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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章後編 プロジェクト ノア
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1万倍の兵力差

 最近、感想をたくさん貰えて超嬉しいです。

 支倉家と日本の名前を冠しているが、本家は外国。

 飛行機を使えば、数時間で到着する、ある程度日本に近い国に支倉の本家は存在する。


 200階建てのビルは日本じゃ絶対に建てることができないだろうと、その本家を眺めながら思う。


「おい一樹」


 いやー。それにしてもなかなかの絶景だな。今は夜遅いから海を見ることはできないが、この位置だと夕日が海に沈む景色を眺めることが出来るに違いない。


「おいいつき」

「あ、うん何」

「これどうするつもりだ」


 シュウはこれといったが、これらあれらが正しい。


「流石は支倉。警備がすごいね。憧れちゃうね」


 今俺はビルに入るすぐそこにいるのだが、流石にそうは問屋を下ろしてくれない。

 周囲に武装した警備員が多数いた。


 数人? ノー。 数十人? ノーノー。数百人? ノーノーノー。数千人? ノーノーノーノー。


 数万人? イエス。


 ざっと3万の警備兵に囲まれました。


 俺がアポを取ってから数分しか経っていないのに、もうこんなに用意したのか。


 流石は人口がゴミの様に多い国は違うな。


 兵たちは重火器を構え、いつでも発射用意があれば使用できる体勢にある。


「投降しろ。いくら能力者といえど1万の兵数比に勝てるわけないだろ」


 3人の俺達、1万倍の兵数。


「ざっと数えたら30153人だ」

「どうすんだ。この中にも能力者はいるだろうよ。おれのシンボルは1対1が前提だからいつき達が何とかしてくれ」


 時雨驟雨シュウのシンボルは混沌回路カオスチャンネル

 性質の付与という全能にすら近い万能の能力。


 ジョ〇ョのスタンドよろしく殴ったり触たりしたら○○になるを自由に付け加える。


 ただし1日(この場合の1日は睡眠を挟むという意味)に数回しか使えない。

 最初聞いた時は3回までだって言っていたが、あれから数週間経っている。成長してもおかしくはない。

 1つにつき1つしか付属できない(例、必中と必殺をつける)のはきっとまだ出来ないはず。


「どうする。オレが何とかしようか」


 嘉神一芽のギフトは口盗めリップリード。キスした相手の能力を奪い取るという一見すると俺の上位互換だが、実は父さんの方が下位互換。


 『法則』の能力の為、『物語』は奪えない。また俺の能力と違って能力が変化しない。

 これは練習無しで同じように使えるメリットと、成長することがないデメリットを兼ね備えている。


 それと封剣守偽ロックンロールという封印するシンボルを持っているが、基本的に父さんは中々それを使わない。

 シンボルは精神的負担が大きいから、バンバン使うものじゃないらしい。


「いいよ、俺が何とかする」


 編み出し中の新技その2.この機会じゃないと使えないから使っておこう。


「その場から動かないでね」


 誰に言ったわけでもなく、強いていうなら聞こえている皆に伝える。


獄落常奴アンダーランド――修羅」


 地獄を支配するというものすごく抽象的なギフト。

 俺が思う地獄ならなんだって再現できる。


「「「「「……………!!!!」」」」」

「何をしている! 撃てえええ!」


 四方……いや、五方からの発砲。


 全て人肉に当たるが、俺達3人には届かない。


「おいおい、まじか」

「これは……壮観だ」


 シュウと父さんが見た物。

 蠢く肉の塊。弾ける肉の花火。


「この地球という星は20世紀ごろに人口爆発が起きたから60億70億の人がいた。その当時は生きている人間の方が死んだ人間よりも多かったりしたんだ」

「そうなのかぁ」

「そう。でさ、当たり前なことだけど悪人って善人よりも少ない。精々全体の3%くらいしかいないんだな」


 全体の3%が悪人だと思っている。

 この地球で人類は100億程度死んでいるとも認識している。


「戦いは数、真理だと思うよ。でもだからこそ聞きたい」


 100億の3%


「たった3万の軍隊で3億の兵をどうするつもりなんだ?」


 綺麗に隊列された軍隊の隙間に、夥しいほどの死者が鮨詰めになって召喚された。


 銃声が鳴り響く。きっと良い火器を使っているに違いない。


「最新鋭の武器を持った精鋭たちには不服かもしれないが、こいつらはすでに死んでいる。決して死ぬことはない」


 誇張であり、『法則』で殺せば死ぬ。

 ただ首をもがれようが心臓を抉られようが、止まることなく動き続けるだろう。


「「「「「……」」」」」


 兵の士気が一気に下がったのが手に取るようにわかる。


「初めて使ったけど……見るに堪えないな」


 羽衣会の時に使った亡者の方は、ある程度は知っている人で固めていたが、こいつらはよく知らない俺が悪人だろうという認識で作りだした木偶の坊。


 悪人は醜いという前提の俺のイメージが、そのままの姿で出現している。

 燃費も悪いし、出来れば二度と使いたくないものだ。


獄落常奴アンダーランド――亡者」


 修羅と亡者の違いは自立しているか。

 修羅は数が多い分単調な命令しか下せないが、亡者で黄泉がえした死体は自我が存在し、臨機応変に対応できる。


「ひさしぶり。まよちゃん」

「お兄ちゃん、おはようなの」


 楢木魔夜の裏人格。まよちゃん。

 獄落常奴アンダーランドのオリジナルの能力者。


「ちょっとお兄ちゃん。これからこのビルの中でいろいろしてくるから、まよちゃんは誰一人入れないようにしてね」


 この3億ゾンビの指揮系統はまよちゃんに任す。

 不安しかないが、まよちゃんが元の能力者だから他の人達よりマシに使ってくれると確信している。


「分かったの。入れなきゃ何してもいいの?」

「駄目。このゾンビたちは死んでもいいが、兵隊たちは絶対に殺すな。むしろ傷つけないようにしろ」


 雇われ兵を殺しちゃいかんでしょ。


「ご褒美は何かくれるの?」

「朝になるころには終わると思うから、朝日見れるぞ」

「ほんと!? まよ、頑張る!」


 嘘だ。無理。

 俺がまよちゃんは夜の人格と認識している以上、朝が来れば問答無用で楢木魔夜にスイッチする。

 しかし楢木魔夜という存在は俺が『世界』を潰して殺したため、獄落常奴アンダーランドでは生き返せない。


 だから一生この子は太陽を見れることはない。


 でもきっとそのことは都合よく忘れてくれる。そういうギフトだ。都合のいいように使わせてもらう。


「暇だったらゾンビで積み木ごっこで遊んでいていいから。確認するが何をすればいい」

「誰もビルに入れないの。兵隊さん達を殺さないようにするの。出来るだけ傷つけないようにもするの」


 合ってる。


「じゃ、お留守番? 頼んだよ」

「任せてお兄ちゃん」


 これで外部から妨害されることはなくなった。

 心置きなく攻め込むことが出来るな。


「じゃ、いくか」


 先頭を父さんに任せ(弾除け)、いよいよ突入。


 非常用の光はあるものの、真っ暗と表現して差し支えない。


 ただ俺達超悦者スタイリストは、目で見ることはあっても、光で見るわけではないので問題なく行動できる。


 先を進もうにも何処もシャッターが閉まっており普通にやれば侵入できない。


 ちょっとだけ困った。


「そういやシュウは超悦者スタイリストは完全に使えるようになったのか?」

「おうよ。なんならこのシャッターを素手でぶち破ってみるかぁ?」

「それはいい。ぶっちゃけわざわざこのままシャッターを破壊しながら進むって芸がないよな」

「どうする。テレポートでもするか」

「いいや。折角だから一直線に歩こう」


 反回転ジャンプ、ただし回転方向は横ではなく縦。

 天井にコウモリのように張り付いた。


 そして左ひざをあげ、天井に叩き付ける。

 大きな穴が開き、これでそのまま上に昇れるようになった。


「いつきも超悦者スタイリストは習得できたみてえだな」

「いいや。まだ8割方しか出来てない。移動からの攻撃動作や防御からの攻撃の切り替えが未完成」

「結構それ重要じゃねえか?」


 シュウの言う通りである。


 1日2時間の涙なしでは語れないほど辛い特訓のおかげで、超悦者スタイリストの基礎は完全に習得できた。


 もう俺は光どころか宇宙の膨張速度をぶっちぎって移動できる。

 流星を腹で受け止めてもなんとも思わないし、わざわざ木星までいっていくつかの衛星を破壊してきた。


 相手が超悦者スタイリストでもなく『時間』以上の能力者で無い限り、ギフトや踏み潰しを使わなくても勝てる。


 しかし、相手が超悦者スタイリストになると一気に厳しくなる。


 あれから父さんと組み手をしたんだが、ちっとも勝てなかった。


 攻撃しようとするとカウンターを受け一発KO

 防御しようとするとそのまま弄り殴られる。

 移動しようとすると追いつかれそのまま攻撃を受ける。


 父さんが超悦者スタイリストの戦いで重要なのは切り替えだと口を酸っぱくしていっていたが、その通りだと実感した。


「でもそれも今日までだ。今日、というか今日明日で超悦者スタイリストを我が物に出来るだろうな」

「その自信はどこから来るんだ……一樹、結構手こずっていただろ」

「甘いな父さん、主人公は戦いの中で成長するんだ。きっと俺も成長するから、見とけよな」


 やっぱ修行パートはくそ。いつの時代でも戦いの中で強くならないとな。


「戦いの中で成長するだろうと高を括るのは一樹くらいだろうよ」

「でも実際じっせえやりかねねえよなあ。イツキは」

「…………オレもそう思い出した。息子が強すぎて父さん辛い」


 息子の成長を素直に喜べない愚図な親。


「のりこめー^^」

「「お―!!」」


 ジャンプして次の階まで到達。


「そういやさ、いつきって宝瀬さんのことどう思ってんだ?」

「どうって? 友達だと思ってるが」

「そうじゃなくて恋愛関係にはなんねえのかって」


 空中で立ち止まる。

 父さんは聞き耳をたて何も言わない。


 シュウは何かやっちゃったかなーと誤魔化しの笑みを浮かべた。


「今は気分がいいから怒んないけど、次そんな事言ったらシュウでも許さない」


 メガおこ。プチぷんぷん丸。


「その理由聞いてもいいか」

「例えば、俺とシュウがデキてるなんていったら怒るだろ?」

「いや、男と女は意味合いが違うだろ」


 そりゃそうだ。いくらなんでもこのことで男女平等なんて言いはしない。


「そう言う意味じゃない。例え友情として固い絆が繋がっていてもそんな事言われたら低俗なものになってしまうだろってこと」

「いや……おれは性欲としてじゃなく恋愛として」

「愛は性欲 恋人は性処理。どんなお題目を口にしてもそれが真実」


 そう昔の偉い人が言ってた。


「シュウも男だからな。分かる分かる。俺だって父さんがロリコンだと認めるのになかなか時間がかかったからな。現実を受け入れるのってとっても辛いよな」

「何か唐突にディスられているんだが…………」


 別に父さんがいるからディスったんじゃない。

 いてもいなくてもディスる。


 つまりいてもいなくても変わらない存在。


「したいって思うことを否定するつもりは一切ない。そういう相手が欲しいと思っても別に非難しない。ただそれはどんな言葉を取りつくろっても行き着く先というか……根本はそこだというのは自覚しないといけない。最近の男女はそれすらも分かっていない」


 俺だって男だ。性欲はあるし隠したい気持ちも重々承知。

 分かった上で本質に目を向けないといけない。


 恥ずかしがるだけじゃ真理は掴めない。


「セッ○スしない恋愛作品は歪」

「うっわ……小説じゃないが歪だってことはすっげえ納得する」


 シュウはそんなことを言う。

 混沌回路カオスチャンネルは『法則』だからメタ発言出来る境地までは至れない。


 だからそんなシュウの代わりに一つ。


 な○うに恋愛小説はない。あるのはノク○ーン

 逆に恋愛小説が掲載されていたら、違反だから通報しよう。


 ノーモア恋愛小説。


 っごほん。


 かなり話が逸れた。


「恋愛は性欲。もっと言うなら種の存続、家族愛は遺伝子の保存。だから家族を大切にしたいと思う気持ちはセッ○スしたい気持ちとほとんど同じ」

「一樹はオレをディスらないと話を進められないのか?」


 無視無視。


「だが友愛は違う。そんな生物的欲求ではなく、種ではなく一つの群れとしての知能を持った知的生命体としての行動。単細胞的欲求と一緒にしてほしくない」


 恋愛脳は単細胞。


「俺は女の人と友情を育むってとっても素晴らしいことだと思う。その証拠に俺達の中で一番頭がいい真百合と俺は友情関係を結んでいるからな。頭がいい奴はそういうのをちゃんと理解してる」

「「…………」」


 あれ? 何で二人とも急に静かになった?


「ここは俺の力説を褒め称えるべきだろ。ほら、さすいつとか、なんだって―とか褒め称えないと。主人公褒めないでいつ褒めるんだ」

「途中まで半分くらいは納得してたんだがよぉ」


 シュウはばつが悪そうに目をそらす。


「これから戦う相手も可哀想だが、一樹も可哀想だなあと」

「はあ!?」


 父さんに可愛そうな子扱いされた。


「ロリコンとか名誉の無いことやっているから分からないかもしれないが、人を可哀想な子扱いしたら名誉毀損だぞ、訴えて死刑にしてやる」

「オレは見たことないが、一樹は絶対に人を可哀想な子扱いしたことあるだろ」

「むむむ」


 言われてみれば早苗とか天谷とかしていたような…………していないような…………?


「あれだよ。早苗は本当に馬鹿でアマヤーは信頼があるから」

「前者は否定出来ないが後者は違うだろ」


 同級生に馬鹿扱いされる早苗。

 残念だが当然、相応しい脳みそといえる。


「ま、いいや。俺が言いたい事は恋愛なんて単細胞がしそうな事を俺達の関係に持ち込むなって分かってくれたと思う」

「お、おう。分かった」


 分かってくれるならそれ以上は何も言うまい。




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「――――くしゅん」

「どうしたんだ真百合。クーラー強すぎたかな?」

「いえ。多分嘉神君が噂をしてから」

「君が噂をしてくしゃみが出るなんて思わなかったよ」

「彼に関しては…………感度がいいから」

「そ、そうなんだ」


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またこのオチ。便利すぎる真百合さんが悪い(暴論)

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