アウトロダクション 終 点(その2)
公園で遊ぶこどもたちの声を聞きながら訪ねた長田の家は、住宅街の中にある一軒家だった。
「でけえな。金持ちだったのか」
家の前で大袈裟に驚く冬祐に、長田が笑う。
「んなわけねえ。誰もいないから遠慮なく――」
言いながら鍵穴に突っ込んだカギを回そうとして振り返る。
「――て、カギ開いてるわ」
玄関を開くと、制服姿の少女が立っていた。
「おかえりぃ」
「珍しいな、先に帰ってたのかよ」
「今、帰ったとこだよ」
少女が冬祐を見る。
「お友達?」
長田が靴を脱ぎながら答える。
「おう、初めましてだな。同じクラスの垂水だ――」
そして、冬祐を振り返る。
「――妹だ」
冬祐はぽかんと立ち尽くしている。
長田と親しげにやりとりする“見覚えのある少女”の姿に。
そんな冬祐を、靴を脱ぎ捨てた長田が訝しげに促す。
「どうした? 上がれ」
「あ……。うん」
我に帰った冬祐は、いそいそと靴を脱ぐ。
その間に長田は妹へ“オレの部屋に飲み物を二本、頼むぜ”と言い残して、正面の階段を上がっていく。
その背後で脱いだ靴をそろえる冬祐に、妹がスリッパを差し出す。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
妹が問い掛ける。
「コーラがいいですか、お茶がいいですか――」
そして、少しだけ背伸びして耳元でささやく。
「――冬祐様」
冬祐が弾かれたようにその顔を見つめる。
妹は意味ありげな笑みを浮かべて冬祐を見ている。
その胸元でペンダントに加工された古いコインがちかりと光った。
妹が言う。
「一緒に生きていいですか」
冬祐は周囲を見渡す。
そして、ほっとする。
どこにも“イソギンチャクを背負ったカニ”は、いなかったから。
全編終わり




