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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章後編 プロジェクト ノア
162/351

苦庭遺志木

過去話とおまけあり。



「おりょ?」


 天井を突き破ろうとしたのに硬くて出来なかった150階。

 ここまではずっと問題なくできたのに、急にできなくなった。


「シュウ、父さん。これって?」


 取りあえず『世界』を無視しながら攻撃するがそれでもこの天井が壊れることがない。


「いつきの考えてる通りじゃねえか? 『法則』が使われた」

「オレもそう思う」

「どうする? なぜか階段のシェルターが開いてるけど……このまま言われた通りに誘導されるのは気に食わないからな」


 RPGの勇者が壁を越えられないだけで叩かれるのが今の時代。

 このまま誘導に乗ったら、叩かれちゃうんじゃないかと危惧。


 仕方ない。この階だけ転送するか。


 回廊洞穴クロイスターホール

 次元に穴を空け、上の階に移動する。


「「「oh…..」」」


 このフロアに入り俺達は同じ反応をとった。

 ツンとする薬品の匂いで始まり、周囲は配線で壁が見えず、床の上で歩くことすら困難である。

 そして目を引くのが透明な大きな筒にホルマリン?漬けされた人があちらこちらにいた。


 全て死んでいるのかと思ったが、1人だけ呼吸チューブが繋がれて、しかもこちらを凝視している。


 近未来的とでもSFチックとでも言うべきか。


「ここ、関係者以外立ち入り禁止。帰って」


 中にいたのはゴスロリ系の服を着た少女。

 こういう服を成人女性が着ていたら引くが、この子はとても小さいのでむしろ似合っている。


「可愛いなあ。あの娘」

「おっしゃ、浮気だって母さんに言ってやろ」

「やめろー! やめろー!」


 しつこさすら感じるこのネタ。

 でもやめない。


「支倉・リンクイナ・アンビ。呼びたかったらアンビでいい」


 アンビちゃんか。


「ここ何の施設なんだ?」

「分かんないし、知ってても言わない」

「じゃあ何でこの部屋だけ破壊できないか知ってる?」

「壊れないのはアンビのギフト。存罪証明クローンパラドックス。実際に見てもらった方が早いと思う」


 試験管を2本見せ、1本投げ渡す。

 ど真ん中のストライクだったので、アンビも超悦者スタイリストだ。


「壊してみて」


 握りつぶそうとするがびくともしない。


「アンビのギフトの影響を受けたら同時に破壊しないと壊れなくなる」


 もう一つは適当に投げ、床に落とすと俺が持っていた試験管は本来の硬さに戻り四散した。


「アンビは自分にもこのギフトを使っている。対になっている何かはどこか遠くにある。アンビは絶対に殺せない。そしてこの部屋もそう。この部屋はアンビと対になっている」


 壊れない理由はよく分かった。

 これもまた『法則』のギフト。


「アンビ攻撃力ない。だからお前達とは戦わない。御爺様なら上の階のどこかだから探すならあっち」

「何か油断しているけど、別に破壊しなくても殺す方法は沢山あるからな?」

「…………」


 この能力は壊れないだけ。だったら色々とやりようがある。


「だから抵抗する構えはとったほうがいいとおすすめする」


 ただし結果は変わらないと思うが。


「それも無理。アンビ、超悦者スタイリストの5割くらいしか使えない。防御とちょっとした移動だけ。戦えない」


 なんかやる気を削がれる。


 だが何だろう。

 気持ち悪い。


 今見逃しちゃいけないことを言った気が…………


「キスしたいなら勝手にして。抵抗しないから」

「あ、そう」


 良い能力だし取りあえず手に入れていいだろう。

 キスできる距離まで近づいて、今日二回目のキス。


 さてと、殺すか。


「それが最期のキスになれ」

「……!」


俺の首筋に何かが触れる。

 何かを埋め込まれた?


「流石はアンビ、仕事が正確ネ」


 天井からピエロの男の子が。

 支倉の家どうなってんだ。


 デブ、中華、ゴスロリ、ピエロ。


 超悦者スタイリストはどんな服を着ても好きなように動けるが、かといってどんな服を着てもいいってわけじゃないんだけどな…………


「アンビの仕事は終わり。あとは上手くやれ」

「ミーに任せて」


 アンビちゃんは丸い円が描かれていた床の上にたつと、どこかに消えた。


「テレポート、ネ。支倉の科学技術はお前達の予想の先を言っているのネ」

「おいマジかよ」


 シュウが驚くが俺も驚いた。


 テレポートがあれば経済がどんなふうに回るんだろう。


 運送会社は死ぬのは間違いないな。


「ミーは支倉クーフィスというんだネ。よろしくネ」

「それで? クーフィス君はどんなギフトを持っているんだ」

「ヒッヒッヒ。ミーのギフトは『論外』ネ」

「ふっ」


 何かと思えば『論外』

 その自信は、愚かとしか言い表しようがない。


 俺達3人にどうやって相手をするつもりなのか。


苦庭遺志木ダイダイキライ


 首元から枝が生え、成長し、実がなる。


「ミーのギフトはユーの苦手意識を実現する能力ね」

「つまりは俺が好きなように苦手意識を持てばいいわけか」


 ゴキブリでもイメージしとこ。

 生成された実が、ゴキブリの形に変化を始めた。


 これはこれでキモいな。


「ユー。これを見るネ」


 支倉クーフィスはプラカードを掲げる。

 そこには一人の男の写真が写っており、だからどうしたと……


 謎の頭痛を覚え、実がゴキブリから人の形に変化を遂げ、成熟したかのように枝から落ちる。


「いえーい。俺だぜ」


 神薙信一が目の前に現れた。

 だって神薙さんの写真を見せられたから、仕方ないじゃん。


 あの人マジで苦手なんだ。


「ピースピース」


 苦手意識により、神薙信一が創られてしまった。


 これが偽物なのは理解している。

 だが分かった上で言わせてほしい。


「「「ぎゃあああああああ」」」


 B級パニック映画のキャストのようなリアクションをとってしまう。


「何てことしやがる!」


 これは洒落になっていない。


「ユーの言う通り、超悦者スタイリストならば苦手意識を克服可能ネ。ただし、ユーのこの男に対する苦手意識は別ネ。勝手に無理だって認識してるネ。ユーがそいつを作ったのネ」

「一樹! 今すぐ別の何かに変えるか、弱体化をイメージしろ!」

「無理言うな! 俺があの人からどれだけの目にあわされたか!」

「いつきはまだましな方だろ。おれは修行の為に毎日あそこに行くんだが……超悦者スタイリストで戦ったのに普通に殴り負けするし」

「ヤメロ―!」

「だったらオレの方が酷いぞ。ギフト使ってもピンポイントに『そのギフトが効かない能力』を使ってくるから」

「ヤメロ―――――!!」


 俺の中であの人が更にどうにもならない存在として更新された。


「チャーンス」


 シュウと父さんの首に種を植え付けられる。

 注意が逸れまくっていたので、二人ともそのまま直撃し…………


「モザイクです」

「ぼかしです」

「目隠しです」

「「「俺達、規制三兄弟」」」


 神薙さん×3


 全裸にパンツを被ったVer

 Vライン水着を着けたVer

 星形スタンプを貼ったVer


 しかしながら俺達のリアクションと思うことは同じである。


「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ」」」




 どうすんのこれ。





*********************************



20×○年、

人類は70億程度。

ギフトもない世界


嘉神一樹が産まれるおおよそ200年前の世界。


その世界で2人の男が向かい合って対話していた。


「なあ支倉。のどが乾かないか」

「乾いていないといえばうそになるが、神薙がそんな風に聞いたときろくなことにならないのは分かっている」

「そうか。実はいい飲み物がある」

「聞いていなかったのか。絶対に飲まないぞ。それになんだ。厳重に保管して、劇薬でも持ってきたのか」

「半老不死の薬。これをやるよ。さあ飲め」

「…………ホンモノなのか」

「俺が創った薬に不備があるとして、それが他の凡夫が発見できるとでも? その程度のミスを俺がすると思っているのなら心外と言わせてもらう」

「お前が僕に薬物投与をしたがるのはこれが初めてじゃない」

「そりゃ、女の子が初めてを好きな男に捧げたいように、俺も初投薬は好きな友人にしたいんだ」

「わけわからないことをいうんじゃない。それとこれとは違う。最低限可逆不可逆はわきまえているはずだろ。だが明らかにこれは不可逆だ。何があった」

「――――分かった。白状する。俺大学を中退する」

「浪川教授が聞いたら卒倒しそうだな。研究の引継ぎはいいのか」

「研究の答えを浪川翔太に教えた。勝手に実験して資料作って学会で名誉を得るだろう」

「ここで神薙が学ぶことは無かったか」

「ああ、何も学べなかった。俺が得たものは東大を中退したという不名誉な記録と、お前との輝かしい青春だけだ」

「気持ち悪い。本気で何があった」

「宇宙人が攻めてくる」

「悪い冗談はやめろ、といいたいが……本当なのか?」

「ああ。間違いない。今から2年後外敵が宇宙より侵略戦争を仕掛ける」

「に、2年……!?」

「そんな慌てるんじゃない。2年もある。2年も準備期間があれば勝てる。俺があきない限りはな」

「退けるじゃなく、勝てると言い切るか」

「99.9999%間違いなく勝てる。ただ……ミスかもしれないが観測できないよく分からない何かがあった。それが何なのかによっては遺書の準備はしないといけないかもな」

「正直宇宙人が攻めてくる未来があるというより、神薙が分からないと言い切ったことが不安だ」

「そういうな。俺だって分からない事ばっかりだ。最近になってようやく愛を知れた。知ってるか? 愛は良いぞ」


 つまらんと言い切る支倉。


「支倉、お前は戦後の復興を頼む。その薬、本当はお前の為に作った。仮に俺が死んだとして、この星の未来を守れるのはお前しかいない」

「自分で薬を飲んで自分でやれ」

「不老不死の薬と言っても、脳を潰されたら死ぬ。たぶん俺も戦場に赴かないといけない。ほぼ間違いなく勝てるが、俺の生死はフィフティーフィフティーってとこだ」

「ならば大丈夫だろ。俺はお前が2分の1を外したことを見たことが無い」

「俺も経験上無い。だが、念には念をってやつだ」

「じゃあこの薬を飲んだのか」

「いいや。飲むわけないじゃん。俺50まで生きる気さらさらないし」

「自分がしたくないことを他人に押し付けるんじゃない」

「そう言うなって。ささ、ぐびっと」

「ったく…………全部終わったらなんか手伝え。それが僕が実験台になる報酬だ」

「いいぜ。テレポーテーションか? 無機物生命体の生成か? それとも異世界の研究でもしてみるか?」

「異世界か……それはいいな。ひょっとしてこれが最後の会話になるかもしれないが、こう見えて魔法とかそんな存在にあこがれている」

「嘘だろ? まじか!?」

「ああ。科学や機械を研究するのは魔法っぽいからが最初の動機だった。笑いたきゃ笑え」

「誰が笑うか。もし支倉の言うことを聞いて笑うような奴がいたら、俺が一族諸共苦痛を与えながら滅ぼしてやるから安心しろ」

「何より安心できない発言をどうもありがとう」

「だが、弱ったな。こういっちゃなんだが、世界を守って死ねるならそれは最高の死に様だと思っていたんだ。なのにどうして長生きしたくなったじゃないか」

「人を不老不死にしようとして自分だけが死のうとするんじゃない。一蓮托生だ。神薙も飲め」

「ったく、しゃーないな。半分個しよう。あ、一匙で効果あるから効果が弱まったらどうしようなんて考えなくていい」

「そんなものを僕に1リットル飲ませようとしてたのか」




お久し振りだね。メープルだよ。

どうでもいいコーナーの時間だ。


今回は趣向を変えて名前についてだ。


5章の狩生武、坂土素子、林田稟


基本的に人の名前については一つだけルールがある。そこさえ守れば適当なんだけどこの3人はちゃんとした元ネタがある。


植物の三大栄養素

狩生武カリウム、さかつち→ちつ→ちっ→窒素、林田稟→リン酸


樹を育てたという意味で名付けたんだ。


これはこれでいいんだけど、実はあるミスの所為で展開を一部変更しないといけないことが起きたんだよね。それが守らなきゃいけないルールを守っていなかったからなんだけど……ま、この答えは後程ということで!

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