南部戦線、異常なし。
多幸福感
出来るだけ多くの人が幸福になるような行動を予期する。ただしその結果がどうなるかは神すらも知らない
実行中には主人公補正がつく。
あとめっちゃ読みにくくしてます。ごめんなさい
夏の暑い日、日本という国から黄緑色のお姉ちゃんがやってきた。
毎年この時期になるといろんな国から色んな人が来るが、お姉ちゃんのような人は初めて見た。動きづらそうな服をしているのは、何のためなんだろう。
ぼくの村はどこの国と国の国境近くにあり、紛争が絶えない。
一番長生きしている村長さんが30歳。
だからもう人生の3分の1を生きたことになる。
自分をユキと名乗ったお姉ちゃんは村に来てからぼくらにこういった。
「野球をしましょう」
日本製のトラックには長い金属の棒と白いボールがたくさん入っていた。
普通、ここに来る人は身振り手振りで自分の意思を伝えるのにユキお姉ちゃんは綺麗な発音をしていたのでみんなびっくりした。
「野球とはなんですか」
「スポーツです。でもその前にグラウンドを整備しないといけませんね」
ユキお姉ちゃんは地雷原に足を踏み入れた。
みんなが止めるように言ったのに、ユキお姉ちゃんは無視した。
「これを……こうして……はい」
ユキお姉ちゃんは埋まっている地雷を掘り起こして……解除した?
「危ないですから、ちょっとの間ここには入らないでくださいね」
みんなが言いたいことを逆に言われた。
それから結構長い時間が流れた。
「これで全部です。みなさーん、集まってください」
手を大きく叩きぼくらを呼び寄せた。
「これにて地雷はすべて撤去しました。その証拠を見せます」
ユキお姉ちゃんは地雷原を縦横無尽に走り始めたのだ。
「ぼくも一緒にどうですか? 走るのは楽しいですよ」
ユキお姉ちゃんに呼ばれ、恐る恐る一歩を踏み出す。
「ほら」
手を繋いで一緒に走った。
本当に地雷は全て無くなっていた。
それを見たぼくの友達も一緒に走り回った。
「野球をしましょう。楽しいですよ」
お姉ちゃんは再び白いボールを持って振りかざす。
でもぼくの友達はいやがった。
「おれはサッカーがしたい」
「サッカーは土人がするスポーツです」
そんなひどいことをお姉ちゃんは言った。
「そもそも人間というのは、言葉や道具の他に投擲を用いて進化をして生きました。サッカーだけじゃなく物を投げない種目は、人がするスポーツじゃないです」
難しいことを言われるがぼくには分からない。
「サッカーの人口が多いのは途上国……あえて後進国とでもいいしょうか。人になりきっていない人がやりたがるからなんですよ。その証拠に日本とアメリカではあんまり流行っていないでしょ」
日本という国は知らないがアメリカは知っている。
あいつらが好きなスポーツなんてやりたくない。
「そんなこと思っちゃいけません。嘉神さんじゃありませんが悪人と別に同じことをしてもいいんです。アメリカ人が息をしたからあなた達は息をしないです?」
お姉ちゃんはそう言ってボールを投げる。
それをぼくは捕ってしまった。
「それに地面に這う物を追うよりも、空を仰ぐ方が楽しいって思いません?」
結局ぼくらはユキお姉ちゃんの言う通り野球というものをすることになった。
「野球って楽しい」
「だよなー」
「サッカーなんてつまんない」
みんな野球の虜になった。
もちろんぼくも野球が楽しいって思える。
「洗脳完了。また明日もしましょうね」
「待ちたまえ」
村長がユキお姉ちゃんを呼び止める。
「まさかとは思うが毎日こういうことさせるつもりか」
「雨の日以外はさせるつもりですが」
「それは困る。毎日水を汲んでくる役目がある」
今日は当番じゃなかったから僕らは遊んでいられたけど、水汲みは指で数えて左の小指以外、朝と昼と夕方にしないといけない。
「そのことなら平気ですよ。宝瀬プレゼンツ最新式の浄化装置を配備しておきましたから」
日本という国は知らないが、ホウセは知っている。
良い車を作るんだ。
「数日で地下水をくみ上げ、しかも透明な水を飲ませてあげます」
「それは……本当かね?」
「はい。わたし生まれてこの方嘘をついたことはありません」
それじゃあ、毎日何往復もしなくていいんだ……?
「ただしその余った時間をわたしにください」
「野球をやらせるつもりか」
「それもありますが、何より人間は学ばないといけません。学校を作ります」
「学校? こんな時に何を学ぶんだい」
「こんな時だからこそ学ぶものがあるんです」
そう言ってお姉ちゃんは車の中に入った。お姉ちゃんはそこで寝泊まりをするようだ。
それからはとても楽しい時間だった。
1日、1時間、1年の概念。
植物が育つ仕組み、そして農耕のやり方。
大人も一緒に勉強をして、実践に移して、野球をして遊んだ。
そう言えば誰かが予防接種がなんたら聞いていたら
「凌辱ゲーのヒロインはいろんな人とセッ○スしても性病にはかからないでしょ」
と言われたらしい。お姉ちゃんぼくらの知らない単語をいっぱい知ってる。
7回日が昇り……1週間たった後、人攫いがぼくらの村に着て村の女ごとユキお姉ちゃんを連れ去った。
翌日、昔攫われたぼくのお姉ちゃんや友達のお母さんを連れ帰ってきた。
みんなユキお姉ちゃんに感謝した。
ぼくもみんなもユキお姉ちゃんのことが大好きになった。
2週間たったある日、北側の軍隊の人がやってきてユキお姉ちゃんたちに何かを伝えた。
そしたらユキお姉ちゃん以外はどこかに行ってしまった。
残念だけどユキお姉ちゃんが残ってくれたのなら、みんなそこまで残念に思っていなかった。
それから紛争が激しくなった。けれど村の皆はユキお姉ちゃんの言う通りに行動したらだれも死なずにすんだ。
ただ中々思うような結果が出ないアメリカの軍隊が押し寄せた。
「ツキヨユキをこちらへ差し出せ」
みんな断った。
だってぼくらはあいつらを一番恨んでいる。
あいつら人攫いと内通しているし遊び感覚でぼくらを殺すんだ。
でもそんな中でユキお姉ちゃんは自分から捕虜になった。
この村に手を出すなっていう約束をして。
でもあいつらはその約束を破ってぼくも含め村の人達を連れ去った。
大型トラックに詰め込みにされ、ここじゃないどこか開けた場所まで連れていかれた。
その時、ユキお姉ちゃんは「わたしが合図をしたら目を瞑るように」と命令した。
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ヲレは日本人が嫌いだ。かつては偉大なアメリカ国の属国だったくせに、ギフトと言う存在が出てきた途端、盟主になりやがった。
ムカついて祖国アメリカに旅行に来た日本人ぶち殺したら、こんな辺境に連れていかれた。
何処の国でも牢獄は足りていない。
こうやって戦地に行かされるのが刑期なんだが悪い気はしない。
土人を殺すのはとても楽しいし、ヤクすらも支給されるんだから刑期が終わったらまた来たい。
唯一の気がかりは家族のことだ。ヲレは10人家族の4男で、しかもガキが3人。
あいつら元気にしているか確かめられないことが、この生活の不満ってわけだ。
その鬱憤をぶち殺してはらすのだが、今日は日本人もついでにやれる。
ネクロフィリアの同族が結構タイプらしく、下半身は残しておけってさ。
手榴弾でいっぺんにばらばらにすれば爽快だったのに……そうだ。
最近支給されたマシンガンの威力と制度を確かめよう。
班長はヲレ達に理解がある人だからOKをだした。
恐怖で歪む顔を見たいってのに……なんだ、あの女。
これから殺されるってはずなのにちっとも恐怖しちゃいねえ。
その所為で他の土人すら、落ち着いていやがる。
それが両手を縛られた奴がする表情か? それとも日本人の無表情は死ぬときでも変わらないのか?
「祈りなさい」
英語であいつは命令した。
「祈る神がいるのなら、最期に祈る猶予を与えます。さあ、早くしなさい」
何だこの女……!?
ハッタリ? 違う。本気でヲレ達を慈しんでいやがる。
「いいんですか。祈りを叶えてくれる神なんてこの世には存在しませんが、それでも祈って逝けるのは幸福なんでしょう」
ヲレはもうあいつの言葉を聞きたくはない。
引き金に指を掛ける。
「可哀想に。ではさようなら。地獄でまた会いましょう」
なにを言って…………?
「今です」
あの女は土人たちの言葉で合図をした。
……何かをしてくるかと思ったらただ目をつむるだけ。
「あっ」
仲間の一人が空を仰ぐ。
ヲレを含め皆それを見た。
見るしかできなかった。
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「これの正体ですが、隕石です」
お姉ちゃんは誰にいう訳ではなく呟いた。
「この時間この場所で隕石が落ちる。だから適切にあいつらだけを始末できるよう誘導しました。わたしのギフトならこの程度のことは可能です。さて、目ぼしいものを掻っ攫って帰りますよ。運転はわたしがしますから気にしないでください」
お姉ちゃんはそこにあった箱を抱え、トラックに詰め込む。
ぼくらは元来た道を、ユキお姉ちゃんが運転する車で帰った。
村に帰ると兵隊さん達がいた。
ぼくらの国の兵隊さんらしい。
ユキお姉ちゃんは説明をする(ぼくにはなんていっているのか分からない)
そしたら兵隊さんはとても喜んだ。
それから数日たってぼくらをパーティーに招待したいって。
ユキお姉ちゃんと村長さんとか村の半分が参加した。
ぼくも参加した。
ぼくらの言葉でユキお姉ちゃんはあいつらのことを「てろそしき」と言っていた。
今まで食べたことのないご馳走を並べられた。とてもおいしかった。
そこでユキお姉ちゃんはトップの人に気に入れられ、お姉ちゃんだけ特別待遇。
「また明日。授業も野球をしますから。心配しないでいいです」
お姉ちゃんは手を振り、さよなら……また会おうっていってくれた。
だからぼくらは心配しない。お姉ちゃんがそうだって言ったからきっとそうなんだ。
おやすみ、ユキお姉ちゃん。
また明日。
悪い夢を見ていた。
暑いんじゃなくて熱い夢。
でもユキお姉ちゃんがぼくの部屋にやってきた。
「眠れないんでしょ。子守唄を唄ってあげますからお休み」
「う……ん」
お姉ちゃんの子守唄を聞けるんだったら、こんなに熱くても我慢できる。
でも何でお姉ちゃんは…………な
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アメリカの軍事施設。
テントのような急造されたものではなく、入るだけでもいくつかの関門が存在する本当の意味で最新の兵器を作っている施設。
その奥に日本の女と屈強な男が机をはさんで会話をしていた。
会話と言っても日本の女は口数は少ないが。
「………………」
「いやはや。お見事といわせてもらおうか。ツキヨユキ」
「…………」
「テロ組織アルタイルを一晩で壊滅させるとは」
「……」
「あの夜キミは誰にも気づかれず頭領や幹部を暗殺した。その時の動画はばっちり送ってもらっているから殺し漏れはない。私が保証しよう」
「…………」
「それだけじゃない。拠点を破壊し、部隊も甚大なダメージ。これで戦争は終わる。我々アメリカ軍の勝利だ」
「………………」
「もちろんあの国を悪いようにはしない。君から預かった軍資金を有効活用して復興に全力を尽くそう。英雄ツキヨユキ」
「違います。英雄は彼らです」
沈黙を貫いていた女がついに口を開く。
「そうだった。日本では白仮面だったかな。あいつらが命を賭して作戦を成功させたんだ。そうだったね」
「はい。其方のアメリカでは英雄思考がお好きなんでしょ。わたしは嫌いですし譲ってあげます」
「ありがたく頂戴しよう。親不孝な彼らだったが、この名誉で家族も報われるだろう」
「…………」
「ただ私は知っている。件は君のおかげだと。ツキヨユキ、君は戦争を終わらせ愚者を英雄に仕立て上げた。敬礼をしてもいいかね」
「それであなたが救われるのならご自由に」
「そうか。しかしだ、納得できないことがある。なぜあの村を滅ぼした。わざわざ滅ぼさなくても戦争が終われば平和に過ごせていたはず」
「…………どうせあの地域は地面から放射能が漏れて、あの村の人達は助からなかったんです。彼らに明日はあっても未来はなかった。ですから最幸のタイミングで幸せなまま殺しました」
「え? そうなの」
「はい。ただ本当にごくわずかの放射能です。軍事活動程度で過ごすなら問題ないです。ただあそこにいる村の人達は長い間ため込んでいました」
「なんであの村を滅ぼさないといけなかったんだ。23世紀日本ならある程度の被曝は治せたと思うんだが」
「あの村の下に遺跡があるんです。宇宙人が残した科学技術があの村の下に残っているんです。それを利用すればあの国は発展できます。そしてそこから放射能が漏れているんですから掘り起こす時は注意してください」
「なるほど、国の為にあの村はあってはいけなかったのか。この事は当然黙っておくよ。そう言う取引をしたからね」
「1億円も渡したんですから。守ってくださいよ。軍曹さん。もしも他人に知らせるつもりなら……」
「分かってる。私は君と敵対したくなんかない。日本人はなんでこうクレイジーなのが多いのか」
「あ、わたしの周りではわたしは3番目です。名誉のために伏せますが、KIとHMはわたしよりかもクレイジーです」
「ジーザス。古き良きクールジャパンはどこにいった」
クレイジージャパン。意外に響きはいい。
「与太話はもういいですか。わたしはこれからとある飛行機に乗ってハイジャックして帰りますから」
「日本がブラックな所は変わらないようだね…………二度と会うことはないだろうから、最後にもう一つ聞いておきたいんだが」
「答える気はありません」
女は拒否したがしかし軍曹は続けた。
「ツキヨユキ、お前は村を滅ぼして何も思わなかったのか」
「答える気はないです。何のために視点変更を繰り返したと」
軍曹は女が何て言ったのか理解できないが、やはり答えてくれないというのは伝わる。
これ以上の詮索はお互いに不幸になる。
ならばせめて軍曹は別れの挨拶をした。
「さらばユキ、君に幸あらんことを」
「今のアメリカンジョークは面白かったです」
次回からちゃんと本編書きます。