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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章後編 プロジェクト ノア
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蛹化異変児

過去に投稿した話は誤字が無い限り改稿したくない(そのためのカク○ム)のですが、あらすじは特に思い入れが無いので、加筆したりします


 もういいや。かったりい。適当に破壊工作していたけど、さっさと先に進む。


 一回一回天井を突き破っていたけど、面倒だから近くにあった大きな机を3つ纏めて同時に投げる。綺麗に3人が並んで通れる穴が開通するはずだが、途中で何か妨害が入ったようで、貫通とはいかなかった。


 高さ的には190階かそれくらいで止まってしまった。


 仕方なくそこまで一気に跳躍。


 着いたところはダンスホール。天井には銀色のよく分からないボールが数個吊るされ、昭和時代を思い出す。

 思い出すも何もその時代にさかのぼるには数世代遡らないといけないが。


 そのステージの上で1人の男が待っていた。


 これまた凄いのが出てきたなと小さな感想を抱く。

 特徴なんて十文字程度で表現できる。


 サングラスをかけたアフロの男が、腕を組んで待っていたのだ。


「ったく、だりいZe 人が折角夏季休暇で休みを取ってたのに、ろくでも無い仕事を増やしやがっTe」

「そのまま人生に永久休暇を与えようか? 人生の辞表くらいならうけとってやらないこともないぞ」

「OREにはわかRu お前は小学校の通信簿で『人の話を聞かない』と書かれていただRo」


 な、なぜそれを……?


「まさか、過去を知る能力を持った『時間』か、それ以上の能力者?」

「いや、おれも知ってた」

「見せてもらったことないが、多分そうだろうって思ってた」


 こいつら、人がまじめにやっている時に…………


「OREの能力は過去を知る能力じゃあねえ。ただ『時間』ってのはあってる。自己紹介がまだだったNa OREの名は支倉ゲノムっていうんDa 憶えとKe」


 何というか、ここまで来ると何となく分かる。


「お前ら時間稼ぎしてないか?」

「NOコメントDa」


 してるね。間違いなく。


 支倉罪人はぜくらざいにんが逃げる時間を孫たちに稼がせていると思ったが、確認するとどうやら支倉罪人は最上階から動いていない。


 うーん。目的が分かってもその先が分からん。

 ただ目的が分からないならのって見てもいい気がするんだよな。


 まずかったらやり直せばいいし。


「ま、ショータイムといこうじゃないKa 楽しませてやるZe」


 支倉ゲノムの体が変化を始めた。


 獣か、それとも名前を言ってはいけないあの人に変化するのか。身構えはしたが、完成したその姿はひ弱そうな小僧だった。

 6歳かそこらの白髪のガキんちょ。そんなのに変身した。


 なんか見ているだけでイライラする。


「何だあの性格の悪そうな目は。あれは将来人を殺す目をしている。いや下手をしたら世界を滅ぼしそうな目をしている。死んだ方がいいんじゃないか?」

「…………あれ一樹だ」

「は?」

「あいつ、一樹の10年前とそっくり」

「そっくりなだけだろ。他人の空似ってやつだ」


 そう否定したが、ことごとくアフロは否定を否定した。


「これがOREのギフト。蛹化異変児モンスターチルドレン。関わりを持った相手の過去に変身する能力ってやつSa」


 じゃ、こいつ俺の昔の姿ってわけだ。

 関わりを持つって、会話だけでもいいんだな。


「いやあ、初めて見た時からイケメンだって思ってた。将来大物になる。間違いない、俺が保証する」

「「…………」」


 ホントダヨ。ボクウソツカナイ。


「そう、そこの嘉神の10年前に変身させてもらったZe」

「……10年前? ――――――!!??」

「どうした父さん?」

「まずい! 一樹の10年前は…………兎に角まずい!!」

「何言ってるんだ? 俺の過去だろ? 未来に生きている俺が過去の存在に負けるわけないだろ?」


 俺は成長しているんだ。精神も能力も。


 なのにその慌て方は不自然、いいや相応しくない。


「爺さんが言っていTa OREのギフトは本来戦闘向きではないうえ、1対1の場合、ほぼ勝ち目がなI だが今この瞬間だけは例外なんDa 嘉神一樹の10年前に変身できるこの能力は一瞬にして上位を掻っ攫えRu」

「意味が分からない。俺の10年前になれたところで何だって言うんだ。自分で言ったんだ。あんたのギフトは『時間』だと。ならば今使えるギフトは精々吸収する柳動体フローイングが良い所だろ」


 あれが『物語』なら、反辿世界リバースワールド獄落常奴アンダーランドもそういった描写があったとして使えたと思うが、『時間』じゃそれは不可能。


「そうじゃない! そうじゃないんだ!! 一樹の口映しマウストゥマウスは…………いや――――――何でもない」


 父さんが何かを隠している。

 それは知っているが、気にしないほうがいいと月夜さんに言われたので出来るだけ気にしないでいるようにしていた。


「そうか、あれがいつきの過去か」

「シュウ……?」

「過去のいつきに勝てなくて、今のいつきに勝てるかってんだ。ここはおれにやらさせてもらう。雷電の槍ライジングスピア、そして……ッ! 混沌回路カオスチャンネル――昏睡」


 右手には電撃の槍。だがその本質は電撃じゃない。

 性質の付与により、その槍には強制睡眠の効果が加わった。


 柳動体フローイングは触れた異能効果を吸収する一見恐ろしい能力だが、『論外』の能力。問答無用で眠らせる『法則』の攻撃を受けてしまったら優先権として先に眠ってしまう。


 どんだけ俺に勝ちたいんだ。シュウは。

 これが終わったらちゃんと戦ってあげないと。


柳動体フローイング――仮初」

「「――!?」」


 槍が吸収された…………!? だと??

 完全に決まったと思ったから、状況をあまり把握できていない。


 何が起きた?!


「馬鹿な! あり得ねえ!」

「そうだ。柳動体フローイングは『論外』のはず!」

「あり得るかあり得ないかを論ずるより、実際に起きたことを前提に考えるべきだZe」


 それは真だが、かといって考え付く答えはあり得ないことしかない。

 空を飛んでいる豚を見てまず見間違いを疑うように、現状起きたことを信じられない。


 幻覚や夢を疑うが、それは無いと超悦者スタイリストが告げている。


「一樹! ここは一旦退こう!」

「退くっていうなら、OREは追いかけなI 勝手に逃げRo」


 逃げるだって? あり得ない。


「誰が退くか! ここで退いたら、馬鹿にされて終わるだけだ! 獄落常奴アンダーランド――業火」


 最大火力で焼き尽くす。『世界』の能力。『論外』ならば上から焼き尽くせ。


「無駄だっていうのが、分からねえKa」


 吸収できないはずなのに、当然の摂理のように炎がかき消される。


「OREはこのギフトで色んな奴に変身してきTa 爺さんの手伝いをしたり、強い奴に変わって暗殺をしたりDa どいつがどのくらい強いのか、変身すればだいたい分かRu だからはっきり言おU 何だお前、どう生まれたらここまで強くなれRu どう過ごしたらそこまで弱くなれRu」


 今の俺を、弱いだと?

 人類の五英傑に選ばれるであろうこの俺を……弱いだと?


 勘違いも甚だしいぞ。


「俺の強みは手段の多さ。一つ封じただけでいい気になるのは甘えだろ」

「いい気になっているのはどっちか、自力で確かめてみろYo その心意気が砕かれるのはいったいいつになるKa 今から楽しみだZe」


 異能力を吸収するのなら、物理的に攻撃すればいい。

 右ポケットから1円玉を取り出す。


 父さんは500円玉で恒星を破壊した。


 それに比べたら恥ずかしいが、俺はその500分の1の力で衛星を破壊する。


「月まで届け。そしてひれ伏せ」

「いや、それはOREらには届かねえっTe」


 超悦者スタイリストは体術。

 体で覚えても頭で覚えてもどっちでもいい。


 だから支倉ゲノムがこの状態で使っても問題なかったな。


 しかしだ。

 能力は効かず、物理も普通に無効化されるか。


 悔しいが確かに強い。

 そこは認めよう。


「父さん、能力を全部出すタイミングを間違えたな。今やるべきだった」


 強い敵を一瞬で倒すからそいつは強いのであって雑魚相手に無双した所で、所詮は砂山の大将よ。


「やった」

「……は?」

「もう全部やった。攻撃系のギフトとシンボル、有用だと思える能力は使った」

「冗談はやめろって。あいつピンピンしてるじゃないか」

「あ、ああ。全部の攻撃吸収された」

「はあ?」

「封印も即死も性質反転も父さんが使える手段は全部やった。だが……支倉ゲノムいいや、一樹に吸収されただけで終わったんだ」


 恐らくはこの中で一番殺傷能力も手段も多いのが父さんだ。

 その父さんが最大の攻撃をして、かつ最大の手数を加え、びくともしなかった?


「だからいったじゃねえKa この強さは頭がおかしI」

「父さん! シュウ! 何か来る!!」


 咄嗟の判断。

 俺達は皆、正しい判断をとった。


 突進してくる支倉ゲノムを受け流すのではなく、完全に、そして全力で避ける。


「このビルを壊すわけには行かねえからあまり激しい動きは出来ないGa この抹消力は凄まじいNa」


 空間を削り取る? そんな安っぽい被害じゃない。


 一線。


 画像ソフトで消しゴムを使ったかのような一線。

 ガキが通った所が、白く塗りつぶされて完全に消失している。


「間違いねえ。いつき!」


 シュウは気づく。俺も気づいた。

 とっくの昔に気付いていたけど認めたくなかったからそのふりをしていた。


「父さん!」


 最初からこの事を知っていたであろう男に意見を求む。


「もしかして本当の柳動体フローイング……『物語』なのか?」

「イエスともノーとも言わない。この件に関して父さんが口を割ることは決して無い。だが、今敵が使っている能力は『物語』と考えて問題ない」


 『物語』…………!!

 まさかこんなところで相手するとは思ってもみなかった。


 時や運命の能力を最強とするなら、物語はそのはるか先の隔離すべき存在。


 使用者が、あの理不尽変態神薙さんを筆頭として、阿婆擦れ女神メープル、オーバーヒール椿さん、救済少女月夜さんという、名前を聞くだけで一目散に逃げだしたくなるメンツなのだ。


 それが今目の前にいるこいつだって……?


「もう一度言U このまま逃げるのなら追わねE だがこのまま戦うつもりなら死んでも化けて出てくんじゃねえZo」


 自分の強さではないと分かっていても、驕らずにはいられない。

 それくらい俺の過去は強烈だとでも……?


 だが一つだけ、明確な事実がある。

 たった一つの解決策が存在する。


「父さん提案がある」

「何を言いたいのか分かっている。封印を解けってことだろ?」


 その通り。流石は何だかんだで俺の父親をやっていることはある。

 あの強さが10年前の俺のもの。


 弱くなっている原因は父さんの封印なのはもう当たり前すぎて自明の理である。


 ならばその封印がなくなれば、それこそ女神メープルにすら一矢報いた完全白狂状態を正常に扱える。


「話にならない。却下だ」

「だがどうやってあいつを倒す! 代替案を出せない癖に文句を言うな」

「代替案なら最初から出している。逃げよう」

「それは通らないってその次に言っただろうが」

「だがどうする! 父さんはこれは絶対に譲らないぞ」

「最悪父さんを殺してでも」

「父さんが死んでも封印は解除されない。寧ろ二度とそのままだ」


 封印解除も逃走も出来ないとなれば、いつも通り勝つしかない。


「どうするんだ……?」


 父さんの攻撃を全部吸収したのなら、俺達の全ては通らない。

 超悦者スタイリストもあるため物理で挑んでも意味がなく、下手に近づくと消しゴムに消されるかのように、白く消し尽される。

 二つ以下のクラスを無視できる耐性も、ここでは意味がない、


「…………!!」


 あった。


「まさかその顔、何か閃いたのか?」


 その通りだ。たった一つ、細く脆いだが勝てる筋道が、存在した。

 だが、実現可能なのか?


「父さん、あれがああしたあれのあれを、あれにああして、ああでああさせるようにああしたら、あれはあれだから、ああになるんじゃないのか」


 重要なところはぼかして、この策が通るかどうか確認する。


「いやその説明で理解できるなんてどんな変態だよ…………ぁああああ!!」


 理解してくれたようだ。そしてやはり父さんは変態だと自白した。


「出来ると思うか?」

「分からん。だが……どうかといえばたぶん出来るんじゃないのか?」


 確定とは言えない。

 だが、いける。


「おいおい、お前ら正気かYo 策が通じるのはある程度実力が伯仲しているときだけDa この強さ、理不尽さとも言い換えてもいいGa それに策が通じるわけがないだRo?」


 おっしゃる通りだったりする。

 俺がひらめいた策は強さに対する策じゃないんだから。


「だったら大人しくそこで待ってろ」

「いいSa その策、ことごとく打ち破ってやろU」


 その策を実行する前にもう一つ確認を取らないといけないことがある。


「シュウ。確認しないといけないことがある」

「な、なんだ。いつきが何を企んでいるかさっぱりわかんないおれに何を聞くつもりだ」


 分からなくていい。出来るだけ盗聴されないよう、シュウにしか聞こえないような声で話しているが、それでも盗聴されている可能性だって十分あり得る。

 今は自分が確実に強いからこうやって作戦を練る暇を与えているだけ、それこそ時間稼ぎにも等しい。


 だがここでシュウが、理解をして納得をしてしまったらこいつは『まさか本当に解決策があるんじゃないか』と疑いだしてしまう。


 だからこのまま分からないままいてほしい。

 その上で、話を進める。


「最初ゲノムに襲い掛かった時、昏睡を狙った。即死を狙わなかったのは、今まで誰も殺したことが無いから怖くなったから。そう考えていいのか?」

「…………」

「誰かを殺したくないと考える心。それはとても気高いものだと思う。大切にしてほしい。だが俺が今考えている策は、一瞬でケリをつけないといけない。そしてそのケリは絶対にシュウがつけないといけない。覚悟はあるか?」


 俺の記憶が正しければシュウは一度も人を殺してはいない。

 敵を無口にする最大にして最強の手段は殺害そのもの。


 それをシュウにさせるのは正直忍びない。


 だがここで一時撤退するのは絶対にやっちゃいけないと、何となく直観として察している。逃げるなんてそれこそ論外だ。


「正直言って……怖くないかといえば嘘になる。だがよ、その恐怖がおれの歩みを阻むって言うのなら、乗り越えてやるよ」

「分かった。俺はシュウの言葉を信じる。だからシュウも俺を最後まで信じてくれ」

「信じる」


 確実に言える。

 俺が今まで戦った中(戦いになったと言える中であるため、神薙さんとメープルは除外)で確実に最強の敵だ。


 俺一人じゃ絶対に倒せないし、3人で無いと勝ち目がない。

 しかもそれが確かだとも言い切れない。


 それでも――――――


 シュウが信じてくれると言った。

 仲間がそう言ってくれるなら、俺はなんだってできる。


 過去の俺は強敵だが、友情の強さを知らない。


 支倉ゲノム、そしてガキの頃の俺に教えてやる。


 嘉神一樹の真の強さは、絆の力であると。


一応変身するのに1年以上前の存在であることが制限としてある。


得意な相手 成長しきった相手、全盛期が昔の相手 スタミナ消費が激しい相手(過去の存在として『時間』が止まっているため、スタミナは減らない)


苦手な相手 常時成長タイプ 1年以内に急激な成長を遂げた存在


 大体こういうの主人公が常に成長するってことの噛ませなのに、なんでここの主人公は無理なんでしょうねえ?




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