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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
130/351

衣川家 1

 長かった一学期が終わる。


 成績が上がった人(早苗)、下がった人(俺)変わらなかった人(シュウ)、上限突破して上がりようがない人(真百合)。


 それぞれ思うことはあるだろうがやはりみんな夏休みというのは楽しみにである。


「シュウ。夏休みもずっと稽古つけて貰いに行くのか?」

「おう。やっぱシンボル使うのあの人の前が一番安全だしよ。超悦者スタイリストもだいぶ慣れてきたとはいえ、まだまだ使いこなしているとは言えねえ」

「そう、まあ頑張れな」

「期待してろよ。ぜってえいつきを超えてやるから」


 ああ、期待してるよ。


「一樹、幸は学校に来なかったがなんかあったのか?」

「なんか海外行くって。どこかは聞いて無いけど」

「そうか……」

「知らなかったのかよ。お前ら本当に親友か?」

「いくら一樹でも失礼だぞ。私達の友情は永遠だ」


 ならいいんだけどな。


「ねえ嘉神君。夏休みの時、良かったら泊まりに来ないかしら? いつでも歓迎するわ」

「んん……いいのかな?」

「別にいいではないか? 盆にいてくれればこちらは問題ない」

「そう……ただな…………これ以上真百合に迷惑かけるのも悪いからな。好意だけ受け取っておきたいんだが」

「…………それはどういうことかしら?」

「いや、今までずっと迷惑かけ続けてきたからこれ以上は」


 んん? なんか気温が下がった気がする。


 気のせいかな?


「そっちじゃなくて、なんで嘉神君について聞いたのに、早苗に確認をとらないといけないかってこと」


 ああー。ここ校内だし男女同伴するっていうのよろしくないと思って周りには言ってないんだよな。


「ねえ、嘉神君。あなたの夏休みの用事はなあに?」

「えっと、早苗の家庭教師?」

「そう。それはいつから?」


 間違いない。これ気温下がってる。


「えっと……今日から?」

「いつまで?」

「……夏休みが終わるまで?」

「それは何時間くらい?」

「まだ決めてないです」

「今日から始めるのにまだ時間決めていないのね。まるで住み込みの家庭教師の様ね」


 もうばれてーら。


 早杉内。


 ただ真百合に本当のことを言っても大丈夫だろう。


「えっとかくかくじかじかで……」

「――――――察するに」


 え?『かくかくじかじか』とか言ってないんだけど。


「育美さんが仕事の都合で家にいられないから、誰か代わりにお世話をしてくれる人を探して行き着いたところが早苗の家ってとこかしら?」

「あ、はい」


 一を聞いて十を知るを目の当たりにした。

 あれって実際にあるんだな。


 死語と思っていた。


「・ ・ ・ ・ ・ ・ ふふ」

「そ、その……ごめん」

「何で謝るの? 嘉神君は何も悪くないでしょ」


 そうだけど、なんかまじで雰囲気がやばい。

 遭遇したことないけど黒魔術でなんかやばいものを召喚しそうな雰囲気。


「もし私が怒っているとしたら、それはあなたにではないわ。私自身によ。だってあなたは私があなたを援助したり助けようとすることを迷惑かけているって言ったわよね」

「お、おう」

「でもそれってあなたが私を助けてくた時、それを私があなたに苦痛を与えたっていうのと何が違うのかしら」

「――――」

「あなたを責めているのではないわ。ただ、信じてくれなかった。いいえ信じるに足り得なかった私を、私は責めます」


 そう言われたら何も言い返せない。


 うぅうぅぅううう。


「どうしたらいいんだ」

「簡単な事よ。早苗の家にではなく私の家に泊まればいいのよ。そしたらお互い超ハッピー。ね、名案でしょう?」

「待て待て。黙って聞いてればこちらもいろいろ事情があるのだ。一樹は私がもらうぞ」


 バチバチと火花がたつ。


 ただもう荷物は運んだし、お手伝いや以来の件もある。


「すまん真百合。俺の思慮が不足していた。悪かった」

「・・・・・・そうね。私も大人げなかったわ。でも嘉神君。もし何かあったらすぐに言ってね。いつでも私はあなたを助けることを厭わないから」


 なんとかこの場は収まった。


 なんか超疲れた。




 帰り道。


「早苗、夜9時から2時間、フリーの時間を欲しいんだが」

「別にいいがどうかしたのだ?」

「鍛錬というか……修行?」


 超悦者になるための鍛錬を9時から2時間出来ると父さんから連絡が入った。


「そうか。一樹も高ランクになったからいろいろ大変なのだな」

「そうだな。前に進むだけじゃなく背後にも気を配らないといけない立場になってしまったから」

「ならば私の勉強は3時から2時間で頼む。今日はささやかながら一樹の歓迎会をする予定なのだ」

「え? いいのか?」

「真百合も言っていたが、厚意はありがたく受け取っておくのだ」


 そう言われちゃ断れない。


「ありがとう。期待しているよ」

「う、うむ。期待しておけ」


 改めて感じるが、こういう日常こそ至高だと思う。


 出来ることならこれが永遠に続けばいいのに。







「・・・・・・」






 英語(仮定法)をまるまる2時間教え、早苗は夕飯の準備をするため台所へむかった。


 その間に少し散歩をする。


 早苗と香苗さんの部屋に勝手に入らなければどこに入ってもいいと言われたのでちょっと探検もかねての散歩だ。


 それにしても本当に広い。


 宝瀬家ほどでは無いにしても豪邸と言って差し支えの無い広さ。


 神薙亭は庭が美しく手入れされてあるが、こちらは門や家のつくりがしっかりしている。


 家を大きく囲む壁が武家屋敷そのものだ。


 立場的にやっぱ必要なんだなと思う。


 その中で一つ異様な扉を見つけた。


 他の扉は木製だったが、これだけは金属で出来ている。


「金庫?」

「その通り」


 後ろから香苗さんが声をかける。


「あ、お世話になります」


 衣母さんは初めに来た時家にいなかったためこれが今日のファーストコンタクトだ。


「これ、少ないですが」


 母さんが食費といって俺に渡したお金をそのまま渡す。


「いいよ。好きに使いな。こっちもあんまり君に貸を作りたくないから、せめてもの……ね」


 そう言うことならありがたく頂戴する。


「差し支えなければこの中に入っているモノ教えてもらえますか?」

「大したものじゃないよ。売れば数千万の陶器とか絵画が入ってるだけだよ」


 大したものしか入ってないじゃないですか。


「失礼ですが鍵があるように見えないんですけど」

「単純に力技で開けるんだよ。簡単だろう?」

「よろしければ開けてみても?」

「いいよ。ただし中に入っているモノは早苗の嫁入り道具もある。貰うということはそれ相応の覚悟はしておくがいい」


 盗みませんよと手首を振りいざ扉を開ける。


「重い」

「そりゃ生身の人間じゃ無理だよ。ギフト使いなさい」

「はい」


 鬼人化オーガナイズ両腕Ver


 ゆっくりと重い扉が開かれる。


 これなら鬼神化オーガニゼーション使えば簡単に開くな。


「・・・・・・すげえ」


 なんていうんだろう。そうそう、桃太郎が鬼退治した時に手に入れた宝物。あれを初めて見た時のような感覚。


 金は無い。今のご時世延べ棒なんて中学生のお年玉より安いから。


 でも陶磁器や絵の芸術価値は不変。


 むしろ一度文明が滅んだ以上モノとしては唯一価値が上がったものだ。


「えっとこれは……ムンク?」

「へえ、知っているのかい? 価値があるのは分かるんだけどね、趣味が悪そうな絵だったから飾る気が無かったんだ」


 ガチの国宝なんですけど。


「これ一つで300億いきそうなんですけど」

「ふふ、冗談上手いね。精々3億くらいだろう?」


 ・・・・・・


ガチガチガチ


「そんなに震えてどうしたのかい? トイレは反対側だよ。この近くに水気があるものはおきたくないからね」


 香苗さん以前お金無いって言ったけど、物の価値を分かってないだけじゃないですか。


 総資産ならやばい位あるぞ。


 ムンク以外にもゴッホの向日葵の絵やピカソっぽい絵。


 これ全部売ったら千億ありそうなんですけど。


「これ売らないんですか?」

「一応これ担保だからね。いつか借りた金を返しに来る輩が来るかもしれないだろう?」


 これを担保にするってどんなに金借りてんだよ。


 借りた奴も貸した人も価値分かってないのか。


「堪能したら閉めておいてくれ」

「あ、はい」


 さらばムンクゴッホピカソ。


 折角俺がお前らを発掘したのに救出することは叶わなかった。


 もしかしたらお前たちは二度と日の目を見られないかもしれない。


 だが俺はお前たちのことを覚えている。


 栄光あれ。



「あ、そうそう所でこの機会に聞きたいことがあるんですが----」



・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


「お話ありがとうございました」

「この事は秘密だよ、誰にも話さないでくれ」


 話せるわけがない。



かなり内容が無いですので、次の更新は3日後くらいを予定しています。

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