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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
6章 黒白の悪魔
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黒白の悪魔と臙脂の閻魔と 4

 俺が海底で見つけたものは瓶に入れられた手紙だった。

 しかも目立つように赤いリボンでラッピングしてあった。


 その手紙は真空パックに包まれており防水加工もされてあった。


 手紙の中身はこうである。




『お久しぶりです。嘉神さん。月夜幸です。

この手紙を読んでいる時は恐らくあなたは海底にいると思います。

しかも何度も死んでループしているらしいですね。

この手紙を読んでいる時、あなたはメープルの罠ではないかと疑っているでしょう。

ですから今ここで否定しておきます。

なぜこの手紙が嘉神さんの下に届いているかですが、当然多幸福感ユーフォリアの能力です。

あなたはこれを読まないといけない。

そしてここに書かれてあることを実行しないといけません。


まず言っておかないといけないのは、楢木魔夜は存在してはいけません。

あのギフトは控えめに言って最悪です。

ただそこにいるだけで周りに被害がかかります。

これはもう確定事項です。説得は無駄です。

ですからわたしのギフトは排除を命じました。


どういう能力かわたしは知りませんが、恐らくろくでもない能力なのでしょう。

ですがそれ以上にあなたの口映しマウストゥマウスはとんでもない物なのです。


あなたはその能力を嫌っている節があります。

戦闘になった時、最後の手段として口映しマウストゥマウスを使うことが多いはずです。

それは愚かであると言わざるを得ません。

分かっていると思いますが、貴方の持っている一番強い能力は反辿世界リバースワールドでも、回廊洞穴クロイスターホールでもありません。口映しマウストゥマウスです。


昔の黒いあなたならば半分くらいの力しかだせなかったでしょう。

ですが半分白くなったあなたなら、


一度白狂はっきょうしたあなたなら、


既に持ち主と同じくらいの力で使うことができるはずです。

下手をすれば持ち主以上に使いこなしているでしょう。


キスすることが卑怯だと、コピーそのものが卑怯だと思っているでしょう。

ですがよく考えてください。

使えた能力を使わずに、その結果誰かが傷つくことを見過ごす方が卑怯だと思いませんか?


強くなることに拘りが無いかもしれませんが、強くなければ何もできません。

躊躇わないで。

強くなることを躊躇わないで。


これが唯一、私達人間ができるあの女神に対する反逆です。


ではここからあなたが何をすべきかを書き連ねます。

次のループの目標は、あのギフトを嘉神さんが手に入れることです。


以下の通りに行動すれば大丈夫です。


1、この手紙をみつけた海岸に楢木魔夜を誘導。その際彼女の視線を森に向けないようにする。

2、雷電の球ライジングボールで、合図。

3、背後から走るわたしを見つけたら、日本刀を十本飛ばす。

4、その後すぐに鬼神化オーガニゼーションで突進。手に触れないよう気をつけて。

5、わたしがあなたが飛ばした日本刀で首を刎ねるので、キスをする。

6、終了後死ぬ


この6がとても重要です。そしてこれが唯一失敗する可能性があるポイントです。

そのまま戦闘になればあなたは生き残るでしょうがわたしは巻き込まれて死にます。

わたしは最弱ですので、死んでしまったらやり直しても死んだままだと思います。

ですからキスをしたらすぐにあなたが死んでください。


このゲーム、貴方が勝つのは決まっています。

ループをし過ぎてやけになっているかもしれませんが、明確な有効打があるあなたと無い楢木魔夜は戦う前から詰んでいます。

具体的には鳥と犬くらいの差があります。


もう一度言います。貴方の勝利、楢木魔夜の敗北は既に決定しています。

わたしの生死。

それがこの章最後のゲームの商品です。


負けてもわたしが死ぬだけですのでリラックスして挑んでください。


追伸

たかが『世界』の能力です。『物語』持ちが負けるわけありません』



 こんなことが書かれていたのだ。


 当たり前のことだが俺は月夜さんを殺させるつもりは毛頭ないので、キスをすればすぐに死ぬ。


 魔夜ちゃんの首が宙を舞う。


 お互いに手を伸ばす。


 俺は自身の手を。彼女は白い手を。


 『世界』を止めるまで時間は立っていないため、同じ時間での勝負。


 この間を秒数で表せば1秒もない、


 まず俺が先に右手で首を掴むが、彼女の首は右を向いていた。


 俺のギフトは必ず口と口でしないといけないため、手首を一度ひねらないといけない。


 そして俺はキスをした。


 だが今の俺は成功したと喜んでいる時間はない。


 むしろ一度ひねるときに無駄に時間を使ってしまったのではないかと考えてしまう。


 ほんの少しのタイムロス。


 今はそれすらも致命的なりうる。


 第一目標のキスはした。後は死ぬことだけ。


 急いで手に触れようとするが、手はなかった。


 死んだからだろう。一度だけ効果は切れたのか。


 首が燃え灰となって消えてゆく。


 こうなったら自分の力で死ぬしかない。


 先のループ通り脳と心臓を同時に破壊する。


 そうすれば鬼神化オーガニゼーションを解除する必要もなくなる。


 今は解除する一手間すら惜しい。


二次色の人生レインボーライフ!」


 自分の脳と心臓に杭を突き立てる。


 これで死ねる。


 ループだ。


 死んでループを…………


 ………ループを…………


 口から血を吐く。


 死ななかった。

 死ねなかった。


 まだ生きていた。


 脳と心臓が串刺しになっているのに、痛いと思うだけで生きていた。


 何故か? 考える時間はないというのに考えずにはいられなかった。


 そして辿り着く。

 簡単な事。


 思わず神を呪ってしまいそうな答え。


 俺はずっと鬼神化オーガニゼーションを使い続けていた。


 スキルを上げていた。


 成長してしまった。


 脳と心臓以外が無事なら再生できるギフトから、脳と心臓が傷ついても再生してしまうギフトに。


 戦闘中に成長する。


 まさかこれが裏目に出るなんて…………


だがいくらなんでもこのタイミングはあんまりだろ!!


「ふっかつッ! そしてさよなら!!」


 黄泉返った魔夜ちゃんはギフトを使う。


 亡者のごとく白い手が月夜さんを襲う。


「やっ――――」


 やめろと言おうとしたが、出来なかった。


 月夜さんの笑っている顔を見てしまったからだ。


 その顔は断頭台に立たされた聖女のごとく、慈愛に満ちていた。


 それこそ、この結果が分かっていたみたいに。


 自分が地獄に落ちることを悟っていたようだった。




 彼女は『サヨナラ』と小さく口を動かし無数の手に包まれた。





何も成長が必ずしもプラスになるわけではないという話。

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