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第3話 駆け込み寺の大騒動(その6)

「冬祐っ、起きろっ」

 耳元で叫ぶヒメの声に、ソファで眠っていた冬祐が跳ね起きる。

「なんだなんだ」

「なんか外が騒がしいの」

 確かに、耳を澄ませば扉の向こうを走り過ぎる大勢の怒声や足音が聞こえる。

 部屋を出て、声の方へと足を進める。

 ところで、今は何時だ?――そんなことを思い、歩きながら時計を探して周囲を見渡す。

 時計はないが、窓から覗く低い太陽と寝不足特有の目のしばしば感に朝だとわかった。

 エントランスホールには、アンドロイドの人だかりができていた。

「なにがあったんですか」

 問い掛ける冬祐に、タンクトップにショートスパッツのアンドロイドが答える。

「先生がさらわれました」

「は?」

 思わぬ言葉に耳を疑う冬祐へ、周囲のアンドロイドが口々に状況を説明する。

「六人で侵入してきて、そのうち、黒装束の四人が玄人プロのようでした」

「その四人が先生をかついで逃げました」

「とりあえず、あのふたりが逃げ遅れたのを追い詰めた状態です」

 一組の男女が、正面で施錠されているガラス扉に退路を遮られて立ち尽くしている。

 冬祐は、そのふたりに見覚えがあった。

 白美と一緒にいた“デブ”、そして知佐と呼ばれていたタブレット少女だった。

 その“デブ”が、知佐のこめかみに電撃銃を押し当てている。

 しかし、そんなふたりの様子に冬祐は違和感を覚える。

「ああいう人質って“追いかけている(こっち)側”から選ぶもんじゃないのか? 自分の仲間を人質にして、なんのつもりだ?」

 冬祐の襟元に潜んでいるヒメがささやく。

「人命優先のアンドロイドにとっては“こっち側”だろうと“あっち側”だろうと関係ないんだよ」

 その言葉の意味を少し考えて理解する。

「なるほど。どっちにしろアンドロイドにとっては“保護すべき人間様”だから、うかつに動けないってことか」

「そういうこと」

 ヒメが身を乗り出す。

「近くで見てくる」

「気をつけろ」

 ヒメは飛び立とうとした姿勢のまま、冬祐を見る。

「? どうした?」

 その様子を訝しげに問う冬祐へ――

「なんでもないよ」

 ――答えたヒメは、こころなしか紅潮した頬で“デブ”と知佐のもとへと飛び去る。

 ヒメがふたりの頭上に着くと同時にヒメとの“感覚共有”で、冬祐の耳に“デブ”の声が届く。

「知佐。なんのためにおまえをつれてきたか、わかってるよな?」

「……わからない」

「時間を稼げ」

「は? どうやって?」

「その方法はオレが考えてある。とにかく、オマエがアンドロイドを引きつけろ。その間にオレが逃げるからよ」

「なにを言って……」

 突然“デブ”が知佐の顔面をグーで殴った。

 そして、バランスを崩した知佐をアンドロイドの人垣へと蹴り出す。

 アンドロイドが一斉に動く。

 “デブ”ではなく、鼻血まみれの知佐に向かって。

「大丈夫ですか」

「おケガは、ございませんか」

 口々に言いながら、アンドロイドは知佐に群がっていく。

 “デブ”は、その隙に正面玄関のガラス戸を破壊して外へと飛び出す。

 アンドロイドたちは、そんな“デブ”を目で追うことすらもなく、知佐に殺到し続ける。

 ヒメが呆れたようにつぶやく。

「アンドロイドとしては“負傷者の救護”が最優先だからねえ。しょうがないよ」

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