第5話 仲間たち(その2)
闇を出た先に広がっていたのは瓦礫の散乱する公園跡地ではなく、本をぎっしりと詰め込まれた書棚が並ぶ書庫だった。
予想が外れて安心していいのか、それとも困っていいのかわからず戸惑う冬祐に、翠がつぶやく。
「空間が変なつながり方してるようですね。扉を開ける回数とか、部屋にいる時間の長さとかで行き先が変わるのかもしれません」
「なるほど」
翠の言葉に納得する。
もちろん、原理はわからない。
それでも、ここまでヒメが何度か言っていた“空間歪曲”という言葉からそういう現象もありうるのだろうと思う。
となると、扉を通過し続けるしか打開策はない。
「次、行こう」
翠を促す。
しかし、翠は答えない。
ぼんやりと突っ立っている様子は、どこかだるそうにも見える。
やはり、バッテリーの限界が近いのだろう。
冬祐が顔を覗き込んで、声を掛ける。
「翠、大丈夫か?」
翠は驚いたように目を見開き、頓狂な声を上げる。
「ははははいっ、大丈夫ですっ」
「……あのさ」
「はい?」
「よくわかんないんだけど、安静モードっていうか省電力モードみたいなのはないのか?」
「そういう高度な機能はちょっと……」
もうしわけなさそうな返事に、冬祐が罪悪感を覚える。
「ごめん。そういうのじゃなくても……。例えば……例えば、僕が翠を背負って歩けば、その、エネルギーの消費が抑えられるとか」
「せせせせせ背負ってもらうなんて、とととととんでもないですっ」
広げた両手をふるふると冬祐に向ける。
「大丈夫です。大丈夫。心配おかけして申し訳ありません。い、行きましょう」
そう言って扉を開く。
扉の先に見えるのは、やはり、闇。
その闇に踏み込む。
そして、闇を抜けた先にあるのは――巨大な機械の塊が静かに唸っている部屋だった。
扉を開いただけでは闇で、入ってみないとどんな部屋につながっているかわからない。
とにかく、扉を通り続けるしかない、闇の中に突入するしかない。
ま、しょうがないよな――そんなことを思いながら、冬祐が扉を振り返る。
同時に翠の小さな手がその扉を開こうと、制御パネルに伸びた瞬間――。
「あ」
――一瞬早く開いた扉とそこから現れたものに、翠と冬祐が同時に声を上げて後ずさりする。
現れたそれは、冬祐と同じくらいの少年だった。




