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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章後編 プロジェクト ノア
157/351

決戦前夜

遂に本題に入ります

 月夜さんの時はギフトを使われているから例外として、生まれて初めて口争いで負けた。

 このままじゃ真百合が俺と結婚させられちゃう。

 何としても阻止しないと真百合が可哀想。


「かといって打開策を思い付かないんだよな」


 ピンチだ。誰か白馬の王子様がこないかな。


 こんこんと扉が叩かれる。


「開いてますよー」


 入ってきたのは真百合。


「どうした?」

「その……ついてきてほしいところがあるの」

「いいけど、どこに?」

「お父様のとこ。私と個人的に話があるから一緒に来てほしいの」


 ん? ん? なんかおかしくない。


「剣さんが真百合に話があるんだよな?」

「ええ。そうよ」

「俺がいる意味ないじゃん」

「お母様がね、私とお父様を二人きりにしたくないの」


 まさかーと言いたかったが、あんな強烈なのを見せられたら否定できない。


「お父様曰く、誰にも聞かせられない話をする。でもその話ですらお母様は嫌がる。他の誰かがいないと許可しないわ」

「なるほど、ほかの人じゃいけないわけ?」

「あなたが信用しているから」


 あ^~~


「そう言ってくれるなら、不肖嘉神一樹。出来る限りの力添えをしよう」




 というわけでついていったのだが、まさかこれがこれから世界を大きく変えることになると気づいている人はいなかった。



 道中真百合と会話しないのもどうかと思い、取りあえずさっきのことを話題として話す。


「凄いお母さんだったな」

「どこに出しても恥ずかしい、卑下の母よ」


 まあな。俺の母さんとは別ベクトルで恥ずかしい。


「どう思ったか正直に答えて」

「羊水がヨーグルトみたいな人」

「……!!」


 俺の即答を聞くとピクピクと体が震え始めた。

 何か言っちゃいけないことを言ってしまったかと思い後悔をしたが、どうやら違うらしい。


「ふっ……ふふ……ふはっ…………ごめんっなさい。ちょっとツボに…………」


 喜んでもらえたなら何よりである。





「それでお父様、お話とは何でしょう」

「先日、支倉に電通が来てね」


 支倉だって?

 そりゃ世界一二を争う企業だが、連絡先くらいは知っているだろうが……なんだろう。凄い嫌な予感がする。


「単刀直入に聞こうか。四月末にあったことで僕に隠していることは」

「…………!!」


 四月末……? 出来事は…………あれしか思い当たらない。


 コロシアイ

 真百合が何度も何度も死に続けた忌まわしい事件。


「その反応。あるんだね」


 剣さんは写真を裏向きにして、渡す。


「あっ……ああ」


 それを見た真百合は声にならない悲鳴をあげる。


「何が写ってるんだ?」

「やめて!!」


 真百合からこんな明確に拒絶されたことは無かった。

 その答えの代わりに剣さんがヒントを出す。


記録媒体アカシックレコード。支倉の娘のギフト。欲しいデータをどこからでも持ってこれる『法則』クラスの能力」


 欲しいデータ?


「データは実験とかのデータ以外でも、ただの光や音のデータも含まれる」

「あ……」


 分かってしまった。何が写っているのかを。


 剣さんは『法則』といった。

 欲しいデータが『世界』を改竄して消されたとしても、『法則』ならば手に入れられる。


 真百合はあそこで生き残るために何でもしたと言っていた。

 その何でもが、写っているのだとしたら?


「その写真をばら撒かれたくなければ、宝瀬が持っている株の20%を譲与しろ。だってね」

「そんなの…………」


 宝瀬が持っている株の20%って、数十兆、数百兆の桁だ。

 強迫にしては限度がある。


「普通は受け入れられない。でもね……僕はやってもいいと思ってる」

「…………?!」

「マアラがあれだからあまり表ざたには出来ないけど、僕は真百合を目に入れてもいたくないほど大切だと思っている。それとマアラがしたことの申し訳なさも含めて真百合のことならどんな無理でも通すつもりでいるんだ。それこそ地図を書き換えるくらいどうということではない」


 てっきりマアラさんと同類と思っていたが、そうではないようだ。

 でもだったら俺と結婚させるのは、可哀想だとは思ってほしい。


「だから……たかが数十兆、いいやこの宝瀬というグループを僕の代で終わらせても真百合の名誉を守りたい。もちろんこれが偽装ということもあり得るから確認したんだ」

「…………」


 良い親じゃないか。羨ましい限り。

 俺の父親なんてロリコン殺人鬼だぞ。変わってくれない?


 決めた。

 やろう。


「剣さん。そのことなんですけど」

「ん?」

「俺に一任させてくれません?」

「…………」

「冷静に考えて、こういうの一度受けたらまたゆすりにくるのは目に見えています」

「そうだね」

「だからお金とかじゃなくてもっと根本的な口封じがあるじゃないですか」

「何を言いたいかは分かったけど、一応確認しておこうか。その口封じはどんな手段なのかな」


 そりゃもちろん。一択だ。


「死人に口なし」


 これ以外ないだろう。


「駄目。絶対に駄目よ」


 しかしそこで真百合が止めに入る。


「なんで?」

「無理だから」

「無理って俺の超者ランクは3位。1位2位は帝国の人だから、その他の国では俺が一番強い」


 故に一つの企業を潰すことくらいは可能だろう。


「……支倉に限っては違うの。まず資産が宝瀬の1.5倍」

「それは知ってる」


 つまり世界の3割ほどが支倉。


「宝瀬はお金を転がりまわすだけだけど、支倉は明らかに現代科学ではオーバースペックな物を作っているわ」


 核爆弾すらも耐えられる物質とかな。

 ただこれは超悦者で何とかなるから、そこまで気にしなくていい。


「何よりも支倉家統帥、支倉罪人はぜくらざいにん


 有名な人だ。一度滅んだ文明を再生した張本人。

 一番好きな有名人はと聞かれれば、万人の内、五千人くらいは彼の名をあげる。


 そう言った事実があるため力は支倉>宝瀬だが、人気は支倉>>宝瀬が世界一般常識。


 宝瀬は成り上がりとすら揶揄される。


「彼はまだ生きている」

「………………は?」


 これは想定外。


「200年前の人だぞ?」

「そうね。ただ自称200歳もいるでしょ」


 神薙さんを思い浮かべる。

 うっ、あいつを思い浮かべると頭が痛くなった。


「だから何を持っているのか分からない。私達宝瀬ですら未知数。危険すぎる」

「それが? 別に俺が勝手にするだけだから」

「契約したでしょ。年100万の」

「したな。うん。だから宝瀬の為に動く。問題ない」

「問題大ありよ」


 うーん、平行線。


「剣さん的にはどう思っていますか?」

「僕かい? ありだと思っているよ。ただし勝てる見込みがある場合に限る」

「というわけで、文句はないな」

「そうだね。宝瀬と契約したんだったら、僕のお願いの方を優先的に聞くべきだ」


 この人素晴らしい。


「もう一度聞く。勝てる見込みはあるんだね」

「もちろんです。ただ……支倉罪人って人に連絡取れますか。出来る限り交渉をしたいと」

「出来るさ。ちょっと待ってて」


 そう言うと金庫から携帯電話を取り出した。


「これでなら連絡を取れる」


 お礼を言い、すぐに電話をかける。


 数コールした後、老人のような声が聞こえた。


「覚悟を決めたか、剣」

「残念ですが、俺は剣さんじゃないです。嘉神一樹と言います」

「……………」

「確認したいんですが、あなたはあの支倉罪人ですか」

「あのという意味は分からんが、教科書に載っているような支倉罪人は儂じゃ」

「へえ。死んだと思っていたんですが生きてたんですね」

「くどい。本題を言え」

「こっちから新たな代替案を持ってきました」

「言ってみいや」


 お許しが出たので言わせてもらおう。


「あんたが真百合を脅迫した件を俺が見逃してやる代わりに、持っている株の半分を宝瀬に譲れ」

「もちろんあんたは世間にばらすなよ。これは脅迫したということを黙認してやるという俺からの優しい提案なんだ。無下になんてしないよな?」


 キャラ崩壊を疑われそうなくらい温情にすませてやる。


「一応あんたは人類の英雄ってことになってるんだ。これでも少しだけ殺すのは惜しいって思っているんだ。ここで止めておけばお互いに嫌な思いをせずに済むだろ」

「嘉神と言ったか。勘違いをしておるぞ」

「なんだ。言ってみろ」

「あれの主催は儂じゃ」


 そうなんだーへー。


 チッ。


「気が変わった。死ね」


 八目十目サイトシークで逆探知は終了している。

 その場所に獄落常奴アンダーランドで業火を生成。


 地獄の炎で焼かれて消えろ。


「小僧。立場をわきまえろよ。その程度の攻撃、儂が今まで受けたことないと思っているのか」


 効かなかった。

 見てないから確実にこうなったとは言えないが、かき消されたのか?


 弱ったな。今編み出し中の反則技を使うにしてもここじゃ使えない。

 せめてあいつの近くまでいかないと。


「今からお前の所に行く。辞世の句ぐらいは詠めるだろう。覚悟しておけよ、老害」


 通話を止める。


「聞いてました?」

「聞いていたよ」

「今から支倉の本家に行ってきます」

「待って……!」


 真百合が止めるが待つ気はない。


「もうやめてとは言わない。だから無理はしないで。絶対に帰って来て」

「分かった。ノアの箱舟に乗ったつもりで待ってろ」


 真百合からの了解も得た。

 もう誰も俺を止められない。




 と思ったのだが……この服着替えてからいこう。




 着替えるのに五分もかかり、いざ回廊洞穴クロイスターホールで移動。

 しかし目的地とは違う場所に辿り着いた。


 場所は超悦者スタイリストの練習場となっている学校の屋上。


「父さん? それにシュウも。どうして?」


 父さんは兎も角として、なんで時雨驟雨がいるんだ。


「ちょっとな。これからお前は何をしに行く」

「支倉にカチコミ」

「マジだったかよ」

「知ってたんだ?」

「あの人に聞いた」


 その人が誰かは大体わかるから聞かない。


「シュウ。俺に挑みたいなら今日だけは後回しにしてくれ。ちゃんと時間を作るから」


 シュウは俺に勝ちたいと言った。

 あの時は神薙さんに誑かされたと思っていたが……本気で勝ちたいと思っているらしい。


「それはまた後だ。今日は別の用事なんだ」


 別の用事? 何のことだ?


「なあいつき。おれも混ぜてくれないか」

「は? なんで?」

「詳しくて話さないって言われたから、詳しくは知らない。ただあのコロシアイは支倉が仕組んだと聞いたんだ。その所為で宝瀬さんが酷いことにあったってことも」


 珍しいな。神薙さんが真実を伝えるなんて。


「でもだったらシュウが混ざる必要ないだろ。こういう危ない目は俺一人で十分」

「そういうわけじゃない。ただおれという人間の問題なんだ」


 シュウの問題? はてさて?


「博優学園って他の私立に比べて安いだろ?」

「知ってる。だから俺がここに来たんだ」

「それはあの人がある程度の額を立て替えてくれているからなんだ」


 そんなこと真百合は一言も言っていなかったが……あの人専用の食堂があるのに誰も文句を言わないのはそう言った背景があるからなのかな。


「そもそも神陵祭町に住んでいる人間で、あの人に恩が無いのは衣川か神薙くらいだ」


 早苗、お前神薙と同類だってよ。


「いつか恩は返さないといけない。ただあの人ほとんど完全無欠いっていい存在だろ?」


 同意。何度か心折られかけた。


「こういっちゃなんだがよぉ。おれがあの人に恩を返せる唯一のチャンスなんだ。だから頼むイツキ、おれを恩知らずにしないでくれ」

「ふっ……はっはははははははは」

「お、おーい。本格的に気でも狂ったのかよ?」

「素晴らしいよ。最高だ。そうだよな。恩は返さないとな。それでこそ仲間。それでこそ親友。不快な気分で戦わないといけないと思ってたのに……こんなに嬉しいことはない。支倉に感謝しないと」


 お前は本当に最高だ。


「一緒に行こう。そして支倉をブッ飛ばそう」

「ああ。微力だが力添えは任せろ」


 そんなことない。元気も勇気も百倍だ。


「それじゃあ父さんはその案内? 用事すんだら帰って、どうぞ」

「オレもついていくぞ」

「なんで」

「ほら、支倉って金持ってるだろ。一樹達がぼこぼこにするとき火事場泥棒でもやろうかと」

「クズ、ゴミ、ウジ、恥知らずが。恥を知れ」

「父さんマゾだからその程度は育美に言われ続け慣れているぞ」

「けっ、仕方ない。こういうのは断れないって学んでるから悪口だけですませてやる。盾の仕事は任せたからな」


 何かあったら父さんを盾にする。


「少しは優しくしても、いいのよ?」


 断固拒否。


「まあここで父さんと話をしても二酸化炭素が増えるだけで百害あって一利なしだな。さっさと行って、さっさと逝かそう」


 環境問題・・・・にも配慮できる、自分の優しさに酔ってしまいそう。



 …………今、何で環境問題って単語に傍点がついた?


 ちゃぶ台を返すようで悪いが、23世紀の今環境問題はそこまで重要じゃない。

 ギフトで何とかできるから。


 ギフトがなくなって初めて起きる問題だが…………気にしないでいいか。


「じゃ、行きますか」

「おうよ」


 回廊洞穴クロイスターホールで今度こそ支倉本家につなげ、同時に一歩を踏み出した。






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「プロジェクトノアを前倒しする。総員、出来る限りの時間を稼げ」

「「「「「「「了解」」」」」」」



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長々と7章を書きましたが、支倉との抗争が終われば7章終了です

やっと異能バトルを書ける


なお、次は月夜さんが夏休みの間何をしていたのかの話を少しするので、本編はもう少し後

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