第7話 真相と覚悟(その9)
テーブル上にガーゼを重ねて作った簡易ベッドで、上体を起こすヒメの顔色は悪かった。
「大丈夫か?」
問い掛ける冬祐に、ヒメがぽつりとつぶやく。
「全部、知ったんだね」
おそらく、冬祐側の感覚を共有したのだろう。
冬祐は正直に答える。
「うん。全部、聞いた」
「嫌いになったでしょ」
「なにを?」
「私」
「……」
黙って自分を見ている冬祐に続ける。
「最初から全部知ってたんだよ。“絶望兵器”のことも“糸”のことも“レセプタ”のことも。それを黙って、隠して、仲間みたいな顔して、一緒に……」
声が震えだし、黙りこんだ。
代わって冬祐が口を開く。
「……つらかっただろうな」
「え……」
ヒメの表情が耳を疑う。
しかし、冬祐は構わず続ける。
「こんなことを黙って、隠して、それに耐えなくちゃいけなかったって……つらかっただろ。でも、もう大丈夫だ。全部知ったから。もう、我慢しなくていいんだぜ。耐えなくていいんだぜ」
晴れ晴れとした表情で告げる冬祐に、ヒメはしらけた目で返す。
「冬祐って――」
「うん?」
「――バカなの?」
「……」
一瞬黙りこんだ冬祐だが、すぐに気を取り直して返す。
「よく言われる、学校で」
ヒメが叫ぶ。
「出ていってっ」
その豹変振りに、冬祐はぽかん。
「は?」
ヒメは冬祐に背を向けると、シーツ代わりのガーゼを頭から被ってまくしたてる。
「疲れた。寝る。出ていって。早く」
そして、ばたんと横になる。
「ああ、ごめん」
冬祐は部屋を出ようとして思い出し、立ち止まる。
そして、ささやく。
「ナビ子のカーテンで立ち往生してた時のことだけど。ありがとう。竹児とケイタからもよろしくって」
ヒメは答えない。
「……おやすみ」
冬祐は、そっとドアを閉じた。




