第7話 真相と覚悟(その4)
「それは、つまり、僕たちが……」
震える声でたどたどしくつぶやく冬祐だが、続く言葉は混乱した感情に押し潰されて出なかった。
竹児が頷く、瑞行が静かに目を閉じる。
冬祐は“女王様”が自分に向けた言葉を思い出す。
“糸として完成した以上、もう用はない。”
自分と竹児と瑞行が“糸”であり、由胡と遥麗と“瑞行のかつての恋人”が“レセプタ”だったのだ。
“女王様”の世界に流れ着いた由胡の絶望感を原料に“レセプタ”としての芦川由胡を作り上げ、その芦川由胡という“レセプタ”によってパラサイティブゾーンに召喚されたのが自分だったのだ。
“糸”――すなわち、自分が元いた世界を絶望死させる“導火線”の役を負う者として。
冬祐は、ようやくこれまでの由胡の行動に納得する。
由胡は冬祐という“糸”を完成させるために、時には冬祐を妨害し、時には助けた。
それが宅配ボックスの持ち逃げであったり、動かなくなった翠をサダチカ・シティへ運ぶことであったり、さらには、カンパーナ本部ビルで理事長室へショートカットさせたりといった行為だったのだ。
冬祐を殺さない程度に悩ませるように。
少しでも冬祐の心に多くの感情を体験させるように。
冬祐を“糸”として完成させるために。
そう考えれば、ヒメも同じ目的で動いていたことは容易に想像できる。
ヒメは“女王様”から冬祐に与えられた、ナビゲーターなのだから。
里村邸のゲストルームで、ヒメが点けたテレビにタイミングよく由胡が映っていたことがあった。
それまでずっと身を隠してきたヒメが、定睦の誘拐により打開策のなくなった冬祐やアンドロイドたちの前にいきなり姿を現したこともあった。
これらは、すべて計算した行動だったのだろう。
次の目的地を冬祐に指し示すために。
そういう意味でも、ヒメはまさしく優秀な“案内役”だったのだ。
その結果、冬祐は“糸”として完成した。
改めて“女王様”の言葉を思い出す。
“糸”として完成した……役目を終えた……なので、死ね。
それは“糸”として完成した冬祐が、係留世界と“冬祐の世界”をつなぎ終えていることを意味していたのだ。
そして、翠。
期待させられた挙げ句、絶望し――“絶望兵器”に変えられた。
最初から“女王様”は、その目的で翠を指名したのだ。
恋が叶わないことを知らずに、希望だけを抱く存在として。
そんな翠にサカユメ・システムを経由させて、希望を膨らませてから絶望の現実を味わわせる。
それは、少しでも多くの“絶望エネルギー”を獲得するために必要な工程だったのだ。
希望が大きいほど、絶望も大きくなるのだから。
すべては、係留している“アンドロイドの普及したこの世界”と“レセプタ”によって完成した“糸”で接続された“冬祐の世界”を滅ぼし、自身の栄養とするための“既定路線”だったのだ。




