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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

7章 後編 プロジェクト ノア

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冴えたヒーローの倒し方

フェアでいたつもりです。
どこから話を拾ってくるか分かったもんじゃないですし、ここからももしかしたら拾ってくるかもしれません。

 すべて計画通りに終わった安堵からかどっと疲れがやってきた。
 しばらくこのままで休みたいが、そうもいっていられない。

 99%吸収された死者を再び黄泉返さないといけないし、下手にゆっくりしすぎると本当に支倉罪人が逃げてしまうかもしれない。

 取りあえず埋もれた体を引き起こさないと思い、手を伸ばし地面を掴む。
 しかしそれはすぐやめた。

「イツキ……生きてるか?」
「生きてる。そしてお疲れシュウ、信じてた」

 シュウから手を指し延ばされ、疑いなく地面を掴んでいた手を放し、その手を取る。
 少しその手が震えていたような気がしたが、それは俺が疲れていたからかもしれない。

「「…………」」

 しばしの沈黙。どちらが口を開くか考えている。

 話さないといけないことはある。
 だがちょっと休憩したい。

「一度に2つシンボルを使った」

 シュウがまず口を開く。

「短期間を加えれば3回だからよ、ちょいと休憩していいか」
「俺からも頼みたい。父さん、いるんだろ。あんたが一番疲労が少ないんだから護衛を頼む」

 父を馬車馬のように働かせる。息子の鑑。
 正しい親子関係。

「少しは生きているかどうか心配したらどうだ」
「するわけないだろ。きっと目的を完遂させるって信じてたから」
「お、おう。そうなんだ。まーな、そりゃ父さん頑張ったよ、うんうん」

 俺とは違ってこいつちょろいな。

「親子だ。この取り扱い注意のくせに扱いやすさは間違いなく親子だ」

 シュウが不本意なことを言ったが本気で疲れたのでジト目で睨む程度である。

 っと、よく見たらシュウの上半身が露わになっていた。
 別に筋肉がついているわけじゃない。普通の中肉低背。

「あぁ、これか。自分の服に『不認』をかけて、認識できないようにしてた」

 この服を着ている間常に隠密行動が出来るってわけだ。
 とどめにも補助にも使えるシンボル、強いなあ。

 しかし気がかりがある。
 顔色が悪くなっているわけじゃないが、無理をしているのは何となく分かる。

 これがシンボルの弊害なのか? こんな時、俺は何と言えばいいんだろう。

「おれのことはどうでもいい。それよりもよ、聞かせてくんねえか? 休みながらでも出来るだろ」

 そんな俺を組んでくれたか、シュウは優しい言葉を投げかけた。
 ならば俺もその言葉にこたえねばなるまい。

「聞きたいのは支倉ゲノムをどうやって攻略したか、で合っているのか」
「おう。まさか隠していた能力があるなんて言わねえよな?」

 そんなものがあったら逆にゲノムが使われていると首を横に振る。

「そもそも隠すつもりはない。教えるよ。ただそのために寄り道が必要だから、くどい話をする」
「気長に聞こうかぁ」

 お互いの休憩のため。この時間は必要。そう判断する。

「質問している最中に質問を投げ返すようで悪いんだが、逆にシュウからはどう見えた? 何が起きた風に見えた?」
「そりゃ、ガキの頃のいつきからいきなりアフロ姿に戻ったから千載一遇のチャンスだとよ、思ったぜ」

 それで合っているし、そのつもりで誘導した。

「過去のいつきから本体のアフロに戻ったけど、なんでこいつは戻したんだ?」
「戻した? この状況でそんなことする奴は馬鹿を通り越している」

 支倉ゲノムは馬鹿ではない。いくら圧倒的有利だとしてもギフトを解除するなんてするわけがない。

「自分から戻したわけじゃないなら……どうしたんだ?」
「そりゃ、無意識のうちに戻したんだ」
「んんん??」

 ちょっとこの言い方は意地悪だったか。
 ただやっぱりシュウにこの発想は難しいかなと納得する。

 無駄に時間が過ぎるのも嫌だったので、その場で答えを教えた。

「正確には蛹化異変児モンスターチルドレンが無効になったんだ」
「無効?」
「『物語』となった柳動体フローイングやその他の解決策は思いつかなかった。だから別の方向で策を考えた」
「別の方向?」
「そもそも論として、あいつのギフトは【関わった相手の過去の姿に変身する】だということを忘れないでほしい。柳動体フローイングはそのおまけなんだ」

 ここがまず重要。
 やっていることがえぐ過ぎて注意が逸れがちだが、支倉ゲノム自身も認めている通り蛹化異変児モンスターチルドレンは『時間』のギフトなんだ。

「もし今回の敵が過去の俺そのものなら……最初っから逃げていた。しかしそうじゃない。変身体であるということこそ付け込む隙があり、実際そこに付け込んだ」
「わかんねえ。言っていることは分かるんだが、どうやって付け込んだのかがわかんねえ」

 仕方ない。とっかかりをつかめなければ理解も無理か。

「耐性だよ。それを使ったんだ」
「耐性? だがよぉ、耐性は自分やその意思が向かう先を無視できるって話であって、根本から無効にするわけじゃねえよな?」

 もちろんその通り。
 関わったら潰せるが、逆に言うなら関わらないものは潰せない。

 例えば、時止めは自分に直接関わるため無視できる。しかし自身の時の加速ならば自分には関わらないため無視できない(尤もこの場合は超悦者スタイリストが有効であるが)。

「そうだ、だがシュウ。勘違いしている。使ったのは俺じゃない。支倉ゲノムの方だ」
「支倉ゲノム?」
「そう。あいつ本人」
「『時間』のギフトは耐性を持たないはずだよなぁ? むしろ『時間』は無視される側……あああああ!!!!!」

 気づいたかな?

「優先権と違って、耐性は“クラスそのものを無視される”という特徴がある。仮に、仮に、支倉ゲノムが耐性を使って『運命』や『世界』を踏み潰したらどうなる?」
「そりゃ当然、『時間』も巻き添えを喰らう……!」

 興奮を抑えきれないようだが、俺も疲れていなかったらきっと意気揚々と説明していたからその分テンションを上げてもらって嬉しいかぎり。

「そう、巻き添えを喰らったんだ」

 耐性は正も負もひっくるめてゼロにする。

「つまり、つまりあの時何があったってことを一行で表すなら

『支倉ゲノムが自分から耐性を使い、『時間』の影響を受けないようにした』

ってことになる」

「でもよ、でもよ」

 口早になっているシュウ。

「納得いかねえことがある。耐性をあいつが自分から使ったってことは状況証拠で明らかだからそこは疑わねえ。だが、その肝心の能力はなんなんだ?やっぱ柳動体フローイングは純粋な『物語』だとでもいうのかよ」

 耐性を得るためには2つ格上の能力が必要だ。シュウはそのことを聞いている。

「ノー。俺達も最初はそうだったらいいなと思っていたが、どうやらそれは微妙に違うらしい。メタ発言に対応できなかった」
「めたはつげん?」

 シュウは分からない。
『物語』まで到達しか使うことのできない、特権。

 そいつに対応できなかったってことは、本質的には偽物なんだ。
 本人も『“仮”“仮”』言ってたし。

 一応ある程度使えるという条件があるが、あそこまで使いこなしてある程度すら使えないなんてことはないため除外してもいいだろう。

「そこはそれほど重要ではないから。如何にしてあいつを能力者にするかが重要。そこで必要になったのが父さんだ」
「そういや、能力の譲渡っていうギフト持っていたなあ」

 そう。持っていたんです。
 王賊の財宝だっけ? 全部覚えていないけど。

「そして、どっかの変態が押し付けたギフトがあっただろ? わざわざ『物語』まで用意して」
「あぁ、あの人か」

 父さんはギフトの成長ができないので持ち腐れだと言っていた。

「いやー、俺も初めは嫌がらせ目的かと思っていたが。あの変態……最初っからこうなることが分かっていやがった」

 まざーふぁっきん ほりーしっと。
 ただあれのお陰で勝てたなど思われたら癪なため注釈を入れると、別に『物語』じゃなくても、『法則』や『世界』でもよかった。

 この後が少々面倒になるが。

「でもよ。『物語』のギフトを渡すといっても、能力の譲渡そのものは『法則』だろ? 思った通りに発動したのは……ちょっと無理がねえか?」

 流石はシュウ。欲しい質問をちゃんと理解している。

「そこが計画時一番の不安だった。でも、途中で出来るって確信した」
「どういうことだ?」
「あいつが俺に触れてギフトを吸収したからだ」

 これが幸運だった予想外。これがなければもっと苦労していた。

「それがどうして確信に繋がるんだ」
「父さんのギフト、能力の譲渡が正しく伝わるかが鬼門だった。不意を打ち最適なタイミングで譲渡できるか否か。だが逆に聞こう。失敗したとして、譲渡されないとして、その先はどうなるか」
「そりゃ、吸収されて…………そういうことか」

 そう。
 正しく譲渡されても、強引に吸収されても結果は同じ。

「例え能力が吸収されて失敗しても、結局あいつは『物語』の能力者になってしまう」

 後は先の通り、間抜けを晒して見下されて間接的に耐性の付け方を教えたわけだ。

「だから最初は俺一人で戦おうとした。うまく不意をつき能力を渡すことが最初の計画。でも途中からギフトを吸収してくれるという恐ろしくも有り難いことをしてくれたから、父さんは隠れるのをやめて渡しに行ったわけだ」

 これで支倉ゲノムが耐性を用いる必要条件が整った。

「復習をするぞ。耐性を得るために必要なものは格上の能力。では実際に使用するために必要なのは?」
「心意気。相手がつまらないもの、大したことではないものといった見下す心が重要だぁ」

 当然シュウも耐性を持っているため、この程度のことは常識。

「自分から見下されにいったのかぁ?」
「ああ、見下されにいったんだ」

 馬鹿にされるよう誘導した。

「誠に遺憾だったが、仕方なかった。あの時の目的は命乞いではなく、馬鹿にされるということ。あの時使うギフトは『運命』や『世界』のものと決めていた。その上で下に見られる演技をしたんだ」

 屈辱的だったが、演技として間抜けをさらすのと、逃げて本当に能無しになるのとを天秤にかければ、前者に傾くのは誰だって分かる。

 まさかあれを本心で俺が思っていると信じたバカはいないだろう。

「当然、俺が慌てて反辿世界リバースワールドが使えなくなったのはわざと見下されるためにやった」

 そう思って振り返ればなかなかの名演技である。

 ただその前に支倉ゲノムが俺を認めるかのような発言をしたときは本気で焦った。

 今そこでそんな言葉は求めていない。
 あの一時だけは見下してほしかった。

 ちっとも的外れだった許容量キャパシティー越えを狙っているなどと言われたときに図星をとられた演技をしたのに無駄になるところであった。

「イメージつきにくいかもしれないが、『物語』から『時間』を無視するのって、至極簡単なことなんだ」

 簡単すぎて、描写すらなかったくらいだから。
 気づかないまま無視してしまったことだってある。

「驕らずにはいられない強さで、更に言えば、驕っていた方が強くなる俺達で、驕らないというのはかなり難しい。実際逆の立場だったら俺もやらかしていたかもしれない」

 それも耐性をどういうものかを知らない支倉ゲノムにやれというのは、酷な話だともいえる。

「よく思いついたなぁ。おれなら絶対無理だった」
「こればっかりは頭の良さはあんまり関係ない。いわば経験があったかどうかだ。シュウの能力は二つ。『論外』と『法則』。『法則』があるから耐性により『時間』と『運命』を無視できる。ただ基本的にメリットとしてしか考えなかったはず」

 基本的に耐性は全てONにするべきだ。
 不意打ちされた時に対応できる。しかも『時間』『運命』は即死技といっていい。

「だが俺らは違う。複数の能力を持って耐性もある。だが耐性がある分恩賞を受けることができなかったこともあった」

 カスピトラさん(監修の人)のギフトを無造作にも無視してしまったことがあった。
 次元に穴を開けて移動できなくなったりした経験があった。
 あえて耐性を利用し、新たな技を生み出すこともあった。

「それにこれ、『物語』の能力を捨てるという一種のとんでもない暴挙を犯しているから」
「ああ、あの人からじゃなかったら、もったいなくてできやしない」

 ここにきてずっと黙っていた父さんが口を開く。

 大方俺の説明が終わったのをみて入ってきていいと判断したんだろうな。

「それといつきは怒るかもしれないが、なんだかんだで以心伝心してるじゃねえか」
「まさか。あんなの必要な部分はちゃんと伝えていたぞ」
「ええ。あれあれしか言っていなかった記憶しかねえんだが」

 あれかあのしか言っていない記憶がある。

「『あれがああしたあれのあれを、あれにああして、ああでああさせるようにああしたら
あれはあれだから、ああになるんじゃないのか』 これをちゃんとした言葉に変えたら『神薙さんが寄越した『物語』のギフトを、支倉ゲノムに譲渡して、耐性で無視させるように誘導したら、蛹化異変児モンスターチルドレンは『時間』だから、無効化になるんじゃないのか』になる」
「おおおお」

 シュウは適当に言ったと思っていたな。いくら俺でもこういうところではちゃんとする。

「そう、それはまさしく家族の絆が――――」
「家族の絆なんてあるか。いいかシュウ、俺達が『あれ』と呼ぶ人か物で最初に連想するのはなんだ?」
「神薙さん」
「その即答の通り。まずはその人なんだ。『神薙さんがああしたあれのあれを』、神薙さんが関わり、かつ俺が知っていて、その上あれという名詞が入るものは……数十分前に話をした『物語』のギフトを押し付けられたという文になる。その一文を理解していれば、サル並みの知能で十分」
「おれ分かんなかったんだけど」
「あの時別のこと考えていただろ」
「そういやそうだったなぁ」

 まったくどこからフラグが飛んでくるかわかったもんじゃない。

 最後にシュウには話さないが、俺が気づく前後の発言で

『二つ以下のクラスを無視できる耐性もここでは意味がない、「…………!!」あった』

と『。』ではなく『、』で終わっているのもポイント。

 ネット小説という環境で、こいついつも誤字ってんなという精神を逆手に利用した絶対に誰も気づいてくれない叙述トリック。

 これにてノルマ達成である。

 ただもう一つこれとは別に話し合わないといけないことがある。

「シュウ。恐らく支倉罪人は時間稼ぎをしている」
「そうなのか」

 気づいてはいなかったようだが、そうだと言われれば思い当たる節はあるのであろう。

 敵を排除するなら強い方から出すべき、ゲームや小説のイベントじゃないんだからな。

「確証はないが8,9割は間違いない。だがそうである可能性が高いというだけで無理は出来ない。疲れているのなら気にせず休んでほしいが、そうでないのならさっさと上に進もうと提案するが……」
「いや行こう。英気は十分養った。いつきがそんな事したって言うのに、おれが黙って休むわけにはなぁ」
「いやいてくれないと負けてたし」

 シュウがそんな事言っているが、実際とどめはシュウ以外に出来なかった。
 父さんが近づけばギフトが吸収され無力化、俺は演技で醜態を晒す必要があるため攻撃できない。

 だから別に恥ずべきことじゃない。
 むしろいてくれて感謝している。いなければ完全に詰んでいた。

 しかしシュウがしなくていいと言ったんだから、あまりしつこく言うのも別だな。

「じゃあ、いこうか」

 ビル190階までひとっ跳び。

 折角150階以外全てに穴を開けたんだから、残り10階も穴を開けて通りたい。

 多分神薙さんだったら穴の開いたビルの床をビ○と言い張り、超巨大オ○ホールなんて言ってそう。

 …………

 なんであれの思考をくみ取らないけないんのだ。

 いかんいかん。

「どうした一樹?」
「いや、時間稼ぎの先に何があるんだろうって」

 誤魔化したが、気になっていないと言えば嘘になる。

 支倉罪人の目的は何だ。

 時間を稼いだ先は何がある。
 強力なギフトでも持ち合わせているのか? しかし強さだけなら絶対に支倉ゲノムの方が勝っていると勝手に思っている。
 極端な話『時間』を使わないと勝てないような能力で何が出来るのか。

 ついさっきは後れをとったがもう譲る気はないぞ。

 子孫達も子孫たちだ。

 時間稼ぎをしていることを認めて、その上で死ぬことを享受している。

 死ぬのは嫌だが、その先の目的の為なら死ねる。特攻隊を生で見たような感情。

 頭おかしい。

 常識人である俺が言うんだから間違いない。

 何で俺の敵は異常者しかいないのか。
 それとも俺が正常過ぎて、異常者がひがんで嫌悪するのか。

 罪を犯した記憶はないが、罪作りな人生だな。うん。

「おーい、一樹? 聞いているのか?」
「いいや、全然」



 時刻にして23時50分の出来事であった。














 【沈黙の666】まであと僅か。

感想でも書かれましたが、支倉チルドレンのネーミングの元ネタは新しい七つの大罪です

トミー 富
ユエン 不公正(中国語)
アンビ 環境汚染(ラテン語)
クーフィス 言語は忘れたけど貧困にさせること
ゲノム 遺伝子改造

 残り二つは何でしょうね。


 次回は真百合さんと月夜さんを挟んだあと、いよいよこの小説最大級のネタバレ(ギフトやメープルの目的など)が来ます。

 期待してお腹を温かくして眠れ
+注意+
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