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第4話 瓦礫に埋まる街(その4)

「人間はあんたらだけかの」

 一緒に歩いている間も、ずっと瑠衣ちゃんの手を握りしめている母親に定睦が問い掛ける。

「はい。私はこの子を家に置いてたので勤務先から一度帰って……。家からの避難中にここの前で、あの黒い塊にクルマごとひっくり返されたんです。幸いケガはなかったんですけど」

 答えながらも母親は、ちらちらと翠に抱き支えられたホーネットを見ている。

 明らかに警戒した目線で。

 その様子に冬祐は、昨日の頼子理事長を思い出す。

 この世界の人間にとって、ホーネットとは“そういう存在”なのだろう。

 とはいえ、ホーネットが避けられる理由を頭では理解していても感覚では掴めていない冬祐には、やはり今ひとつ理解できないのだが。

 冬祐はなにげなく窓の外へと目をやる。

 隣接する建物の瓦礫が、山のように視界を遮っている。

 それは、この一帯をいかに強い衝撃が襲ったか、そして、多目的ホール(ここ)が倒壊を免れたことが、いかに奇跡的であったかを現している。

「よく、ここは無事で済んだよなあ」

 思わずつぶやく冬祐に、瑠衣ちゃんが振り返る。

「あたし、見てたんだよ。このおねえちゃんが守ってくれてたの」

 ホーネットがすかさず口を開く。

「アンドロイドが大勢避難しているからな。守るのは当たり前だ」

 定睦が問い掛ける。

「避難してたのが人間だけだったら、どうした?」

 ホーネットが口角をつり上げる。

「もちろん、見殺しにするさ。そして、置き去りにされたアンドロイドの救出を優先させる。当然だろう。私を誰だと思っている?」

 瑠衣ちゃんの手を握る母親の手に力がこもったのが、冬祐にもわかった。

「ここだよ」

 瑠衣ちゃんが、半開きのスライドドアを指差す。

 そこは翠が言った通り、ゲストや講師を迎える控え室だった。

「おお、ここか。ありがとう」

 礼を言う定睦に、母親は「もういいですよね?」と問い掛けるものの、返答を待つことなく瑠衣ちゃんの手を引いてホールへと足を向ける。

「ばいばい」

 遠ざかる瑠衣ちゃんが振り返り、ペットロボットを抱いた手を不器用に振る。

 その目線の先にいるのは、定睦でも、冬祐でも、翠でもなく……。

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