表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

85/87

第8話 「世界」の最期(その11)

 鍾乳石が落ち、石筍が倒れて荒れ果てた“女王様の間”を光の雪がひらひらと舞っている。

 その中を、冬祐たちは出口を目指す。

 常に閉じていた“出発”と書かれた扉は、すでに主を失って終焉を迎えたパラサイティブゾーンゆえか全開だった。

 “女王様の間”から“出発”の扉を過ぎて“カウンターのある部屋エントランス”に続く通路に入る。

 通路の中程に、アニーが立っていた。

 冬祐に側頭部を吹っ飛ばされたままの姿で。

 そのアニーが冬祐に声を掛ける。

「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」

 何事かと顔を見合わせる冬祐と竹児だが、アニーに誘導されるまま壁面に開いた扉へと進む。

 その部屋がどこかは、冬祐も竹児も知っている。

 最初に自分たちがここに漂着した“同心円の描かれた八角形の部屋”である。

 部屋の奥からアニーが振り返る。

 そして、同心円の中央に立つ冬祐と、ホーネットに支えられた竹児に告げる。

「あなた方を元の世界へ戻します」

 その口調も、表情も、そして、たたずまいまでも、カウンターで冬祐の出発を見送っていた時や瑞行をかばっていた時とは、まるで別人のようだった。

 竹児が問い返す。

「できるのか」

「“母上様”が力尽きたことで、パラサイティブゾーンは私だけになりました。今は私だけが“母上様”の遺伝子情報を継ぐ者として、すべての権限を得ております」

 違う雰囲気を漂わせているのは、そのせいなのだろう。

「好奇心から瑞行を保護して二百年……瑞行の記憶を読み取ることで知った別世界の話たち……そんな様々な世界を滅ぼすことに疑問を抱いて……今となっては、つぐなえることではないけれど……せめて、あなたたちを元の世界へお戻ししましょう」

 竹児がよろよろとホーネットから離れるが、すぐにバランスを崩して転倒しそうになる。

 その竹児を冬祐が支える。

「冬祐……」

「竹児……」

 互いに見つめ合い、頷きあう。

 冬祐はホーネットに目を向ける。

 目が合ったホーネットは、冬祐と竹児へ無言で手を振る。

 初めて見せる笑顔で。

 冬祐も手を振り返す。

「お元気で。そして、お幸せに。先生にもよろしくお伝えください」

 アニーが冬祐と竹児に声を掛ける。

「では、御客人方。これにて……」

 降り注ぐ光雪の中で、部屋を出るホーネットの後ろ姿を見送る冬祐の視界が暗転した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ