第5話 仲間たち(その9)
「リビングに入ってきたのは、オーナーじゃなかった。父親から連絡を受けた、アンドロイド専門の廃棄処分業者だった。家から連れ出されて回収車に乗せられるケイタを、オレが強奪したんだよ」
竹児の話に冬祐も納得する。
「翠のもサカユメだった。引っ越しの時に捨てられたと言ってた」
竹児が、ぷくぷくと口元から泡を吹いているカニを見ながらつぶやく。
「しかし、なんのためのシステムだ?」
カニが告げる。
「サカユメ処理が終了しました」
室内の照明が元の明度に戻り、イソギンチャクの触手が翠とケイタの頭から離れた。
「えーと、あれ?」と翠。
「ここは?」とケイタ。
きょとんとした表情で周囲を見渡すふたりに、冬祐と竹児が声を掛ける。
「翠、大丈夫か」
「ケイタはどうだ」
翠とケイタが答える。
「はいっ」
「大丈夫ですっ」
ふたりそろって、まるでいい夢を見た朝のように晴れ晴れとした表情を浮かべる。
ただ、その晴れやかな表情が、逆に、冬祐に正体不明な不安を覚えさせていた。
「では、扉を開きます」
そう言ってケイタが開いた扉の奥は、やはり闇。
竹児がその闇を臨む。
「さあ、次はどんな部屋だ」
そう言って踏み出そうとした時、気付いた冬祐が引き留める。
「いや、ちょっと」
「どうした」
冬祐は部屋の奥を指差す。
「あっちにも扉があるけど……あっちは確認しなくていいのか?」
初めてこの部屋を通った時を思い出す。
あっちの扉は本来なら“女王様”のいる鍾乳洞につながっていたはずだ。
「そういや、そうだな」
竹児も奥の扉を見る。
そこへ翠が。
「扉ごとに行き先が決まってるなら見ておく意味はあるでしょうけど、デタラメにつながってる状態のようですから扉自体に意味はないと思います」
さらにケイタも。
「なので、あっちの扉もこっちの扉も同じことでしょう」
冬祐は納得する。
「そうか、そうだな」
「じゃあ、行くぜ」
改めて竹児がケイタの開いた扉の闇へと進む。




