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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
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家族会議 3

 あ、やべ。


 これじゃ意味伝われねえ。


「それは……私と結婚しろということか?」

「すまん早苗。間違えた」


 事情を今度は丁寧に話す。


「初めからそう言えばいいのだ。一樹は馬鹿だなあ」


 イラッ☆


 だが我慢。今俺は頼む立場。


 断られると思うが、まだ一抹の望みがあるため少しでもご機嫌取りをしないと。


 断った後、いろいろしてやるから覚悟しとけよ。


「で? どうせ無理だろ? さっさと無理と言ってくれ。レッツセイMU-RI-」

「なんだその私でも分かるアホな英語は」


 早苗レベルに合わせていったんだよ。言わせるな恥ずかしい。


「一応こういうのは母様に聞かないと何とも言えないが」

「え? いいの? 頼んどいてなんだけど断ると思ってたんだが」

「4月に私も一樹の家に泊めてもらっただろ。なあなあになってたとはいえ、この際その借りを返すべきではないかと思ったのだ」


 あー。そんなことあったな。

 あまりに昔のことだから忘れてた。


 数か月前のことだが2年前の様にも感じる。


理由は分かってんだけどな。


「でもそれって一日で俺は一か月以上かかりそうなんだけど」

「一樹。衣川は極道だぞ。借りはトイチで返すものだ」


 かっけー。


 でもトイチじゃ50倍にはならないぞ。


 カラス金くらいやんないと。


「取りあえず、母様の承諾を得ることが出来たら私としては異存ない」

「そうか。これ以上はOKを貰ってから聞くとするよ。親御さんが駄目だと言ったら駄目なのは当然だしな」


 それもそうだといい、5分後かけなおすといい電話を切る。


「どうだった?」

「なんか早苗のとこ、親がOK出せばいけるっぽい」

「早苗ちゃんか。うん。母さん一樹くんのお嫁さんはあの子がいい」

「そんな話、一回もしてないんだけどな」


 そもそも向こうが嫌がるだろ。


「ところで母さん。俺女心よく分かんないんだけど」

「天地が作られる前から知ってたけど、それがどうかしたの?」

「普通に考えて母娘の二人暮らしに赤の他人である男を一か月も住まわせていいものなのか?」

「いいか悪いかで答えるなら、最悪だろうね」


 だよね。


「OK貰えると思う?」

「常識で考えたら無理。でも一樹くんならいける。一樹くんが頑張れば落とせない女子なんていないでしょ」


 何その無駄な確信。


「黙ってれば……違うね、適当な事言ってれば問題なくモテモテなんだろうなと思うよ」

「別にいいもん。モテなくても。セックスしたかったら風俗行けばいいし、子供育てたかったら孤児院にいって子供を引き取ればいいんだし。モテるモテないなんてかんけーナッシング」

「何その腐った考え。母さん一樹くんをそんな風に育てた覚えないんだけど」

「そもそもちゃんと育てたことあるんですかね」

「そうだけどさ、それいったら戦争でしょ」


 確かに。これは俺が悪かった。


「すまんな」

「ええんやで。で、実際本当にそんなこと考えてるわけ?」

「まあね。将来的に家族が欲しいとは思ってるよ。ただ俺は絶対早死にするから、死んだときに泣かれるような関係は嫌だな」

「じゃあ誰と一緒になりたいの?」


 誰って言ってもな。特定な相手はいないし。


「じゃあタイプ」

「まず家事ができる人。これ必須。これ以外すべて良くてもこれが駄目だったら論外」

「他には?」

「正直、家事以外文句言える立場とは思えないんだけどな…………後はそうだな、ある程度自立できる人か? さっき言った通り早死にしそうだからな。俺は」

「もう一息」

「うーん。お金持っている人か? 家お金ないだろ」


 かなりわがまま言ったが正直家事だけで十分。


「つまりあれだね、一樹くんは結婚するなら早苗ちゃんがいいってことだね」

「なんでそうなるんだよ……んん??」


 言われてみれば、早苗の料理は一級品だし、本人はお金がないって言っても小僧に百万渡そうとしたくらいの金持ちだ。


「やっぱ早苗ちゃんだよね。淫売女とは格が違うのだよ」


 誰だよそれ。と聞こうとしたが携帯に通知が入った。


「もしもし。どうだった?」

「いいそうだ」


 マジかよ。


 本気で予想外。


「ただしいくつか条件があるそうだが、母様に変わってもいいか」

「ああ。大丈夫」


 待つこと数秒。


「久しぶりだね。元気してたかい?」

「お陰様で、早苗の方はあれから体調は大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。むしろ体力が有り余ってるって言ってたよ」

「そうですか。それはよかったです。それで、衣川さん。条件ってなんですか? いくつかの臓器なら売りますよ」


 脳と心臓もわりと再生できるようになったし。


「面白いジョークだ。ただそんなことはしないよ。少しお手伝いを頼みたくてね」

「なんですか?」

「まず早苗の家庭教師。目も当てられない成績からやっと見れる成績になったとはいえ、直視できる成績じゃないからね。せめて10秒くらいは眺めていられるようにしてほしい」

「それくらいならお安い御用です。しかし意外ですね。こういってはあれですけど、勉強のことなんて二の次だと考えている人だと思ってました」


 率直に言って学校の勉強なんて社会に役立たないといってそうなキャラっぽかった。


「まさか。今のご時世、馬鹿に居場所はないよ。土方もIT化し、スポーツも科学と関わり始めた。思うに馬鹿は『学校の勉強なんて社会に役立たない』なんていうが実際は『馬鹿は勉強が社会に役立っていることに気づいていない』」

「同感です」

「その点早苗は頭は悪いが、馬鹿ではない。悪いなりに頑張っている」


 確かにな。


 自分から辞めたいなんて言ったこと一度もなかった。


「他にはありますか?」

「8月頭に夏祭りがあるんだ。その手伝いをお願いしたい」

「お安い御用です。他には?」

「……」

「どうしましたか?」

「確認するが、君は二位なんだよね」


 二位とはクラス順位ではなく、恐らく超者ランクのことだろう。


「はい。その通りです」

「そうかい。先に前打っておくが先二つが住まわせる条件だ。これからする話は私がする依頼ということで聞いてほしい。盆にちょっと遠出する。その時護衛を頼みたい」

「……どういう内容ですか?」

「毎年、衣川麻生綿貫といった全国有数の極道のトップが集まる集会があってね。今年も参加しないといけないんだが…………麻生と綿貫が手を組んで衣川を潰そうという情報が入った」


 ヤクザの抗争か。よく知らないが珍しくとも何ともない気がする。


「個人的には衣川が無くなっても構わない。だがその理由は最低限のものが必要だ。私が責任をとって解散する、これならばいい。しかし間違っても抗争に敗れて解散するなんてことがあってはならない。分かるよね?」

「ええ。分かります」

「君の力を使いたいとは言わない。ただその力を見せてほしい。今のご時世千の兵より一の個だ。君がそこにいるだけで十分の抑止力になり得る」


 なるほど、言いたいことはよく分かった。


「正直、君が頷いてくれるかどうかでこれからの準備がいろいろ違う。報酬は出す。私でよければ夜伽の相手でもしよう。だからどうか頷いてほしい」

「もしですけど、俺が頷かなかった場合どうなりますか?」

「…………」


 衣川さんは黙考し


「早苗を君の家に預けたい。金は家にあるものを適当に売って工面してほしい」

「……そうですか。ですが衣川香苗さん。俺は絶対にヤクザから金は受け取らないって決めてるんです。その話はしましたよね」


 これは俺自身の誇りの問題。


 命を捨ててまでお金は欲しくない。


「そうだったね」

「ただ……そうですね、衣川さん。例えばです。俺が降りかかる火の粉を払っても問題ないですよね」

「そうだね」

「それがたまたまあなたの盾になってもそれはあくまでも偶然ですよね?」

「まったく君は、面倒な男だ。だがありがとう。感謝するよ」


 お礼を言われても困る。


「感謝するのは終わった後です。とはいっても確実にあなた達を守れると自負はしてますけどね」


 ランクというのは素晴らしい。


 俺が日本で一番強いことがはっきりしている。


 自信を持って出来ると言える。




「では、明日伺います。大船、いえ箱舟・・に乗ったつもりでいてください」



 電話を切る。


「どうやら承諾を貰えたみたいね。よかったよ」

「まあね。ところで母さん。母さんから見て俺はどのくらい強い?」

「ん? 裏も含めてってこと?」

「そう」


 んーと唸りながら考えること数秒。


「まず当たり前だけど母さんの方が強い。それ以上に神薙さんが強い。これは異存ないよね」

「ああ」

「帝王王陵君子だけど…………ぶっちゃけ8対2」

「どっちが8?」

「帝王側」


 へえ。むしろそこまでいけるんだ。


「あ、勘違いしないでね。8対2ってダイアグラムだから。実際戦ったら9割方負けるよ」

「なんだよそれ。下手な期待させるなよ」

「ただね、上位になると即死技のオンパレードだから、いかに自分の技を押しつけるかで一気に戦況がひっくり返る。星が全部溶けている状態でのト○VS○ャギみたいな状態」

「世紀末じゃねえか」


 核の炎でも飲まれたか。


「後は……他の人間・・相手なら最低でも4は取れる。一樹くんの場合相性で詰まないのが強いよね」


 なんか嫌な言い方だな。


「それとお泊り以外にもう一つ伝えないといけないことがあったの思い出した」

「なに?」

超悦者スタイリストの極意知りたくはない?」


 ――――!!


「あの何だかよく分からない超パワー超ガード超スピードのあれか?」

「そそ。かなり応用が利く常識に囚われなければ・・・・・・・・・非常に便利な能力。上位はみんな使ってる、ううん。使えない奴を見ない。一桁は全員使っているのを見たことあるし、二桁で使えないのなんてそれこそあの魔夜って子くらいだよ」


 間違いなく知っておくべき情報だ。


 話を聞くに最早知っていて更に出来て当たり前のスキル。


 もしもそいつらと戦う時知っているのと知らないのでは大きく違う。


「一芽くんが身につけたかったら教えるって」

「チッ。父さんかよ」


 ロリコンにものを教わるというのもな…………


 仕方ない。背に腹は代えられぬ。


「頼む。教えてくれ」

「了解。これ一芽くんのアドレスだから、時間あるとき連絡してね。修行つけてくれると思うから」


 メモ用紙を渡される。


 今のご時世メールでアドレスを伝えればいいのに、こういう所は年を垣間見る。


 忘れないように早速自分のアドレスに登録。


『Ilikefamiliyandyojo@hmail.come』


「死ねばいいのに」

「あはは」


 というわけで夏休み、いろいろとありそうだ。


 出来れば平和のままで過ごしたい。







 某所、某日


「ぅふふはっはっは!! 完成したぞ! 遂に!! 完成した!! 儂の悲願、200年の結晶!! やっとだ。長かった!! これでこの狂った世界を終わらせる!!! 覚悟しろ神薙!!!! お前の天下はもう終わる!!!!」



恐ろしいことにここまでで7章の前半じゃなくて、まだプロローグなんです。


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