白夢
ピンクの象が飛んでいる。
ポップな絵柄で背中に翼が生えている。
像ではなく生きている象だ。
耳で飛んでいるのではなく翼をヒラヒラと羽ばたかせている。
自分はベッドにいた。
ベッドで仰向けになって寝ているが布団も毛布もない。
真っ白な服を着てまっすぐに横たわっていた。
横たわるのに飽きたので起き上がって、ベッドから降りた。
周りを見る気はなかったけれど、視界に入ってくる。
真っ白な部屋。
後ろにベッド、上に象。
それ以外なーんもない。
扉も鏡もトイレも。
自分は壁に向かって走りだした。
それが自分に課せられた使命かのように。
壁にぶつかったのだろうか。
いつの間にか大地を走っていた。
快晴なのに空が白っぽい。
大地も土しかないのに白っぽい。
でも地平線だけはくっきりと色がついている。あれは何色だろうか。
三秒後に崖から落ちると悟った。
でも走るのはやめなかった。
落ちたかった。
落ちる時のあの感じが好きだから。
三秒後に落ちた。
心臓が持ち上がる感覚。
股間がぎゅーってなる感覚。
嫌なはずなのにたまらない。
また落ちよう。
そう思った。
そしたらまたあの空の下、あの大地を走っていた。
これを何回繰り返しただろうか。
急に画面が変わる。
落ちて死んじゃったのかな。
そこには扉と階段だけだった。
真ん中に扉。
両端に上りの階段。
この扉は開けなくちゃいけない。
取っ手を回すがあかない。
早く開けなきゃ怒られる。
なにに怒られるなんてその時は考えもしなかった。
ただただ開けなきゃって気持ちでいっぱいだった。
ガチャガチャ取っ手を回してたら扉があいた。
中にはなにがあるのだろうかという期待と不安でいっぱいだった。
でもそこから父が出てきた。
新聞を片手にタバコの臭いをぷんぷんさせて。
父は知らない子を見るような目で自分を見ていた。
そして左の階段から上へ上っていく。
なんであの父の子なのだろうか。
そう思いながら扉の中へ入っていく。
そこはトイレだった。
普通の水栓トイレ。
特に用もないので部屋をでる。
そしたら自分が真っ白な軍服をまとっていることに気づいた。一丁のライフルを持っていた。
後ろにあった扉と階段は消え、母と弟が抱き合って怯えている。
自分のこの姿が怖いのか?
そう思ったが銃声の度に震える二人を見て違うと察した。
自分が二人を守らねば。
自分は部屋を出て廊下を走る。
曲がり角で壁に寄りかかって様子を見る。
二人の緑色の軍服を着た男が廊下を走るのが見えた。
多分もうこの建物の中には敵はいないだろうとおもって扉に向って走る。
扉に辿り着き勢いよく扉をあけ外にでる。
ひどい光景だった。
破壊された街。
兵士が忙しく回っている。
びっくりし過ぎて周りの音が聞こえなかった。
でも最後にすぐ横まで来ていた戦車の音と自分の骨が砕ける音は聞こえた。