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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
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家族会議 2

これから夏休みに入りますので9月末まで週一更新を目指します。

「「――――!!」」


 何かが起きた。

 とてつもない何かが起きた。


 それは分かる。


 だがなんだあれは!?


 形容しがたいなにかがそこにいた。


 歓喜? 激怒? 恐怖? 安心? 俺は今何を感じている?


 この世全ての感情?


 まさか――――!? そんなこと??


「だ、っだだ大丈夫?」


 母さんによって少しだけ現実に引き戻される。


 全身が震えているのが気付かなかった。


「母さんこそ呂律が回ってないな」

「うん。正直ちびった」

「更年期かな?」

「小学生だよバーカ」


 二人とも落ち着くのにまだしばらく時間がかかりそうだ。




 これは後で知ったことだが、世界中の全ての人間が同時に何らかの違和感を覚えていた。




 あれから落ち着くまでしばし時間を使い


「何だったんだろうな」

「さあ。母さん見たことないだし。たぶん一樹くんも知らないでしょ」

「人? なんだそれ??」

「ん?? 一樹くん見えなかった?」

「何も見えなかったけど、いや……確かに何かを見た。得体のしれない何かを見たのは覚えている。でもそれは人と断定できるものじゃなかったぞ」

「ほんと?」


 こんな時冗談を言える人なんて……どこかの変態以外いない。


「ほんとほんと。それでどんなのだったか覚えてるか?」

「うーん。多分女性? うん。おっぱい大きかったしきっと女性」

「それで?」

「それだけ。あとは分からない」

「じゃあ、その大きさは」

「巨じゃなくて魔、もしくは奇。母さんくらいの身長でもバスト90は固そう」


 少なくともそんな化け物を見たことが無い。


「じゃ完全に赤の他人ってことか」

「う~ん。そうとも言えない気がするんだけどね。どっちかっというと親近感はあった」

「へー。じゃあさ、神薙さんとどっちがやばそうだった?」


 それを聞くと母さんは少し考えたがそのあと微笑んで


「人間に1兆度と2兆度の区別なんてつかないでしょ」

「控えめに言って最悪だな」


 自分でふっといてなんだがあれと比較できるのかよ。


「それにしてもまさか本当に途轍もないことになるなんてな。絶対嘘だと思ってた」

「ほんとだよね。でもあれに言うことを信じろっていうのもあたしとしては無理だと思うけどね」


 信じなかった俺達もだが、そもそも日常において説得力にない神薙サイドにも責任がある。


「つまり俺達は悪くない」

「その通り。悪いのは神薙。訴訟!」

「「イエーイイ」」


 ハイタッチ。


 やっと元気が出てきたところでこの件については終了とさせていただこう。


「ところで母さんのギフト? 俺使えるようになったのか」

「無理だと思うよ。母さんの無ノ少女ラッキーガール、発動条件が2つあってね、うち一つがあたしとの距離。長さの上限は無いけど下限は0mと決まっている。触れるもの全てにあたしの能力が影響する。どうあがいても母さんに異能の力は届かない」


 聞いといてなんだが、俺も多分できないと思っていた。


 それに無理矢理手にいれようとしてまたさっきのあれが起きたら嫌だし、残念だがいらない。


「この他に聞きたいことは?」

「ロリコン……父さんについて。母さんはどう思ってる?」

「ん? 今でも好きだよ」

「そうじゃない。いったいどこの子が親の思慕を聞きたいなんて思うんだ。俺が聞きたいのは殺し屋なんかしてるらしいけどそれについてはどう思ってるかってこと」


 それを聞くと少し困ったような顔をしながら答えた。


「しゃーないとしか思ってないよ。お金がどうしても必要で、能力的にあれが一番稼げるんだから。職業選択の自由なんてあたしたちには無いから」

「あっそ。出しどころはどこかは大体察しがつくから聞かないけどさ、限度ってものがあるんじゃない?」

「その限度を超えてでも、買いたいものがあったんだ」


 ・・・・・・そう。


「はい。おしまい。他にはないかな。いい加減母さん自分の要件も一樹くんに伝えたいんだけど」

「…………ない。うん、これ以上思いつかないし、思いつかないってことは例えあってもそれぐらいのことでしかないってことだ。だから無い」


 しかしいったいなんだろう。


 わざわざかなり長い前置きをしてから話さないといけないことなんて、一体なんだろうか。


「母さんの仕事って白仮面の総締めじゃん」

「うん」

「刑務所で母さん一樹くん見逃したじゃん」

「うん」

「ぶっちゃけ職務放棄じゃん」

「そうだな」

「降格しました」


 それは……ご愁傷様ですとしか。


「それで、早速任務がでてね、明日からから海外を転々とすることになったの」

「ファ!?」


 待て待て待て待て。

 それは困るぞ。


「50日分の食費代くらいなら渡せるんだけどね」

「それ以外にも必要なのがあるだろ」


 炊事洗濯掃除、このどれも俺にはできない。


 よって誰かにやってもらう必要がある。


「家政婦を雇えないのか?」

「そんなお金、家にはありません」


 雇えたところでこのゴーストハウスで仕事をしてくれる人なんていないと思うが。


「じゃ、どうすんだよ」

「頑張って。応援してる」


 ふざけんな!!


「俺に死ねと言うのか!!」

「冗談冗談。そこで一樹くん、一つアドバイス」

「死活問題だからふざけるなよ」


 大真面目に言い放った言葉は、とても正気の沙汰とは思えないものだった。


「夏休みの間、誰かの所に居候させてもらおう」


 右手を斜め45度まで掲げ、そのまま母さんの頭に振り落す。


「いった! 酷い! 何するの!!」

「酷いのはお前の頭の中だ。はいそうですかって承諾する奴なんていないだろ」

「えー。そんなことないと思うけど」

「じゃあ誰が、住まわせてくれるんだよ」

「うーん。個人的に好きじゃないけど……真百合ちゃんとか?」


 はあ。

 がっかり。


「それだけは絶対にやっちゃいけない。これ以上返せない借りは作っちゃいけない」


 本当なら食費代を使っても返さないといけないのに。


「じゃあどうすんのよ。公園で野宿でもするの? 母さんそれでもかまわないよ。一樹くんのことだから野垂れることはあっても死にはしないのは分かっているから」


 野宿か。

 そっちの方がまだ現実的。


「取りあえず、真百合だけは絶対に頼まない。それ以外でなんとか頼んでみる」


 ま、承諾を貰えるなんて思っていないんだけどね。


 そうだな……まず、時雨からか。


 メールを送り、待つこと数分。


 無理とのこと。

 知ってた。


 次に頭をよぎったのは神薙亭だが、あそこに住まうくらいなら野宿の方がマシだと気づいたためパス。


 次はそうだな…………姉(石神玲実)妹(折神双葉)に頼んでみることにしよう。


 ただいきなり夏休みの間住まわせてくださいなんて言われても失礼じゃないかと思ったため、『折り入ってお願いしたいことがあります。時間が許す時に連絡をください』とのメールを送る。


 その際姉さんの着信拒否を解除するのも忘れない。


 10分後、姉さんから電話が来た。


「もっしもーし。元気してた? いっくん」

「えっと折り入って相談ごとが・・・・・・」

「相談ごとって何……って、わざわざ聞くまでも無いことだよね。男の子だもん。溜まってるんでしょ。お姉ちゃんに任せて!!」

「ごめん、やっぱなし」


 例えこの先死ぬことになっても俺にも選ぶ権利はある。


 ブチ切り、再び着拒。


 すると妹から着信。


「どうしたんですか?」

「かくかくじかじか」

「分かりません。ちゃんと相談してください」

「夏休みの間、そっち行って泊まってもいい?」

「駄目です」

「知ってた。じゃあね」


 3連敗(うち一つは敗走)


「ん……こうなったら早苗に頼むか」


 まあ無理だろう。


 だって一応異性だし、あんまり好感度高くないし。


 もうメールすることも面倒になったので電話をかける。


 5コール目に出てくれた。


「珍しいな。どうしたのだ?」

「ちょっと早苗に頼みたいことがあってな。結構無理な相談だから断っても気にしないでくれ」

「むむ。よく分からんがその相談事とはなんなのだ?」


 一度間を置き深呼吸。


 事実を端的に。


「俺と一緒に暮らしてくれ」



ノルマ達成

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