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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
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嘉神一樹VS時雨驟雨 序

 先に動いたのは時雨からだった。


雷電の槍ライジングスピア

「―――!」


 球を投げるではなく、槍の形をした雷撃をまっすぐ俺に向かって投げた。


 球を投げるよりも速く、そして正確に獲物に向かって突き進む。


 だがそれでは無意味だ。


 柳動体フローイングでむしろ回復してしまう。


「だから言っただろ。それじゃ無理だ」

「分かってらぁ。新技全部試したいんだよ」

「やりたきゃどうぞ。ただし試す暇があったらな!」


 その場から一歩も動かず手刀を振りかざす。


 振りかざした先に回廊洞穴クロイスターホールで穴を開け時雨に襲いかかる。


「おれもそれは効かねえ!」

「ッ!?」


 時雨の体が電気と化し、俺の手刀を通り抜けた。


 そして俺の体に電流が走る。


「ッ―――!!」

「祝、初ダメージっと。ま、実際柳動体フローイングをONのままにしときゃおれの方がもっと大ダメージを受けてたんだが、嘉神なら舐めてかかってくれると信じてた」

「そりゃどうも。足下すくわれたって感じだな」


 しかしこの程度、数秒たてば十全の状態とさして変わらない。


「そうだ。だが嘉神。いい加減にしとけよ。確かに今はおれが後ろでお前が前だ。悔しいがそれを認めなければおれも前には進めない。だがよぉ、お前は前を向いて後ろなんて見ないだろうから忠告してやる。おれはお前の……すぐ後ろにいるぞ!!」

「―――!!!!」


 最後の言葉は本当に俺の背後からだった。


 見えなかった。


 言葉が届く前に時雨は俺の背後に立っていた。


 時雨お前まさか……?


「音速を超え……違う。これは光速!?」

「その通りだ。おれは自分の体そのものを電撃とすることにより光に近い速度で移動することが出来る」

「………!!」


 こいつ……本当に時雨か?


 時雨の意思を持った偽物じゃないのか?


「ただ弱点としてこうなっている時は攻撃できない、出来たとしても電流を流すだけ。それを今のお前にするのは自殺行為だ」

「そんなポンポン弱点をばらして大丈夫なのか?」

「構わねえよ。こんなので嘉神を倒せるとは思ってもいねえ」


 確かに驚いたが結局時雨が俺を攻撃できないことは変わりない。


「それで自慢の雷撃が通じなければどうする」

「そりゃ、仕方ねえから斬りつける」


 ポケットからサバイバルナイフを取り出した。


 異能が効かないなら物理で殴ればいいか。

 だがそうしてくれるなら、俺も対策しやすい。


 無限淵アンタッチャブル


 刃物と俺の体を指定。


 これにより刃物は決して俺の体に到達しなくなる。


 右から弧を描きながらナイフが突っ込んでくる。


 だがそれは決して俺に到達することはな………


「ぐっ……!」


 斬られた!?


 反射的に『世界』を止める。


 横腹が痛い。これは間違いなく現実。

 鬼神化オーガニゼーションで傷は治したが…………今俺の頭は現状整理でいっぱいいっぱいだ。


 ギフトは確実に発動した。それは間違いない。


 しかし時雨にはこのギフトが通じなかった。


 思い当たる節は一つしかない。


 だが何故だ。


 雷電の球ライジングボールは、『論外』のはず。




 なぜ時雨が『時間』に対する耐性を持っている!!??




 それが可能なのは『世界』『法則』『物語』の能力者だ。


「――ッ!!」


 とある仮説を立てる。


 時雨お前まさか……?


 『世界』停止を解除。


「――!! 反辿世界リバースワールドか。厄介なギフトだ」

「おい! まさかお前、神薙から変な能力を貰ったんじゃないだろうな!!」


 これ以外考えられない。


この状況を説明できる状況証拠では、『世界』以上の能力を手にしたとしか……


「その通りだが一つ言っておく。おれのシンボル混沌回路カオスチャンネルは変な能力ではない」

「そうかよ」


 シンボル――――


 目を瞑れば思い出す。あの凶悪な能力との戦いが……!!


「訂正しておくがシンボルは別に凶悪であることが条件じゃないぜ。重要なのは【その人間らしさ】だ。


嘉神一樹を中心に盲信した正義、

他のことなんか無視してただ一点だけを求めた劣情

失敗したのは自分じゃないという逃避


これらが形を成し、己自身のシンボルを形成する。故にシンボルを馬鹿にするという事は持ち主の人格を否定するのと同じだぜ」


 神薙が横から説明を加えた。


「そうかよ。悪かったな時雨」

「問題ない。それに戦闘はまだ始まったばかりだ。お披露目にはまだステージが出来ちゃいねえ」


 今すぐにシンボルを使う気はないとそう言いたいわけだ。


 だが俺としてそれは困る。


 殺すでもなく倒すでもなく、相手にまいったと言わせる。


 自分は手加減していたから、試合には負けたけど勝負には負けてないからなんて言い訳をされてしまうわけにはいかない。


 時雨はそれを分かっていっている。


 俺が本気を出さない限り自分も本気を出さないぞ。


 こう俺に伝えている。


「だったら無理矢理でも使わせてやる。占里眼サウザンドアイズ」」


 時雨の動向を見る。


 2秒後時雨は俺の背後に立つ。


 これは『運命』による確定事項。


 回避できるならやってみやがれ!!


 柳動体フローイングをONにしたまま右腕を後ろに伸ばす。


 何かに触れた手ごたえはなかった。

 吸収した感覚も無かった。


 時雨は『運命』を回避した。


 確定した。


「――『法則』!」


 時雨のシンボルは『法則』だ。


混沌回路カオスチャンネルがどんな能力かは分からない。だがお前のそれが『法則』であることは突き止めたぞ!!」

「さすがだな。その通りだ」


 『時間』や『運命』は格下狩りにしか使えないと思っていたが、これはこれである意味使えるな。

 耐性持ちであるかどうかを確かめ、持っていればそれ以上と判断できる。


 一種の仕分けだ。


「『物語』とは考えなかったのか?」

反辿世界リバースワールドは普通に通じたし、何よりお前が俺を格上と言い続けただろ。お前がこういう所で嘘をつくような奴じゃないのは知っているからな」


 アチャーと頭に手をのせる時雨。


「師匠に『物語』の恐ろしさをずっと聞かされていたから、内心ではビビっちまったのだろうよ。だがよ、耐性じゃ『法則』は防げない。知ってるよなあ?」

「ああ。知ってる」


 見下すなんてとんでもない。

 こいつは俺が今まで戦った中で月夜さんに次ぐ格の持ち主。


 舐めてかかったら俺の方がマジでやられる!


「結局シンボルは使わないのか?」

「お前が切り札使ったら使うから安心しろ」


 今の俺の切り札。

 それは獄落常奴アンダーランドだ。


 数時間前に手に入れたばかりのインチキギフト。


 だがこれは本当の意味で切り札だ。

 自分でも使ったらどうなるか分からない。


 昔なら思考停止で使えたが今は違う。



 原作オリジナルより贋作フェイクの方が強くなってしまっている。



 下手に使えばこの町が文字通り地獄と化す。

 だから俺もこれだけは、本当の本当に最後の手段として使わないといけない。


「そんな機会、永遠にない!! 回廊洞穴クロイスターホール


 空中に大小含め合計百個の穴を生成。


 お互い一歩歩けばぶつかり、何も対策が無ければ触れた所が切れてしまう。


 だが俺は耐性があるためぶつかっても問題はない。


「やっと戦ってくれるようになったか」

「ああ。だがもう終わりだ。俺が戦う以上時雨、お前の敗北は決まっている」

「そいつはどうかなぁ!!」


 再び斬りつけられた。


 ダメージ自体大したことないが再び混乱する。


「隙間が空きすぎなんだよ!!」

「は!? こっちは直進できない様に入り組ませたぞ!!」


 脳は電気信号だ。


 故に反応速度には限界がある。


 光の速度はおろか、普通ならば銃弾ですら掴むのは無理だ。


 穴の後ろに隠れたところにも穴を設置していたため、時雨の位置からは全てを把握することは不可能なはず。


 つまり時雨は前を見ながら光速で移動したことになる。


 あり得ない。文法が間違えている。


「何をした! それがシンボルなのか!?」

「いいや。ネタ晴らしするがこれは超悦スタイリッシュだ」

超悦者スタイリストのことか?」

「知ってるのか?」

「名前だけはな」


 月夜さんが自分でもよく分からないが、使えることには使えるとの能力。


 記憶では精神操作が効かなかったり、水に濡れなかったりする効果があるらしいが未だよく分かっていない。


「それは一体何なんだ!?」

「ろくでもねえモンだ。少なくとも賢い奴は絶対に辿り着かない。常識を捨て去った馬鹿しか到達できない最強卑劣な体術だ」


 体術だと。


 どこに体術の要素があるんだ。


 だが体術と言うのなら距離をとった方がいいと思い、6メートルほど間をとった。


「説明しろって言われてもおれには無理だ。あれはおれが説明するのに力不足? 役不足の方が近いのか? 取りあえずそんなもん」

「説明は出来ないと。体術ってことは攻撃力が上がったり、素早さが上がったりするのか?」

「大正解だ」

「――――!!!!」


 殴られる。


 それも一発や二発じゃない。


 10,20,30………


 ほんの一瞬だ。


 1秒? 違う0.1秒まだだ。もっと早い。

 コンマ00の速度で俺は殴られた。


 そして2つ恐ろしいことが。


 時雨が動いたように見えない。

 目測より速くヒットandアウェイしている。


 極端な話光より速く動いていた。


 もう一つ、なぜ俺は立っていられる?

 光ですらとらえられない速度で殴られ、なぜ俺は平然としていられる?


 あり得ないだろ?


 エネルギーは質量と速さの二乗の積。

 質量を持った物体が光速で動けば地球がやばい。


 その衝撃を間近に受けたなら、粉微塵になるのが世の定理のはず。

 いくら鬼神化オーガニゼーションで硬くなったとしても耐えられるわけないんだ。


 何をやられたのかさっぱりわからない。


 分からないのは超悦者スタイリストだけじゃない。

 時雨のシンボルだってそうだ。


 見るに時雨は混沌回路カオスチャンネルに信頼を寄せている。

 今更実は弱いなんて期待は出来ない。


 しかも互いの切り札の強弱が確定している。


 俺は『世界』時雨は『法則』


 相反するかどうかは分からないが、もし相反するならその時点で負けが決まってしまっている。


 撫でるとかそんなこと言っている場合じゃなかった。


 本気で戦わないと…………やられる。




がんばれ時雨くん。主人公(笑)なんかに負けるんじゃない!!

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