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第4話 瓦礫に埋まる街(その7)

 “先生にも一声掛けよう”――そう考えた冬祐が、エントランスを出て正面に横付けしている“ホーネットはワシのヨメ”号のかたわらに差し掛かった時、定睦が交換用の部品を抱えてコンテナから降りてきた。

「お? 出かけるのか」

「はい。翠は置いて行きます。あとで迎えに来ますんで、それまでお願いします」

 定睦は窺うような目で冬祐を見る。

「あの“単眼スライム(バケモン)”を追いかけるのか?」

「はい。追いかけます」

「ちょっと、持っとれ」

「はい?」

 定睦は抱えている部品を足元に下ろすと、改めてコンテナへと引き返す。

 そして、数分後――持って出てきたコンビニ袋を、冬祐へ差し出す。

「持って行け。必要になるかもしれん」

 覗いた袋の中には、カードが一枚と……銃。

 銃はわかるが、カードがなんなのかわからない。

「これは一体?」

 カードを取り出して、表裏を眺める。

「通話装置じゃ。表面の刻印を撫でてみい」

 冬祐の指が刻印を撫でると、どこからかコール音が流れ始める。

 定睦が――

「ワシにつながる」

 ――そう言って、自身のイヤホンを押さえる。

 コール音が止まった。

 そして、冬祐の持つコンビニ袋に手を突っ込んで銃を取り出す。

「これは、わかるな?」

「銃です……よね」

 冬祐はためらう。

「いや、でも、これはさすがに持って行けないですよ」

 ごく普通の高校生である冬祐にとって、間近で見る銃は“やべえ存在”以外のなにものでもないのだ。

 しかし、定睦は冬祐の言ってることが理解できないというように、不思議そうな顔を向ける。

「なにがじゃ」

 冬祐は“銃刀法とか”と言いかけて、ここが別世界であることを思い出す。

 “銃刀法のない世界”だとしても、おかしくはないのだ。

 しかし、それはそれで“銃器の携帯が普通に行われるようなヤバイ世界だったのか、ここは”と、いまさらながら全身から汗が噴き出す。

 そして、ホワイト団が手にしていた電撃銃や、カンパーナの理事長室で定睦に突きつけられていた銃について考える。

 ホワイト団の電撃銃は、ヒメが“違法改造銃”だと言っていた。

 ということは、この世界においても銃の所持は認められてないことになる。

 認められていれば“違法”に“改造”した物を持つ必要はないのだから。

 ならば、カンパーナの銃は“認められてないにもかかわらず、こっそり持っていた”ということか。

 六千億を目当てにプロの拉致屋をやとったり、サダチカ・シティに爆弾を仕掛けたり、さらには親戚を殺そうとしてたりするような組織であることを思うと、違法行為である“銃の所持”を行っていてもおかしくはない。

 結論として――この世界でも銃の所持は違法であり、ここで定睦から銃を受け取るのはやはりマズイ気がする、お断りするべきだろう。

 定睦は、そんな冬祐の思案を見透かしたかのように告げる。

「念のために言っておくが、こいつは規制対象外じゃ。人は殺せんのでな」

「え? そうなんですか」

 冬祐は、たった今結論を出したばかりの思案が、前提からひっくり返されて拍子抜けする。

 そんな冬祐へ、定睦は銃口を向けて――

「アンドロイドに標準搭載されておる対人抑制機構が組み込まれておるのじゃ。じゃから――」

 ――引き金を引く。

「え?」

 思わず身を強張らせる冬祐だが、銃からは“かしゃん”と軽い音がしただけだった。

「――人に向けて引き金を引いても、なにも出ん」

 続けて自身のこめかみに銃口を当てて、何度も引き金を引いてみせる。

 そのたびに聞こえる“かしゃん、かしゃん”という音の中で続ける。

「しかし、じゃ」

 周囲を見渡す。

 多目的センターの向かいに、一抱えほどある瓦礫があった。

 定睦はその瓦礫に銃を向けて、引き金を引く。

 銃口から射出された光弾が瓦礫をコッパミジンに粉砕する。

 その威力に口をあけて立ち尽くす冬祐へ、定睦が銃を差し出す。

「瓦礫の撤去や粉砕に使えると思って持ってきたんじゃが、出番はなさそうじゃ。持って行け」

 冬祐は“そういうことなら遠慮することはない”と受け取る。

「あ、ありがとうございます」

 しかし、冬祐にとっては“初めて手にする本物の銃”であることに変わりはない。

 珍しくないはずもなく、握ってみたり、刻印に目を這わせてみたりするが、その様子に定睦は補足が必要と思ったらしい。

「そいつはさっき見た通り、実弾ではなくエネルギー弾を撃つ。弾倉にあたるカートリッジは銃把グリップの底から着脱する。やってみい」

 当然のように、冬祐は銃に関する知識は皆無である。

 それでも“銃把グリップ”が名前からして“握るところだろう”というのはなんとなくわかる。

「これですか?」

 銃把の底からはみ出している小さな突起に指を掛けて引っ張り出す。

 大型のUSBメモリみたいな部品が抜けた。

 これがエネルギーカートリッジなのだろう。

「そうじゃ。しかし、新品じゃから予備は必要ないじゃろ」

「ありがとうございます。お借りします」

 改めてカートリッジを装填した銃をベルトにねじ込む。

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