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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
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帰ってきた男 2

※ウィキ調べ

「あのですね、色々と言いたいことあるんですけどまず口映しマウストゥマウスを女性とフラグを建てながら強くなる能力だったとわたしは思っていたんですけど」


 2-10組の教室で早苗の机をはさみ月夜さんに慰めてもらおうと件のことを話した。


なのに第一声は罵倒から入られ、ゴミを見る……例えるならゴキブリホイホイに引っかかったトカゲを見るかのように呆れた目をしていた。


「そうだったらしいね」


 軌道変更なんてよくあることだし。


「で、この有様ですか? 親泣きますよ」

「ロリコンが泣いても問題ない。むしろいい気味だな」

「そうですか。別にあなたがあなたの父親のことどう思っていようが関係ないことですけど」

「大体主人公がモテるって嘘だよな。俺今までの人生で異性に好かれたことないし」


 早苗は内心俺を嫌っているはずだし、真百合には駒だと思われているし、月夜さんには殺されかけたし、八重崎は消えてしまったし、素子ちゃんは彼女のステータスとして付き合っていただけだし、カスピトラさんには縁がないって言われたし、まよちゃんの好意は逃避だし、天谷にはこっぴどくフられたし…………


「やっぱ恋愛ってクソだわ。こんなものにうつつを抜かそうとするなんて狂気の沙汰としか思えないな。真の男は黙って友情をとるべき」

「各方面に喧嘩を売る発言確かに聞きました。戦争は一人でやってくださいね」


 嫌です。助けてください。


「それとさ、一つ気になったことあるんだけどいいか?」

「どうぞ。何言いたいか察してますが」

「そう、じゃ聞くけどな。クラスの雰囲気悪くない?」


 俺がこの教室に入ってくる前は外からワイワイとした声が聞こえたのだが、扉を潜った瞬間水をうったかのように静寂が辺りを包んだ。


「そりゃ、893さんが近くにいるのにワイワイ話せる根性を普通の高校生が持っているわけないですし」

「早苗休みって聞いてたんだが?」

「物の例えですよ」

「何それ? まるで俺がヤクザだって言いたいのか?」

「おお。嘉神さんの理解力が0.01アップした瞬間を目撃して、わたし嬉しいです」


 酷い煽りを見た。


 するとそこへ扉が開かれる。


 それ自体特に気に留める事の無い日常的なことだったが、同時に月夜さんが立ち上がり俺とその開いた扉を遮蔽する。


 誰が来たのか気になり横から顔を出そうとしたが、髪を掴み、顔面を抑え込まれ机に叩き付けられた。


「福知さん。今日から嘉神さんが来てますのでメガネの着用をお勧めします」

「………。ありがとう」


 福知智ふくちとも


 確か……鵜の目鷹の目アンコモンズウォッチャーというギフトを見るギフトを持っていた。


 その能力の所為で否応なしに毎日ギフトを見ることになり、脳に負担がかかると前に言っていたことを思い出す。


「興味本位で見てみようと思わない方がいいですよ。今の嘉神さんは福知さんが予想しているよりも何億倍も酷いことになってます。わたしが結果だけ教えてあげます。半秒で脳の処理が追い付かず体が言うことを聞かなくなります。その後1秒見続ければ気絶します。その1秒はあなたにとっての地獄となるでしょう」


 特に感情のこもっていないように聞こえたが、だからこそ事実を淡々と伝えそれが傍から聞いていても真実だと思い知らされる。


 そしてそれが、ギフトを見る能力を持った福知に伝わらない訳はなく


「キミがそう言うのならそうなんだろうね」


 と、いろいろと諦めたかのようにため息交じりで承諾した。


「もういいですよ。顔を上げてください」


 押さえ込んでいた力が抜ける。


「いてて。福知の為にするのはいいんだけどさ、最初から俺に伝えていたらこんな痛い思いをしなくてもいいと思うんだが」


 捕まれて崩れた髪をセットしなおしながら不満をいう。


「甘いですね。わたしが嘉神さんを押さえつけるのは福知さんを助けるというほかに、クラスメイトにわたしが獣の手綱を握っていると伝える効果があるんですよ」

「????」

「分からなくて結構です」

「分からないと言えば、福知。なんでお前メガネ外していたんだ? 俺以外にもギフト持ちはいるだろ?」


 前はつねに眼鏡を着用していたはず。


「そうは言っていられなくなったんだよ。君以外にも要注意人物が増えたんだ」

「だれそれ?」

「時雨だよ。あいつもあいつで非常に成長している」


 先日の先頭を思い出す。


 電気化、天候操作や自然発火。


 それらを解析するのはかなり脳に負担がかかると考えるのは容易だ。


「何かのはずみで、眼鏡が外れた時何もできなくなるのは困るだろ? 少しずつでもいいから慣らしていこうかと思っていた。大体なんだよ電工赤火エレキバーストとか混沌回路カオスチャンネルって。あれインチキすぎるだろ。昔あれ以上の能力がないって言った自分を殴りたい気分だ」


 それはいい心がけだ。


 そして俺も最後の意見に同調する。


 インフレが指数関数並に加速して、ついていくのが大変だ。


 ん? ちょっと待てよ。


「福知、お前は時雨の能力を見たんだよな?」

「それがどうかしたのかい?」

「どう見えた?」

「質問の意味が分からない」

「能力は幾つだった?」


 時雨が今まで使った能力は、雷電の球ライジングボールを派生してできたモノ。


「1か? それとも複数か?」

「1つだ。複数は君だけだよ。衣川も含めてね」


 早苗は鬼人化と鬼神化の能力をもちあわせている。


 …………


「何を疑問としているのか僕にはわからないけど、そこまで問題にすることでもないだろ? 宝瀬先輩だって似たようなことをしていたじゃないか」


 過去形だということは福知も真百合がギフトを失ったと知っていると推測できる。


「でもそれじゃおかしいんだよ。真百合はいい、時雨は百歩譲る。だが早苗のは絶対におかしい」


 だって早苗の鬼神化は、お母さんの能力がもとになっているとほかならぬ本人から聞いた。


 鬼人化という能力の他に鬼神化というギフトが確かにあった。


 つまり早苗は確実に2つ持っていないと帳尻が合わない。


「私が考えるに――――」

「!? あ、真百合か」


 いつの間にか真百合が背後にいた。

 気づかなかった。くノ一かよ。


「ギフトは完全なる1ではないと思うの」

「というと?」

「例えるなら……そうね、武器とかではなくプログラムとでも言ったところかしら」

「すまん。俺そっち側に疎いんだけどむしろプログラムのほうがはっきりしているんじゃないのか?」


 プログラムって入力したことをそのまま出力するイメージが俺の中の常識。


「Aという画像ファイルがあるでしょ? それを表示させるプログラムがあるとするわ。それをAが保存されているのと異なるパソコンで実行すればどうなると思うかしら?」

「あーなるほど。表示されないんだ」

「そう。それにもしも同名のファイルがあればそれが開かれるわ。犬の写真のつもりで開いたら実は隠して保存していたエッチなファイルだったりしてしまうことだって十分あり得るの」


 その例えはあれだが大体わかった。


「つまり真百合が言いたいのって持っている奴とそうでない奴が1と0じゃなくて、実はほんのちょっとの差ってことだな」

「そうなるわね。そもそも私は実は全員なんらかの能力を持っている、そうとすら思っているわ」

「すげえなそれ。その発想はなかった」


 あんまんに告白するためおいてきたシュウも到着。


 俺の机の周りに4人が座る図になった。


「期待してもらって悪いが、それはないと思うよ。僕の能力を忘れたのかい?」

「能力を見る能力でしょ? それがどうかしたのかしら。誰が一番危険な能力かを見抜けなかった能力なんて盲信できないわ」


 俺たち三人はちらっと月夜さんを見る。


「あ、あのー。みなさんそんな目で見られると困るんですけど。能力の危険度で言えば……あ、はい。わたしの一強ですね。すみません続けてください」

「???? そんなに彼女の能力がやばいのかい? 僕からすれば直接被害がある衣川の方が危ないと思うんだが」


 能力だけを聞くならそうなるよな。


「そういや『物語』ってあるんだけど、ひょっとしてそれが何か関係あるのかな?」


「「「「!!??」」」」


「うわっ! どうかしたのか? そんな何でこいつ知っているんだみたいな顔をして!?」

「それって誰に見えた?」

「君と月夜だよ。それが?」


 見えているが、それがなにか知らないのだろう。


 説明するべきかどうか考えているとここで最も信頼できる人が答えを出してくれた。


「気にしないでください。世の中知らない方がいいものもあるんです。あなたはわたし達の他に『物語』を見たらすぐに逃げてください。それだけでいいですし、それ以上何も望めません」

「マジかよ」

「マジマジ。俺も何度か『物語』持ちに会ったことあるけど、ほんとどうしようもない奴だったから。俺の人徳が無けりゃやられてたね」

「あはは。相変わらず嘉神さんのジョークは失笑を誘いますね。『物語』持ちは全員こんなのだと思ってください」

「……一目散に逃げることにするよ」


 実に解せない。


「話を戻してもいいかしら」

「えっと……どこから戻すんだ?」

「全員何らかの能力を持っているってことよ」


 そこからか。結構戻るな。

 むしろ与太話をし過ぎたのかな?


「あのね、国家機密の話だから誰にも話さないでね」

「お、おう」


 国家機密をホームルーム前の話の種として話すクラスがここにあった。


「数年前、支倉を筆頭としたギフトの大規模な実験があったの。そこの記録資料を強奪した内容なのだけどね」

「うん。何もおかしいところはないな。その実験の内容は?」

「ギフトを目覚めさせるためにはどうすればいいか。被験者は100名、どんなに早くても20年は外の空気を吸う事の出来ない囚人」


 サンキューハッゼ。

 これでまた一つ世界が綺麗になった。


「拷問紛いのことを行って、そいつらがギフトに覚醒するか。タイトルは忘れたけど大体こんな内容だったはずよ」

「したのか?」


 時雨が食い入るように質問する。


「いいえ。誰一人覚醒することは無かった。というよりその実験自体特に意味の無い無駄なモノよ。政府から支給される交付金を減らされないためのアピールだから。でも面白いデータがとれたの」

「なんですか?」


 真百合の答は俺の予想を大きく超えていた。


「生前と没後。体重が約250g変わっていたわ」


「それって単純に息をした時に出ていった水分とか死んだときに流れた糞尿の測定ミスでしょ?」

「私も最初はそう思ってね、自分で調べたの」


 ん? んん??


「あ、ここから私が中学にいた頃の夏休みの宿題の自由研究の話ね」

「一気に信憑性がなくなりそうなこと聞いたんだがな」

「安心して。私一人と言うわけじゃないから。研究職に手伝ってもらいながらだから、観測データに間違いはないはず」


 というか中学の夏休みにそんなこと調べるな。


「それって魂の重さってやつじゃねえのかい?」

「これは昔の、20世紀のことだけど、ダンカン・マクドゥーガルというアメリカの医師がとある実験結果を発表したわ。


6人の患者と15匹の犬を使い、死ぬときの体重の変化を記録しようと試みたわ。その結果、犬は特に何も起こらなかったけど、人間は死ぬ際に何らかの体重の変化が観測されたわ。有名なのが最初に観測された『21g』。そのことから魂の重さは21gと言われたの」


「でもそれって」

「そう、でも私が計測したら250g減っていた。巻き戻しながら100回調べたもの。計測結果には自信があるわ」


 真百合が間違えるとは思えない。

 つまりはそれが事実。


「それでその結果を踏まえてもう一つ実験をしたわ。実際実験というより計算だけど」

「それは?」

「どちらが正しいのか。死ぬと250g軽くなるのかそれとも生きていると250g重くなるのか。結果は後者。



私達は全員本来より250g重かった。



魂の重さを21gとしたらのこりの220gは何? 私はそれがギフトだと考え…………ていたわ」


 沈黙。誰も何も言えない。


「最後の計算、本当にあってるんですか」

「………………色々なアプローチをして自分で計算して、最後にコンピュータで計算したから間違いないわ」


 相変わらず多才だよなこの人。


「おーい。話着いてこれるか」

「いや。半分素通りしてた。すまねえ」


 しゃーない。


「俺達いつの間にか重くなってたってのが真百合の話。OK?」

「おーけー。把握した。それがギフトだって言いてえんだな」


 しかし、ギフトの重さ…………ねえ。


 ただ真百合には悪いがギフトに重さはないはず。


 というか真百合、自分が言っている途中で気づいたよな。


 俺の存在をどうするか。


 ギフトに重さがあるとすると俺の体重は2kgよりも大きくなってしまう。


 しかもそれは後から増えたもの。気づいてしかるべき。


 それを気づかないほど俺は間抜けではない。


 とはいえ、自分の体重がどうなるか気になったのは確かであったため確かめることにした。




紆余曲折あった後の昼休み。


 保健室で自分の体重を計った。


 調べるのは3つ。


 今の俺の体重。

 複製したいくつかのギフトを使えない俺の体重。

 心が無い肉の塊の体重。


 二つとも全く俺と同じように複製したつもりだ。


 結果、前二つは変わらなかったが、最後の一つは真百合の言っていた通り200g程度軽かった。


 その計測結果数値を真百合に伝えたのだが…………


「じゅ――――」

「じゅ?」

「――――――純愛3Pが 出来るッ!!!!」


 頭には入っていないようだった。




主人公が知らな情報を持ち、サポート(金)がうまく、シリアスもギャグも出来る。

サンキューマッユ

フォーエバーマッユ

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