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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
146/351

笑う○○と嘆く神々

嘉神君サイドではない視点が2つあります。というか今回嘉神君サイドはありません。

 わざわざ言うべきことでは無いかもしれないけれど、羽衣会事件に私こと宝瀬真百合がが黒幕として潜んでいる。


 嘉神君視点を第三者が見れば、気づくか気づかないかは五分五分だと思っている。


 目的は言うまでも無い。

 嘉神君を早苗から引き離し、私の元に来させること。


 夏休みが始まった時からどうすればいいかずっと考えていたが、正当な理由を用意できなかった。

 ただ神陵祭の時、嘉神君から羽衣会を利用しヤクザを抹殺する計画を聞かされ、私も計画を練った。


 嘉神君の計画に評価や手助けをしながら、水面下で別のことをやっていた。


 嘉神君が苦しむのは心苦しかったけれど、流石にそろそろ私が嫉妬と憤怒と色欲で死にそうだった。


 嘉神君の命令なら四肢を削がれても他の男に抱かれるのもまだ妥協できる。


 だがいくらなんでも死ぬことはできない。


 さてさて、何をしたのかと言われれば大したことではない。


 『早苗に嘉神君がした犯行を気づかせる』


 この一つだ。


 たったそれだけのことで彼は壊れる、その核心はあった。


 そのために裏側で警察組織に根回しをして、更にその奥に私の計画をねじ込ませた。


 比較的私に忠誠を誓っている駒を取り調べに介入させ、早苗が気付くような取り調べをさせた。


 その為に彼がしでかしたミスを上手く気づかせる必要がある。


 私は彼の話を聞き、粗を探す。

 その後トイレで部下にメールをし、どこでミスをしたか伝えた。


 そんな時間無かったと思われそうだが、確かにミスをそのままメールで連絡をすれば時間が足りないかもしれない。


 しかし私は最初から彼がしでかしそうなミスのリストを作っていて、それらをナンバリング。

 その全てを暗記し、ミスした番号だけをメールしたのでタイムロスはそんなになかったはず(『世界』をやり残されたため記憶はない)


『世界』と言えば嘉神君にミスがばれた後直ちに巻き戻すように言ったのも理由がある。


 私はミスをしなくても部下達が証拠を残してしまってはたまったものではない。

 だから余計なことを気づかれる前に戻ってもらう必要があった。


 ただ変に戻りミスそのものをやり直されたらこっちとしてはたまったものではないので、戻ってくる時間帯を強調してまずは一クッション置くように進言した。

 その後予想通り嘉神君はやり直そうとしたが、私がメープルに脅されるという嘘の情報を流しそれを阻止。


 何でもできるってことは、何を言ってもそうなってしまうという全能らしい弱点を孕んでいる。


 あ、そうそう。かき氷のスイを注文すればすぐに取り調べを中止し、証拠隠滅するよう指示を出せという指示をファミレスにいた構成員に命令しておいた。


 決してあーんをしたいがために頼んだわけでは……あるかもしれないわね。うん、やっぱりそっちが本当かも。


 訂正、ただあーんがしたいからかき氷を頼みました。


 当然だがこれらは全て絶対条件として嘉神君が早苗にばれると壊れるという不透明な見通しが必要だ。

 ずっと嘉神君を見続けていた私だから分かる。


 必ずそうなると確信していた。


 そもそも、嘉神一樹という人間が周りの事なんて考えず自分が考えた正義を遂行するという人間性だったら今回の事件明確におかしい点がある。




 早苗に隠す必要ないじゃない。




 特別法一条で彼の殺人は合法だ。

 そう国が認めている。


 正々堂々と殺しまくればいいし、それが一番彼らしい。


 でもそれはしなかった。早苗に隠すために面倒な計画を私に持ち掛けた。


 わざわざ彼にとっての社会のごみのためにグレーの行動をとった。


 それははっきり言ってアイデンティティの崩壊だ。


 あり得ないほどに矛盾している。


 そしてその矛盾に気付いた時、私は察した。


 狂いそうになるくらい最悪の悪夢を見てしまった。




 彼、嘉神君は――――早苗のことが好きだ。




 それはもう第三者が入り込む余地何てないほどに。


 私の中で負の感情が満たしていく。


 早苗が憎い。


 私を裏切った友人よりも

 私を刎ねた神薙よりも

 私を襲った嘉神一芽よりも

 私を一番害した母よりも


 あいつが嫌い。


 殺してしまいたい。


 惨たらしく死ね。

 悍ましく死ね。

 苛酷に死ね。


 死ね。

 死ね死ね。

 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。


 死んでしまえ。


「……………」


 落ち着け私。クールになりなさい。


 早苗なんかを殺してしまえば、一番傷つくのは私の大切な想い人。


 早苗に対しての悪意なんて、自身の欲を押さえるよりも簡単だ。


 でもこの世で一番好きな人が一番嫌いな奴の家で同衾するなんて我慢しようとしても無理だった。


 だから、凶行に走った。


 ずっと嘉神君を見てきた私にとってどうすれば一番効果的に傷付ける方法を考えるのは容易だった。


 早苗に少しでも嫌われてしまえばいい。

 彼の弱点が身内。

 私がやった暗躍も彼は絶対に気付かないように、簡単に懐に踏み込まれてしまう。


 そしてぽっかり空いた傷は簡単に介入できる。


 これで少しは早苗との距離が開くだろう。

 できればそのまま乖離してしまえば私としてはこの上ないが、それはいくらなんでも楽観視しすぎだろう。


 少しだけあなたの思いに私を割り込ませてください。


 そして本当にごめんなさい、でもこっちだって死活問題だから。


 お互いが生き抜く為に傷をなめ合いましょう。






*********************************


「ごめんね。本当に申し訳ないと心から思っているよ。君たち高位次元生命体は運が無かった。この狂った荒波に不幸ながら呑み込まれてしまったんだ」

「くっそ……」


 人と呼ぶには語弊がある。


 地べたを這いずるように倒れているものは、確かに人型をしているが三つ目のそして翼が生えていた。

 ただ、その翼はへし折られ見るも無残な姿に変化している。


「かっぁ。俺様最強。つか、そんな実力でよくそんな悪態つけるなあ?」

「口が悪いぞ。しかし朕も同意見であると認めざるを得ない。本当に貴様は高位の生命体なのか?」

「…………どこで育て方間違えたんだろ」


 柱神メープルは己が半身をみて頭を抱えた。


 二柱の姿はどちらも人で例えたら幼稚園児ともいえる大きさまで育っていた。


「しっかし、ねぇよぉ。これ本当に上位種族なのか? 人間より弱そうなんだが」

「上位だよ。種族でランク分けしたら上から数えた方が早い。ただし、人間よりかは弱い」

「それは本当に強いのか?」

「強いさ。人間が馬鹿みたいに強いだけで。というかあいつの所為で今現在種族の強さを平均値をとったら神を超えて人が一位。戦犯は君たちの兄であり父親だ」


 無茶苦茶な事実をさも当然のように話す。


 しかし二柱はそれをジョークだと受け取っていたため、信じている様子は一切なかった。


「それで、こいつはどうするんだ? こんなの食ったところで腹の足しにもならなそうなんだが」

「そう思うなら、ハヤテ。君がこいつを食べるといい」

「そうさせてもらおう。朕はこやつを見てまだ食種になると感じている」


 そういうと左片目を髪の毛で隠れてあるは素足で蹲っていた敗残兵を踏みつける。


「喜べ。貴様は朕の養分だ」

「や、やめ」


 足の裏から口が生え、その口がその者を呑み込んだ。


「薄いが……美味であった」

「それはよかった。じゃ、もうここに用はないからさっさとずらかるよ。世界が崩壊しないうちに」

「比較的美味い奴を食べるとすぐ世界が崩壊する気がするんだがそれはどうなんだあ?」

「その通りだ。二人ともある程度育った頃だし、そろそろ勉強をしてもいいころかな」

「それは楽しみだ。母上は何を聞いてもはぐらかすばかりで、朕らにものを教えようとはしなかった」

「しゃーない。モノには順序というのがあるからね。じゃあまずはこの世界の仕組みについて教えよう」


 そう言うとメープルは指先に銀河を作り出した。


 別段驚くことでは無い。三柱の見た目は幼稚園児と中学生だが今現在の大きさは宇宙と比較しても十分物差しになる大きさだった。


「で、これが水素の原子」


 人差し指に銀河を、中指に原子をのせる。


「何か似てるって思わない? 観察してみて率直な感想をいってみなさい」

「俺様がみるに……回っているしか思えないが」

「そうなんだよね。回っているんだ」


 望み通りの回答を受け満足そうにうなずく。


「マクロもミクロも回っているんだ。別段これだけじゃない。ブラックホールも恒星も惑星も衛星も気流も水流も全てが回っている。この世で一番安定しているのは止まっているモノでもまっすぐ進んでいるモノでもない。グルグル回っているモノ。それがベストでありベターな状態」

「なるほど」

「そして回っているうえで重要なものが存在する。中心となる存在だ。太陽系なら太陽を。元素なら原子核が必ず存在する。それが存在するから成り立っている」

「にゃるほどねえ」

「そしてこれはね、生物にも同じことが言えるんだ。どんな時代にもかならず中心になった人がいた。そういう中心的存在を僕ら神は主人公・・・と呼んだ」


 主人公という言葉に2柱とも少し反応したが今はもっと話を聞くべきだと判断し、メープルの話を聞く。


「もちろん神様だって例外はない。今現在不肖ながらこの僕が神様としての中心を任されている」

「じゃあさ、今ここで姉が死んだら神が全滅するのか?」

「そうでもない。大きければ大きい存在程崩壊するまでの猶予期間が存在する。その間に誰かが継げば崩壊は免れるよ」


 ならばよいと柱は安堵する。

たった一人が死ねば崩壊するという事案はからでもまずいと理解できた。


「ただ実をいうと割と僕が死んだら不味い事態が起きる。継げる存在が今現在ほとんど存在しない」

「存在しない? どういうことだ?」

「太陽系の中心は最低限ある程度の大きさが必要だ。水星や火星にその代わりは務まらない。最低限木星がもっと大きくそして活動的にならないことには始まらない。つまりは中心になるには格というものがある」


 ここまで言えば二柱は察する。


 今現在この柱神を継ぐ力をもった神は存在しない。


「惜しい奴は一柱だけいるんだけどね。僕が死ぬ前にそいつがふさわしい神にならないといろいろ面倒なことになってしまう」

「朕では駄目なのか?」

「無理無理カタツムリ。理由はまだ話せないけど君ら二柱の役割は継ぐことじゃない。もっと大事なおっかないことをやってもらわないといけない。そのために神性を持つことはあっても本当に神になるわけには行かない」

「話がそれるが結局神とは何だ?」

「ああそれ。俺様も一度聞きたかった」


 柱神は説明しないといけないよなあとすこしため息をついた。


「今から200年以上の前、神という存在が最も栄えていた頃。具体的には当時の『僕ちん』が五人いる四天王の二番手くらいの頃までの話をしよう。全ての生き物は転生したり地獄に落ちたり、はたまた魂が1ステージ駆け上がったりしていた。まあそいつが広義的に神と呼ばれる存在だ。でもね、99%以上がそこで消滅する。何でだと思う?」

「……分からん」

「食われるんだよ。同じ神に」

「なんでぇ?」

「殺されないために。自分から殺すのさ」


 どこか遠くの過去を見るかのようにメープルは答えた。


「神は全能のはずだ。そのような無駄なことなどするはずがない」


 殺そうとするものなど全知の力でしることは可能のはずだ。

 そいつをみなで叩けばいい。


「レベル1の神様の全知で探っても、レベル10の神様が全能で隠したら分かんないだろ。神にも格というモノがあるからね。 だからレベル1の神様は少しでもレベル上げをしようと必死になって互いを喰らおうとした」

「そんなこと……あり得ない」

「あったんだよ。そう言った過去が。でもあんまりやりすぎると上位の神に殺されてしまう。神というのは下の世界の管轄が仕事だからね。サボる神はお仕置きが待っている」


 そして更にその上位の神はさらに上位の神によって統治されているのだが、そこはまだ重要ではないためここで柱神はそのことを二柱につたえるつもりはない。


「そこで下位の神は考えたんだ。神じゃなくたって魂を喰らえばそこそこ成長できる。そのそこそこを思いっきり食べれば神を食べるよりも力をつけれるんじゃないかって。質より量の考え方だ」

「おいおい。まさかだが」

「そのまさかだ。あろうことか、神は自分が統治している命を食べ始めた。更に言うなら食べるために世界を作り始めた。つまり当時人類……ちがうね、エルフだの吸血鬼だのオークだのそういった生命体全て、神の家畜だった。家畜に神はいない? いやいや家畜を神が創ったんだ」

「「……………」」

「もちろんただ放任したままだけでは芸が無いからね。少しでも質を上げようと涙ぐるしい努力をしていたものさ。普通に食べたら価値の無い命を、他の世界に転生させて超強力な魂に変化させる。所謂異世界転生・・・・・というやつだ」

「……」

「人が粟よりも米を食べたいように、神だってそこら辺のモブよりも主人公を食べたいんだよ」

「母上。申し訳ないがそれをにわかには信じることが出来ない」

「ふぅん。じゃあさ、逆に聞きたいんだけど


【神様が間違えて死なせてしまい土下座して更にたった一人の為に力を授け別の世界に転生させる】

【価値の無い魂を少しでも質を上げるために転生させてその後で食べる】


とでは傍から聞いてどっちを信じやすいと思うかな?」

「そ、それは――――」

「常識的に考えて見ろよ。いじめられっ子にニートに社畜にブサイクにキモオタにハゲが死んだところで誤差の範囲だ。 僕に言わせればそんな提案されたら裏があると考えてしかるべきだ。尤もそんなこと考えられないから社会的に不適合なんだろうけどね」

「あ、ありえん。神はそんな低俗ではないはずだ!!」


 一柱が怒鳴りを上げるが残りの二柱は気にもとめない。


「低俗か。でもどう言葉を取り繕ってもそれが真実だから。そうでなかったら世界の管轄とか管理とか一体全体何のためにするんだよ。人にとっては大切かもしれないけど神にとっては無駄なことこの上ないじゃん。慈善とでも思っていたのかな?」

「くっくぅうううううう」


 柱神の正論にハヤテは拳を強く握りしめるだけだった。


「自分の子供の夢を壊すのは心苦しいけれど、そうも言っていられない。もうサンタさんにプレゼントをお願いする年じゃないはずだ。欲しいものは自分で手に入れないといけない」

「分かっている。分かっているが――――!」

「あ~~。ひょっとしてねぇ。『待て』出来なかった?」


 ここで初めて柱神は笑った。


「正解。『待て』出来なかったんだよね」

「な、なんのことだ?」

「甥っ子には刺激が強すぎるかもしんねえけど自重はしないから勝手に話すぜ。神は世界さくひんを創ったが、その世界は寿命で終わるんじゃない。神が途中で壊すんだ。エターや削除して」

「そうなんだよね。もっと成長させればよかったのに待ちきれなくなったんだ」


 異世界転生の作品を見るといい。

 半分以上が途中で崩壊してる。


「ただ擁護するけど最後まで行きつくと主人公が神まで到達することがあるから、途中で切り捨てるのは間違いではないんだけどね」

「…………」


 信じていたものを裏切られた神の瞳は光がこもっていなかった。


「だいぶ長くなったね。次の授業の内容をちょっとだけして終わりということにしようかな。さっきまでは200年前の話。でも今はそんなことしない。僕の義兄でありシンジの兄でありハヤテの父である信一という男によって全てが崩壊した。ということで本日はここまで。後は崩壊する世界でも眺めてよう」


 桜が散るのを眺めるかのように、三柱は崩壊する世界を眺め続けた。


 それぞれ別のことを考えながら。



突然ですがここまでを7章前編とし、一度キャラ紹介をはさんで後編に移ります。

見直してみたらここまでで30話もありました。1章2章の倍です。

あと若干自分でもだれてきたのが分かるので、少し休憩させてください。

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