第4話 瓦礫に埋まる街(その10)
メインホールでは、定睦がちょうど最後のアンドロイドを診終えたところだった。
「どうじゃった、ホーネットの容態は」
「問題ありません。すぐにでも歩けそうです」
「そりゃ、良かった」
そう言って笑みを浮かべるが、すぐに大袈裟にふてくされた表情を作ってひとりごちる。
「ワシが診に行きたいのはやまやまじゃが、えらく嫌われておるんでの」
「そのホーネットが、定睦様にお話があるそうです」
定睦の表情が一転する。
「ななななんじゃとっ。ホ、ホ、ホ、ホ、ホーネットが、ワ、ワ、ワシに話となっ」
その食いつかんばかりの勢いに、翠が引きながら促す。
「は、はい。早く言ってください」
「おおおおおおおうっ」
定睦は、意味不明の雄叫びを上げながら個室へと走る。
その後ろ姿を見送った翠は溜息をつく。
そして、エントランスから出て、青い空を見上げる。
かつて、快翔と一緒に見ていたのと同じ青い空を。
もう少しで、自分は人間になれる。
その時にはホーネットと先生のように、自分も快翔様と――。
そこまで考えて、違和感を覚える。
脳裏に現れた快翔ではない、冬祐の姿に。
「……?」
翠は混乱する。
それは冬祐がよぎったことだけが理由ではない。
改めて考える。
なぜ、あたしは自分の感情に違和感を持ったのだろう。
たった今、ホーネットに“自分の感情を認めればいい”と言っておきながら、なぜ、あたしは戸惑っているのだろう。
自分の感情を素直に認めれば、違和感も戸惑いも生じないはずなのに。
なぜ、あたしは……???。
その時――遠くから銃声が聞こえた。




