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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
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ラグナロクの前に

 とある世界にて。


 そこには三柱の神がいた。


 尤も、そのうち一柱は赤子のような存在であるため、能力的な神は二柱である。


「っっんっぅぅううう――――!!」

「あと少しなのです。頑張ってください! 柱神様!!」

「っああああああああああああ」


 その神が一柱の神を出産した。


「…………成功したね。よかった」

「――――!! はい。よかったです」


 柱神は己の力のほとんどを消費し、また自らの魂を切り裂きかつて自分が取り込んだ存在を再び呼び戻した。


「……どうしたのかな? 今僕はとっても弱っている。僕を取り込めば君が柱神になれるんだよ」

「最初はそうしようとしたんですけどね。やめました。あなた強すぎます」

「そうなのかな? 最近あいつと一緒にいたから自分の実力に自信を持てないでいたんだけどそう言ってくれるとありがたいよ」


 そう言いながら用意されていた魂を鷲掴みにし、強引に口の中に放り込んだ。


「うっめえ」


 神が行う唯一の食事、魂。


 食べなくても存在は出来るがそこまでだ。


 より上を目指すために食事は神だろうが必要であった。


「やっぱ美味いな。これ」

「当たり前です。何せ人のですから」


 魂にも上下があり共食いをしない限り、最上位にあるものは人なのだ。


 神が最も好んで食べるのが人。


 昔は更にそれを味付けするため、わざわざ自分の力で異世界を作り拾ってきた人を転生させ徳や業をつませよりおいしく食せるようにしていた。


 だが今はそのようなことは出来ない。


 神が守る神法により明確に禁じられている。


「やっぱりおかしいです」

「やめなさい。お前なら分かっているだろ?」

「分かってますよ!! でも分かっていても!! それでも――――!?」


 それ以上口に出すことは出来なかった。


 柱神が全能の力を用い強引に黙らせたためだ。


「神法第1270条」

「申し訳ございません。柱神様」

「悔しいのは分かるよ。でもしかたない。だって僕らは敗残兵なんだから」

「でもまだあなたは戦ってます。あの兇人と」

「戦う? まさか。これは敗戦処理だよ」


 自嘲しながら苦笑する柱神。


 あれと戦うなんてとんでもない。


「神々にとっての最後の希望が僕ってのも、結構皮肉だよね」

「元人間、そしてあの兇人の義理とはいえ妹だったんです。運命を感じますよ」


 『運命』じゃ今時人間ですら抗えるよと柱神は否定する。


「柱神様は私たち神々にとって最後の希望なんです」

「その割にはさっき僕のことを食べようとしたよね」

「あ……あれは……性格的に私の方が柱神に向いているから……」

「で、やめたんだ」

「柱神様の偉大さに今気づきました」


 普通の人間が肉眼でビルの大きさを把握できても地球や宇宙の大きさを把握することが出来ない。


 それと同じようにこの神が全知をもってしても、かつての柱神の力を把握することが出来なかった。


 だが今は違う。


 小さく、弱くなったことにより把握できてしまった。


「柱神様が弱くなってやっと把握できました。貴方何者なんですか」

「弱っちい神様だよ」

「弱っちいって。柱神様が弱いのだったら私達神は一体何ですか?」

「最弱よりちょっと強いくらいなんじゃない?」


 笑いながら答えた返答は神としては笑えない解答だった。


「冗談は置いといて僕の強さを把握できるだけで次期柱神として申し分ないよ。だからもし万が一……いいや千が一僕に何かあった時、君が代わりに柱神をやるんだ」

「……分別したこの子たちじゃ駄目なんですか?」

「うん。こいつらは対神薙信一に特化した存在だからね。神としての適性は出来るだけ外してある。強いが神としての器が無い」


 生まれた赤ん坊を撫でながら女神に自分の真意を伝えた。


「これからどうするんですか?」

「まずはこいつらを育てないとね。一か月くらい教育させるからサポートよろしく」

「分かりました。特異点についてはどうしますか?」

「そうだね。これについては全神々に通達する必要があるだろう」


 分娩台から起き上がり喉の調子を整える。


 そこから発した音は嘉神一樹と話す時、決して発することの無いような畏怖そのものの具現化したものだった。


【全神々ニ通達。コレヨリ特異点ノ暦ガ撥ヲ過ギルマデ、特異点並ビソレニ準ズルモノノ一切ノ干渉ヲ禁ズル。コレニ逆ラウモノ、異ヲ唱エルモノ、他ノ神々ニ誘致スルモノハ例外ナク極刑ニ処ス】


 それは神々しさと禍々しさを兼ね備え、これの発信源が最上位の神であることを証明するに十分なものだった。


 すべての神々はそれまでやっていた全ての行為を放棄し、ただ聞くことに専念する。


 そしてそれは柱神を補助していた神も例外ではなく、柱神が音を発した瞬間跪き、ただその言葉を聞くことに専念する。


 遅れて理解をするのだがその内容はあまりにも残酷だった。

 何しろその命は、他の神に死ねと言っている。


「柱神様……?!」

「言いたいことは分かるし、自分が何を言ったのか分かってるよ」

「だったら何故に……?」

「昔まいた種がこっちの想像よりも早く芽吹いちゃってね。花咲くまでは絶対に邪魔されたくないんだ」

「ですがいままで一度もあそこに介入しようとした神はいないのですよ?」

「介入したしないはどうでもいいんだ。重要なのはあいつが介入する動機を作らせないこと。そのためには必要な事」


 迷いなく答えた柱神は神にわずかな希望を与える。


「この次の展開、何が起きるかだけ君に教えようと思う。○○○○が○○○○○を殺す」

「――――!! それが事実なら……全てが解決します」

「そう。もしこれが上手くいけば、全てが解決してしまう。ある程度なら失敗してもこちらに利がある。では改めて聞くけど僕の命令が間違えてると思う?」

「いいえ。それが起きるなら、多少の犠牲は仕方ないかと」


 これから起きることは、神の視点を持ってしても重大な事だった。


「十中八九、ううん、ほぼ確実に失敗すると思うからあんまり期待しないでね」

「希望なんて当の昔に捨てました」

「でも希望はある。何せまだ僕らは足掻けるんだから。足掻けないコマたちに比べたらまだましだよね」

「そうですね」


 自身の体力が元に戻ったのを確認し


「じゃ、そろそろいくよ。この子たちの食事の為に世界を十ほど滅ぼしてくる」

「いってらっしゃいませ。柱神様」


 そう言って生まれて間もない神々を連れ柱神は他所の世界へ旅立った。




メープルが使った能力(ギフトでもシンボルでも無い)

柱による宣告

『法則』

これを聞いたものはそのものが意識的に行った全ての行動を破棄し、ただ聞くことにのみに専念させる。


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