表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/87

第3話 駆け込み寺の大騒動(その12)

 冬祐と定睦が無人誘導車でサダチカ・シティへ戻ったのは、正午を過ぎた頃だった。

 帰りの車中で、ずっと、ホーネットを抱きしめた感触を反芻してにやける定睦は、冬祐の目から見てもキモかった。

 その定睦は、管理庁舎へ着くと休憩もとらず、集中治療室へ駆け込んで翠の治療を再開した。

 治療は順調に終了した。

 控え室の冬祐が連絡を受けて駆けつけた時には、意識も運動機能も完全に復旧した翠がベッドの上でライトガウン姿の上体を起こして、いつからいるのか、ヒメを交えて定睦と談笑していた。

「もう心配ないぞ。普段通りに行動してかまわんが、念のため、もう一泊していけばいい」

「ありがとうございましたっ」

 深々と頭を下げる冬祐に、定睦は手を振って応える。

「なに、これがわしの役割じゃ、生きがいじゃ。じゃあの」

 定睦が去り、カーテンで仕切られたベッドとバイタルモニタだけしかない部屋は、急に静かになった。

 そこへ“くすん”と鼻を鳴らしたのは翠。

「? どうした?」

 怪訝な表情で覗き込む冬祐を、翠は濡れた目で見つめ返す。

「先生から聞いたんです」

「なにを?」

「ここに来てからのことを全部」

「うん」

 “それがどうした”と目で続きを促す冬祐に、翠は耐えかねたようにぼろぼろと涙を流して顔を伏せる。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 唐突に泣き出されて、冬祐はどうしていいかわからない。

 そもそも、翠がなにを謝っているのかがわからない。

 ヒメも戸惑っている。

 互いに顔を見合わせて、首を傾げる。

 翠がやっと口を開く。

「せっかく、冬祐様があたしの治療のために、危ない目に遭ったりして、こんなにしてくださったのに、でも、あたしは、あたしには……快翔様が。ごめんなさい」

「?」

 それでもわかってない冬祐に、ヒメが呆れたようにつぶやく。

「要するに、翠はオーナー一筋だから、冬祐の愛には応えられず、ごめんなさいってことか」

 一方の冬祐はため息混じりにぽつり。

「別にそんなの期待してないんだけど」

 そして、まだ泣いている翠の背中を撫でる。

「そんなの気にしなくていいからゆっくり寝ろ。出発は先生の言う通り明日にしよう。な?」

「はい。……ごめんなさい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ