表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/87

第5話 仲間たち(その11)

 顔色を失った翠が、冬祐を見る。

「冬祐様っ」

 冬祐が慌てて銃を下ろす。

「違うっ。撃ってない。暴発だっ」

 言ってから冬祐は気付く。

 引き金を引いてないにもかかわらずエネルギー弾が発射された――それが、ナビ子の仕業であることに。

 アニーは倒れることなく、欠けた顔面で冬祐を睨み付ける。

 そして、それまでとは違う険しい口調で冬祐を責める。

「撃つのか。自分と同じ境遇の彼を。自分たちの明日の姿かもしれない彼を……」

 そこまで言った時、背後で“単眼スライム”が破裂した。

 予想だにしていなかった展開に、冬祐、竹児、翠、ケイタが息をのむ。

 その四人が見ている前で“単眼スライム”から解放された由胡とジャージ姿でシニヨンヘアの若い女――我孫子遥麗が、アニーを左右から押さえつける。

 そして、遥麗が表情を強張らせているアニーにささやく。

「あなたが狙撃されたことで“彼”の意識が動揺して、出られることができました」

 さらに、由胡。

「“彼”を匿っていたことを母上様はご立腹だよ。だから、このまま連れてくよ」

 遥麗と由胡の背後で、バックヤードへの扉が開く。

「やっ、私は……」

 我に帰ってじたばたと抵抗するアニーだが、左右からがっちりと態勢をホールドされていることで逃れることはできず、由胡と遥麗に引きずられて扉の奥へと消えていく。

 その様子を冬祐と竹児、翠とケイタは、ぽかんと見送るしかない。

 そこへ――。

「冬祐ええええええええっ」

 ――カウンターから飛び出してきたヒメが、冬祐の胸元に飛び込む。

「大丈夫か、ヒメ」

 よほど怖い思いをしたのか、ヒメは冬祐のワイシャツにしがみついて泣きじゃくる。

 そして、ぐずぐずと鼻声で答える。

「うん、うん。大丈夫、大丈夫だったよう。うああああ」

 あまりにも大袈裟なその様子に、冬祐が苦笑いを浮かべる。

 そのかたわらで――

 どさり

 ――翠が倒れた。

「翠?」

 冬祐が慌てて翠のかたわらにヒザをついて、抱き起こす。

「失礼しますっ」

 同様にヒザをついたケイタが、開いたまま焦点を合わせていない翠の眼球を覗き込む。

 そして、冬祐を見る。

電圧低下バッテリーです」

 冬祐は定睦の言葉を思い出す。

 いよいよ、限界が来たようだった。

 改めて抱きかかえた翠に、声を掛ける。

「翠、しっかりしろ。もう少しだぞっ」

「冬祐……様……」

「しっかりしろ。もうすぐだぞ。快翔に……オーナーにカニ団子を食べさせるんだろ」

 翠は応えることもできず、力なく微笑む。

 そこへ、冬祐の背後から竹児が声を掛ける。

「冬祐。先に行っててくれ」

 冬祐が振り返ると、竹児は少し離れた所でうずくまって震えているネコサイズの“単眼スライム”を見下ろしていた。

 カウンター内で破裂したものが、エントランス全体に拡散したのち再凝集したらしい。

 竹児はその場にヒザをつくと“単眼スライム”を覗き込みながら、冬祐へ告げる。

「言葉が通じるっぽい。ダンジョン化は解除したそうだ」

 “単眼”が、ぎょろりと冬祐を見る。

 その目には確かに知性の輝きが見て取れた。

 竹児が続ける。

「“案内担当”が言ってたことが気になるから、話を聞いてみる」

 そして、ケイタを見る。

「いいだろ?」

 ケイタが即答する。

「はい。ボクも興味があります」

 竹児は改めて冬祐を見る。

「ということなんで、先に行っててくれ」

「わかった」

 翠を抱き上げた冬祐は、カウンター左の“到着”と書かれた扉へ飛び込む。

 ダンジョン化が解除されていれば、この先は――。

 その予想通り、扉の先は“イソギンチャクを乗せたカニがいる部屋”だった。

 冬祐は考える。

 カニ――正確には甲に乗ったイソギンチャクだが――は、さっきのように触手を伸ばしてくるのか?

 その時には、どう対処すればいいのか?

 カニに任せるのか?

 その場合は、また、あの“サカユメ”がリピートされるのか?

 冗談じゃないぞ、今の翠にそんな時間的余裕なんかあるものか。

 だったら……自分がカニを狙撃していい――のか?

 緊張しながら奥の扉へ足を進める冬祐に、カニが告げる。

「サカユメ処理の完了を確認。お通りください」

 意味はわからないが、その言葉にほっとする。

 そして、たどりついた奥の扉を開く。

 そこは初めて訪れた時のまま、鍾乳石が垂れ下がり石筍が林立する“女王様の間”だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ