第7話 真相と覚悟(その3)
“鍾乳洞の主”のもとに漂着した瑞行も、やはり、冬祐や竹児と同じく“お使い”を頼まれてナビ役の“妖精”とともに旅立つことになった。
ただ、その時に旅をした世界は、今いるサダチカ・シティがある世界とはまったく異なる社会や文化、そして、倫理観の世界――すなわち、別の宇宙だった。
その世界には二種類の人間がいた。
“普通の人間”と人工合成で生み出された“疑人類”である。
“疑人類”の役割はふたつあった。
ひとつは“労働力”であり、そして、もうひとつは――“食材”だった。
瑞行が連れてくるように言われたのは“疑人類”に恋をした人間の少女だった。
少女は自身の恋を叶えるために“疑人類”に生まれ変わることを望んでいた。
“妖精”の誘導で無事に少女と合流した瑞行だったが、すぐに思いもよらない妨害者が現れた。
中学を卒業すると同時に別れた“かつての恋人”である。
その恋人に翻弄されながらも、最終目的地である“鍾乳洞”へ少女を送り届けた瑞行だったが、少女の願いは果たされなかった。
“たとえ、生まれ変わっても少女の恋は叶わない”という現実を突きつけられたのである。
しかし、それは当然といえば当然の話だった。
“擬人類”にとって少女の存在は、自分たちを捕食する“天敵”であり“恐怖”か“憎悪”の対象でしかないのだから。
少女は絶望し、自らの命と身体を“鍾乳洞の主”へと差し出した。
そして、少女は醜い姿に変えられた。
“絶望兵器”と呼ばれる異形へと。
瑞行は知った。
自分が少女を連れて行った“鍾乳洞のある世界”は、並行宇宙の狭間を漂う浮島のような世界であり、その正体は寄生空間――“パラサイティブゾーン”とも呼ぶべき超次元生物だったことを。
ひとつの世界に係留したパラサイティブゾーンは、そこに住む“境遇に不満を持つ存在”を絶望させて、世界を絶望死させる“絶望兵器”にする。
それは、係留世界を絶望死させるだけに留まらず、別の世界にまで絶望死を伝染させ、さらなる絶望エネルギーを発生させる。
その絶望エネルギーがパラサイティブゾーンの栄養源となる。
その際に“絶望兵器”とともに必要となるのは、別の世界に絶望死を伝染させる“糸”であり、その“糸”を完成させるのが“レセプタ”と呼ばれる存在である。
並行宇宙の狭間には、あちこちの宇宙から漏れ出た感情が彷徨している。
その中に混じっている“どこかの世界で、ひとりの人間が抱いた絶望感”を回収して作られるのが“レセプタ”である。
“レセプタ”は自身の元になった絶望感を抱かせた人物を、パラサイティブゾーンに召喚する。
召喚された人物は係留世界を旅することで、様々な感情を体験して成長していく。
そして、最終的に“糸”になる。
自らの世界に絶望死を伝染させる“糸”に……。




