ギフト
えっとその。
色々言いたいことがあります。
次話は結構早め投稿すると思います。
前話の区切りを間違えましたので、数話投稿したら区切る所を変えます。
4章あれ以来の急展開+超展開ですが、伏線貼っていたからセーフだと勝手に弁護します
わりと色んな所から話を持って来てますので、そんなことあったなと思い出していただければ幸いです
最近微妙にですが評価が増えてうれしいです。
「“神薙信一”をこの星から追い出す方法があると言ったら----それを知りたくないか」
「------」
俺達3人の攻撃する手が止まる。
「おい、今なんて言った?」
「神薙信一をこの星から追い出す方法を知りたくはないかといったのだ、小僧」
そ、そんな方法があるのか? あっていいのか?
「い、いつき。これはおれでもわかる。はったりだ」
「あ、……ああ。そうか」
そうだ。はったりという可能性をすっかり失念してしまっていた。
あれのどうしようもなさは俺たちがよく知っている。
どうにか出来るなんて思わない方がいい。
「お、おいおいおい」
しかしそう結論付けた俺達をあざ笑うかのように父さんが狼狽えた。
「その反応、まさかあるのか?」
「そう言っている」
「うそ……だろ?」
いや、こういっちゃなんだがそのギフトの信頼性は『法則』だとしても信じられない。
あれは『物語』ですら怪しいのに。
「話を――聞きたくなったか」
「…………」
時間稼ぎをしているのは分かっているが……その先は何だ?
何がしたい? 助っ人を待っている?
それもない。
俺とタメをはれそうなのは帝国サイドだが、仲が悪いので支倉と手を組むはずがない。
俺の常識では時間稼ぎをされた所で、そこまで痛手にならないと告げている。
逆にここで何も知らないままで過ごす方がまずいのではないか。
決めた。
「わかった。話を聞こう。だがその前に一つ答えろ」
「言ってみろ小僧」
「あと一人、あんたの子か孫か知らないがあと一人いるはず。そいつはどこだ」
7人いるはず。残り1人子供がいる。
「150階でホルマリン漬けにされてる」
ああ、生きていてほんの少しだけ驚いたあれか。
「そいつのギフトはなんだ。はっきり言え。こっちには真偽判定があるんだから嘘をついたらすぐわかる」
「支倉大麻 ギフトは常時自分自身に危険ドラッグを盛る千早草」
「は?」
なんだそれ。
長所はドーピング出来るくらいで、デメリットの方が大きくないか?
「あの装置は大麻の体を少しでも正常に戻す役割を担っている」
「……父さん。どうなんだ?」
「真実だ。間違いない」
子供達はもう戦力にならず、自分は能力者ですらない。
逆に敵はそれぞれ一人で国を相手できる。
「これ……詰んでるのか?」
詰んでいるから少しでも長生きしたいとでも思っている?
遺書の作成や遺産の整理でもしていたというのか?
「それで結局知りたいでいいのか」
不意ではない。ただ俺の注意が完全にそれていただけ。
「あ、ああ。そうだ。聞かせてくれ」
聞かなくてはならない。
この先の被害は未来の俺に任せておこう。
「いいだろう。だがその前に弁明をさせてほしい。儂があの趣味の悪いゲームを仕組んだのは事実、悪意がなかったとも否定しない。だがその目的は宝瀬嬢が苦しむのを見たいなどという低俗な目的ではなかった。これだけははっきりさせておかないと、互いに余計なしこりが残るであろう?」
これもまた父さんは真実だと告げる。
「あの事件の真相は、神薙がこの星から追い出されることと繋がる」
ありえない因果関係。
真百合を苦しめること、あいつを追い出すこと。
イコールどころか矢印ですら結べないはずなのに、父さんは黙って頷いた。
つまりこの男は真実しか言っていない。
「いいだろう、支倉罪人さん。決して頭を下げるつもりはないが場合によっちゃアンビちゃんくらい見逃してやる心意気は生まれたよ」
「そうか、では説明をするとして貴様が一体どこまで知っているかが分からん」
「どこまで?」
「この世界の仕組みだ。知っていないと話についていけない」
世界の仕組み?
「主人公理論のことを言っているのか?」
俺の疑問の解答を父さんが口に出す。
「そうだ。嘉神の小僧。貴様もなじみ深いだろ」
「…………」
沈黙されても困るんだけど。
「その様子だと小僧だけが知らないか。ならば----」
「簡単に言え。回りくどい説明をするな」
「太陽系や原子を見ればわかるが、この世で一番安定している状態が回っている状態であるということだ」
言われてみればどこかで聞いたことあるな。どこかは忘れたが。
「だが今ここで重要なのはどういう仕組みかではない。その結果起きる状況を問わねばなるまい」
回っていることによって引き起こされる状況?
「回転するという事は、必ず中心がある」
確かに原子核や太陽といった中心となる存在がある。
「これは人間社会にも当てはまる。確信は持てないが現在小僧は主人公なるものになっていると思っているが、その自覚はあるか」
「……」
あるかなしかで答えるならある。
真百合が主人公は別の何かの言いかえではないかと疑問を持っていた。
「そしてもう一つ。もっと重要なものがある。バランスだ」
「バランス?」
「電子を回すには原子核が適している。間違えてもバスケットボールの周りを電子が回りはしない。月は地球の周りを回るが、太陽の周りを回るには相応しくない」
中心は大きくなければならない。
だが大きすぎてもいけない。
「大きすぎる中心は、ブラックホールのように周りを飲み込み破壊していく。ここまで聞いて何か思い当たることはないか」
「…………」
「あるはずだ。儂らがよく知っている神薙信一じゃよ」
ここであいつの名が出てくるのか。
「確かによぉ、あの人自分は昔主人公だって言ってたけど」
かつて主人公だと言っていた。それは間違いない。
「そう、昔はあいつが主人公だった、だが奴は強大になりすぎた。砂塵の中心になるのに星では大きすぎた」
とんでもない発言だが、あれならばまあ当然か。
しかし、それはそれとして別のことで問題がある。
「大きくなりすぎたから、他の輩に主人公をシフトした? それはおかしいぞ。だったらあいつが存在するべきじゃない」
中心は大きすぎてもだめならば周りだって同じことだろ?
周りが大きすぎてもシステムとして安定しない。
「わかっているではないか。ならばあと少しだ。バランスを取ろうにももろ過ぎて安定しないのならどうすればいい」
「自分が軽くなるのが妥当」
「だがそれはできないとして、次の手段はなんだ?」
次の手段?
「大きすぎてどうしようもない。ならばどうする? 1億と1 1億をそのままにして、せめて比率を1万倍までするにはどうする?」
「…………あ」
気づいた。
「答えは一つだ。1を1万にする」
魂が200g重くなっていると真百合は言った。
超悦者の結果、光速で動こうが気にしなくなった。
「魂の重さ。超悦者そして何よりギフト」
「あ、ああ。うああああ」
最低な真実。
ギフトが才能という通説を根本から捻じ曲げる最悪の現実。
「その目的はただ一つ。
神薙信一がこの世界に存在するためのバランス調整でしかない」
ふざけてる。
というかふざけていてほしい。
これが事実だと、現実だとでもいうのかよ。
「なぜギフトがギフトと呼ばれているのか。この流れならばもう分かるだろ」
俺達は誰も口を開かない。開けない。開きたくない。
「英語においてgiftは才能などという意味があるが、今回それは誤訳だ。ギフトは才能などではない。神薙が自分の能力を他人に贈ってやったに過ぎない」
つい最近、神薙が複数の能力を使用するところを目撃した。
何より、本人が言っていた。自分はギフトを使えないと。
この説明が真ならば納得がいってしまう。あいつが贈ったものをギフトだというんだ。自分のモノだからギフトなんて言わない。
「遺伝は! ある程度遺伝するってのは!」
「あの男は血というものを大切にする。お前たちはほかの誰よりもちょっかいをかけられなかったか?」
一度だけあいつは自分と血縁関係があると言っている。
父さんに真偽を聞かなくてもいい。全て本当のことを言っていると察した、
何よりも頭おかしいのに、状況がこれ以外に考えられない。
「発想が逆なのだ。ギフトなどという能力があるからあいつが強いのではない。あいつが強いから必然的にギフトが強くなってしまう」
「だが待て。それだと多少は対抗出来る能力を持っているってことになるぞ」
「話を聞かんか小僧。持っているのではない。あいつの能力を与えられているだけだ」
神薙信一にギフトは通じない。
そもそもがあいつの能力。
だがだからこそ、質は高い。
人が扱っていい能力じゃない能力だって、元々があいつの能力だから問題ない。
「滑稽だ。貴様らは自分たちの力で何かを成し遂げたと思っているようだが、残念なことに全てあの男の手を借りていたに過ぎない」
全てがあいつの掌の上。
こねくり回されて遊ばれていた。
「シンボルは……! シンボルはどうなんだ!!」
叫ぶシュウ。
追いつめているのはこちらなのに、なぜか追い詰められている。
「シンボルか……それだけは別だ。間違いなく貴様の能力。信じるかは勝手だが儂が保証しよう」
「そ、そうかよぉ」
敵の目の前でほっと胸をなでおろすが、いったい誰がシュウを責められようか?
こんな不都合な現実をまさかこんなところで目の当たりにするとは。
だが待てよ。そうだ。目的を見失うな。
「ギフトが何なのか分かった。だがそれと真百合の件にいったいどう関係がある」
今のところ真百合に害をなした理由が一切説明されていない。
「よかろう。その前に一つ。例えるならインターネットにおけるサーバーとアプリケーションがあいつとギフトの関係だ。これをよく覚えておけ」
自分たちのPCで動かすのではなく、もっと大きなところで動かしてその応答を自分たちのPCで表示する。
「わかった。続けろ」
ただ淡々と話が進む。
一度進んだ歯車は、もう止まらない。
「ギフトは神薙の能力。どれもその本質は恐ろしいがそれでも上下は存在する」
それはこっちがよく分かっている。
「その中で反辿世界というギフトがある」
「ああ、あるな」
真百合のギフトだ。
「儂はデータが欲しかった。だがデータというのは1つだけでは意味がない。多ければ多いほど望ましい。しかし有象無象のギフトでは欲しいデータが出力されない。強力でかつ何度も使用できるそんな能力は――――宝瀬嬢のギフトが最も適していた」
倫理観を全部抜きにすれば真百合の反辿世界はうってつけだ。
与える影響はとてつもなく、死に戻り故、その気さえ残っていれば何度だって使える。
しかも楢木魔夜と違って、それ単体では危険ではない。
なるほど、理には適っている。
俺が知っている中では確かに、反辿世界が最も相応しい。
「だから『はいそうですか』なんて言うわけ無いのは分かっているよな?」
「分かっている。だが最後まで聞け。そこで儂らはついに発見した。いわゆるサーバーへのアクセスの仕方を」
つまり実験そのものは成功したわけか。
「で、何がしたいんだ。ギフトの裏設定を把握し観測した。それとあいつを追い出すにはどう関係がある」
「……………」
沈黙。
「おい、答えろよ」
「……ふう」
パイプタバコをふかす。健康に悪いが超悦者だから問題ない。
「おーい」
「そろそろ日付が変わると思っての。儂はいつもこの時間に寝るため、疲れが一気に来る」
「そうか。永眠させてやるからさっさと――」
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン
柱時計の0時の合図。
8月31日 夏休み最終日。
「ふっ、はっはっは」
突如支倉罪人のしわくちゃの顔が、さらにゆがみ始める。
アンビちゃんの方もクールな彼女に似合わず、少しだけ、にやけていた。
「どうした、何がおかしい?」
「何でもない。さて、どこまで話したか」
「なんで観測して何をすればあいつを追い出せるってところだ」
なんか心なしか心に余裕が生まれたか?
「おうそうだったそうだった。老体故忘れっぽくてすまんの。なに、これも発想の逆転だ」
「発想の逆転?」
「神薙がいるからギフトがある。神薙がここにいるためにギフトは必要だ」
「そうだ。それで?」
「ならば簡単だ」
「ギフトホルダーがこの星から消えてなくなれば、必然的にあいつもいなくなる」
ん?んんんむ?
それはおかしいだろ。
電車がなくなれば痴漢が無くなるみたいな論理。
暴論を飛び越えて暴挙だ。
「悪いが小僧。儂の勝ちだ」
そしていきなりの勝利宣言。
「状況分かって言ってる? 何一つ好転してないぞ」
「話は終わりだ。孫達の弔いをさせてもらうぞ」
だーかーら。無理だって。
「能力無しにたくさんの能力を持った俺に勝てるわけないだろ? あるよりないほうがいいものなんて、悪意だけだ」
「だったら猶更だ。ギフトが如何に悪意によって出来ているかを知るが良い」
自分から話を振っておいて、自分から投げ出すクズ。
「かかってこい小僧」
なんか挑発を受けた。
のっかってもいいのだが、それでも最後にもう一つ。
「なんでアンビちゃんに超悦者を防御から教えたんだ?」
「…………なに?」
「気になっていたんだ。超悦者は防御から学ぶのが通常だとはいっても、アンビちゃんの能力は完全な防御型。使いやすさを考えるなら防御は後回しでいい」
これが気持ち悪かった。
のど元に魚の骨が引っ掛かったかのように、ずっと気になっていた。
傷つかない能力を持っているのなら、防御よりも先に移動や攻撃からの方が役に立ちそうなのに何でしなかったのか。
この機会を逃せば二度と聞けないと思い、最後の最後に聞いてみたが
「「…………」」
二人は沈黙を貫いた。
「答えないという答えか」
まあ、たぶん型にこだわり過ぎたか。
臨機応変に動くべきだったなと無駄なアドバイス。
これにて、答えてはくれなかったが、聞きたいことはすべて聞き終えた。
有意義とは言えなかったが、価値はあったと認めよう。
では判決。
死刑。
その場でその腐った臓物を晒してやる。
「あばよ」
超悦者の力を使って一歩前に。
光の数億倍の速さで襲い掛か
「だから小僧の負けだと言ったであろう? プロジェクトノア発動」
苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦痛苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦痛苦苦痛苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦痛苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦通苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦痛苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦痛苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦通苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦痛苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦痛苦苦痛苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦苦
死
支倉罪人が語ったギフトの正体ですが、真百合さんも察しがついていました。
そしてこれが真相の半分です。