で異世界に転移した」

「もちろん其処を統治する神もいたけれど、そいつらにしてみれば極上のエサがやってきただけだから誰も気にしなかった」

「誰も気にも留めなかった」


「それから数年。人類がいよいよ危なくなったころ」


「あいつは数多の世界を渡り歩き、そして僕らが気づいた時には」


「悪母神を封印していた」


「いやはや、マジで愕然としたよ。僕だって神になった義兄になら何とかしてくれるとは思っていたけど、神にならずに最悪を倒しはせずとも封印するなんて思えなかったんだから」


「でさ、そこで終わっていればよかったんだよ」

「あいつはさ、数多の異世界を渡り歩いて見ちゃったんだよね。神々の悪行を」

「最終的に勝つためにいろんな物を犠牲にしたけれど、そのほとんどが神の所為だった」

「家族も友も恋人も、並行世界の住人すべてを神が無能だったから失った」

「その恨みは計り知れなかった」

「恨んでいるんだよ。あいつは神を」


「だから今こういうことになっている」


「悪母神を倒すことのできなかった神々が、単独で封印できたあいつに勝てるわけがない」

「虐殺、惨殺、鏖殺」

「いやいや、自分たちの無力さを神になって思い知らされるとは思ってもいなかったね」

「そして幸か不幸か、僕はあいつの愚妹だから。あいつが高みに昇ったことによりさらに強制的に引き上げられた。それこそ当時四天王神の二番手をはれるくらいはね」


「ま、そんなわけで神の統治は実質200年前に終了した」

「生き残ったというか、生き残らされた神々は奴隷のように世界を統治させられているのが、現状ってわけだ」


 無限ですら足りない世界を眺めながら柱神メープルは淡々と過去に何があったかを2柱に告げる。


「馬車馬のように働かされるのは別に文句あるわけじゃないんだ。ただそういう背景があったってことを知ってもらいたかっただけで、僕らが何を問題視しているのかは全く別の話で、これからする話ってわけだ」


 ここでようやく前置きが終わった。

 真に重要なのはここからの話。


「ギフトってさ、なんだと思う?」

「バランス調整だと朕は聞き覚えがあるが」


 答えたのは左目が髪の毛で隠された子供。

 その姿のままで現界しようものなら、皇族と間違われるであろう。


「それ、50点」


 答えた本人も正答であるとは思っていない。


「エネルギー保存の法則って知ってる?」

「そりゃ、知っている。俺様を誰だと思っているってんだ」


 答えたのは左目を眼帯で隠した子供。

 その姿のままで現界しようものなら、うつけ者と間違われるであろう。


「そうだね。知っているけど念のために確認をしよう。任意の異なる2つの状態について、エネルギー総量の差はゼロってやつ。実例を挙げるならボールが高い位置にある状態と、そこから重力に従って運動している状態の、総エネルギーは同じってこと」


 現代人の世界ならば当たり前の常識。

 しかしそれは魔法や超能力、もちろんギフトなんてものがある場合は成り立たない。


「もしもさ、ギフトがエネルギー保存の法則を守っているっていったらどう思う?」


 だがその大前提を、メープルは崩した。


「なにをいう。守っている能力など一つもないぞ」


 彼らの意見は尤もだ。


「そうだね。人の体で十数トンのパンチ力なんて放てるわけがないし、放電もありえない。それでも、それでも保存の法則を守っていると考えるのなら、果たして何を思い浮かべる」


 矛盾に矛盾を重ねるような問いかけ。

 彼らの頭は決してよくはないため、沈黙しか答えは返ってこない。


「まあ、わかんないか。仕方ない。口で説明するよりまずは現実をみせよう」


 突如数枚の鏡が彼らを囲うように出現する。


「これが真実だ。よーく見るといいい」


 鏡の中に映し出されたヴィジョン。

 そこにあったのは理不尽と絶望。




 悪意ギフトの被害者。




『魔王様! 緊急事態です! 領地のマナが突然消えました! 魔王様? 死んでる? あっ魔王様ああああああああああ』


 映し出されるは魔力を失った魔法国家。


『……誰か! 水をください。海が涸れたら うぅっぁ 』


 映し出されるは水を失った人魚たち。


『木が……燃える。エルフの森が、私たちの住処がっああ』


 映し出されるは住処を失ったエルフたち。


『腕がああ、千切れてあああああぐるじあいいいい』


 映し出されるは肉体を失ったドワーフたち。


『どうしてママはぼくをオークとして産んだの? なんで人間様に食べられるために産んだの? 答えてよ! ママ!!』


 映し出されるは尊厳を失ったオークたち。


 悪魔、天使、獣、吸血鬼、ドラゴン、キャットシー、ダークエルフ、ニンフ、狼男、ケンタウロス、ゴブリン、巨人、小人、アラクネ、鳥人、妖怪、精霊。


 ありとあらゆる非人間が、悪意の生贄になっていた。


「なんだよこれ」

「……何が起こっているのだ」


 ほぼ同時に思いがけず思ったことを口に出してしまう2柱。


「異世界だよ。みんな大好き異世界。これについてはわざわざ説明することもないだろう」


 異世界。他の世界と異なる、完全に独立した異なる世界。


「人間は蛇口をひねれば水を出すことができるけど、ひねる労力と水を出す能力は一致しないだろ、同じだよ。どこかあずかり知れぬ遠くで機械を使っている。現実もいまここも」


「ギフトには魔力が必要なもの。対価が必要なもの。それは千差万別さ。でもね、多くの人たちはそのリスクやコストの代償を支払っていない。でもどこかで支払わないといけない。じゃあ、もうわかったでしょ」






「ギフトが本来背負うべき魔力や代償は、すべてどこかの異世界が支払っているからなんだよ」






「つまり人間は魔力がなくても魔法がつかえ、才能がなくても超能力がつかえ、契約抜きに召喚術が使え、対価を払わずに錬金術が使える。というか使ってる。そのリスクやコストを背負うのは異世界のエルフやオークや吸血鬼といった亜人達」


「ギフト、本当にひどいネーミングだよ。考えたやつは頭おかしい。他人から与えられた価値のある贈り物。害は他所にすべて押し付け、自分たちはその恩恵に浸る。これが、これこそがギフトの真実」


 ギフトは才能なのではない。ただの悪意。


 衝撃の事実を知らされた2柱は口を開くことができなかった。


「しかも今見せたのは被害が軽い方。実際は存在が一瞬で蒸発するくらいに搾取される。そしてその被害はギフトが強ければ強いほど相関がある」


 柱の1柱ハヤテはこれ以上聞きたくはなかった。しかし知らないといけない、これから自分が何をすべきかをしるため絶対に知っておかなくてはならない。そう思い恐る恐る口を開く。


「その被害はどのくらいだ」

鬼人化オーガナイズで、村一つ、雷電の球で天変地異。反辿世界リバースワールドに至っては、秒単位で指数関数並みに世界が滅びる」


 想定をはるかに超える被害の大きさに、2柱は口を閉ざすことしかできない。


「ただし――真百合ちゃんはすごくてね。存在するすべての世界の改竄を、5万回分できる力を持っているから彼女は気にしなくていい。問題なのは主人公の嘉神君の方」


 正確に言えば口映しが問題だが。


「今は思い出せないかもしれないけど、一時期彼そんなに強くなかったでしょ」


 鬼人化を使うだけで疲れる。今ならば馬鹿にされても仕方ない。


「MT車で例えるならローギアの状態。スピードが出ない、燃費は悪い。マジ最悪。何倍程度ならば問題ないんだけど、その被害が何兆、何京、何極といったらどうする?」

「う、嘘だろおい」

「うん嘘。よくわかったね。ただしくは無量大数を無量大数乗しても足りません。嘉神君マジ悪魔」


 神様公認の悪魔じみた男。

 真の悪魔は他にいるが。


「だから姉は--」

「そういうこと。強制的にあいつのギアを変えせようってしたわけ。ああでもしないとあいつはやる気ださないし、かといってこっちも思うことはなかったなんて言わないから。あれはあれで仕方ないと思っている」


 なりふりかまっていられなかった。

 1回使われるごとに、どれだけの被害が生じるのか。


「なにしろ文化祭の菓子作りのために、命や魂がいくつ吹き飛んだとおもっているんだ。多少の嫌がらせをしても罰は当たらないよ」


 たかがゼリー一つの為に、どれだけの被害が生じたのか。


「もちろん反転世界を使わせないようにしたのだって、燃費が悪い上にやばい能力を使わせないようにすることだから。現に3/4解放されたら、僕は一度も止めてないでしょ。ただ、いま起きていることを改竄しようとしたら全身全霊で止めにいくけどね」


 いま特異世界で起きていること。

 ギフトホルダーの殲滅。


 神々の悲願。


 否、人類以外の全種族の懇願。


「支倉罪人はこの事を知らない。知らないで別の目的のためにやっている。でもそんなことはどうでもいい。あいつは偽りでも何でもない。真の英雄だ。僕が認める。異論は認めない」


 支倉罪人はこれから何万何十万それ以上の人を殺すだろう。

 だが恒河沙・阿僧祇・那由他・不可思議の世界を現在進行形で救っている。


「無能力者がギフト持ちを殺す。ずっとこの時を待っていた」


 このためにどれだけの犠牲を払ったか。

 そして今その努力は確かに報われている。


「なあ姉、単純な疑問なんだが、支倉罪人は勝てるのか」


 勝てるならば、ギフトホルダーが滅びればそれでいい。

 だが実際神の一柱シンジには、勝てるとは思えなかった。


「無理だよ」

「無理ってな……」


 さも当然のことのようにメープルは弟の疑問に答えた。


「あらすじ見てみればいいよ。これから先続く気満々じゃん」

「ついにあらすじまでネタにするのか」

「それに読者だって主人公が死んだというくそ展開を見せられたくせに、ブクマは減らなかったし、誰もかれも支倉が勝てるなんて思っちゃいない」

「読者をネタにするのはどうかと思うんだが」


 そうだね。と同意するが反省した様子はないため、またいずれすることになるだろう。


「作者も読者も主人公が負けるって思っていないし、僕も同じことを思っている。支倉罪人が主人公サイドに勝つなんて無理だとね」


「でもさ、例えば作者が飽きたりとか、運営に間違ってバンされたりするとかさ。ワンチャンあるじゃん」

「それはワンチャンとは言わん」


 実質的なゼロではないかとハヤテはつぶやいた。


「でも、希望を捨てるわけにはいかない。それがたとえ打ちひしがれる結果になろうが、足掻くだけの希望になろうが、希望を捨てたらその時点で滅びを待つ人形でしかない」


「理不尽に絶望するより、足掻くだけの希望の方がまだマシだ」


 確固たる意志を持った柱。


 2柱は確信した。

 見た目も言動も間違いなく神にふさわしくないが、その信念は本物であると。


 この柱はやはりすべての種の頂点に立つべき存在であると。






次話は土日のどちらかに投稿します。

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