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チート戦線、異常あり。 作者:いちてる

7章 後編 プロジェクト ノア

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敗北、そして

 まだまだ強くなります(敵が)
 前書きでネタバレをしていくスタイル



 柳動体フローイングに勝利するのを諦め、この場からの逃走を図る。
 しかし、ただでやられるつもりはない。

 逃げ場は上階。最悪こいつを無視してでも、総帥の支倉罪人さえ殺せばいい。

「その選択をとるのは、十手ほど遅I」

 超悦者スタイリストによる移動を、先回りして待伏せされた。

「そしてもうOREはお前を逃がさなI 何が何でもここで仕留めRu!」
「甘えるな! 俺を殺そうとしたら父さんが先に支倉罪人の元に向かう!」

 今まではこっちにも油断があった。
 何だかんだで勝てる、そんな油断。

 だからこそ、こいつらが挑んできても相手をしてやった。

 しかし、そんなことは支倉サイドも想定内だった。
 もしも逆に、初戦がこいつかクーフィスだったなら…………お遊びなんかせず直接大将の首を取りにいった。
 弱い奴から挑ませることで、確実に時間稼ぎを遂行出来たってわけだ。

 まんまと術中に嵌っているが、これから改めるのに遅いということは無いはず。

「OREを倒せねえから、爺さんを狙うってKa? OREより強いかもしれないと考えないのかYo」
「……無い。その強さより強いなら隠れて何かする必要が無い。死んだことを偽装せずどうどうと王道を歩めばいい」
「ふん、確かにNa そんな貴様にいいニュースDa 間違いなく支倉において今のOREが最強Da」

 実際問題俺達が勝手に想像した神薙さんと過去の俺どっちが強いんだろう。
 勝たせる気が無い存在と勝つ気しかない存在。

 どっちも大概だというのだけはわかった。

「父親を呼び寄せたのはばらばらに最上階を目指すことで、少しでも目的を達成できる確率を上げるためKa?」
「……」
「だんまりかYo だが言わせてもらうZe それは愚策Da 達成できる確率が9兆分の1から8兆分の1になっただけだZo それに考えてもみRo もしもOREがあの男に触れたらどうなるか、触れてしまえばそれこそゼロになるZo」
「…………やっべ」

 そうなったら確実に詰みだ。

 同時に2つまでしかギフトを使えない制約を、過去の俺が守るとは思えない。
 間違いなく同時併用してくる。コーラ2Lを飲むとトイレに生きたくなるくらいに確実。

「もし貴様が単独で最上階に向かうつもりなら、極小とはいえ可能性があっTa しかし、しかししかししかし、辿り着くより先に触れてしまえばいI そうすれば人類1位の王陵君子にすら勝つことが出来Ru」

 正直なところその1位は今の俺でも射程圏内に入っていると思うから今の時点でこいつが勝てるんじゃないだろうか。

「つまり二手に分かれるつもりで足手まといを増やしただけDa」
「だ、だが――――今こうして」
「プラナリアを知っているKa?」

 知っているよ、くそ。
 この短時間に分裂したっていうのか…………ますます人間をやめている。

「ぐぐぐぬうう」
「焦ったKa こういう危機的状況こそ人の真価が問われRu」

 なんでガキの頃の自分に苦汁を飲まされないといけないのか。
 日ごろの行いよ、少しはこっちに微笑め。

「っく……反辿世界リバースワールド

 最終手段。やり直し。
 出会う前にやり直す。

「これを使わせた自分を呪え!」

 今でも俺が使える最強の切り札。
 切り札過ぎて神から禁止を食らったこともある。

 これが通るならそれでいい。
 だが通らなければ――――覚悟を決めないといけない。

「それは――――強I」
「だが----」
「考えてもみRo」
「やり直しの影響をOREが受けるTo?」
「だとしたら愚かDa」

 だが今回に限って何もしなかった。
 する必要がないから。
 使っても使わなくても戦況には左右されない。

 ひょっとしたら1体の時だったらまだ成功したかもしれない。

 だがこいつらは複数体になり、個人個人が影響を与える範囲が増えた。

 能力の吸収を常に行い続け、改変の力より吸収速度の方が上回ったのだ。

「うぁああああああああ」

 無理無理無理無理。
 父さんの言うとおりだった。逃げが正着手。

 出会った瞬間に逃げるべきだった!

「見るに堪えなI」
「これがOREなのKa」
「つまらN」
「遅すぎRu」
「愚かとしか言い表せなI」

 喩えるならあの歩く災厄は負けイベント。負けても案外被害がなかったりする。
 だがこいつは云わば生き残りのイベント。

 がん逃げが正解。月夜さんだってきっとそう指示した。

 見誤った。意地を張らずに逃げるべきだった…………!

「くっそあああああああ」

 敵に背中をとらせ逃亡。

「ふN」
「ぐっああああがががが」

 当然、そんな事をすれば的であり、前蹴りを背中に受けた。
 またその時少し皮膚に触れられてしまい――――

反辿世界リバースワールド――――虚仮」

 勝者と敗者がここに決まる。





 そこからはもうどうしようもなく、ボロボロであった。

 『時間』や『世界』が止まった俺が認識できない。それこそ本当の意味で時が止まったように自由に行動される。

 奇跡的だったのが、その止められる活動限界が数秒であったこと。

 俺だって10秒が限界だし、質が違うのだから2,3秒で十分。

 これだけは天才真百合に感謝をしないといけないが、それでももう終わり。

 言い訳の仕様がない敗北である。
 自分、それも過去の自分に負けるという主人公にあるまじき大失態を犯してしまい、何とかその弁明の機会を作らないといけない。

 絨毯のように倒れた体を無理矢理起こし、這いつくばって懇願する。

「た、助けてくれ―――――たのむ」
「命乞いだTo?」

 分裂は吸収され一つになっているが俺自身には何も変わらない。

 意味しているのは父さんが殺されたか、それとも父さんが支倉罪人を狙うのをやめ、純粋な逃亡にはいったかの2択。どのみち助太刀はもう期待できない。

 大局はもう変わらない。

 即死である口映しマウストゥマウスの吸収まではいかなかったが、致命傷である反辿世界リバースワールドや、獄落常奴アンダーランドを吸収されてしまった。

 もうこいつは死んでも死なないし、殺しても死に戻り。
 不死を謳おうが即死可能。

 だから仕方がない。
 こんなところで死ぬのは嫌だ。

 仕方なく最後の希望にかけるしかない。

「そうだ。命乞いだ。文句あるか?」
「あるかだTo? あるに決まっていRu! 貴様は命乞いなどしないと爺さんが言っていTa!」
「買いかぶりすぎだな。俺だって無理な時はすっぱり諦めて、無駄だと思ったらすっぱり切り捨てる」
「…………」
「な? 頼むよ? 一生その姿になるのはそっちだって堪えるはずだ」
「…………」
「信頼できないなら俺のギフトで口約束を守らせるギフトがある。それを使えばいい。『嘉神一樹は支倉ゲノムに攻撃しない』な?」
「ふざけるなYo 貴様に誇りがないのか?」
「あるさ。あるから対価になるんだ。考えてもみろ? 男は女に金を貢ぐ。女は男に体を差し出す。欲しいものを手に入れるためにほかの大切なものを差し出す。その行為に意味がある。男は女が処女だったら嬉しいし、安い給料をはたいてでも買ってくれたバッグはきっと思い出に残る」

 こうなってしまったらこの路線で頑張っていくしかない。
 ファイト俺。

「金さえ払えば体を買える。体さえ払えば金を貰える。だが重要なのは体や金じゃない。その心なんだ。大切なのに差し出すいわば、無償の愛」
「貴様が愛を語るのKa」
「語るさ。俺だから語れる。欲にまみれた第三者の思考ではなく、義に忠実な俺の第一者の意見だから意味がある」

 支倉ゲノムは何も言わない。
 ただただ俺を見下したまま。

「助けてくれ。俺は生まれて初めて命乞いをした。いわば命乞いの処女を捧げるんだ。ゲノム様が思っているよりそれはずっと価値がある。これは戦利品、誰も達成してこなかった、到達することができなかった偉業を今、貴方が達成したんです。さあ、だから早く。『ここは見逃してやる』というんだ」

 頭が良ければ納得してしまうこの論理。

「いま、ようやく理解しTa」
「わかってくれたか。だったら早くしろ。今すぐ俺を見逃すんだ!」
「なぜ貴様が弱くなったのKa その理由がはっきりと心から理解しTa 貴様……性根が腐りきっていやがっTa」

 残念なことに、この高尚な論理を理解する脳は無いようである。

「下郎Ga その腐敗した精神ならここまで弱くなるもの道理というもNo」
「ま、待て。待つんだ。落ち着いて考えてみろ。何が損か、何が徳かを考えろ。頭をよくして考えるんだ」

 こっちはプライドを捨ててまで這いつくばりながらお願いをしているというのになんてことを言うんだ。

「爺さんも爺さんDa 何でこんな奴を警戒していTa こんなゴミに…………あいつらが殺されたというのKa」
「あいつら…………? ああ、デブと中華のことか。良いじゃないか。あんなの生きてたってなんの意味もな――――」

 気が付けば壁に蹴りつけられ、190階から外に放り出された。
 間髪入れず一度俺がやった踵落としをそっくりそのまま真似される。

 190階の高さから、超悦者スタイリストの蹴りを直撃で喰らい、アスファルトで舗装された地面を突き進み、数mめり込んだ。

「――――――ッ」

 遅れてやってくる苦痛。
 超悦者スタイリストが無ければ痛みだけで即死だった。

 しかし体の血管は弾け、指一本動かすことも難しい。

「ゴミが、もう口を開くNa 貴様に謝罪の言葉を期待したOREがバカだっTa」
「うぅぅ」
「惨めだNa」
「た すけてふれ」

 最後の命乞い。
 これが聞き届けないと本当の本当に死んでしまう。

「醜I 肥溜めの上で死んだ豚のようDa 養豚場に返してやRu」

 それは死刑宣告に等しい。

「う゛ぁ゛ぢくしょぉおああ リバースワールド! リバースワールド! リバースワールド!!おぃああああああ」
「その醜悪な口を二度と二度と開くNa」

 安物の子供靴で顔を踏まれ、口を開くことすら出来ない。

「慌てて発動すら出来ていないZo もうOREにそのギフトが通じないと分かっているのに、それに頼らなくてはいけない……いったい何処まで醜態を晒すのか興味はあるが――――それでもこいつを地獄に落とす方が先Ka」

 もう俺が出来ることは全部やった。
 その上でこの結果なら、何回リトライしても無駄だ。

 何百回何千回戦ってもこいつには勝てない。

 それも再戦に機会があればの話だが。

「あばYo ここで潰れて死ぬがいI」
「ぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁあああぁぁあああああああ」

 惨めにも呻き声をあげ、その真意は決して届くことは無い。
 踏まれ、蔑まれ、潰される。

 そんな中俺の心は一つの心境で埋め尽くされていた。










 精一杯の感謝。



 ありがとう。



 下に見ていてくれてありがとう。

 そうでなければ、俺達は敗北していた。

 力でも技量でも勝てなかったが、知力で大幅に勝利してやった。

 だから勝つ。もう全ての布石は打ち終え、寄せるだけ。

 もう『今だ!』という暇もない上、気力もない。
 けれどこの男はきっとこのタイミングを間違えないから、そもそもいう必要はないか。

雷電の鎌ライジングリッパー 混沌回路カオスチャンネル――消滅」

 支倉驟雨、シュウによる背後からの不意打ち。
 通常なら、いや現状が現状なため、あえてこう言おうか。異常ならばシュウの攻撃はきっと吸収されるだけ。その攻撃が届くことはない。

 しかし本人は気づかない。


 今の自分が蛹化異変児モンスターチルドレンによって変身した過去の真っ白な“嘉神一樹”ではなく、元の姿のアフロになっていると。


 その理由が分からないまま、こいつは消える。

 誰にも届かないが、それでもこれだけは伝えておこう。



「お前の負けだ、支倉ゲノム」

 支倉編スタートから読み直したら一樹くんが何を起こしたか分かるかもしれません。

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